うりゃの映画あれこれ

貴君の好物を私も好きとは限らない。同様に私の好物を貴君は嫌いかもしれない。ひとそれぞれ。
主にレンタルDVDで鑑賞。

はじめに。

うりゃ本部での「映画あれこれ」と、 ブログ「ばちかぶり日記2」で書いたぶんを
2008年11月1日、全部このブログに移行しました。

※ すべて原語+字幕で見ております。日本語吹替の評価はしません。
※ マイナー映画や世界各国の映画をもっと見よう!! グローバル文化は「文明」であって「文化」にあらず。

ニコラス・ウィンディング・レフン監督作品

2012年10月03日 | 変り種ムービー



ドライヴ  Drive (2011年 アメリカ 100分)

2011年カンヌ国際映画祭監督賞受賞作。ニコラス・ウィンディング・レフン監督。
原作はジェイムズ・サリスの小説。
温厚そうで寡黙な自動車修理工の青年はカー・アクションのスタントも務める抜群の運転テクニック。
しかし夜は強盗の雇われ逃がし屋としてその腕をふるう闇の顔もある。
ある日、アパートの同じ階の子持ち人妻アイリーン(童顔で可愛いキャリー・ハンナ・マリガン)にひとめぼれ。
ほほえましい隣人交際が始まるが、やがて刑務所から出てきたその亭主の受難に巻き込まれる。
劇中で彼の過去は明かされないが、相当に不幸で孤独な経歴と見受けられる。
寡黙な状態から突然発揮される凶暴性。(このへん北野武映画を連想する)
抜群の判断能力と戦闘能力。
恩人やアイリーンなど愛する者たちを脅かす者への徹底的な報復・反撃。

穏やかな顔の主演ライアン・ゴズリング、あの 「ラースと、その彼女」の主演俳優であったか(笑)。
ほかの出演者は怪優ロン・パールマン、ブライアン・クランストンほか。

アメリカ風のバイオレンス・アクションではない。
いかにもデンマーク出身監督らしい、凶暴性ありの哀しい純愛サスペンス。ってとこかな。
セリフもかなり少ないよ。






ヴァルハラ・ライジング Valhalla Rising (2009年 デンマーク・イギリス・フランス 93分)

「ドライヴ」のカンヌ受賞により、2年前の前作にも陽が当たる。
レフン監督デビュー作にも出ているマッツ・ミケルセン主演。
私個人は2000年の「ブレイカウェイ」からのファンだが、2006年「007」出演以来メジャーとなったミケルセン。
しかしながら、この映画は完全にマイナー路線(笑)。

舞台は中世バイキングの時代だが、まず、主役ミケルセンのセリフがまったくない。ひとっこともなし。
他の役も全体的にもセリフが少ないし、遠景バックの静止シーンがやたら多い。

超人的な戦闘能力をもつ片目の男は囚われの身。
しかしある日反撃に出て皆殺しの末に自由の身となり、キリスト教に改宗したバイキングと行動を共にする。
エルサレム奪還をめざす彼らの船は霧と無風の海を漂い、やっと着いた場所は・・・

題名が「ヴァルハラ・ライジング」である。片目である。縄を切って危機を脱した。
とくれば、北欧神話ファンなら「彼はオーディンか? ここはヴァルハラか?」と思うのが普通。
しかしどうやらここは新大陸らしい。エルサレムに固執し狂気の淵に落ちるリーダー。
壊滅するバイキング。そしてサクリファイス。
ありゃりゃ????
監督いわく、「これはSF。」 う~~~ん。SFというより文明交代暗喩か(笑)。
雰囲気的には非常に魅力的だ。
ただし、ハラワタやら砕けた頭やらが頻出するので苦手な人は避けたほうがよかろう。
「説明がない話」「わからない話」が苦手な人も避けたほうがよかろう(笑)。
ミケルセンは特殊メイクとヒゲで、パッと見では彼とはわからなかったね。ムキムキだし。


レア・エクスポーツ 囚われのサンタクロース

2011年12月23日 | 変り種ムービー
レア・エクスポーツ  囚われのサンタクロース 
  RARE EXPORTS: A CHRISTMAS TALE (2010年 フィンランド 80分)

子供と一緒に見てはいけない!!!!!(笑)。
奇想天外なブラック・ファンタジー&コメディ・・・なのか?

日本の一般的なサンタクロース像は言うなればアメリカ商業主義の産物だ。
陽気で優しくて、赤い服着てトナカイのそりに乗って来るおひげのお爺さん。
かの聖ニコラスの伝説に色々なものが混じり合ってああなったわけだ。
ヨーロッパ各地では色々なバージョンがあって、
たとえばドイツ語圏ではサンタは2人組で、良い子は白いサンタからプレゼントがもらえる。
悪い子は黒いサンタに食べられちゃう、なんてのは聞いたことがあった。
公式にサンタクロースが住むとされる北欧フィンランドではどうなのか?
どうやら元々はドイツ語圏と似たような設定があったらしい。

ロシア国境に近いフィンランドの寒村。
「サンタクロースは本当はツノのある化け物で子供を煮てしまう」と知って夜も眠れない少年ピエタリが主人公。
アメリカ人?の金持ちが丘の頂でなにやら発掘させている。(サンタの墓?)
そのうち、ピエタリの家の庭では身元不明の老人がオオカミ罠にかかるわ、
肉屋の父ちゃんがその老人の死体を『処分』しようと思ったら生きてるわ、
村では不可解な盗難騒ぎが頻発するわ。いったい何が起きているのか??
混乱の中で、子供たちがみんな行方不明なのに気がついたピエタリが真相を見抜いて捨て身の大活躍!!
・・・・・・って、うまく要約できてないな(笑)。

終盤、すっぱだかの爺さんの大群が雪山を右往左往します。
うわぁ~~ 日本はボカシ入りで良かった(^^A;

金髪・碧眼・真っ白肌ながら親しみを感じる顔(歌手ビョークみたいな)のピエタリ。
正体不明のぬいぐるみを常時ひきずっているような幼なさなのに、立派なヒーロー!!!♪♪。
とはいえ、グロ多めのこの映画、製作本国の子供は見るのか???
ターゲットがよくわからぬ作品ではあります。
ラスト、「そんなもん輸出(エクスポーツ)できるのか!!」と突っ込みたくなりますし。
まあ、私のように 変わっていれば変わっているほど喜ぶヘンタイ映画マニアにはよろしいかと(笑)。

そういえば、マケドニア映画で「グッバイ20世紀 皆殺しサンタがやってくる!」ってぇのがありましたっけ。
とんでもないブッ飛び映画で、私はたいそう気に入っていたはずなのですが、
10年以上経過した現在、ストーリーはとんと忘れてしまいましたなぁ(^^A;

やわらかい手

2011年10月19日 | 変り種ムービー
やわらかい手 Irina Palm (2007年 ベルギー/ルクセンブルク/イギリス/ドイツ/フランス 103分)

幼い孫の病気治療に多額の金が必要になったが息子夫婦には工面ができず、祖母である未亡人マギーはロンドンの街へ出かけて職探しをする。しかし還暦を過ぎた彼女を雇うところなどなく、「接客係募集」の張り紙で飛び込んだ店は性風俗店だった。
まさか彼女を裸でステージに上がらせるわけにはいかない。
移民らしきオーナーは彼女の手に注目する。あてがわれた仕事は・・・・・・・

キワモノ映画ではない。ユーモラスなところもあるがコメディでもない。
おびえながら始めた仕事で自分の思わぬ才能を自覚し、精神的に自立する初老の女性の話となる。
大金の出所を知って激怒し母をなじる息子。(息子ってそういうものか)
いっぽう、そこまでして孫を救おうとした姑に感動し感謝する息子の妻。
「どこへ出かけているの。」と詮索したあげく離れていく、うわべだけの友人。
マギーの売れっ子ぶりに比べてクビになり、彼女をうらむ若いシングルマザー。
しっかりと立つマギーにひかれていくオーナー・・・・・
体面を重んじていては食えぬ場合もある。人生は色々だがそれは誰のものでもなく自分の人生。

さて、彼女の仕事とは。
小部屋の壁に小穴があいている。客(男)は自分の×××をその穴に差し込む。
壁の向こう側にいるマギーは手で彼らをイカせる。(画面で×××は見えない。音はするけど
彼女の手は絶品のゴッドネス・ハンドだったという設定。なんせ、ズラッと客の順番待ち行列ができちゃうんだ。店のオーナーは「日本で見たんだ。ロンドンではうちの店だけだ。」と胸をはる
(実際に80年代に新宿歌舞伎町に「ラッキーホール」なる同様のサービスがあったそうな。 今は? 知らないよ。)

主役マギー役の貫禄たっぷりの女優はマリアンヌ・フェイスフル。1946年生まれ。
DVDの最初の予告宣伝にどうして古いアラン・ドロン映画「あの胸にもういちど」が入っているのかといぶかしく思ってたら、彼女こそあの映画で全裸に黒のレザースーツを着て大型バイクに乗り、愛人(アラン・ドロン)に会いに行く妄想にふけるヒロイン女優だった。
ポップ・アイドルとしてデビューし、ゴダールに気に入られ、ミック・ジャガーの恋人としても知られたが、その後不幸な精神状態となり長い地獄の日々を送ったらしい。
映画は1993年の「豚が飛ぶとき」で復活し、この「やわらかい手」の前年にはソフィア・コッポラ監督、キルスティン・ダンスト主演の「マリー・アントワネット」でお母様、女帝マリア・テレジアを演じていた。
(「マリー・アントワネット」は・・・う~ん、ジャンルとしては“綺麗なガールズ映画”だったな。

味のあるオーナー役はエミール・クストリッツァ監督のカンヌ国際映画祭最高賞受賞作「アンダーグラウンド」主演のミキ・マノイロヴィッチ。監督はCMディレクター出身、長編映画2作目のサム・ガルバルスキ。

珍な設定ながら、佳品だと思うよん。



笑いながら泣きやがれ

2011年02月11日 | 変り種ムービー
笑いながら泣きやがれ CRYING WITH LAUGHTER (2009年 スコットランド 94分)

2009年英国アカデミー賞スコットランド最優秀映画賞受賞作。
お下劣トークで人気のスタンダップ・コメディアン、ジョーイ・フリスク。
ある日、傷だらけの顔で現れたステージで、
「今からマジメな話をするから聞いてくれ。」と話し始める・・・・・

ヤク中、アル中、借金まみれ。妻にも愛想尽かしされたジョーイ。
身に覚えのない傷害事件で逮捕されるが、
助けてくれたのが数日前に会った同級生の元軍人フランク。
士官学校の少年時代、酔っ払っていて記憶がない放火容疑で少年院送りになったジョーイ。
そのときの同級生だというが、ジョーイは覚えてない。
行き場をなくし、とりあえずフランクの世話になる。
だまされて連れて行かれた介護施設にいた痴呆老人は当時の校長だという。
フランクは校長を誘拐する。
実は最初からフランクの罠だった・・・

少年だった当時、いったいなにがあったのか??というミステリー仕立ての災難話。
ひどい目にあったうえに記憶にない恥辱まで掘り起こされて、
ジョーイとしては、そりゃぁ笑いとばすしかないよなぁ。
というわけで、このタイトル。秀逸である。


※ 地味だけどある種の感動作。前向きに行こうぜっ。



レギオン

2010年10月16日 | 変り種ムービー
レギオン Legion (2010年 アメリカ 100分)

『人類VS.天使の壮絶な戦いを描いた終末アクションスリラー!』って宣伝だったから妙に期待しちゃったじゃないか・・・
まあ、まるきり嘘じゃないけど、スケールがちっちゃい・・・(^^A;

神が人類を滅ぼすために大天使ガブリエルと悪霊集団レギオンを地上に使わした。
一方、大天使ミカエルは神の真意を疑い、人類の味方をするために降臨する。
え~~~~~と、なんか壮大でしょ?

だけど舞台になるのは砂漠にポツンとたつ大衆食堂(ダイナー)!!!
戦うのはオーナーやコック、居合わせた客など8人+羽根を失ったミカエル(英語だとマイケル)。
襲ってくるのは映画『エクソシスト』の悪霊憑きのような老婆を皮切りに、
乗り移られてゾンビ状になった人間たち。
話の大筋はほとんどゾンビ・パニック映画です。それになぜか『ターミネーター』を混ぜる!(笑)。

見どころがないわけじゃないです。
なんといっても大天使ミカエル役のポール・ベタニーがクールにかっこいい。
彼に関しては、「インクハート 魔法の声」でも『ハンサム♪』って思ってますから、ただ単に私の好みのタイプなんですが。
最初にロサンゼルスの街中に現れたミカエルは大量の銃器を盗んで砂漠にやってくる。
一方、ガジェットなメース(棍棒)を振り回すガブリエルは頑丈な羽根を鎧にして、ミカエルの銃弾を跳ね返す。天使もけっこう生身なんですね。
それから、なんといっても、大天使2人の壮絶な殴り合いなんて滅多に見られるもんじゃありません!!!(大笑)
なんだかな~~~~、この設定、もったいないなぁ(^^A;


美しくカッコイイけど狂気の天使ガブリエル(ティルダ・スウィントン)が見たかったら『コンスタンティン』
あられもない姿の“最高位天使”メタトロン(アラン・リックマン)が見たかったら『ドグマ』
クリストファー・ウォーケンがガブリエルを演じる怪作『ゴッド・アーミー/悪の天使』なんてのもあったなぁ。
この手の映画は、ある程度のキリスト教知識がないと楽しめないのが、日本での弱点ですが・・・。


※ たかがB級アクションでこんなに語る(笑)。

月に囚われた男

2010年08月14日 | 変り種ムービー
月に囚われた男 MOON (2009年 イギリス 97分)

久々にクラシック・スタイルのSF映画を見た。
ドンパチはない。大統領だの軍隊だのも出ない。
小説にすれば短かめのストーリーだが、ああ、やっぱりいいなぁ。こういうの。

地球の資源が枯渇し、月の裏側で新エネルギー源を採取して地球に送っている未来。
ロボットなどで自動化されたシステム管理にたったひとりの男が3年契約で月に赴任している。
この男サムの任期はあと2週間だ。なつかしい地球の妻子に会える日は近い。
しかし、最近サムの周囲でなにかが起き始めていた・・・。

直接通信装置が壊れたままの月の裏側でたったひとりで3年間・・・・・
「なんて非人間的な労働環境!!」と思うでしょ。そこが話の核となる。
SF好きならサスペンドな前半中には男サムの正体とこの職場の謎はわかるだろう。
「では、どうするか。」が後半に展開される。これがなかなか良い。

演じるのは、ほとんどサム・ロックウェルただひとり。
最後の最後の短いナレーションだけが蛇足だ。製作側の付け足しか。

これが初の長編作品となるダンカン・ジョーンズ監督は、かのデビッド・ボウイの息子さんだそうな。
アンジェラが産んだ子かぁ。父親はホントにボウイ?(笑)
というわけで邦題はボウイ主演の往年の名作、
『地球に落ちてきた男 The Man Who Fell To Earth』のもじりであることは明白。

※ パッケージはレンタル用(↑)より販売用(↓)のほうがずっといいね。



Dr.パルナサスの鏡

2010年07月06日 | 変り種ムービー
Dr.パルナサスの鏡 The Imaginarium of Doctor Parnassus (イギリス・カナダ 2009年 124分)

テリー・ギリアム監督作品。
1000年前に悪魔との賭けにより不死の命を手に入れたパルナサス博士。
最近は不思議な力により、入った者の欲望の世界を見せる鏡の見世物興行をしながら
自分の愛娘が16歳になったら悪魔に渡す契約に悩んでいた。
娘の誕生日が近づくある晩、タロットカードが示す若者トニーに出会う。

トニー役のヒース・レジャーが撮影中に急死してしまったが、
鏡の向こう側でのトニー役を、ヒースの友人であったジョニー・デップとジュード・ロウ、
それにコリン・ファレルが演じることで映画は完成した。
3人はギャラをすべてヒースの遺児に寄贈したそうな。いい話やねぇ。
そんな事情なので、本来予定された構想・脚本とは違うのかもしれない。
絵的にはまさにギリアム・ワールドなのに話が少々物足りない感じがするのはそのせいか。
途中ときどき『モンティ・パイソン』のスケッチ風(笑)。
悪魔との賭けの勝敗条件(鏡のなかに入った人間の選択)などよくわからない部分はあるが、
ギリアムのイマジネーション世界を楽しみ、皮肉に笑い、時々「ほろっ」と泣かせられればよし、か。

パルナサス博士の娘ヴァレンティナ役にリリー・コール。
ファニーなべビー・フェイスで、「どこかで見た顔。」と思ったらトップモデルなのね。
ファッションブランドの広告でよく見た気がする・・・・。
男女問わず小さい唇は好みでないので私は興味ないが、さすがに『印象的』なドール系。

馬にひかせたパルナサスの見世物屋台が古いヨーロッパの旅劇団装置風で個人的に萌える(笑)。
映画『ローゼンクランツとギルデンスターンは死んだ』に登場したような屋台装置。いいなぁ。


※ 2005年の『ローズ・イン・タイドランド』は主役少女の性格設定の暗さにメゲたから、こっちのほうが好き・・・。


人生に乾杯!

2010年04月19日 | 変り種ムービー
人生に乾杯! Konyec (2007年 ハンガリー 107分)

ハンガリー発、哀しくもほのぼのした老夫婦の強盗ロードムービー。

社会主義時代、東欧諸国では普通の庶民の老後も年金で保証されていた。
しかしソ連崩壊後の物価上昇により、年金だけでは困窮する老人が多いと聞く。

かつて運命的出会いにより結ばれたこの老夫婦(81歳と70歳)も例外ではなく、
わずか4万フォリントの年金収入では家賃支払いも滞り、
妻が大事にする思い出のイヤリングまで借金のカタに取られてしまう。
ついに夫は、これも大事にしていた1959年製チャイカ(旧ソ連の幹部用高級車)を
久々に動かして出かけた先で、なんと郵便局強盗を!!
2軒目の強盗であっけなく身元はバレたが、
捜査協力を求められた妻は刑事たちの隙をつき、夫とともに逃避行へ!!

昔、幹部の運転手をしていたという爺さん、なかなかの切れ者、策士である。
お嬢さん育ちだったらしい妻も度胸が据わってる。
お互いの持病、ぎっくり腰と糖尿病をいたわりながら、二人は見事に警察の裏をかく。
世間では、そんな二人のニュース報道から老人たちが立ち上がりデモ行動も起きている。
「高齢者に冷たい社会は間違っている!!」と。

追う警察のほうでは若い刑事カップルの別れ話の行方も同時進行する。
女刑事のほうは途中で老夫婦の人質になってしまうのだが、
彼女が最後の最後で、あることに気付き、ほほえむラストがよい。
このラストなら老人版「明日に向かって撃て!」というよりも「ゲッタウェイ」(ただし日本公開版)。
先の短さで考えれば「ノッキン・オン・ヘブンズ・ドア」か。


※ チャイカの馬力ってスゴイのねぇ。車オンチにはよくわからんが(^^A;

ホルテンさんのはじめての冒険

2009年07月22日 | 変り種ムービー
ホルテンさんのはじめての冒険 O' HORTEN (2007年ノルウェー 90分)

北欧映画の地味な雰囲気が好きだ。
チャラチャラしていたら凍死してしまう北国の堅実さ。
ささいなことに喜びや笑いを見出す感性。
本作は「キッチンストーリー」のベント・ハーメル監督作品。
フィンランドのカウリスマキ兄弟ほど変わったギャグセンスではないのでご安心を(笑)

この映画、欧州映画好き以外におすすめするなら、鉄道が好きな皆様。
不定期ブログ 「ばちかぶり日記2」を読んでくださっている方はご存知だろうが、
私はいたって不精だが、いちおう鉄ヲタを自覚している。(一番好きなのは線路と架線。)
冒頭の車庫で、がっしりどっしりした真っ赤な電気機関車にほれぼれする。
そして主人公ホルテンが運転するのはノルウェー鉄道が誇るベルゲン急行の最新鋭車両”シグナチュール”。冒頭しばらくはその運転席展望が楽しめる。(雪とトンネルばかりだが)
オスロの街中では路面電車が走り回る。いいねぇ。

さて本題。
ノルウェー鉄道に40年勤めた真面目なホルテンは67歳の定年退職を迎える。
運転士仲間の送別会のあと妙な事態になり、
翌朝の最後の乗務に人生初の大遅刻で、茫然自失!! 
(この送別会が鉄道マニアばかりなのが楽しい。余興が路線の音当てクイズ。)
パニックのあと落ち込んだホルテンに、今まで知らなかった人々や人生との出会いが・・・。

高齢化社会・独居社会の哀しさが優しいユーモアに包まれて展開する。
「人生は手遅ればかりだが、逆に考えればいつだって間に合う」
そんな言葉に後押しされて、ホルテンが第二の人生に踏み出すラスト。


※ パッケージ画像のようなシーンはない。邦題から連想する「ほのぼの」系ではなく、クスッと笑える「しみじみ」系である。赤いハイヒールブーツが◎♪

ザ・フォール/落下の王国

2009年02月16日 | 変り種ムービー
 


ザ・フォール/落下の王国 The Fall (2006年インド・イギリス・アメリカ 118分)

「落下の王国」公式サイト

CM界出身、鬼才ターセム・シン監督作品。
2000年の「ザ・セル」に続く第2作目は、かねてから撮りたかったものを自腹を切って作ったそうな。
だから「構想26年、撮影期間4年」という渾身の作。
風景にCGを使わず、世界24ヵ国以上・世界遺産13箇所でロケを敢行した圧倒的な映像美!!!
独創的な衣装は「ザ・セル」に続き石岡瑛子。

無声映画時代のロサンゼルスの病院。
恋人をスター俳優に奪われたうえに無茶なスタントで下半身不随となり、自暴自棄になった青年ロイ。
腕の骨折で入院中の幼女アレクサンドリアを操って自殺用の薬を手に入れようと、
思いつくままに自作のおとぎ話を語り始める。
それは6人の勇者が悪の総督に復讐を誓う冒険譚。
山賊・インドの戦士・爆弾のスペシャリスト・博物学者ダーウィン・黒人奴隷・霊者。
そして美しい姫、悪いスペイン総督・・・
(それぞれの配役は病院関係者や友人知人を演じる役者と同じである。)
その異世界が鮮やかにめくるめく映像で展開される。
そして、ハッピーエンドにする気もないロイの厭世的な「ぼくのお話」は、
いつしか、純粋無垢な幼女との「わたしたちのお話」になるのだった。



PCの19インチ液晶モニター+DVDで見ながら、
「これは大画面+ブルーレイで見るともっと凄いんだろうなぁ。。。。」と思いつつ。
インド・アーバーネリーの階段貯水神殿のシーンや、スーフィ派メヴレヴィー教団の旋回祈祷を模したシーンなど、
「ああっ!もっと見せて!!」というところは多い(笑)。
不思議な邦題だが、雰囲気には合っている。

※ 少女のおかげで青年は自分のヘタレな身勝手さに気付く。そう、生きてさえいれば この世は美しい・・・

タクシデルミア ある剥製師の遺言

2009年02月01日 | 変り種ムービー
タクシデルミア ある剥製師の遺言 TAXIDERMIA (2006年ハンガリー)

先日の「ハックル」のパールフィ・ジョルジ監督の最新作。
祖父・父・息子、3代に渡る男たちの話。

薄幸な祖父は「妄想と自慰」。
不義の子である父は共産党時代の「スポーツ大食いチャンピオン」。
父の期待に反した貧弱な体の息子は「剥製作り」に執着する。
したがって、チン○ンとかゲロとか内臓とかの映像オン・パレード。
この手のがまったく苦手な方は止めておきましょうね(笑)。
こういう言い方だと「チン○ンを後の2つと一緒くたにするな!」と、♂から苦情が来そうですが、
まぁまぁ。 私も一応、女ですから~♪
ヨーロッパ系マイナー映画を見慣れてますと、ゲロも内臓も平気になります。
それに鯖も鰹も鮫もハラワタを処理しなくては料理出来ませんし。

さて。 「ハックル」同様、斬新な映像。今回はお金もあるようでCGも多用している。

寒そうで暗くて哀れな祖父の部。覗き見と妄想と自慰の日々。
上官の中尉が印象的。豚の解体シーンあり。

次の共産党時代の父の部は「モンティ・パイソンの人生狂騒曲」(Monty Python's The Meaning Of Life)を思わせる。
大食いアスリート同士で恋に落ちたお母さん役は素人だそうだが、なかなかチャーミングな暖かい美人の大デブさん。
大食いのためのトレーニングなど、コメディなんだろう。
大量のゲロは本物ではないのでご安心を・・・。(あたりまえか)

息子の剥製師の部は現代の話になる。
母は家出をし、父には愛されず、気になる女店員にはすげなくされる貧相な青年。
過食による肥満で動けないのに横暴きわまる父。
こだわりの剥製師である息子はそれでも日々父の世話をしていた。
あることをきっかけに彼は究極の剥製を作ることを決意する。
それは・・・
確かに意表をついた衝撃的な設定と映像だが・・・
これでは「どうだ!驚いたか!」なコケオドシだ。エピソードが少なくて中途半端だ。
祖父・父の話は原作小説があり、剥製師だけが完全オリジナル。
アイデアに溺れてしまったか?
このテーマをもっと偏執的に掘り下げれば、ピーター・グリーナウェイ的な「ゲージツ映画」や、ラテン系映画的な「変態映画」になる。(なんのこっちゃ)
それとも、この剥製師の部も笑えと言うのだろうか。
「人間の欲望の果ての愚かさ」を笑いとばせと?? ・・・う~~~む。そうなのかも。
映像はいいんだけどね~。


※ 超巨大な猫さんが出てきますが、合成映像ですよ。

ハックル

2009年01月26日 | 変り種ムービー
ハックル HUKKLE (2002年 ハンガリー )

不思議な映画を見てしまった。
この監督パールフィ・ジョルジの新作「タクシデルミア ある剥製師の遺言」が、
いささかグロテスクな変り種だという噂を耳にして、
それを見る前に長編第1作の「ハックル」を見たわけだが・・・。
映画学校の卒業制作だそうだが、資金援助を得て35mmで本式に作られている。
これがハンガリー国内の映画賞を総なめにし、ヨーロッパ各地で絶賛され、全米公開にまで至った。

まず始めに、蛇のアップで始まる。
爬虫類や昆虫が苦手な人は残念ながら冒頭でギブアップだろう。
マクロ撮影は生物だけではない。
荷車の回転する車軸。古風なソーイングミシンの針先。製粉所の機械。あふれる水の表面張力。
随所にマクロで理系な美しい映像が挟み込まれる。
モリモリと動くオス豚の立派な睾丸のドアップ なんてのもある (^^A;。
振動する大地。突如出現するF16戦闘機。
新鮮な映像と自然の物音の数々。

しかし、“セリフ”が一切ない。人間のおしゃべりがない。
唯一、ラストの結婚式のお祝い歌。これだけが肉声として聞き取れて字幕が出る。
そして、その歌詞がこの映画の「オチ」である。

自然あふれるハンガリーの田舎。
ひとり暮らしの爺さんのシャックリが止まらない。
そのシャックリに歩調をあわせるかのように荷馬車が行き、羊が通る。
このうえなく長閑な田舎の光景が続く。
しかし、観客はやがて気付く。
この村ではなにか妙なことが起きている!!
男たちが減っていく。女たちはなにを隠しているのか?

その答えは最後の歌詞にある。
のどかで斬新で、男性陣は怖いだろうな、と思う作品でした(笑)。


※ 公式サイト にある撮影日記が面白い。その苦労に笑い泣き。

愛おしき隣人

2008年11月14日 | 変り種ムービー
愛おしき隣人 DU LEVANDE/NOUS, LES VIVANTS
(2007年 スウェーデン・フランス・デンマーク・ドイツ・ノルウェー・日本 )

あの驚異の導眠剤スウェーデン映画「散歩する惑星」(こちら)
奇才:ロイ・アンダーソン監督の新作であります。
前作に懲りずに見る(笑)。

「散歩する惑星」は奇妙にずれた笑いと不可思議な浮遊感が印象的ながら、
あまりに淡々とした運びに「これは珍品。」と言ったわけですが。
今回の本作。冒頭にベタなギャグが少々連発されます。
「お? 今度は違うタイプか?」と思いきや、
やっぱり淡々と、山なし・オチなし。(意味はあるだろうサw)

ソファで眠るオッサンが悪夢から飛び起きるシーンから始まります。
集合住宅や街の様々な人たちの、それぞれのぼやき。嘆き。災難。
「でも明日があるさ。」
その明日をぶち壊すような最初の悪夢への回帰で唐突に終わります。

新婚夫婦の部屋の窓の外の景色がヘンだ。と思ったら、
アパートごと電車のように走っているシーンはいいですね~~~(私が鉄オタだから?)

前作同様におそらくオール・セットの奇妙な素っ気なさ、現実感のなさ。
それに対し、ハゲたオッサンや中高年ばかりの出演者(素人が多いらしい)は現実感たっぷり。
「こんな夢を見た。」と始まる夢の世界。
語り終わった後のこの世界はまだ夢なのか現実なのか。
辛口の笑いに包む人生のせつなさ、幸せの脆さ。

同じ北欧のカウリスマキ監督などと比較されますが、私、カウリスマキ監督は苦手なんです。
アンダーソン監督のほうがまだ後味がいい(笑)。


ジイちゃんがゆっくりひきずっているのは、リードにからまった犬。


↓ YouTubeに予告編が。






※ たまには寒い国の精神文化に浸ってみませんか?(笑)

ライフ・イズ・ミラクル

2008年11月10日 | 変り種ムービー
ライフ・イズ・ミラクル (2004年 セルビア・モンテネグロ フランス )
LIFE IS A MIRACLE/HUNGRY HEART/LA VIE EST UN MIRACLE!

「ジプシーのとき」「アンダーグラウンド」「黒猫白猫」などで知られるエミール・クストリッツァ監督。
大好きな監督なのに、この作品のDVD化に2年半も気付かなかった。
欧州系映画はあまり宣伝しないからねぇ。

1992年ボスニア・ヘルツェゴビナ紛争勃発時の話という事なので、ユーゴ関連の歴史・地理を復習して、と。
(民族・言語は似たようなもんだが宗教(カトリック、東方正教、ムスリム)のモザイク地帯。ユーゴスラビア解体後ぐしゃぐしゃに乱れ、現在7カ国になっている。)

とはいえ、さほど難しい話ではなく。
「アンダーグラウンド」よりはドタバタ系ラブコメディで
「黒猫白猫」よりはおとなしい。

セルビア人のルカは、オペラ歌手の妻、息子とボスニアの田舎で暮らしていた。
彼はのんきな鉄道技師で、内戦が起きつつあることを信じようとはしなかった。
しかし息子にサッカーチームからオファーが来たその日、徴兵の知らせも来る。
ほぼ同時に内戦勃発。そしてヒステリー妻はハンガリー人と駆け落ち。
さらに息子ミロシュが戦地で捕虜になってしまう。
「このムスリム娘とミロシュを捕虜交換させろ。」と拉致されてきたのが若い看護婦サバーハ。
爆撃が続く中、ルカとサバーハの奇妙な軟禁生活が始まる・・・・

この監督の映画には動物がよく登場するが、
今回はロバと猫と犬と鳥たちと・・・が、みんな演技をする。
ルカ家のブチ猫は、眼力で鳩を落とし、犬より強く、人が食べてるものに横からかぶりつき・・・ etc.
失恋で絶望して死にたがっているロバは、ストーリーの随所およびラストで重要な役を担っている。
まぁ、とにかくご覧なさい(笑)。

いつも人生の喜怒哀楽が大暴走ぎみの、クストリッツァ・ワールド。
ハマる人はハマる。
几帳面な人にはきっと向かない。

 パンにかぶりつく猫。


※ 兄が行方不明な軍人の哀しい台詞。「これは誰かクズどもの戦争だ。少なくとも我々のではない。」

迷子の警察音楽隊

2008年11月07日 | 変り種ムービー
迷子の警察音楽隊   BIKUR HAIZMORET(2007年 イスラエル・フランス )

カンヌ映画祭「ある視点」部門“一目惚れ”賞 受賞作。

ちょっと昔の話。
文化交流の演奏を依頼されたエジプトの警察音楽隊が、
イスラエルの空港に降り立つ。しかしなぜか迎えが来ない・・・・・・
自立をモットーとする隊長は、「よし、バスに乗って行こう。」
しかし地名の発音を間違えて、着いた所はなんにもないド田舎だった。

腹は減ったし、戻るバスは今日はもうない。現地通貨も心細い。
謹厳実直・堅物な隊長もさすがにどうしようもなく、
食堂のマダムの好意に甘えて、分宿してその街で過ごす一夜。

とりたてて何かが起きるわけではない。たいした事は起こらない。

アラブ対ユダヤの話なんてのもまったく出てこない。
(もちろんそれは大前提&周知のことだが。)
だけど、だからこそ、
隊長をデートに誘うマダムの心情とか、
ひとつの電話の前でそれぞれにかかってくるはずの電話待ちの二人とか、
幾つかの、ほんのちょっとの心のふれ合いが、
民族は違えど同じ人間なんだよな・・・と思わせるヒューマン・コメディ。

隊員にひとり、ずっと態度の悪い、にやけた若造がいるが、
夜遊び先で、地元の若者があまりにオクテなのを見かねて恋愛指南をする。
「あ、なんだ。けっこうイイヤツじゃん。」と思わせるエピソード。
でもやっぱり据え膳はしっかり頂くヤツ(笑)。


※ 主役は堅物の隊長さん。色っぽいマダムにほろっと話す哀しい過去。