行きかふ年もまた旅人なり

日本の歴史や文学(主に近代)について、感想等を紹介しますが、毎日はできません。
ふぅ、徒然なるままに日暮したい・・・。

読書記3 『セメント樽の中の手紙』

2007-11-22 00:14:16 | Weblog
『セメント樽の中の手紙』 葉山嘉樹 著
とにかく、とても強い衝撃を受けた。 
こんな文章にはそうそう出会えるものではない。とても短いが、それだけに衝撃も強かった。
 
 ―労働運動が盛んになり始めた昭和初期、セメント工場で働く一人の労働者・松戸与三がセメント開けをしながら、コンクリートミキサーにセメントを入れていた。セメントが入った樽から木箱が出てきて・・・。そこにはある女工の書いた手紙が入っていた。その内容は自分の恋人がミキサーに巻き込まれ、セメントの群れになってしまった、という恐ろしく悲しいことが書いてあった。与三は子どもが多く、そしてまた妻が妊娠中で騒がしい自宅の中でそれを読みながら、「へべれけに酔って、何もかもぶち壊してえなあ。」とつぶやく。妻は、壊されたら子ども達はどううするんです?というような内容をつぶやく。与三は妻の大きなお腹を見ていた。―

 いわゆるプロレタリア文学である。束縛された労働者は本当に解放されるのだろうか?現実の生活との矛盾・・・。与三は別に運動家とか思想家ではく、ごく普通の労働者である。
 初めて読んだ時のショックは今でも忘れられない。 

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