高齢者など自宅再建が難しい人の住まいとして自治体が用意する災害公営住宅を、集落の中に建てて地域で見守ろうというユニークな試みが熊本地震の被災地で進んでいる。孤独死が相次いだ過去の災害の教訓をふまえ、住民たちが提案。行政を動かした。
2度の震度7に襲われた熊本県益城町。その南西部にある東無田(ひがしむた)集落の住宅地の中に2カ所、災害公営住宅の建設予定地はある。戸建て家屋を6戸ずつ、計12戸建てる計画。民家に囲まれた空き家や畑だった土地を、町が買い上げた。
地元のまちづくり協議会前会長の田崎真一さん(57)は「ここなら地域みんなの目が届く。お年寄りに戻ってもらい元気に暮らしてほしい」と話す。
集落では120棟の家屋の7割が全半壊、1人が犠牲になった。今も住宅の再建工事があちこちで進む。
春の草刈りや秋祭り、消防団活動など地域の結びつきが強い土地柄。被災直後から地元主導で復旧作業に取り組み、過去の被災地の復興手法を学ぶ勉強会も開催。集落の再生やまちづくりの準備を進めてきた。
町は当初、集落の端にある農地に災害公営住宅団地の建設を計画した。まとまった土地を取得しやすく、維持費も抑えられるのが理由だった。だが、災害公営住宅に入居するのは、仮設住宅での生活を経ても自宅再建のめどがたたない高齢者も多い。阪神・淡路大震災の被災地に建てられた集合住宅型の災害公営住宅では、入居者らの交流があまり進まず、孤独死や体調悪化が相次いだ。
お年寄りのことを考え、集落の中に戸建ての公営住宅をつくれないか――。田崎さんたちは地震で集落内の建物を失った地権者らに意義を説き、土地の提供を要請。町の災害公営住宅検討委員会の委員に手紙で「集落内にあれば、地域で見守りもできます」と訴えた。
委員の一人、熊本県立大の沢田道夫教授(行政学)は「先例のない集落内への提案も、住民が立案したことも、非常に貴重だと感じた」。沢田教授ら有識者4人は住民や役場から話を聞き、公平性などの問題がないか検討を重ねた。そして昨年3月、「コミュニティー形成やまちづくりの点で、町案より住民案のほうが優先順位は高い」とする報告書をまとめ、西村博則町長に提出した。
町は計画を変更。集落内に12戸を建て、当初の計画地にも集落内に入りにくい他地域からの入居者向けに16戸を建てることに決めた。西村町長は「自分たちになかった発想で、地元で一生懸命考えていただけた」と語る。
沢田教授によると、住宅地内の民有地に災害公営住宅を建てるのは全国でも珍しいという。「今後の災害公営住宅のモデルになる」と期待する。
予定では7月ごろに着工し、来年3月までに完成する。町は、どの家に入居するかを今秋にも、住民たちで話し合って決めてもらう方針。
田崎さんは「大事なのはこれから。いろんな世代にかかわってもらう仕組みを考えていきたい」と話す。(竹野内崇宏)
高齢者は若い者みたいに体力もないし長く生きられない運命なのですからこの地域周辺の老人ホームに自治体が補助金を出し入居させれば24時間完全看護で多くの友人も出来ることでしょうから見守りも比較的簡単に出来て安全安心に生活させることが出来ます。この案どおりに多額の費用を掛け災害団地を建設しても災害がまた起これば新たに建設するのでしょうか?