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エリートの犯罪

2010-11-29 | 雑感
エリートの犯罪 成果主義 「誘惑」に流され(産経新聞) - goo ニュース

※引用

エリートの犯罪 成果主義 「誘惑」に流され

【キブンの時代】第5部 現実はどこに(2)

 神奈川県警の警務部長室には上層部が顔をそろえ、頭を悩ませていた。

 「本部長はこう言っているけど、どうしようか…」

 平成8年。県警外事課の警部補に覚醒(かくせい)剤の使用疑惑が持ち上がった。県警本部長の指示は「公にするな」「不倫を理由に諭旨免職にしろ」。上層部は本部長の指示を受け、事件のもみ消し工作を考えるために集まっていた。

 当時、警部補の直属の上司で、外事課長だった芝昭彦(43)も部長室にいたメンバーの一人だった。東大法学部を卒業、キャリア官僚として警察庁に入り、20代で県警外事課長に就いた。「部下がとんだ不祥事を起こした。とにかく申し訳ないという気持ちばかり」で席についていたという。

 部長室で「もみ消しはまずいのではないか」という空気は感じられなかった。

 「当時は、自分にも本部長の指示に異を唱えるという考えはなかった。思考停止というか、むしろ、こういうふうに組織防衛をするのか、と思った」

 上層部の指示に基づく工作で、警部補は覚醒剤の陽性反応が出なくなるまでホテルに“監禁”され、退職した。覚醒剤使用の件は闇に葬られた。

 その後、芝は警察庁に戻り、激務の日々を送った。もみ消し工作を思いだすことも、罪悪感を感じることもなかった。

 ■失われる職業人の権威

 「評価が下がるのが怖かった」「邪魔な証拠を消したかった」

 郵便不正事件に絡んだ大阪地検特捜部の押収資料改竄(かいざん)事件で今年9月に逮捕された元主任検事、前田恒彦(43)は、フロッピーディスクを改竄した理由をこう話しているという。

 「仕事が早く、任せられる」と上司の覚えがめでたく、東京地検特捜部にも在籍した自他ともに認めるエース検事。そのエリートが犯罪に手を染めた理由は、あまりに単純だった。

 10月にはNHK記者が大相撲の野球賭博問題をめぐり、警視庁の家宅捜索情報を親方にメールで知らせていた問題が発覚した。

 理由は「親方と関係作りをしたかった」。記者は評価が高く、賭博問題の証拠隠滅に加担してしまうかもしれない危険性も容易に認識できたはずなのに、こんな動機でメールを送った。

 「今は一本筋の通った自負心を持つ職業人が少ない。筋が通っていないと気分で動くことになり、手段を選ばずに『とにかく成果を』となってしまう」

 新潟青陵大大学院教授(社会心理学)の碓井真史(51)は“エリートの犯罪”をこうみる。

 「犯罪は時代が集約されている。現代は職業人の権威が失われ、上の人には逆らわない意識が蔓延(まんえん)している。『これだけは守る』という矜持(きょうじ)がなければ、誘惑に流されやすい」と話す。

 ■保身…誘惑も

 神奈川県警の元警部補による覚醒剤使用の件に関するもみ消し工作が明るみに出たのは平成11年。工作から3年近くたっていた。

 警察庁外事課の課長補佐だった芝は犯人隠避容疑で書類送検された。積極的な関与は薄いとして起訴猶予になったが、キャリアの道は閉ざされた。現在は弁護士となっている。

 大阪地検の事件で前田の犯行を隠そうとしたとして逮捕された前特捜部長、大坪弘道(57)らの心情に思いをはせる。

 「内部告発で多くの不正が明るみに出ている中、通常のリスク管理の感覚があれば、徹底した事実究明の上でオープンにせざるを得ないと分かるはずなのに」。芝は10年以上のときを経たエリートの犯罪に驚くと同時に、ある意味、納得もしている。

 「官庁などの組織内部には『わが組織を守るためにはもみ消しもやむを得ない』という空気が脈々としてある。また、エリートには保身のために『もみ消してしまおう』という誘惑が生じやすいのかもしれない。前特捜部長も、報道されている容疑が事実ならば、昔ながらの感覚でやってしまったのではないか」

 その空気にあのときあらがえなかった自分。「私がダメだった。突き詰めて考えられなかった」と今は思う。しかし、その一線は現在も、誰にも突きつけられているのではないか。

 芝は現在、公務員倫理研修の講演を引き受けている。防衛省など中央官庁でも体験を話した。あのとき感じた空気に染まらず、「おかしい」と声を上げられる社会になるよう信じて。


どの分野でも 「これだけは守る。」 という 矜持 は なかなか伝承されにくくなっているのでしょうね。

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