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「麦死なず」

 石坂洋次郎著 筑摩書房 現代日本文学大系50 1971(初出1936)これは私小説である。「若い人」の妖艶な江波恵子と理知的な橋本先生、この対照的な2人が、実は身近にいたひとりの女性ー作家の妻から生まれたということがわかる。映画で作られた明るく近代的なイメージとは程遠い、東北の小さな町の、泥臭い日常から、あのフィクションが生まれたことに驚くのだ。昭和初期の、戦争には少し間のある時代、そういう地方 . . . 本文を読む
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「アリアーヌの青春」

クロード・アネ著 宇佐見英治訳東京創元社 1957年刊(初出1920年)映画「昼下りの情事」は年上の男を翻弄する娘の物語だが、いつ見てもどこか不自然で現実性に欠けた設定のように感じる。たまたま先月11日にBSプレミアムでやっていたので、この際だからと原作を読んでみることにした。原題は「ロシアの娘アリアーヌ」、舞台は帝政末期のロシアである。つまりパリではなく、ロシアというところに意味がある。「文明の . . . 本文を読む
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明治深刻悲惨小説集

  著者 樋口一葉・泉鏡花・廣津柳浪・川上眉山・田山花袋・前田曙山・北田薄氷・江見水陰・小栗風葉・徳田秋声 発行所 講談社文芸文庫   日清戦争後の日本で、貧困・病気・差別などへの批判と弱者への共感を作品化した若い人たちがいて深刻派と呼ばれた。ほとんどが20代で柳浪は30代。   田山花袋「断流」は15歳の娘が紡績工場で上司に玩ばれ、職を失い、娼婦に落ちて . . . 本文を読む
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廣津和郎全集 第1巻

発行所 中央公論社 発行年1988年娘・桃子の「父・広津和郎」に触発され、この一冊を手に取った。桃子がある日「お父さんは、優秀で魅力的かもしれないけれど、親としてどうなんだろう」と言い、和郎をひどく落ち込ませたという。父親の凸凹で複雑な人生を総括したような、子供ならではの鋭い評言。自分と兄が生まれる前後の事情を、「師崎行」「やもり」「波の上」から読んだのだろう。 片親で育ててくれた母への父の嫌悪感 . . . 本文を読む
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「泉へのみち」

著者 廣津和郎 出版社 新日本出版社 初出 1953年8月15日~1954年3月26日朝日新聞朝刊主人公は京子23歳、女子大を卒業して雑誌記者として働き始めている。彼女の周辺には、学者の高倉、同僚の金沢、かつて母と自分を捨てた父の笹川などの男性が登場する。そしてついに愛を発見する。冒頭で彼女は取材のため鎌倉を訪れる。かつて18年幸せに住んでいたのは鎌倉の鉄(くろがね)の井戸の近く。(題名の「泉」が . . . 本文を読む
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「クリスマスの休暇」

サマセット・モーム著 中村能三訳 三笠書房1951年刊(原著1939年)ある英国の若者が、クリスマスの休暇にパリを訪れ、そこで出会った人々や事件を描いたもの。彼の英国的な良識や常識とは相いれない情熱的な恋愛とか犯罪を目撃したかれは、また英国の両親の待つ温かい家庭に帰っていく。ゲイとして、作者が、保守的な価値観を持つ家族や同国民に反発する気持は常にあり、生涯のほとんどをフランスなど外国で過ごした。そ . . . 本文を読む
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「女給」

広津和郎著 広津和郎全集第5巻 中央公論社(初出 1935年 婦人公論)この作品は、当時流行っていた「カフェ」に出入りする客とそこで働く女性のさまざまな生態を扱った小説だ。客の中には女給に入れあげ、ついには妻子を捨てて結婚を迫り、聞かれないと自殺を試みる男性がいる。世間の同情は男に集まり、女を凄腕の冷酷な女とみなし、遂には警察が検束するにいたる。作者は、女性に味方して、彼女は教養も学歴もあり、向上 . . . 本文を読む
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広津柳浪・和郎・桃子展 

副題:広津家三代の文学  柳浪(1861~1928)和郎(1891~1968)桃子(1918~1988)   1998年4月神奈川文学館で開催  編者 阿川弘之 中島国彦 橋本廸夫 松原新一   和郎の残存する唯一人の子、桃子が独身で子もなく、難病で急死したのは、70歳ではあったが遺言を残す暇もなかったので、彼女の手元にあった三代の貴重な文学的遺産もそのまま国庫に納 . . . 本文を読む
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広津和郎、娘桃子との交流記

亀山恒子著 2012年 図書新聞刊 著者(1918~2010)は今回初めて知った作家だが、彼女の師事した広津和郎のことばに気に入った箇所がたくさんあったのでメモしておく。★同時代作家評 問 「小林秀雄さんの文章は名文でしょうか」 答 「いや、名文とは思いませんな。あの人の文章を読むと、どうも、肩が張るようでいけない。人間はもっとバカなところがあっていい」「あの人は決して強い人ではないでしょう。自分 . . . 本文を読む
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「風雨強かるべし」

広津和郎著 岩波文庫 1954初刷(1984年第4刷)初出1933-1934(昭和8-9年)報知新聞連載。時代は、左翼が退潮期にある1930年代の東京。主人公、佐貫駿一は熊本の高校を出た、たぶん東大生である。親の遺産が少しあるのでガツガツしていない。病気のため研究会の仲間から離れている。当初の予想からは外れ、これは主に女性を通じて、時代を描いている小説だ。 銀行家令嬢のヒサヨとマユミ・その義母であ . . . 本文を読む
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「青年茂吉」

北杜夫著 2001年岩波現代文庫 91年岩波書店刊   初出「図書」1988年1月~91年1月連載「茂吉あれこれ」斎藤茂吉伝四部作の第一作。 歌集「赤光」「あらたま」茂吉23歳~35歳    明治38年(1905)~大正6年(1917年)の時期昭和2年(1927年)生まれの著者が、60歳を超えてようやく父について本格的に語りだした。それを控えていたのは、「まえがき」によれば、父に比べて文学者として . . . 本文を読む
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「茂吉晩年」

北杜夫著 2001年岩波現代文庫刊(初出1998)「斎藤茂吉伝」四部作の完結篇。茂吉63歳~70歳、1945~1953年。斎藤茂吉の死は、夜7時のNHKニュースでも取り上げられた。その日、1953年2月25日を私が、なぜ憶えているかといえば、風呂場から「しまった!!」という父の声が聞こえ、それも滅多に出さない大声だったから。斎藤茂吉の名前も、この時初めて聞いたのだと思う。わたしはその時、7歳、小学 . . . 本文を読む
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「茂吉彷徨」

北杜夫著 岩波書店 1996年刊 初出「図書」93-964冊組評伝の3冊目。日本が戦争に負けるまで、茂吉47~63歳1929~1945(昭和4~20年)歌集「たかはら」「石泉」「白桃」「暁紅」「寒雲」「小園」。1933年、茂吉の妻輝子のダンス教師との事件が新聞に載る。夫婦は警察の事情聴取も受け、憤激した茂吉は妻を家から追い出し、別居解消にはなんと12年もかかる。その一方で茂吉は美貌の弟子永井ふさ子 . . . 本文を読む
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「壮年茂吉」

北杜夫著 岩波書店 1993年刊  初出「図書」91年2月~93年5月次男による斎藤茂吉の4連評伝の2冊目は茂吉36歳~47歳「つゆじも」「遠遊」「遍歴」「ともしび」1917~1928(大正6-昭和3)時代だ。「つゆじも」では長崎に単身赴任、孤独感に悩む。「遠遊」ではウィーン留学、クレペリン博士の握手拒否に傷つき「毛唐」という罵言が登場す。(私の父もこの語を使っていたが敬愛する師に倣った . . . 本文を読む
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「楡家の人びと」

新潮社 1964年刊 北杜夫著 . . . 本文を読む
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