uparupapapa 日記

今の日本の政治が嫌いです。
だからblogで訴えます。


ママチャリ総理大臣~時給1800円~【改】第9話  財務省主計局長 佐藤 鯖江と、その部下カエデ

2023-11-06 00:35:26 | 日記

 平助が認証官任命式(任免に天皇の認証を必要とする国務大臣及びその他の官吏[認証官])の後、見知った顔の人に出くわした。

 彼女の名は佐藤 鯖江さばえ。彼女は平助が買い物でよく利用するスーパー≪激安≫の店員で、カエデの上司に当たる人だ。

 何で彼女がここに?

 実は彼女も今回の公募で次期財務省主計局長に任命されていた。

 実はネット政変以前は正式な宮中行事として天皇の認証を必要とされていたのは、国務大臣と主要な上級官僚(国務大臣、副大臣、内閣官房副長官、人事官、検査官、公正取引委員会委員長、原子力規制委員会委員長、宮内庁長官、侍従長、上皇侍従長、特命全権大使、特命全権公使、最高裁判所判事、高等裁判所長官、検事総長、次長検事、検事長)だけで、財務省の主計局長級の官僚は認証官任命式の対象外であったが、政変後広く各省の上級官僚まで公募したため、その素人集団にも責任と自覚を持ってもらうため、敢えて天皇の宮中行事として任命対象が拡大されたのだった。

 

 平助と目を合わすと、鯖江から駆け寄ってきた。

「あら、竹藪さんじゃないの!何であんたがここに?あ、そうだった!アンタ、次期総理大臣に任命さらたんだったね。こりゃ、恐れ多い事だ!それにしてもアンタ、いい度胸してるね。

カエデもアンタのこと、惚れ直したって言ってるよ。・・・いや、見直しただったけな?

まぁ、どっちでも良いや。」

「え?『惚れ直した』と『見直した』ではどっちでも良いような発言じゃないよ。カエデはああいう性格だし、時には狂暴な本性をむき出しにする悪魔だし。その発言内容によっては対応と対策が大きく変わる死活問題でもあるんだから。

まあ、そこん所は本人にそれとなく探りを入れるからいいか。

 

そう、僕が次期総理大臣に任命されたって。ね、変でしょ?この僕が総理大臣なんて。

ところで佐藤さんもここにいるってことは佐藤さんも上級官僚?」

「へぇ~改めて見ても、竹藪さんが今度の総理大臣に?世も末ねぇ~、こりゃこれからの日本国も大変だわ!でも私が次の財務省主計局長だなんて、こっちも大変なことになっちゃったんだけど。」

「ヘェ!財務省主計局長ォ⁈!」

(なんで今まで気づかなかったんだろう?僕とした事が迂闊《うかつ》だ!)と思いかけない事に驚きながら平助は思った。)

 そんな表情の平助に構わず、鯖江《さばえ》はいつもの調子で続ける。それにしても、この人の辞書にはプレッシャーという言葉は無いのか?

 「お互い難儀なことにまきこまれたわね。これって国の立場から見たら立派な国難よ!アハハハ!!あたしも頑張るからサ、アンタも一生懸命頑張んなさいよ!

 アンタが次期総理大臣になった事、カエデちゃんは喜んでいるでしょ?

 それにしてもアンタ、カエデちゃんの事、変に気にしているようだけど、大丈夫?そんなにおっかない?」

「そりゃ、おっかないですよ!会うたびに熱いバトルを繰り広げなきゃいけないんですからね。

 いつも心と身体が傷だらけですよ!

『またまたぁ。』って、佐藤さん、そんな大袈裟なっ!て顔してるけど、ホントですよ。

 ついこの前も、チョット僕がすれ違い様に綺麗な女性を目で追ったって言うだけで、いきなりビンタですからね。大体そんな時の僕はただボーっとしていて女性が視界に入ったってだけで、意識的に見ようとした訳じゃないし。ホラ、動物の本能で目の前に動く物があったら視線が向くでしょ?

 そんな僕が何をしたと言うんです?僕はカエデの単なる幼馴染であって、彼氏でも何でもないのに。

 そうでしょ?

 

 あ、僕が今度の総理大臣になる事を喜ぶか?でしたね。

 それがねぇ、アイツは僕が総理大臣になるって知って、何故かテンションアゲアゲなんですよ。アイツ、総理大臣をアイドルか何かと誤解しているんじゃないかと思うんです。

 『だって平助が総理大臣になったら、いっぱいテレビに出るんでしょ?アタシ、ビデオに撮って残しておこうかな?』って言うんですからね。信じられますか?政治と芸能を混同するアイツの頭って脳みその中がウニになって、ネジが外れているんじゃないですかね?」

「またまた~!アンタ、カエデちゃんの事そんな風に言って良いの?

曲がりなりにも私はカエデちゃんの上司なのよ。今度彼女に会ったら平助君が悪口言ってたわよって、言いつけてやるから!」

 (鯖江《さばえ》のいつもの口癖「またまた〜」を聞いて、改めてこの人はこういう人だった!と思い出し、後悔した。)

「ヒエェ~それだけはお許しください、お代官様!!」

 

 就任早々鯖江の地雷を踏み、弱みを握られる平助。

 (って言うか、こんな場所で立ち話する内容じゃないと思うが?)

 

 

 

 実は鯖江とカエデの関係は単なる上司と部下の関係ではない。

 

 

 それと、ふたりが勤める≪スーパー激安≫は、私たちが今知ってる普通のスーパーではない。

 

 ネット政変以前からこの国を蝕む政府(財務省)の増税攻勢と産業の衰退から、国民の多くが生活に余裕が無くなってきていた。

 何せ、GDPも10年以上前に中国に追い越され、ほんの数年前、ドイツにまで追い越され世界第4位に落ちちゃったんだから。

 その結果、次第に生活苦に追い込まれる貧困層が増大し、何らかの支援が必要になってきていた。

 政変以降の直接民主制による体制改善政策が功を奏し、あれだけ深刻だった貧困層の状況もある程度好転してきたが、そんな数年で全面解消できるほど簡単ではない。

 

 そうした事情から行政だけに頼らず、見かねた有志や企業が立ち上がり、全国各地で支援体制を強化、事業所単位、個人単位で救援活動を積極的に行なうようになる。

 まず、目先の危機的状況にある貧困層の食料難の解決。

 一番強化されたのは食品ロス解消による有効利用とセーフティーネットの拡充だった。

 一般の民間人や民間企業にもできる事。

 例えば、スーパーの値下げシールを貼る時刻になると、店先の街頭に仮設テーブルを設置。

 そこに見切り品や最低限の栄養バランスを考えた品ぞろえで、子供達や困窮者に持続的に無料配布する制度を積極的に広げた。

 また、それ以外にも困窮家庭の学童などに開放する子供食堂も。

 そうした取り組みで特に子供食堂が増え、担当するボランティア人員も充実してきた。

 しかしほぼ無料で振る舞い続けるには、食材の安定供給が必須である。

 

 そうした世の中の流れからスーパーなどの流通業界では、支援策として食品ロスの解決も見込んで食料品の提供を積極的に行なった。

 この施策は企業イメージがプラスに働く事を期待して、こぞって各流通業界が参入する。

 更に政府も後押しするため、様々な支援施策を実行した。

 例えば、優良流通企業推奨団体に認められたスーパー等には推奨シールと顕彰・表彰額が送られ、政府公認の推奨団体として認定され、店の前に掲げられる。

 また食品ロス解消施策を実行したスーパー、個人商店、デパート等には、その具体的な規模により政府から支援交付金が給付されるなど。

 

 佐藤鯖江の勤める≪スーパー激安≫は特に支援策に力を入れる企業団体だった。

 しかも、その≪スーパー激安≫の中にあって、鯖江は先頭を切って支援策を推進する職務【食品管理担当】に就くパートリーダー兼、責任者だった。

 そうした鯖江の仕事に対する貢献が広く認められ、次回の財務省主計局長就任に繋がったのだ。

 でも彼女は一介のパート従業員に過ぎない。

 正社員さんがたくさんいる中で、何故彼女に白羽の矢が立ったのか?

 それは彼女が徹底した庶民の主婦であり、正直と誠実と思いやりが多くの困窮者の希望の光になったから。

 たかが1円の重みと、その1円が不足しているがためにありつけなかった食事のひもじさと惨めさを、誰よりも知った人だったからである。

 彼女を取り巻く私生活の事情等、子細は後述するが、この世の天国と地獄を知る苦労人だった。

 だから彼女の才覚により、たとえ政府の支援給付金が無かったとしても《スーパー激安》は赤字経営にはならない程、絶妙な商売と販売実績をあげ続けていた。

 そうした訳で、彼女に国の台所の切り盛りを任せるのは、彼女を知る誰の目にも適任だと思われた。

 

 そしてそんな鯖江を特に慕った同僚であり、部下なのが平助の幼馴染カエデである。

 カエデの不遇な時を知る鯖江はその人柄から、いつも励まし面倒を、悩みを聞き、誰よりもカエデに寄り添った親のような存在だった。

 

 ・・・と云う事は、平助の公私に渡る行状と動向は、カエデと鯖江の関係上、筒抜けになるという意味。

 一方、いつも晩飯の食料調達でお世話になっている薄給の平助は、そこ≪スーパー激安≫の常連であり、お得意さまであり、いつも内緒で値下げシールを貼って貰っている手のかかる要支援者だったのだ。(それって、厳密に云うと不正行為では?    知らんけど。)

 

 そうした頭の上がらない両者に対し、微妙な関係にある平助。

 その奇妙な三角関係にある三人を見ていると、そこにも波乱の予感が眼前を覆う不吉(?)な船出に見える。

 

 

 そんな中で大変だと思うが精々頑張れ!平助!!

(と、他人事ひとごとのように応援してみた。)

 

 

 

 

 

 

    つづく


ママチャリ総理大臣~時給1800円~【改】第8話 首相親任式

2023-11-03 12:20:53 | 日記

  平助が次期内閣総理大臣に指名された。

 

 と云っても指名したのは衆参両院ではない。

 ネット政変後、ネットで選ばれた閣僚・官僚人事委員会がそれぞれの部門の候補者をネットアンケートで告示、国民の信を問うのだ。

 そのネットアンケートで投票できるのは、政府が主催・運用するネット政治教養講座で規定の単位を修得した者に投票権が与えられる。

 つまり、現状全国民の約7割以上に投票権があり、国民の向上心と努力次第で投票権の保有率が変化する。

 

 その厳しい(?)選考手続きを経て竹藪平助が第4代次期内閣総理大臣に選任されたのだ。

 それと同時に他の閣僚たち、上級官僚たちも選任される。

 そして平助は皇居に於いて首相親任式を受ける。

 つまり、衆参両院の名目上の議長(ネット案件審議・諮問委員会メンバーの長)の見守る中、天皇の国事行為として「次期内閣総理大臣に任命します」との宣言を受け、官記(辞令書)手渡された。

 

 

 もちろん下層庶民に過ぎない平助が皇居に赴くに相応しいモーニングの礼服など持っているわけがない。

 この場合、専門の政府御用達貸衣装屋さんの斡旋で、一日500円のレンタル料金(格安でしょ?)で借り受け、天皇謁見に臨む。

 

 えッ?タダじゃないの?貸衣装代は政府負担じゃなくて自己負担?だって国事行為でしょ?

 あまりにセコ過ぎない?

 実際、後日貸衣装屋さんから500円の請求書が来た。

 その領収書を持って板倉の所に行っても、ソッポを向いて受け取ってくれなかった。

 日本国政府って、もしかして正真正銘のブラック企業?そうした思いが平助の頭の中をマジによぎったのは言うまでもない。

 

 だけど流石に皇居までの送迎用車両は無料で出迎えてくれた。

 (と云っても後述するが、こちらの車両も実にセコイ!)

 

 緊張した面持ちで生まれて初めて皇居内に入る。

 首相専属教育係の板倉から何度も任命式の手順のおさらいを受けるが、顔が引きつり、手が震えるのは仕方ない。

 そして極度の緊張のあまり、幾度練習しても頭の中に手順が入ってこない。

 実際過去の事例でも、政変前の新任衆議院議長が緊張の末、手順を間違え、天皇に宣誓書を直接手渡してしまう凡ミスをしてニュースになっている。

 それ程天皇に拝謁すると云う事は緊張を強いられるのだ。

 

 板倉から多少の細かい指摘を受けたが、何とか宮殿【松の間】で親任式を終えた平助。

 (やれ天皇を前にして、足が短いくせにガニ股っぽかっただの、ニヤけて締まりの無い顔してないで、もっとキリとした男前の表情をしなきゃダメだの・・・・・って、親から授かった生まれつきの顔にケチつけてんじゃねぇ!これが精一杯だっつうの!!)

 

 そんな難問の壁を何とか乗り越えた平助に、息つく間もなく次の難題が待っていた。

 

 それは着任後首相公邸に住むかどうか?を決めなければならない事である。

 

 首相公邸とは代々の首相が住まうための住居。

 首相としての執務を執り行う首相官邸と同じ敷地内にある。

 そこは元々、1929年(昭和4)に建てられた首相官邸であった。

 近年老朽化から新官邸が建てられた後、全面改修の末、元の官邸が首相の住まい(公邸)として再活用されることに。

 でも元官邸だったために、その威容は庶民の平助には恐れ多過ぎた。

 だって元官邸だよ。

 内閣発足や改造のたび、その旧官邸の赤じゅうたんの階段に新閣僚たちが並び、記念撮影が行われた所だよ。

 皆、一度はニュースで目にした事あるよね。

 

 他にもあのエリザベス女王やアメリア大統領だの世界のVIPである各国要人と会見した場所であり、式典や晩餐会の会場だのに使われた大ホールが備わっている本格的な施設だよ。

 

 しかもあそこは犬養毅元首相が暗殺された1932年の5.15事件や、青年将校がクーデターを決行した1936年の2.26事件の惨劇の舞台となり、幽霊が出るとのもっぱらの噂がある有名な心霊スポットでもある所だよ。

 

 いくら体面と警備上の都合があるからって、そんな有名過ぎて怖い場所にひとりで住めってかい?

 ・・・・無理!無理!!無理!!!

 

 という訳で平助は元から住んでいる私邸、一階が町中華『蓬莱軒』の二階にある六畳二間のボロアパート【むつみ荘】(ボロ、ボロって言うな!住めば都って言うじゃない?)から遥々《はるばる》官邸まで通う事となった。

 

 そこで登場するのが前述していた皇居までの公用送迎車。

 

 それがまた、何とも言えない妙チクリンなんだなぁ。

 

 普通、要人の公用車と云ったらベンツだのロールスロイスだの、センチュリーだのといった高級車でしょ?

 ところが平助を迎えに来たのはスーパーハイトワゴンの軽自動車(例えばホ○ダN‐b○xやス○キ・スペー〇ア、ダイ〇ツ・タン〇等のような背の高い車)だった。しかも改造車。

 窮屈の何のって、話にならないくらいヘンテコな改造をしてんだもの。

 だって、送迎を受ける平助が後部座席に座るのならまだしも、その後部座席には、対テロ組織からの逃走・回避用に取り付けられたターボエンジン+ニトロジェットエンジンまで装備されているから誰も座れない。

 つまり座れるのは前席のみ。その前席をベンチシートに改造し、右から運転手、平助、護衛用のSPの大人3人が座ることになるんだ。

 想像して欲しい。

 ハマーのようなでっかいアメ車なら横一列に大人4人が座っても余裕だが、軽自動車だよ、3人だよ。両脇がきれいな女性だったなら(無意味な男のさがの願望)・・・・・・・って、それでも窮屈だと思うが。男だよ!男3人で狭い車室にひしめき合うって、はたから見ても滑稽でしょ?

 

 こんな使えない車を考えたのは誰?

 大体東京の狭く渋滞が日常化している道路環境で、襲撃を回避するために逃げるって、一体何処にどうやってに逃げるんだい?

もしかしてこの車の改造を考えた人、アンタって馬鹿なの?

 

 

 そう云う事情から止む無く自転車で官邸に通うことにした。

 それも近郊のホームセンターから3年前に12、800円で購入した格安ママチャリに乗って。

 

 平助のボロアパート(だから!ボロって言うな!!)から官邸まで片道十数キロもあるので、通うだけでヘロヘロになる。

 せめてこのママチャリを買うとき、ケチらないで電動パワーアシストのチャリにすれば良かったと後悔するが、今となっては仕方ない。

 日々研修のため官邸までの通勤にママチャリでエッチラ、ホッチラ、ペダルを漕いでゆく平助が見られた。

 しかしこの時まだ平助は着任まで1年にも及ぶ研修や各省庁への実地研鑽が待っているとは知らなかった。

 

 ホントだよ。

 

 

 

 

 

 

       つづく