【ニューデリー松井聡】アフガニスタンの和平を議論するため、国内の関係者が中東カタールに集まり20日から開催予定だった会議が急きょ取りやめになった。旧支配勢力タリバンがアフガン政府との直接交渉を拒否する中、会議にはタリバンや政府を含む各界からの出席が見込まれ、直接交渉の地ならしになる可能性があるとみられていた。だが派遣団の構成を巡り政府側と主催するカタール政府が折り合えず、改めて和平進展の難しさが浮き彫りになった。
トランプ米政権はアフガンからの米軍撤収に向けてタリバンとの協議を進めているが、米側が撤収の条件とするアフガン政府との直接交渉についてタリバンは「政府は米国のかいらいだ」として一貫して拒否してきた。今回は米側の圧力もあり、タリバンはアフガン政府側の出席者を「政府代表」ではなく「個人」の資格とする条件で、会議への参加を決めた。タリバンと政府側が同席する事実上初めての和平会議になるとみられていた。
ただアフガン政府は、女性への差別が指摘されてきたタリバンに圧力をかける狙いもあり、多数の女性を含む250人の派遣を準備した。ガニ大統領は「(派遣団の)任務は政府を代表することだ」などと強調。これに対し25人が参加予定のタリバンは「個人資格での参加だったはずだ」と猛反発。さらに政府側の250人について「多くが政府を支持している」などと批判した。カタール政府もアフガン政府に構成の見直しを求めたが、応じなかった。
政府側が強硬な背景には、9月に予定される大統領選に向け、再選を目指すガニ氏が各界から幅広く参加させることで支持を得る思惑があったとみられる。ガニ氏に反発する有力者が派遣団に含まれないなど、アフガン国内の政治の分断も浮き彫りになった。
米軍の撤収に向け、アフガン政府とタリバンの直接交渉に道筋を付けたい米側交渉責任者のハリルザド・アフガン和平担当特別代表は「失望した」と表明。早期の会議の開催は難しいとみられ、米国とタリバンとの交渉への影響も懸念される。
◇アフガン和平を巡る最近の動き
トランプ米政権は昨年7月、米軍の撤収を進めるため、駐留外国部隊や政府への武装闘争を続ける旧支配勢力タリバンとの直接協議を始めた。これまでに米軍の完全撤収や、タリバンがアフガンでのテロ組織の活動を許さない方向で大筋合意した。一方で米側は撤収の条件として、タリバンにアフガン政府と和平に向けた直接交渉を始めることや包括的な停戦を要求し、タリバンが拒否する状況が続いている。