ゲド戦記 [DVD] | |
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王様であるオトンをなんとなく刺したアレンは道行くおっさんハイタカに拾われて旅をするうちに美少女っぽい子に出会って悪者っぽい魔法使いにさらわれてなんかピンチになったら女の子がドラゴンに変身して魔法使いを倒して、こうしてすべてよくなった。
なにも作ったことのない大学生に一流スタッフあずけたらこうなりました、みたいな作品だなー。
ストーリー自体は、原作の世界観をベースに、90年代に腐るほど増産されたファンタジーラノベやゲームのテンプレっぽい、人類の罪がうんたら心の闇がうんたらというそれっぽいこと並べてて壮大っぽく見せて、やってることもやりたいことも単に悪者倒して女の子とラブラブでめでたしめでたし、という無内容なそれで、ラピュタ以来「王道ストーリーなんてつくらねえよ。やればできるけどつくらねえよ」とばかりに意味不明でフェチズムばかりに満ちた宮崎駿作品に比べると、理解できる分マシだということはできる。
ただ、最後の20分間くらいは説明不能の超展開というかご都合主義というかデウスエクスマキナというか、要するに適当な展開の目白押しで、ちょっと擁護できないレベルだった。たぶん放送事故だと思う。
映像は、あらゆるシーンやガジェットがいままでのジブリ作品の使いまわしで、もはやジブリマニアが元ネタさがしをしながら見るのが一番正しい鑑賞法なんじゃないかというレベル。それでいてあらゆるガジェットやギミックが駿作品に比べると二回りくらいしょっぽくて切なくなる。これを別のスタジオが作ったんなら「おお、すごいよく似てる同人だ」と感動できるんだけどなー。
ヒロインのテルーに対してまったくフェチズムを感じないあたり、吾郎は父親と違ってロリコンじゃないんだなー、と感じ入った。そこが最大のちがいと云えなくもない。
またファンじゃないのでいままであまり気にしたことがなかったが、駿作品は建物だの乗り物だのの形が、さりげない部分までずいぶんとこだわって作っていたのだな、ということに気がついた。同じ高い塔のある城なのに、この作品の城とカリオストロの城の外観の、なんとちがうことか。
しかし、スタジオジブリ自体が日本の、ひいては世界の最高峰レベルのアニメーションスタジオであるのは事実であり、いままでのように監督が変態で偏屈だから意味不明なのではなく、単に実力不足で浅薄だから説明が足りないだけなので、なにも考えないで見る分には「絵はわりとがんばってるけどキャラとストーリーはいまいちだなー」程度の作品でしかなく、そこまでたたかれるような作品でもないかな、とは思った。
ただ原作のル・グウィンは怒ってもいいな、とは思った。