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日米核密約問題-日本共産党の志位委員長の会見(一問一答)-

2010-04-05 02:47:12 | 国内政治
日米核密約問題
志位委員長の会見(一問一答)

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 日本共産党の志位和夫委員長が9日の記者会見で、政府が同日発表した日米間の密約問題に関する「有識者委員会」の「報告書」について党の見解を明らかにしました。会見での一問一答を紹介します。

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「報告書」は「広義の密約」であれ核持ち込み密約を認めていない

 問い 「有識者委員会報告書」では、「狭義の密約」を否定しているが、「広義の密約」は認めているのではないか。

 志位 「有識者委員会」の「報告書」の最大の問題点は、「討論記録」の存在を認めながら、これを核持ち込みの密約――核搭載艦船の寄港を事前協議の対象としないという秘密の合意であることを認めず、そのことを否定していることにあります。

 それは、「報告書」が、「討議の記録2項Cだけをもって、日米間に核搭載艦船の寄港を事前協議の対象外とする『密約』の証拠と見ることは難しい」、「核兵器を搭載した米軍艦船の日本寄港は、『安保条約第6条の実施に関する交換公文』にいう事前協議の対象になるか。日米両政府間には、今に至るもこの問題に関する明確な合意がない」と明記していることからも明らかです。

 しかし、冒頭の発言(「日米核密約」に関する「報告書」について)でものべたように、(1)「討論記録」はそれ自体が、核持ち込みの密約そのものであり、(2)日米安保条約の一部を構成する日米間の公式の合意文書という性格をもつものであり、(3)「討論記録」の解釈についても、1963年の大平・ライシャワー会談で、日米間に「完全な相互理解」が存在していたことは、明らかです。日米両政府間に、「討論記録」に対する解釈の相違があった、だから「討論記録」をもって核持ち込みの密約とはいえないという、密約否定論は成り立ちません。

 「報告書」が、日米間の「暗黙の合意」=「広義の密約」としているのは、「日本政府は、米国政府の(『討論記録』に関する)解釈に同意しなかったが、米側にその解釈を改めるよう働きかけることもなく、核搭載艦船が事前協議なしに寄港することを事実上黙認した。日米間には、この問題を深追いすることで同盟の運営に障害が生じることを避けようとする『暗黙の合意』が存在した」ということです。

 しかし「報告書」は、核持ち込みの密約――核搭載艦船の寄港を事前協議の対象としないという秘密の合意――があったとは、「狭義」であれ「広義」であれ認めておらず、逆に「今に至るもこの問題に関する明確な合意がない」とそれを否定しているのです。ここにこそ「報告書」の最大の問題点があるのです。

 「報告書」のこのレトリック(表現技法)にひっかかって、「『報告書』は核持ち込みについて『広義の密約』があったことを認めた」と報じてしまったら、とんでもない誤読にもとづく報道になります。

密約を密約と認めないと、それを廃棄することもできなくなる

 志位 核持ち込みの密約の存在を否定する立場にたつとどうなるか。今後の問題として、アメリカにたいして“何らの働きかけもしない”という立場になってしまうわけです。核持ち込みの密約の存在を正面から認めれば、その密約を廃棄するという働きかけをおこなう足場を得ることができるでしょう。しかし、核持ち込みの密約はなかったという立場にたってしまったら、アメリカに働きかける足場もなくなるわけです。ないものを「廃棄する」とはいえないわけですから。現に、今日(9日)の外務大臣の会見では、「今後アメリカに何らかの働きかけをおこなうのか」と問われて、“何もするつもりがない”という立場を繰り返しました。こういう立場に帰着することになるわけです。

 「討論記録」は核持ち込みの密約――核搭載艦船の寄港を事前協議の対象としないという秘密の合意だったということを正面から認めないと、これを廃棄することもできなくなる。密約を密約と認めないというのは、最悪の決着の仕方なのです。認めなかったら、対処しようにも対処ができなくなるのです。

核搭載艦が寄港しても、国民にはわからない状態がつづく

 問い 結局そういうことであれば、今後、核搭載艦が寄港したとしても、国民はわからないということになるわけですか。

 志位 わからないということになりますね。今回のような政府の立場でいきますと、これまでと何も変わらないということになります。

 「討論記録」――これは「安保条約を構成する文書群」の公的な一部とされているものですから、この核持ち込みの密約にもとづいて、アメリカは、核兵器を搭載した艦船を事前協議なしに寄港させることを、条約上の権利だと考えているわけです。アメリカは、ひきつづき条約上の権利の行使として、核搭載艦船を寄港させてくる。しかし、日本国民にはわからないということになります。

 外相は、さきほどの記者会見で、「1991年以降、米国は艦船への核搭載をやめている」とのべて、今後問題は起こらないかのようにのべましたが、核持ち込みの密約問題は、けっして過去の問題ではありません。アメリカは、水上艦艇からは核兵器を撤去しましたが、攻撃型原潜に必要があれば随時、核巡航ミサイル「トマホーク」を積載する態勢を維持しているのです。さらに、米国が「有事」と判断したさいには、核兵器の再配備をすることを宣言しているのです。核持ち込み密約を廃棄しなければ、核搭載艦船が寄港しても、国民にはわからない事態が、これからも続くことになるのです。

 日本の安全保障にかかわる大問題での虚偽が半世紀にわたってつづき、そして私たちが提起した「討論記録」という明白な核持ち込みの密約について、その文書の存在を認めざるをえなくなったけれども、それを核持ち込みの密約とは認めない。あくまで日米の理解には違いがあって、合意は存在していなかったといって歴史を偽造する。そして現状のままの自由な核持ち込み体制を続ける。これは許しがたいやり方だと思います。

密約を密約でないと偽る――新しい欺瞞

 問い 平野官房長官は、政権交代の成果だということをいったが。成果でもなんでもないということになりますか。

 志位 成果とはいえませんね。「討論記録」の存在を認めざるを得なくなったということは、たしかに一つの変化です。これまでの政府は、「討論記録」の存在自体を、わが党の不破哲三委員長(当時)が、10年前の国会で提起しても、「そんなものは知らぬ、存ぜぬ」といいつづけてきたわけですが、それが通らなくなったということは一つの変化です。

 しかし、「討論記録」の存在を認めた以上、これをきちんと密約だと認定して廃棄するということをやってこそ、「非核三原則」を保障する道が開かれるのです。それをやらない決着をしようとしているわけですから、これは非常に悪い決着です。「討論記録」という核持ち込み密約そのものについて、その存在を認めながら、「これは核持ち込み密約ではない」というわけですから、単に密約を隠すというのでなく、密約を密約でないと偽るという、新しい欺瞞(ぎまん)を始めようとするものです。

米国にモノをいいたくない――結論先にありきの「報告書」をつくった

 問い 政府がこういう決着に持ち込もうとした背景に何があるとお考えか。

 志位 この問題で、アメリカにモノをいいたくないのでしょう。つまり、政府が、仮に「討論記録」は核持ち込みの密約だと正面から認める、日米間に核持ち込みに関する秘密の合意――密約があったと認めたとすると、そのことと「非核三原則」との間には抜き差しならない矛盾が起こってくるわけですから、きちんとアメリカに問題を提起して、これを廃棄することをしなかったら、事が完結しなくなりますでしょう。

 しかし、核持ち込みの密約がなかったということにしてしまえば、アメリカにたいしてなにもモノをいわないですむ。現状が続けられる。私は、この「報告書」というのは、アメリカにモノをいいたくない、事を起こしたくないという結論が先にあって、それに都合のいい「報告書」をつくった。それが真相ではないかと思います。実際、そうとしか考えられないような、事実の乱暴な歪曲(わいきょく)だらけのものです。

 私が、とくに政府に言いたいのは、これだけ重大な問題を、「有識者委員会」なる学者の検討にゆだねて、それを政府として受け取って、きちんと中身の検討もせずに、それをそのままうのみにして発表する、これは政府としてまったく責任ある態度とはいえないということです。これだけ重大な問題が提起された。「有識者」に検討してもらうのはいいでしょう。しかし検討の結果がきたら、今度はそれを政府として徹底的に責任を持って検証して、そして政府の見解として明らかにするべきです。すべて「有識者」なるものに丸投げというやり方は、ほんとうに無責任な態度です。

 この問題は、「有識者」なるものにまかせて、その判断を丸のみすればいいという問題ではないのです。核兵器持ち込みという国民の安全と平和にかかわる大問題、しかも国民を欺きつづけてきたという大問題が提起されたのですから、政府自らが、自分で資料にあたって、究明しなければならない問題なのです。

核持ち込み密約を認め、きっぱり廃棄せよ

 問い あらためて、こういう問題をずっと引き継いできた歴代政権と外務省については、どのようにみているか。

 志位 歴代政権は、密約が存在しているにもかかわらず、ないとうそをつき続けてきた。この態度はもちろん許しがたい態度だと思います。今度は、「討論記録」という密約の動かぬ文書の存在を認めても、なおこれは密約ではないと、そういう歴史と事実を偽造することになりますから、いっそう深い罪になるのではないでしょうか。

 米側の文書を見ますと、「討論記録」の解釈について、日米間に完全な一致があったということが繰り返し出てきます。とくに1963年の大平・ライシャワー会談以降は完全な一致があったとされています。

 ところが、政府の今回のような立場にたつと、アメリカに話をもっていきようがないのです。もし、日本政府がアメリカに、「日米間には理解に違いがありました」というとするでしょう。そうすると、「そんなことありません。山ほど証拠があります」と、米側からただちにいわれることになります。政府のような立場に立つと、この問題の解決の道が閉ざされてしまうのです。

 「討論記録」の存在を認めた以上、これを核持ち込みの密約と認め、きっぱり廃棄するという対応をすべきだということを、重ねていいたいと思います。

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 「討論記録」 1960年1月6日に当時の藤山愛一郎外相とマッカーサー駐日米大使が頭文字署名した、核兵器持ち込み密約です。「討論記録」2項Aは、核持ち込みについて日本への導入(イントロダクション)は「事前協議」の対象になる規定。その一方で、同項Cは、「事前協議」について「合衆国軍用機の飛来(エントリー)、合衆国艦船の日本領海や港湾への立ち入り(エントリー)に関する現行の手続きに影響を与えるものとは解されない」と定めました。旧安保条約下で確立された核積載米艦船の日本寄港などを「事前協議」なしで継続できるようにし、自由な核持ち込みを認めました。

(出所:日本共産党HP  2010年3月11日(木)「しんぶん赤旗」)

「日米核密約」に関する「報告書」について
2010年3月9日 日本共産党幹部会委員長 志位 和夫

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 政府は、9日、日米間の密約問題に関する「有識者委員会報告書」を発表した。日米密約問題の解明は、新政権が総選挙中に国民に公約したことであり、日本共産党は、この問題に一貫してとりくんできた党として、昨年9月10日の党首会談で調査に協力することを表明し、資料の提供などをおこなってきた。

 しかし、発表された「報告書」の内容は、一連の密約のなかでも最大の焦点となっている「日米核密約」について、重大な問題点をもつものとなっている。



 「日米核密約」とは、日本に寄港・飛来する米艦船・航空機の核兵器搭載について、安保条約第6条の「事前協議」の対象外とし、この方式での核持ち込みを、条約上の権利としてアメリカ側に認めたものである。2000年の国会審議で、不破委員長(当時)は、1960年の日米安保条約改定時に結ばれた「討論記録」という決定的事実を示し、「日米核密約」の存在を明らかにしてきた。

 「報告書」の最大の問題点は、「討論記録」の存在を認めながら、「討議の記録2項Cだけをもって、日米間に核搭載艦船の寄港を事前協議の対象外とする『密約』の証拠と見ることは難しい」、「日米両国間には、核搭載艦の寄港が事前協議の対象か否かにつき明確な合意はない」などと、「討論記録」が核持ち込みの密約だったことを否定していることである。



 これはまったく成り立たない議論である。

 (1)「討論記録」は、第1項で、『岸・ハーター交換公文』として発表された『事前協議』についての取り決めがのべられ、第2項で『交換公文』の解釈についての了解事項がのべられている。核兵器にかかわるのは、第2項AとCで、Aで「事前協議」の対象となるのは、核兵器の日本への持ち込み(イントロダクション)とその基地の建設だと限定し、Cで「事前協議」は、米国の軍用機の飛来(エントリー)や艦船の港湾への立ち入り(エントリー)は、「現行の手続きに影響をあたえるものとは解されない」と明記している。「現行の手続き」でゆくとは、それまで慣行とされてきた米軍の自由勝手な核持ち込みを認めるということである。このように、「討論記録」は、それ自体が、核持ち込みの密約そのものである。

 (2)「討論記録」が、日米間の公式の合意文書であり、日米安保条約の一部をなすものであることは、両国政府間でのこの文書の取り扱いからも疑問の余地なく明確である。

 1、1960年1月6日、この「討論記録」に、藤山外相とマッカーサー大使が、頭文字署名をした文書を交換している。マッカーサー大使のハーター国務長官あての当日の報告電報によれば、この時、双方は2通の原本に頭文字署名したあと、この原本とその複写を秘密文書として指定することを確認しあっている。

 2、マッカーサー大使は、1月7日付の国務長官あての電報では、「討論記録」は、「条約を構成する文書群」の一つと呼び、また1月9日付の電報では、「討論記録」を含む「条約文書の全リスト」(全部で17文書)を挙げ、その文書ごとに、日米政府間の締結の方式を分類して示している。

 (3)さらに、1963年4月4日には、大平外相とライシャワー駐日大使との会談で、「討論記録」に関する協議がおこなわれ、大使は、「大平氏との間で、秘密の『討論記録』の解釈に関し、現行のアメリカ側説明の方向に完全にそって、完全な相互理解に達した」と本国に報告している。

 日米両国政府の間に、「討論記録」をめぐって、解釈の相違があり、明確な合意は存在していなかったなどという「報告書」の主張は、成り立たない。

 「報告書」でのべられている議論――「討論記録」の存在を認めながら、核持ち込み密約の明確な合意が存在していなかったなどという議論は、悪質な歴史の偽造というほかないものである。



 「報告書」では、核持ち込み密約を否定する一方で、「日本政府は、……核搭載艦が事前協議なしに寄港することを事実上黙認した」、国民にたいして「事実に反する明白な嘘(うそ)をつきつづけた」などとものべている。日本が国是としてきた「非核三原則」が蹂躙(じゅうりん)され、空洞化していた事実を認めたのである。

 しかし、こうした「報告書」の立場は、日本政府をさらに深い矛盾においこむ。核持ち込み密約が成立していないにもかかわらず、米国が核搭載艦を事前協議なしに寄港させていたとすると、米国は条約上の権利をもたないまま、無法な核持ち込みを続けていたということになる。そして日本政府は、そうした無法を「黙認」していたということになる。条約上の権利がないままおこなわれてきた核持ち込みにたいして、政府はいったいどういう態度をとるのか。今後、こうしたことを起こさせないためにどういう手段をとるのか。そのことが問われることになる。



 核持ち込みの密約問題は、けっして過去の問題ではない。アメリカは、水上艦艇から核兵器を撤去したが、攻撃型原潜に必要があれば随時、核巡航ミサイル「トマホーク」を積載する態勢を維持している。さらに、米国が「有事」と判断したさいには、核兵器の再配備をすることを宣言している。「日米核密約」のもとで、日本に核兵器が持ち込まれる仕組みと体制は引き続き日本列島を覆っているのである。

 日本共産党は、「報告書」が「討論記録」の存在を認めた以上、政府が「討論記録」を核持ち込みの密約そのものであることを認めて、それを廃棄し、「非核三原則」の厳格な実施、「非核の日本」にすすむための実効ある措置をとることを強く求めるものである。

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日米核密約「討論記録」 全文

 核兵器持ち込みの日米密約である「討論記録」の全文は次の通りです。

 1、(日米安保)条約第6条の実施に関する交換公文案に言及された。その実効的内容は、次の通りである。

 「合衆国軍隊の日本国への配置における重要な変更、同軍隊の装備における重要な変更ならびに日本国からおこなわれる戦闘作戦行動(前記の条約第5条の規定にもとづいておこなわれるものを除く)のための基地としての日本国内の施設および区域の使用は、日本国政府との事前の協議の主題とする」

 2、同交換公文は、以下の諸点を考慮に入れ、かつ了解して作成された。

 A 「装備における重要な変更」は、核兵器および中・長距離ミサイルの日本への持ち込み(イントロダクション)ならびにそれらの兵器のための基地の建設を意味するものと解釈されるが、たとえば、核物質部分をつけていない短距離ミサイルを含む非核兵器(ノン・ニュクリア・ウェポンズ)の持ち込みは、それに当たらない。

 B 「条約第5条の規定にもとづいておこなわれるものを除く戦闘作戦行動」は、日本国以外の地域にたいして日本国から起こされる戦闘作戦行動を意味するものと解される。

 C 「事前協議」は、合衆国軍隊とその装備の日本への配置、合衆国軍用機の飛来(エントリー)、合衆国艦船の日本領海や港湾への立ち入り(エントリー)に関する現行の手続きに影響を与えるものとは解されない。合衆国軍隊の日本への配置における重要な変更の場合を除く。

 D 交換公文のいかなる内容も、合衆国軍隊の部隊とその装備の日本からの移動(トランスファー)に関し、「事前協議」を必要とするとは解釈されない。

 (注)2000年に日本共産党の不破哲三委員長(当時)が米政府解禁文書から入手した「討論記録」の訳。これは、外務省の調査で見つかったものと「修辞的な部分を除いて同じ」(同省調査報告書)ものです。

(出所:日本共産党HP )
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