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ルース台風

   画像は台風6号でゆれる糸柳(2011-07-19 松江)

 中1の兄、小6と小3の姉、小1の私が、吹き荒れる風を家に入れまいと、1枚の板戸を内側から必死でおさえているーその光景がまず目に浮かぶ。昭和26年(1951年)南九州を襲ったルース台風は、瞬間最大風速60mを記録した。次のシーンは、雨の中を、ひとりずつ父に抱かれて、隣接する父の診療所に運ばれる私と、2歳上の姉だ。母と4歳下の弟は、すでに避難していたらしい。

 次の記憶は、いくら叱っても畳に上がりたがる、仔犬のロンである。台風のあと、濡れて使い物にならないので、畳を全部上げた時期に飼い始めたため、子供たちが板の間に上げた、その時の癖が後あとまで抜けなかったのだ。もう1つは、次の年、2年生の夏休みの絵日記に、こんな記述がある。「去年のルース台風で、屋根の平木がみんな飛びましたから、今年こそはと瓦をのせたのです。」「瓦はのせたし、戸はちゃんと直したから、今度は台風が来ても大丈夫と思います」(一部のひらがなを漢字に直した)と子供心に防災の心配をしている。

 戦争で一面の焼野原になった鹿児島市に、粗末で小さい家を建て、身を寄せ合うように暮らしていた人々を襲った暴風雨だが、大人はいざ知らず、子供にとっては、単調な日々を揺るがすイベントでもあり、親子や兄弟の絆が強まる機会でもあった。また、この初めての経験が、私にとっての台風の原型となってしまい、その後、とくに関西近辺にやってくる軟弱な(?)台風に対して、ともすれば軽蔑の念を抱きがちになったのは、理屈には合わないが、やむを得ないことだったかも知れない。  

課題:「災害」 2005年2月22日提出、3月2日返却

(八木先生評)
 ジェーン台風を除いては、戦後派関西にはあまり大きな台風はきませんね。その前は、超大型も再三襲来しています。

そういえば、室戸台風の来襲は昭和9年(1934年)9月21日、つまり先生の誕生日の翌日。ルース台風の襲来は昭和26年10月14日(日)。翌日は学校は休みだったが、わざわざ校庭のようすを見に行ったと思う。 
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