在イタリア、ソムリエワインノートとイタリア映画評論、他つれづれ appunti di degustazione

ソムリエ 20年、イタリアワインのテイスティングノートと、なぜか突然のイタリア映画評論、日本酒、日本茶、突然アートも

Codex Seraphinianus di Luigi Serafini コデックス・セラフィニアヌス

2016-06-19 18:28:32 | 何故か突然アート
Codex Seraphinianus di Luigi Serafini コデックス・セラフィニアヌス

知る人ぞ知る、世界でも最も不思議な本(の1冊)と言われる「コデックス・セラフィニアヌス」を知っているだろうか。
友人のルイジ・セラフィーニが1981年に書いた本である。


これが2冊からなる1981年の初版

過去にもこの本のことはこのブログで書いたことがあるが、改めて詳しく書いてみる。
というのが、コデックスのWikiの日本語ページは随分前からあるのだが、作者ルイジ・セラフィーニの日本語ページが今までなかった。
ずーーーっと前からルイジとその話はしていたのだが、このところゆっくり時間を取ることができて、やっと日本語ページを作ったのである。
(まだまだ改定予定。。。。。)

それで、改めて、じーーーーーーっと彼の履歴を読むことになった。
だいたい知っていたこととは言え、改めて感心したのである。

コデックスは、美術系の人は知ってるかも知れないが、とにかく不思議な、読むに読めない文字で書かれた百科事典のような本である。
記号か記号でもないような字で、それが、見事に本物の百科事典のように作られている。
一番最初にコデックスを見たとき、その面白さ、素晴らしさに感動したのだが、これだけの膨大な量を、崩すことなく、最初から最後まで見事に描いたその忍耐には驚いた。
また、百科事典のようになっているので、当然、動物、植物、人物、機械、科学、言語、建築と、いろいろな章があるのだが、それらの全てを描ける才能にも感嘆。
そして、ルイジ本人と知り合って、彼の人柄の温厚さにさらに感動したのである。
それから、とにかく頭が完全にアーティスト、脳みそを割ってみたいと思うのだが、中にはいったい何が(どんなアイデアが)詰まっているかわからない頭の良さにも感心し、幸い、光栄なことに(恐れ多くも)非常に親しい友人の一人でいさせていただいている。

さて、ルイジがコデックスを書いたのは、彼がまだ若き20代の頃、1976年から78年にかけて、30ヶ月、ほぼ没頭するようにして書いた。
つまり、かなり古い本なのだが、その後、何度か再版され、現在の版(2013年版)は8版目にあたる。

初版本は2冊からなり、1981年、フランコ・マリア・リッチ出版社から発行されている。
3000冊程度(2冊組み)しか発行されていない、今では非常に希少な本である。
価値は高く、とても高価。2000ユーロは下らず、5000ユーロの値も軽くつくくらいである。
(本人、ボクにはなんの儲けもない〜と冗談。。。)


全てに番号とフツーのサイン(笑)が入っている


こちらのサインの方が彼らしい

その後、1冊にまとめた本が何度か、イタリアとイタリア以外の国で発行されている。(これらも、今はかなり高価)

さて、その後しばらく廃版状態だったのだが、2006年に廉価版(とは言っても100ユーロ近い値段は決して安くはないのだが)がリッツォーリ社より出版された。
これは、今までは豪華版で値段も高く、その後は一部の人しか見ることができない高額、希少価値的なものになってしまい、それを、もう少し安く広く販売できたら嬉しい、という彼の希望による再版である。
かなり色々なことにこだわる人なので、装丁、紙の質、印刷所、色のチェックなど、全てに丁寧に手を掛けている。

この版からオマケの「デコデックス」が付いている。
これはちゃんとした言語で書かれ(笑)非常に興味深い内容である。

2006年の販は、著名人がコデックスについて書いたものが載っているという、かなり「真面目」な内容。
ちなみに、有名なイタロ・カルヴィーノの序文はそれより前の版に載っている。
(イタロ・カルヴィーノが出したエッセイ本「砂のコレクション」(1984年、日本語訳あり)にはコデックスについて書いた一章がある)


左が2006年版 右が2013年版の表紙 似ているが微妙に違う

2013年版のデコデックスはがらっと変わって、当時の回想が載っていて面白い。
彼自身、あれ(コデックス)は「猫が書いたもの」と冗談を言うことがあるが、その当時の話が書いてあり、若干記憶と事実が違うことがないわけではないが、とにかく、彼の記憶による回想となっている。

その内容によると、コデックスの全ページの中に、彼が一番最初に書いた1ページというのがある。(これはファンならどのページが当てられる)
また、実は、1ページだけ未完のページがある。(これはルイジが教えてくれたのだが、たぶん誰も気がつかない)
それから、1ページだけ、本当のアルファベットが書かれたページがある。(よく見ればわかる)
初版を出版したフランコ・マリア・リッチ氏の肖像も登場している。(これはわかる)

他、2006年版はあと2回発行されているが、紙質が違うのにもエピソードがあったり、印刷がずれているという印刷ミスのページを含んだ版があったり、一見同じように見える版も、実は微妙に違ったりしているのである。
そこで、凝る人は、全ての版を買ってしまう。

特に2006年版には新しい「序文」が図版付きで加えられ、2013年版にも新しい図版がさらに加えられたので、すでに持っているのに買い足した人は多いと思う。
(ここで損をしたと思わないほうがいいと思う。なぜなら2006年版で、現在すでに何百ユーロかそれ以上の価値が付いているからである)

なお、この2006年版と2013年版は、同じような表紙に見えるが違う。
てんとう虫がさらに飛んでいる。これにも彼がカナダに行った時の偶然のエピソードがあり、とにかく、全てに意味が込められていると言っても過言ではない。


背表紙も微妙に違う

なお、コデックスのオリジナルの原画は、ずっと見たことがなかったのだが、初版本などを出した出版社、フランコ・マリア・リッチ氏が全て、まとめて所蔵している。
この冬から春にかけて、パルマの郊外にあるラビリント(大変素晴らしい場所で、竹林で分けて道を作っている)で原画展が行われたが、本物は涙が出るほど美しかった。


原画がずらっと展示され壮観

原画の美しさは、デコデックスの最初のページの牛のデッサン「Elapis」を持っているので分かるが、印刷されているものだけを見ても素晴らしく美しいのに、本人が書いた本物は比べものにならないくらい繊細で美しい。

コデックスの原画は、それとは比較にならないほど膨大で細かい作業、細い黒ペンの輪郭に色鉛筆で色が入っているのだが、そのペンの繊細さ、色のグラデーションの見事さには見ていて涙が出てきたほどである。

パルマのラビリントでの展覧会最終日前日には、フランコ氏も出席した講演が行われ、多くの若者が部屋にあふれんばかりで、今の若者にもこれだけ人気があるのかと改めて感心した。

コデックスをみると、ヴォイニッチ写本の真似と言われることもあるし、また、ページをめくっていて、アイデアのヒントらしきものは随所感じるのだが、決してヴォイニッチの本を真似しようとして書いたものではない。
だいたい、真似しようと思っただけで、これだけ膨大なページは描けない。(380ページ以上)
アイデアのヒントをどこからか得ることは普通だし、それよりも、現代美術展などに行くと、あれ、これ、コデックスからヒントを得たよう。。。という作品に時々お目にかかるので、コデックス自身が、その後の多くの芸術家にかなり影響を与えている。

とにかく美術に興味のある方にはぜひコデックスは見て欲しい。
(日本ではアマゾンでアメリカから買える。本当は、日本版だけの特別の図版を加えて出版したいのだが。。。。)
ネットで探すと、全ページをスキャンしたようなものが出てくるが、ちゃんと本になっているものは美しいし、原画はその何倍も美しい。
いつか、日本で原画展を開けないものかと思っているのだが、どなたかスポンサーになっていただける方はいないものだろうか。

さて、ルイジは作家ではなく芸術家、もちろん他の本も出しているし、絵画から彫刻、陶器まで制作している。これらもものすごく面白い。
そのあたりを、ぼちぼち紹介していきたいと思っている。


ルイジが気に入っている絵の1枚


植物のページのから 他の挿絵のあるページはネットでいくらでも出るので絵のないページを紹介


これがある章の目次 ページの数も読めない(笑)



実に「詳しい」解説が豊富な百科事典(笑)


Codex Seraphinianus
クリエーター情報なし
Rizzoli

Ebner Gruner Veltliner 2015 e Gewurztraminer 2015 エブネル 2種

2016-06-19 14:08:19 | Trentino Alto Adige アルト・アディジェ
Ebner: エブネル
Gruner Veltliner 2015 グルネル・ヴェルトリーネル2015
Gewurtztraminer 2015 ゲヴルツトラミーネル2015



まだローマではマルコのところ(Il Vinaietto)しか入っていない。
マルコと協力してワインを仕入れているパオロが、少し前に「発掘」したもの。

マルコもパオロも、そして私もだが、アルト・アディジェのワインはかなり好きである。
いろいろな品種があり、その時の気分で選べるし、重たさがなく、エレガントで、特にマルコのところのように、食べ物がない場所でアペリティフ的に飲むにはちょうどいい。
(たまには「真夜中のアペリティフ」になるが。。。)

さて、その、オーダーしていたエブネルのワインがようやく届いた、というのでマルコに飲んでみて、と言われ飲んだ。



Gruner Veltliner 2015
たいてい、何も言わずにワインを出してくるマルコ。
瓶の形状からして、すぐにアルト・アディジェとわかるが、品種は??
グルネル・ヴェルトリーネル(日本ではたぶん、グルナー・ヴェルトリーナーと発音する?)だった。オーストリアに多いという品種。
ここで、オーダーしてたのが届いたんだよね〜、とマルコ。

最初に一瞬、白い花、すぐに、かなり熟したフルーツの香り、随分たって、柑橘系、緑の香りがほのか〜に感じられる。香りはかなり強く、しかし、程よい複雑性はあり、印象が強い。珍しく、アルト・アディジェにしては、重ためのワイン。。。。という印象。
味の方も強さがあり、存在感たっぷり、酸はあるが、柔らかさの方が先に立ち、ボディしっかり、余韻も太く長く、パイナップルの甘い香りが残る。アルト・アディジェの物にしては珍しく肉厚系〜という感じのワイン。
これだけを飲むのもいいが、食べ物が欲しい。。。。++++



Gewurztraminer 2015
ゲヴルツもあるというので、ついでなので飲んでみた。
バラの花とライチがゲブルツの見本のよう。これまた存在感あり。どーんとしていて、若干重たすぎ。
味も負けない。同じく存在感たっぷり、酸味がまろやかさに隠れ、ゲヴルツにあるほろ苦さまで隠して、余韻が太く長い。これもかなりの肉厚系。
珍しく、飲んでいて若干飽きがきたのだが、それは食べ物がないこともあったと思う。ただ、非常に良くできているし、ぐっと冷やして食べ物と一緒なら、そして、この手の存在感のあるタイプが好きなら、絶対に気にいると思う。+++(+)

ワインだけでも、飲んでいるとあまりお腹が空かないので、マルコのところ長くいてお腹すくということはあまりないのだが、今回は珍しく、飲んでいてすご〜くお腹が空いたのであった。