行きかふ年もまた旅人なり

日本の歴史や文学(主に近代)について、感想等を紹介しますが、毎日はできません。
ふぅ、徒然なるままに日暮したい・・・。

時代劇、再燃

2010-10-19 20:56:38 | Weblog
 鬼平犯科帳の第一シリーズ「むっつり十蔵」を観た。出世の見込みの無い冴えない同心を柄本明が演じている。
家では妻に愚痴を言われ、肩身の狭い思いをしながらも仕事に黙々と取り組む姿は悲哀漂うサラリーマンの様である。

 盗賊の内偵で、一味を掴んだ十蔵だが、その盗賊は夫婦喧嘩の後、寝込みを妻(おふじ)に絞殺されてしまう。外から見張っていた十蔵だが、家の中の様子が怪しいので踏み込んだところ、亡骸の前に座るおふじを見た。身重の妻に対する心無い仕打ちの末の犯行に十蔵は義憤し、思わず彼女を匿ってしまう。夫が盗賊だった事を知らなかったおふじだが、十蔵から事実を告げられる。しかし、十蔵の温かさがおふじから慕われ、盗賊仲間らしい人物の動きを教える。長谷川平蔵はそれを知っていながら十蔵に手柄を立てさせようと、黙認していた。

 …というくだりで始まるストーリーだが、最後は十蔵の切腹で物語は終わる。真面目一筋の同心の道を踏み外した末の結末である。切腹して果てた十蔵を冷ややかに見る本妻と、泣きじゃくって十蔵の名を叫ぶおふじのコントラストは十蔵の死を、より一層重くさせた。組織の規律を破ってまでおふじを想う十蔵を、真面目な人間が道を踏み外した末路を柄本は完璧に演じ切っている。