映画の感想など・・・基本的にネタばれです。
しづのをだまき
映画「Viva(ビバ)!公務員
2015 伊 86分 原題 QUO VADO? 監督 ジェンナーロ・ヌンツィアンテ 出演 ケッコ・ザローネ ソニア・ベルガマスコ エレオノーラ・ジョヴァナルディ 鑑賞 本郷台アースプラザ5F 12月22日(日)13:30(400円)
こどものころからの夢だった安定した終身雇用の職=公務員に就いて15年のケッコ。だが、ある日、政府による公務員削減の対象になってしまう。それでも公務員の職にしがみつこうとするケッコをどうにか退職に追い込みたいリストラ担当者シローネ女史はケッコに僻地への移動を命じ続ける。イタリアでの大ヒット(歴代興行収入1位)を記録したコメディドラマ。
主演のケッコ・ザローネはイタリアで大人気の喜劇俳優であり、本作では原案・脚本・音楽まで手掛ける。シローネ女史を演じるソニア・ベルガマスコはケッコと全面対決し遂には体を張って挑むが、連戦連敗する、その真剣な命がけのたたかいが面白かった。彼女のほかに、ケッコが一目ぼれするノルウェイの女学者も自由に恋と仕事に生きており、彼女たちの生き生きとした姿が本作の好感度を上げている。
ところで私はちりばめられているらしい笑いのツボの何割くらいわかったか、自信がなかった。
★公務員
日本では中高生の人気職業の上位に公務員がある。しかしケッコはすでに小学生でそうだった。経済が振わず人口が減少気味で低所得の地域ほど、公務員の地位が高いようだ。自分の故郷を見ればわかることだが。
★イタリア人気質
1.労働は、罰だと思っている。日本人は、逆で、労働自体が喜びであり、死の直前まで働いて「ピンピンコロリ」とあの世へ行きたいと思っている。その証拠が過労死の多さではなかろうか。
2.融通無碍、どんな状況でも自分本位に生きていける。いじめで仕事が与えられなくても、これは楽ちんだと喜んでいる強さがあるが、日本人は周囲全部が働いているのに自分だけが遊んでいるのには耐えられないだろう。
3.愛はすべてを超える。ひとたび愛に目覚めたら、相手に合わせてすべての価値観を転換することができる。左遷先の北極で出会ったノルウェイの女性学者に一目ぼれしたかれは、北欧的な市民の良識に目覚める。車のクラクションを鳴らさなくなったり、行列に並ぶことを覚えたり。でも冬の長さには音を上げるのだった・・・。
★主人公が飛ばされたカラブリアは イタリア半島の南部、長靴のつま先に当たる、「モンタルバーノ」にも誘拐事件の多い地方として出てくる。そこでも主人公は、地元をしきるマフィアとうまく折り合いをつける。
★冒頭でアフリカの部族につかまり、身の上話をするという形で自分の一生を語り映画が始まる。このくだりは少し現実離れしておとぎ話のようだ。
元首相も「終始笑いっぱなしだった」といい、すべてのイタリア人が喜んだということは、自分たちの姿をみごとに戯画化したこの映画を容認し、受け入れる覚悟と度量があると言うことだろう。ひるがえってわれら日本人には、まず第一にこのような作品がないし、あったとしても笑って見る覚悟と度量がないだろう。現にどこかの誰かにちょっと何か言われただけで、真っ赤になって怒り出す。自分を客観化するすべをこの映画と鑑賞態度に学ぶべきだ。
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ケッコとシローネ女史のやりとりに大笑いしました。
確かに日本ではこんな映画は作られないだろうし
笑って見る覚悟と度量がないでしょうね。
同感です。
ラテンの血には勝てません。
コメント有難うございます。イタリア映画の中では喜劇が好きとおっしゃっているmargotさん、これも楽しまれたことでしょう。ラテンの血は、生真面目な日本人からすると、画面で見るにはいいが、仕事や生活で直面したら、叶わないな~と思うことが多々あるでしょうね。
シリアが、まさにその通りです。彼らは、昔のローマ帝国の末裔で、自分らもイタリア人とほとんど同じと考えており、しかもまだ近代化が進んでいない軍事独裁国なので、気はよいのだがどうにも付き合いきれない、それこそ真っ赤になって怒りたくなるようなことがありました。なかなか自己のラテン化はできません。