弁護士法人かごしま 上山法律事務所 TOPICS

業務の中から・・報道を見て・・話題を取り上げます。

デンソー 燃料ポンプ製造事業を売却していたのですね

2023-12-21 | 雑感


デンソーのHPが呑気だなあと思っていたのですが、結構怖い状況だと思います。
気にも留めなかったのですが、燃料ポンプ製造事業売却していたのですね。

読売新聞 11月の記事からの引用です
※引用

 自動車部品大手デンソーが製造した燃料ポンプを搭載した車両について、自動車メーカー各社によるリコールの届け出が2020年以降、計268万台に上ることが国土交通省やデンソーへの取材でわかった。
国土交通省
 燃料ポンプはガソリンタンク内の燃料をエンジンに送る部品。燃料ポンプの不具合でエンジンの始動不良・不能や加速不良などに加え、走行中のエンストも起きているが、事故の発生は確認されていないという。
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 リコールは、20年3月にトヨタ自動車が届け出て以降、今月までに〈1〉ダイハツ工業137万台〈2〉トヨタ65万台〈3〉ホンダ(海外法人含む)57万台〈4〉マツダ4万2000台〈5〉スズキ3万4000台〈6〉SUBARU(スバル)1万4000台――の6社で延べ17回に上る。
 海外でも同種の事案が確認されているという。メーカー各社が進めてきた部品の共通化が、影響拡大の一因とみられる。
 国交省の指示などを受けた各社の調査で、デンソー製の燃料ポンプ内の樹脂製インペラ(羽根車)が一定条件下で燃料を吸って膨らみ、作動不良を起こすことがわかった。ただ、不具合の発生条件が複雑で、各社がリコールが必要な範囲の特定に苦慮しているという。
 デンソーは、昨年9月に同業の愛三工業に燃料ポンプの製造事業を売却している。デンソーの広報担当者は読売新聞の取材に「引き続き調査を行い、対応を進めていく」と話した。


いろいろと引っ掛かりを覚える報道

2023-12-13 | 雑感
★消防司令  日本の消防吏員の階級の一つ。上から6番目。消防司令長の下、消防司令補の上。
 身柄の早期解放は良いことだけど、この現行犯逮捕事案ですでに釈放されているのは何故?
報道で実名が出ていないのは何故?
男性にけがはなかったって男性に取材しているの?
いろいろと引っ掛かりを覚える報道です

朝日新聞の記事の引用です。
※引用
車椅子の男性転倒させ蹴る 多目的トイレ前で 消防司令を容疑で捜査

 車椅子の男性を蹴るなどしたとして、警視庁は千葉県船橋市消防局北消防署の消防司令の男(59)を暴行容疑で現行犯逮捕した。警視庁への取材でわかった。男は「酒に酔っていて覚えていない」などと供述したという。男はその後に釈放され、警視庁は任意で捜査している。
 逮捕は8日。万世橋署によると、男は8日午後11時ごろ、JR秋葉原駅(東京都千代田区)の多目的トイレ前で、車椅子に乗っていた20代の男性の右腕をつかんで転倒させ、顔面を複数回蹴った疑いがある。近くの男性客らが取り押さえ、駆けつけた警察官が現行犯逮捕した。男性にけがはなかった。
 男は酒を飲んで自宅に帰る途中、この多目的トイレの中で寝込んでいたという。署は、車椅子の男性から外に出るように言われ、暴行を加えたとみている。
 船橋市消防局は取材に「事実関係を確認し、適切に対応する」としている。


近畿日本ツーリスト、過大請求16億円ワクチン接種電話受け付け

2023-05-02 | 雑感


★ 16億円 組織的な詐欺行為なのですが
 法人処罰については難しいところがあります。
 処罰しなくても各企業のCMやHPに「税金をかすめ取ろうとしたこと」を公表義務付けしてもよいように思います。

※ 参議院法制局のHPから引用

 企業による不祥事が社会的に問題となることがありますが、法人企業について法令違反などがあった場合、その企業自身の刑事責任はどうなるのでしょうか。

 刑法の総則では、刑を科されるべき者は実際に生きている人間、いわゆる自然人であることが前提とされ、この総則は、特別の規定がない限り、他の法令で刑を定めたものにも適用されます。例えば、ある行政法規に、「第○条の規定による報告をせず、又は虚偽の報告をした場合には、その違反行為をした者は、○月以下の懲役若しくは○円以下の罰金に処し、又はこれを併科する」という規定があり、ある法人がこの報告を求められてその代表者又は従業者が法人のために虚偽の報告をした場合、この規定で処罰されるのは、実際の行為者である代表者又は従業者であって、法人ではないということになります。
 しかし、こうしたケースでは、違反行為によって実際に利益を得るのは法人ですから、行為者を処罰するだけでなく、その法人自身を処罰すべきだという考え方が当然に出てきます。このため、特に行政法規の刑罰については、「法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関して前○条の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対して各本条の罰金刑を科する」というような形で、ある犯罪が行われた場合に、行為者本人だけでなく、その行為者と一定の関係にある法人をも処罰する旨の規定を置くことが多く、これを「両罰規定」と呼んでいます。なお、先の規定例でも分かるように、両罰規定は、法人のほか、自然人である事業主にも作用します。
 法人に懲役や禁錮などは科しようがありませんから、両罰規定によって法人に科される刑は、罰金のような財産刑に限られます。この場合、法人に科される罰金の額の上限は、かつては例外なく、行為者に科される罰金と同じだったのですが、近年は、別途これを大幅に高く定める例がみられます。これは、行為者の場合と上限が同じでは、巨大化した今日の法人企業には、懲罰として十分に機能しその抑止力を発揮できる罰金を科し得ないという考えから、平成3年の法制審議会刑事法部会の報告を機に導入されてきたもので、例えば不正競争防止法には、法人についてのみ上限を10億円とする罰金が、金融商品取引法には、法人についてのみ上限を7億円とする罰金があります。
 また、両罰規定の中には、前に掲げた例のような規定の後に、「ただし、法人又は人の代理人、使用人その他の従業者の当該違反行為を防止するため、当該業務に対し相当の注意及び監督が尽くされたことの証明があったときは、その法人又は人については、この限りでない」というただし書のあるものがあります。このただし書がある場合とない場合とを単純に比べると、ただし書がない場合には、従業者の違反行為を防止するために相当の注意及び監督が尽くされたことが証明されても、その法人は処罰を免れないということのようにも思われます。ところが、実は、判例に従えば、両罰規定は、このただし書がなくてもあるのと同様に解すべきことになります。つまり、立法技術的には、現在はこのただし書は付けないことになっているのですが、古い立法例にはまだそれが残っているというわけです。法律の解釈は文言だけでするものではないとはいえ、このような紛らわしい規定は全部整理すればよいのにと筆者などは思ってしまいます。

※引用

近畿日本ツーリスト、過大請求16億円 ワクチン接種電話受け付け

 旅行大手の近畿日本ツーリスト(KNT)が、自治体から請け負った新型コロナウイルスの関連業務の委託料を過大請求していた問題で、水増し額が最大約16億円にのぼっていたことがわかった。同社が2日に記者会見を開き、社内での点検結果を公表した。
 最初に過大請求が発覚したのは4月12日。大阪府東大阪市のワクチン接種予約の電話受け付け業務で、同社の支店社員が、市の発注よりも少ない人数のオペレーターを再委託先に発注していた。支店長が再委託先に勤務実績を書き換えさせていたことも発覚している。
 この問題を受け、親会社のKNT―CTホールディングス(HD)の米田昭正社長が近鉄グループホールディングス社長に就任する人事案が取り消しとなった。
 KNT―CTHDでは、コロナ禍で落ち込んだ主力の旅行事業に代わり、自治体の業務を請け負う事業を拡大して業績を下支えしてきた。2023年3月期決算は純損益が4年ぶりの黒字(80億円)になると見込んでいる。


あなたが言った「家族観、価値観、社会」を説明しないと議論できないでしょう

2023-02-02 | 雑感


★ 
九弁連大会実行委員長としては、タイムリーなやりとりでした。
国会審議をみてはいませんが、質問者の応答としては
「過小評価しないでいただきたい。」ではなく
「あなたの家族観を説明してください。」
「同性婚を認めることで変わる価値観を説明してください。」
「同性婚を認めることで社会がどう変わるのか説明してください。」
なのではないでしょうか。

※引用

首相、同性婚に否定的な考え 「社会が変わってしまう」

 岸田文雄首相は1日の衆院予算委で、同性婚の法制化に関し「極めて慎重に検討すべき課題だ」と述べ、否定的な考えを改めて示した。同性カップルに結婚の自由を認めようとしない理由について「家族観や価値観、社会が変わってしまう課題だ」と強調した。
 首相が指摘する家族観や価値観は、日本社会で圧倒的多数を占める異性愛者の、婚姻に関する固定観念を指すとみられる。結婚の自由を願うLGBTなど性的少数者の求めに応じれば、固定観念を重視する層の反発を招きかねないとの認識が透ける。
 質問した立憲民主党の西村智奈美代表代行は「実現を待っている方々の声を過小評価しないでいただきたい」と批判した。


「今の若い〇〇は・・・」 は成り立たない !

2023-01-26 | 雑感

★そもそも、Z世代も定義できないのですが・・・
● 若者が多様化しているために「若者=○○」という一律の言い切りが成立しなくなっているためである。
● 、同じ「コスパ志向」であっても、その内実を丁寧に見ていくと「行動を促進するコスパ志向」と「行動を抑制するコスパ志向」が並立しているという現在の状況についてである。コスパ志向という若者に一定程度共通する志向性であるが、その言葉のもとでも多様化が進んでいるのである。

若い先生たちが懇親会や飲み会に参加しないことについて
もったいないなあ、いろいろと勉強できるのに と思っていましたが
実は、上の世代も勉強の素材を持っていないのがバレてしまったのかもしれないと思う今日この頃です。

プレジデントオンラインの記事からです。

※引用


PRESIDENT Online 掲載
若者は仕事に何を求めているのか。リクルートワークス研究所の古屋星斗さんは「若者が多様化していて、平均像を語るのは難しい。共通する傾向があるとすれば、プライベート志向とコストパフォーマンス志向だ」という――。
※本稿は、古屋星斗『ゆるい職場―若者の不安の知られざる理由』(中公新書ラクレ)の一部を再編集したものです。
■「若者」たちは少なくとも2層に分かれている
世間では、「Z世代は○○だ」「最近の若者は○○だ」という言説にあふれている。こうした意見を言いたくなる気持ちもわかるが、しかしこういった平均像で現代の若者を語る言説は(少なくとも就労やキャリアに関しては)、ほとんどが物事を過剰に簡略化しているか、そうでなければ現実が理解できていない誤解であると考える。理由はシンプルで、若者が多様化しているために「若者=○○」という一律の言い切りが成立しなくなっているためである。
少なくとも二層化していることをデータで示そう(図表1)。例えば、「現在の会社で長く勤めたい」か「魅力的な会社があれば転職したい」かと聞くと、52:48と概ね半分ずつの回答となっている。また、「会社でいろいろな仕事をしたい」か「会社で専門分野をつくりたい」かと聞くと、56:44とこちらも概ね半分ずつの回答となる。
「家族・配偶者としっかり相談してキャリアを決めている」かどうか、「忙しくても給料が良い仕事がしたい」か「給料は低くとも落ち着いて働きたい」か。こういった項目でもほぼ半分ずつの回答となっていることがわかるだろう。
■そもそも“主流派”が存在しない
平均値である程度の傾向が見られるのは「仕事をメインに生活したい」か「プライベートを大事に生活したい」かについての質問に、「プライベートを大事に」派が多数を占めていることくらいとなっている。
このように、二項対立するような労働・仕事に関する考え方について半分・半分に存在している状況があるのだ。この半々の回答がさらに相互に掛け合わさって、主流派なき多様化が進んでいるのが、現在の若者について明らかになっていることである。
こうした状況があるとして、「最近の若者は……」という言葉で平均を語っているとすれば、フタコブラクダになっている実情に対して、コブの谷間の部分を平均値として指し示すことになり、誰のことも語ることができていないこととなる。もしくは、どちらかのことだけを「最近の若者は……」と語っているとすれば、もう半分の話は一切できていないのだ。
■半沢直樹の物語は「権力との戦い」か「出世争い」か…
筆者はこの結果を見て、大ヒットしたTVドラマ『半沢直樹』シリーズを見た若者たちの反応が実に様々であったことを思い出した。
第二シリーズが放映されたあとにドラマの感想を就活生や若手社会人に聞いたことがある。ある就活生は「自分の正義のために、巨大な権力と戦う姿をみてこうなりたいと思った」と話し、実際にメガバンクへ就職が決まっていた。またある者は主人公が勤めるバンカーの仕事を「人と人とのつながりを大切にすることが自分の資産になり大きな仕事に繋がるのだと感じた」そうだ。
他方で別の者からは、「トップダウンで相当年月を重ねないと発言権がないのだと思い、志望業種から外した」という意見もあった。主人公は課長や次長クラス以上だが、それでも社内で発言力があると思えなかったのだろう。「建前はいろいろあったものの、やっていることは要するに出世争いで、主人公の理念自体に共感できない」という声もあり、なるほどと思わされたこともある。
もちろん、原作小説を元とするフィクションであり実際のところはもっと変わっていると思うよと若者たちには伝えたが、これだけ国民的なドラマであっても、彼ら・彼女らに正負様々な意見や受け止めがあったことを、多様化する仕事の価値観のデータを見るときに思い出す。
■「コスパ非常に重要」20代の5人に1人
続いて、「若者は多様だ」で終わっては味気ないと感じる方もいると思うので、プライベート志向とは別にもう1点わかりやすく傾向が見られる点を提示しておこう。
コストパフォーマンス志向である。「コスパ」という若者言葉もあるが、ご承知の通りコストパフォーマンス、費用対効果の略語で、ここ5、6年ほどで急速に一般化した。その用途は、従来の用法であったビジネスにおける投資効率を示すものから、買った商品の物持ちの良さ、サービスの品質、ランチに食べた食事の味、学習した物事、果ては交友関係によって得られるものまで極めて幅広く用いられており、一定の年齢層以下の日々の頻出語のひとつだろう。若者世代に対して、純粋に良いもの、を追求するのではなく、「値段以上の対価が得られるもの」を良いものとする世代だとする論調もある。
コスパという言葉には多くの使用法があるが、ここでは「仕事におけるコスパ志向」に注目しよう。データでは、働くうえでの価値観、重要性について「効率よく対価を得ること」が「非常に重要」と答えた割合を世代別に整理している。一目瞭然だが、20〜29歳で21.4%に達しており、50〜54歳は8.8%、55〜59歳は9.2%と、その割合は50代の倍以上だ。年代が上がるごとに徐々に低下し最終的には5%程度となっている。コスパの良い仕事をしたい、という志向が高い可能性があると言及したのはこのためだ。
■「費用」と「効果」の組み合わせ3つの事例
ただ、若者が仕事において「コスパ」という言葉をどのように使っているかを整理すると、実は全く逆の2つの潮流を生み出しているのではないかと考えている。
まず、費用対効果の「費用」と「効果」が仕事の面で若者にどのように考えられているかについて例をあげて見てみよう。例えば、就職活動や転職先選びにおいても「コスパが良い会社が向いていると思っている」「コスパ重視で探しています」といった声を聞くことができる。この場合の費用と効果は多義的である。
「費用」については、広義には労働負荷を意味するものと考えられ、具体的には、労働時間、ストレスの大きさ、ノルマの有無、人間関係、仕事の自分への帰責性、などを含んで使用される。また、「効果」については、広義には労働による対価を意味するが、具体的には、金銭的報酬、ノウハウ・人的ネットワークの獲得、成長機会、職務上の実績の獲得、キャリア上のロールモデルの存在、感謝の気持ちの獲得、安定性などを含んで使用される。
これらの双方の要素の組み合わせで構成されるのが前記の「コスパの良い仕事」である。例えば、
① 「残業はないが年収はそこそこ」といったケースは、金銭的報酬÷労働時間
② 「ギラギラしておらずのびのびした雰囲気だが、スキルが身につく」といったケースは、成長÷ストレスの大きさ
③ 「急なトラブルなどは少なく淡々と仕事すれば良いが、お客さんに感謝される」といったケースは、精神的報酬÷仕事の責任
このような“割り算”の結果が大きいという意味で用いられている。
■「より高いパフォーマンス」か「より少ないコスト」か
こうした「コスパが良い仕事」であるが、この通り多義的であることから、結果として全く逆の2つの姿勢が生み出されているのではないかと考える。どういうことか具体的に見てみよう(図表4)。
一方の「コスパ志向」が高い若手からは以下のような言葉を聞くことができる。
「自分の履歴書に書けるようなプロジェクトに積極的に取り組みたい」
「自分の名前で仕事ができるようになりたいので、今の仕事を選んだ」
「この分野の第一人者になるための修業期間だと思っている」
「30歳までにほかのひとにはないような大きな成功体験を得るため全力で仕事したい」
確かに、こうした場合に「コスパの良い仕事」は良い選択肢となりうる。つまり、自分が得たい経歴、得たいスキル、得たい知見を“効率的に得るために”、今の仕事を選ぶのだ。そこには、短期的に・一定の時期までに効果が出る仕事を、能動的に選択していく姿勢が表れている。結果として職業生活における行動を促進する「コスパ志向」であると考えることができよう。
他方、全く同じ「コスパ志向」は異なる形で表出することがある。
「上司や同僚と異なることをして睨まれるのは無意味だと思う」
「社外で活動しても評価に結びつかないのでやる必要性を感じない」
「給料は一定なので人より早く帰るほうが得」
「ネットで調べると、失敗した事例がたくさん出てきてコスパが悪いので辞めた」
■「若者=コスパ志向」では内実を見誤る
こうした場合にも「コスパが良い仕事」は重要な選択肢になりうる。つまり、シンプルに“より少ない労力で対価を得るために”、今の仕事をしているのである。また、仕事以外のことに時間を使いたい場合もあるだろう。ここでは、中長期的なキャリア形成の中で、損になることを排除しようとする行動姿勢をうかがうことができる。結果として、職業生活における行動を抑制する「コスパ志向」であると言えよう。
若者が同じ「コスパ」という言葉で表現する仕事への姿勢についても、全く異なる2つの様相が出現していることが理解できただろうか。ここで言いたいのは、どちらが良い・悪いではない。単純な事実として、同じ「コスパ志向」であっても、その内実を丁寧に見ていくと「行動を促進するコスパ志向」と「行動を抑制するコスパ志向」が並立しているという現在の状況についてである。コスパ志向という若者に一定程度共通する志向性であるが、その言葉のもとでも多様化が進んでいるのである。



「本当の強さは一人じゃないと言えること」

2022-04-08 | 雑感

★ 清水ミチコさんの記事

人それぞれの考え方はあるだろうけど結構核心をついていると思う

「人間は幸せにならないようにできている」だけを読むとよく分からないと思うが全文を読むと文脈で理解できると思う

「本当の強さは一人じゃないと言えること」by 山下達郎
 につながるなあ

※引用


テレビ・ラジオの出演をはじめ、コラムの連載やライブ活動など精力的に活動する清水ミチコさん。2020年4月に立ち上げた自身の公式YouTubeチャンネルでの活動が評価され、昨年は「第13回伊丹十三賞」を受賞。コロナ禍でも新たなチャレンジを続ける清水さんだが、年を重ねるに連れて「あきらめが早い方がうまくいく」と実感しているという。そう気づいたきっかけや、「弱さをさらけ出した方が人とのつながりを生む」と語る理由について聞いた。(聞き手:荻上チキ/TBSラジオ/Yahoo!ニュース Voice)

YouTubeは「義務」じゃない―自分の好きなようにやっている

――「伊丹十三賞」は時代を切り拓く斬新かつ本格的な人や作品に贈られる賞。受賞の連絡がきた時はどんなお気持ちでしたか?

 清水ミチコ: 自分の携帯に「受賞しました!伊丹十三賞です!」って電話がかかってきた時、最初は「絶対に詐欺だ」と思いまし
た。というのも、女優の友人から「助演女優賞を受賞しました。あなたの母校に出版物や写真集を寄贈できるので、これから言う口座番号に30万円入れてください」という詐欺があったことを聞いたばかりだったので。「この電話番号をどうやってお知りになりましたか?」って聞いたら「南伸坊さんから聞きました」って言われて、本物だと分かりました(笑)。

 ――ご自身のYouTubeチャンネルの視聴者層とかはチェックされていますか?

 清水ミチコ: 見たことないです。Twitterとかでエゴサーチをしていた時代もあったんですけど、褒められると「もっとこの人の期待に沿うようにしよう」と思ってしまう自分がいて、これじゃいかんなと思って一切やめたんですよね。そしたら、すごく生きやすくなったので、あまり人の意見を気にしないようにしています。YouTubeも意見や反応を気にするより、「自分が好きなことをやっていれば誰かついてきてくれるかな」という感じでやっているんです。 やっぱりどんなに好きなことでも、やりすぎると仕事になっちゃう。以前、オアシズの光浦靖子さんと森三中の黒沢かずこさんと私の弟と一緒に石垣島に釣りに行った時、地元の漁師さんがたくさん釣れる所に連れて行ってくれたんですけど、途中で漁師さんに「もうやめよう!」って言われたことがあって。「なんで?すごく楽しかったんですけど」って言ったら「これ以上やると仕事になるんだ」って言われて、なるほどと思いましたね。きっと毎日一生懸命やっていると義務になってしまって、嫌になってくるんですよね。 たぶん、五輪で活躍するような選手も、最初は無邪気にそのスポーツをするのが純粋に楽しかったからやっていただけだと思うんですよね。でも、だんだん義務になってきて、自分との戦いがそこから始まるんだろうなって感じがします。特に日本の選手は、メダルが取れなかったときに「国民の皆さまに申し訳ない」みたいなことを言うじゃないですか。こんなに若くて一生懸命な子がかわいそうにって思うこともありますよね。恵まれているのにもったいない。

ガムのように噛み続ける「人間は幸せにならないようにできている」という言葉
――今の清水さんが「自分が好きなことをやる」という思いを持つようになったきっかけを教えてください。 

清水ミチコ: 20代前半の頃、「なんで自分ばっかり面白くないのかな、ついていないのかな」とか「バイトでせっかく貯めたお金が全部歯医者代に消える。これからもこんな人生の繰り返しなのかな」と思って、人生がつまらないと感じている時期があったんです。 その時、バイト先の尊敬する女性の先輩が「最近元気ないけど、どうした?」って聞いてくれたので、自分の気持ちを打ち明けました。「頑張れば明日はやってくる」とか前向きなことを言ってくれるのかと思ったら「いや、人間は幸せにならないようにできているのよ。だから、頑張るとか頑張らないとかじゃなくて、淡々と受け止めないといけない。良いことがあったら喜べばいい」と言われたんです。目からうろこでしたね。 今も、天変地異とかコロナとかいろいろ大変ですけど、おいしいコーヒーを飲んだりする時間があることをありがたいと感じるべきなんだと思います。そうやって私は、いまだに20代のときに言われた言葉を、ガムのように噛み続けているんです。長く続いているガムですけど。

あきらめる力も大事。自分がやりやすいものを探すことの大切さ
――清水さんはどうやって自分のやりたいことを見つけているのですか?

 清水ミチコ: 自分にとってやりやすいものを探すことが大事だと思いますね。その方が自分が楽だし、見ている人も楽だとこの年になって分かりました。 輪に入れなくて嫌な思いをしながらも「とりあえず3年間やってみなよ」とか言われて、しんどい思いをしている人もいると思いますが、やっぱり“あきらめる力”って大きい気がします。そこで一生懸命頑張って、自分にとって本当にプラスになるのか、人の目にプラスになるだけじゃないかとか、そこはよく考えた方がいいと思いますね。 日本社会には「挫折するのは良くないこと」という思い込みがありますけど、「自分に合わないことならあきらめて、他のことを頑張って」の方が本当は親切だと思うんです。よく分かっていないうちに大学に行って、分からないうちに就職しないといけないんだから、本当は夢なんて分からないものなんじゃないかと。

 ――清水さん自身はどのようなことをあきらめてきましたか?

 清水ミチコ: たくさんありますね。自分ではすごく面白いネタだと思っても、ライブでシーンとしてしまったときとかは頑張らないであきらめて次に行きます。 以前、死に物狂いで「オペラ銭形平次」っていうネタを作ったんですけど、いざやってみたら地獄でした。ネタをやっている私も地獄だし、お客さんも困惑していて本当に申し訳ないと思いましたね。スタッフは私が一生懸命にやっていたから「あんまり面白くないですよ」って言いにくかったらしくて。「自分の努力をあまり美化しちゃいけないんだな」って心から思いました。

 ――年を重ねると、うまくいかないこととの向き合い方も変わるものなのでしょうか? 

清水ミチコ: 年を取った方が、あきらめが早いし、あきらめが早い方がうまくいったりします。体質みたいなものなので、合っていない水を飲もうとしても難しいですよね。 昔は恥ずかしいくらい、合っていない水を頑張って飲もうとしていましたね。バラエティ番組とかで大人数で掛け合うような場に入って行くことがすごく苦手なんです。自分を誤魔化しながら対応していたら、どんどん疲れてきて「これはやっぱり違うな」と思ったことがありました。実はひな壇番組みたいなテレビ芸は海外にはなくて、何事も「輪」になってやることが好きな日本で生まれた独自のものらしいです。 考えてみたら、部活は卓球部だったし、昔から個人プレーが好きで、団体で何かをやることがすごく下手だったんですよね。長年やっている武道館コンサートも、いろんな人と一緒にやる年があったんですけど、すごくもの足りない。自分一人で立ちたいの(笑)。自分一人でステージに立っていたときの方が楽しい一夜だったって思っちゃうんですよね。輪をつくるのも下手で、3人でいっぱいかな。日常も常に3人だし、海外旅行に行くのも3人。4人以上だと私には輪がデカすぎるかも。 以前、黒柳徹子さんとご一緒した時に「それなら、しょうがないじゃない」ってしょっちゅう言ってて、ものすごくあきらめの早い人だと思いました。そういう人の方がうまくいくのかも。「じゃあ次!」って、どんどんシフトしていったら人生が楽そうだと思いましたね。 昔は「あきらめた方がいいよ」は口にしちゃいけない言葉で、世代的にもあきらめちゃいけないというのが自分の中に呪いのようにあった。でも、力を抜いた方が自分が生きやすいし、社会に貢献できることもあるということが分かったので、今はいろいろと力が抜けています。

自分の弱さを理解することは人間的なつながりも生む
――生きやすくするために、他に工夫されていることはありますか?

 清水ミチコ: 人間関係は弱さを出した方がうまくいきますね。「もっと弱さをさらけ出しても大丈夫なんだ」っていうのを少しずつ思えるようになりました。 「私がこうやるからね」というのは自分の手柄になって気持ちいいけど、人は「悪いんだけどこれやってくれない?」って頼まれる方が嬉しいものなんですよね。だから、自分の弱さを出して「これはどうしてもやる気がしないから、今日はちょっとやってくれないか」と言った方が人間的なつながりもできますよね。 10年くらい前、自分をちょっと変えようと思っていた時期に、車いすで立ち往生しているおじいさんがいたので、思い切って「何か手伝えることありますか」って声をかけたんです。「悪いけどあそこのスーパーの玉ねぎ売り場まで頼む」って言われて、結構遠いな~と思いながらも手伝いをしたことがあって、それからは人に声をかけることが苦にならなくなりました。一度自分を解放すると、こんなに楽なんだなという学びになりましたね。 

----- 清水ミチコ 岐阜県高山市出身。学生時代からラジオや雑誌などに投稿し、1983年からラジオ番組の構成作家を始める。次第に出演機会も増え、1987年にはフジテレビ系『笑っていいとも!』レギュラーとして全国区デビューを果たす。同年、CDデビュー。独特のものまねと上質な音楽パロディで注目され、テレビ、ラジオ、映画、エッセイ、CD制作など幅広い分野で活躍中。毎年の武道館単独公演も恒例になっている。 文・清永優花子 (この動画記事は、TBSラジオ「荻上チキ・Session」とYahoo! JAPANが共同で制作しました)

官僚組織がやらせたこと

2021-12-15 | 雑感

★ あまりにもなタイミングでの請求の認諾ですので取り上げます。

資料の中に決定的にまずいものが見つかったのではないかと思います。
それにしても国交省の基幹統計の改ざんが報じられる日に請求の認諾とは

おそらく 国側は改ざんの事実は認められなかったが遺族の感情にも配慮して・・・とかなんとか言うのでしょう。
そうであれば、請求の認諾して税金で賠償金を支払うので決裁権者の責任を追及していただきたいものです。

毎日新聞の記事からです。
※引用

 学校法人「森友学園」への国有地売却を巡る財務省の決裁文書改ざん問題で、自殺した近畿財務局職員、赤木俊夫さん(当時54歳)の妻が国と佐川宣寿(のぶひさ)・理財局長(当時)に損害賠償を求めた訴訟の非公開の進行協議が15日、大阪地裁(中尾彰裁判長)であった。国側は改ざんなど一連の経緯の末に自殺したとして、賠償責任を認める方針を妻側に書面で伝えた。妻側の代理人弁護士が明らかにした。

 国側はこれまで訴訟で争う姿勢を示していた。【松本紫帆】

官僚がやったこと   

2021-12-15 | 雑感


★「基幹」統計 の名前が 笑い(失笑)を誘います。

こういうデータを基に政策を議論して効果が出るとも思えない。
「書き換えは年間1万件ほど行われ」
⇒ それをおかしいと思う官僚は存在しなかった
「影響は分からない」
⇒ 目的はあったでしょうに
書き換えを始めた理由や正確な時期については「かなり以前からなので追えていない」
⇒ 責任の所在はあいまいにしたい

政治的なことも含めデータを改ざんしても責任を問われない世の中
いろいろな問題をつつくとこちらに飛び火するのではないか
とびくついている官僚の姿が目に浮かぶのでありました。

朝日新聞のネット記事から
※引用


 建設業の受注実態を表す国の基幹統計の調査で、国土交通省が建設業者から提出された受注実績のデータを無断で書き換えていたことがわかった。回収を担う都道府県に書き換えさせるなどし、公表した統計には同じ業者の受注実績を「二重計上」したものが含まれていた。建設業の受注状況が8年前から実態より過大になっており、統計法違反に当たる恐れがある。 

 この統計は「建設工事受注動態統計」で、建設業者が公的機関や民間から受注した工事実績を集計したもの。2020年度は総額79兆5988億円。国内総生産(GDP)の算出に使われ、国交省の担当者は「理論上、上ぶれしていた可能性がある」としている。さらに、月例経済報告や中小企業支援などの基礎資料にもなっている。調査は、全国の業者から約1万2千社を抽出し、受注実績の報告を国交省が毎月受けて集計、公表する。 
 国交省によると、書き換えていたのは、業者が受注実績を毎月記し、提出する調査票。都道府県が回収して同省に届ける。同省は、回収を担う都道府県の担当者に指示して書き換え作業をさせていた。具体的には、業者が提出期限に間に合わず、数カ月分をまとめて提出した場合に、この数カ月分の合計を最新1カ月の受注実績のように書き直させていた。  
 一方、国交省による毎月の集計では、未提出の業者でも受注実績をゼロにはせず、同月に提出してきた業者の平均を受注したと推定して計上するルールがある。それに加えて計上する形になっていたため、二重計上が生じていた。  複数の国交省関係者によると、書き換えは年間1万件ほど行われ、今年3月まで続いていた。二重計上は13年度から始まり、統計が過大になっていたという。
  同省建設経済統計調査室は取材に、書き換えの事実や二重計上により統計が過大になっていたことを認めた上で、他の経済指標への影響の度合いは「わからない」とした。4月以降にやめた理由については「適切ではなかったので」と説明。書き換えを始めた理由や正確な時期については「かなり以前からなので追えていない」と答えた。 
 同省は、書き換えの事実や、過去の統計が過大だったことを公表していない。 
 国の基幹統計をめぐっては、18年末に厚生労働省所管の「毎月勤労統計」が、決められた調査手法で集計されていなかったことが発覚。この問題を受けて全ての基幹統計を対象とした一斉点検が行われたが、今回の書き換え行為は明らかになっていなかった。(伊藤嘉孝、柴田秀並)


東京オリンピック開会式を前に

2021-07-22 | 雑感





マスゴミのマッチポンプと言わざるを得ない。

開会式直前のタイミングで開会式の責任者の辞任、解任が続いている。
オリンピックオフィシャルパートナーの各新聞社(朝日,讀賣、毎日、日経)が、今回の辞任解任の問題点を知らなかったはずはありません。
SNSがきっかけみたいに書いていますが、実はこれらマスコミが発端かもしれません。
正しくマスゴミのマッチポンプです。
オフィシャルスポンサーなら成功に向けて指摘して改善を促すべきでしょう。
自社への注目が集まればそれで良いというのは社会的責任を全く果たしていないと言わざるを得ません。
政権とズブズブだと批判できるマスコミ表現者は日本には存在しなくなりました。
残念❗️

 


犯人は  ホシ ではなく 犬  でした

2021-07-13 | 雑感


今朝のNHKニュースで 
三重県警の科学捜査班(?正式名称は不明です)が分析した結果、犬の散歩コースになっているこの電柱の尿素がほかの電柱の数十倍にも達していたと報道されていました。
交通課のおまわりさんも「トイレを済ませてから犬を散歩させてください」と言っていて
当事者には危険がいっぱいで大変でしょうけど、なかなか笑えてしまうニュースでした。

※引用
 2月18日の朝日新聞の記事からです。

原因は犬のおしっこ? 鋼鉄製の信号柱が折れる 三重

 18日午前7時45分ごろ、三重県鈴鹿市桜島町3丁目の市道交差点を通りかかった人から、「歩行者用の信号機が折れている」と110番通報があった。県警鈴鹿署員が駆けつけたところ、鋼鉄製の信号柱(高さ約6メートル、直径約14センチ)が根元から折れ、歩道脇の駐車場の植え込みに倒れていた。けが人はなかった。付近は住宅地で、折れた部分が腐食していたことから、県警は「犬の尿が原因の可能性がある」とみて調べている。

 県警交通規制課によると、信号柱は1997年度に設置され、歩行者信号(重さ約18キロ)1機がついていた。通常なら約50年は維持できるという。2020年度の点検で腐食が見つかったことから、翌年度に交換予定だった。

 現場は伊勢鉄道玉垣駅から南東約400メートルの住宅地で、歩道が広く、付近に公園もあることから犬の散歩コースになっているという。腐食が起きやすい海沿いではなく、信号柱付近のアスファルトにも荒れた跡があり、県警は散歩中の犬が何度も尿をかけたことで腐食した可能性があるとみている。県警の担当者は「近くには小学校があり、人的被害がなかったのは不幸中の幸いだった」と話している。



続報が待たれる  が  あまり出ないかも・・・

2021-06-03 | 雑感

★ まあ 物騒な事件ですが  あまり聞いたことがない事案ですね
  実家の近くの警察署ですので、どういうことだったのか関心があります
  ネット記事の写真を見る限り正面玄関の真ん前ですね
  偶発的な事故とはちょっと考えにくいところです

※引用


 3日午前0時55分ごろ、鹿屋市寿3丁目の鹿児島県警鹿屋署敷地内で、車が燃えていると通報があった。車両は全焼し、乗っていた2人が死亡した。同署は身元の確認を急ぐとともに事件と事故の両面で捜査している。

 同署によると、車が敷地に入って間もなくして燃え上がった。死亡した2人以外にけが人はいない。当直中の署員が119番した。

 複数の近隣住民の話では、爆発音が2回響いたという。

5分ごろ、鹿屋市寿3丁目の鹿児島県警鹿屋署敷地内で、車が燃えていると通報があった。車両は全焼し、乗っていた2人が死亡した。同署は身元の確認を急ぐとともに事件と事故の両面で捜査している。

 同署によると、車が敷地に入って間もなくして燃え上がった。死亡した2人以外にけが人はいない。当直中の署員が119番した。

 複数の近隣住民の話では、爆発音が2回響いたという。

「なんて言い草!」  って取り上げる前に  「なんて資格!」 なのかしら

2021-05-17 | 雑感
★まあ、幻冬舎 オンラインの記事ですので、目くじらを立てることもないのかもしれませんが
「相続実務士」「相続対策専門士」とかいう表示を見ると、法律的にどうなんだろうと思ってしまいます。
少なくとも余計な費用を支払っているのだろうという推定が働きます。

ちなみに、商標登録してあるものないもの含め相続に関する資格を称しているものがたくさんあります。たとえば、
相続診断士
相続士
相続支援コンサルタント
相続管理士
・・・たくさんありますね。

いずれも弁護士に依頼した以上の仕事はできない はずです。

※引用


先祖代々の農業を継ぐつもりの長男が事故に遭い、働けなくなりました。父が亡くなったあと、不動産をすべて相続するつもりでしたが、遺産分割協議の席での発言がほかの相続人を激怒させ、その後の話し合いが進みません。どうしたらいいのでしょうか。相続実務士である曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)が、実際に寄せられた相談内容をもとに解説します。

農家を継ぐはずだった長男が事故に遭い…

今回の相談者は、50代無職の市川さんです。遺産分割協議で揉めているため、相続人間を調整してもらえる相談先を探しているとのことで、筆者の事務所を訪れました。 市川さんの家系は代々の農家で、広い土地を所有していますが、その多くが市街化調整区域の田畑です。先日亡くなった父親は、長らく農業に従事してきましたが、亡くなるまでの数年は、自身が高齢になったことや、農業を引き継ぐ予定だった市川さんが、交通事故が原因で体に障害が残ったことを理由に、農業を縮小していました。 父親が農業をやめて以降の収入源は、主に土地の賃貸料でした。市川さんが事故に遭ってから数ヵ月後、ある大手企業から県道に面した畑を隣接地とあわせて借りたいと依頼があり、農業以外の収入源を模索していた市川さんの父親は、渡りに船とばかりに貸すことにしたのです。 20年の事業用借地契約で公正証書にしてあり、借り主も名の通った会社で不安はありません。おかげで毎月定期的に地代が入ってくるようになり、それが主な生活の収入源となりました。 市川家の家族状況ですが、母親は高齢ながらも健在で、長男で独身の市川さんと同居しています。妹2人はそれぞれ20代半ばで結婚して家を出ています。問題なのは末っ子の次男で、留年を繰り返して大学を中退し、しばらく職を転々としたあと、突然失踪してしまいました。それ以来、家族が探しても見つけられず、いまも連絡手段がないままだといいます。


不用意なひと言で妹たちが激怒、電話もできない状態に


財産のうち、自宅とごく一部の土地以外は、市街化調整区域となっている農地です。現金もほとんどありません。そのため、2人の妹と弟に分けられる土地はありませんが、いずれにしろ全員家を出ているため、不動産は長男の市川さんがすべて相続し、ほかの相続人にはいわゆるハンコ代として気持ちばかりの現金を分けるつもりで考えていたとのことでした。 父の葬儀後しばらくして、市川さんは実家に家族が集まった際、2人の妹に財産分与の話を切り出したのですが、市川さんが話の流れのなかで発した「2人は市川家の人間ではなくなったのだから」という言葉に、妹2人が激怒して帰ってしまい、遺産分割の話がとん挫してしまいました。 その後、市川さんがいくら電話をしても、声を聞いただけで切られてしまうなど、まったく話し合いにならない状態となってしまったのです。感情的なもつれが、当事者同士のみの力では解決の糸口が見えないほどこじれてしまったため、頭を抱えた市川さんは、遺産分割協議の調整を筆者に依頼しようと考えたのでした。

妹たちは、遺産の取り分が不服なのではなく…

筆者は市川さんの依頼を受け、まずは2人の妹に連絡しました。そして、遺産分割が決まらないままだと、困るのは相続人全員だということを説明しました。幸い、2人は第三者の立場である筆者の言葉に耳を傾けてくれ、ようやく遺産分割協議に向けて一歩前進することになりました。 次のステップとして、2人がどれくらいの財産を分けてもらいたいと思っているか、考えを遠慮なく話してもらいました。 その話し合いでわかったのは、市川さんの2人の妹は、事故で体を悪くした兄へ父親の遺産のほとんどを渡すことに異論はないものの、市川さんの言葉にとても傷つき、立腹しているということ、そして、市川さんが提案した金額より、少しばかり多く受け取りたいという希望を持っているということでした。このような、些細の言葉の使い方で関係がこじれ、意思疎通ができなくなるケースは珍しくないのです。 市川さんが暮らしている地域では、子どもたちはそれぞれ親の土地に家を建ててもらうことが多いのですが、市川さんの一族はそのケースと異なるため、妹2人には、当初の提示額より少し多く現金を相続してもらうことになりました。 そこで問題になってくるのが、行方不明の次男のことです。次男は30年近く前に失踪し、連絡が取れないため、市川さんは不安を抱えていました。本人を探すことが困難だと判断した市川さんは、財産管理人の手続きをすることにしました。 しかし、手続きを進めるうち、次男は結婚していて娘が1人いることが判明。そして話し合いを経て、弟の娘に財産管理人になってもらうことができました。 家庭裁判所の審判も下り、ほかの相続人と同様に現金を分ることができ、相続人全員の財産分与が無事に終了しました。 実際の遺産の分割方法ですが、まずは不動産をすべて市川さんが相続し、その後、市川さんからほかの相続人たちに代償金として現金を分けました。そのため、遺産分割協議書には「長男が代償債務を負い、妹弟は代償債権を得る」と記載しています。売却後は、各自の希望どおりの額を分けることでほかの相続人も納得し、遺産分割協議書は完成しました。 いったん母親が不動産を相続する方法もありましたが、二次相続の際の手間を減らすため、母親の相続割合を減らしたのです。すべての不動産を長男が相続し、納税資金のための土地売却などの手続きも長男だけで行ったほうが、実務上やりやすい等、総合的に判断した結果の判断でした。 今回は、感情的になりがちだった当事者間の話し合いに、第三者が調整役として入ったことで話し合いがまとまった好例でした。また、遺産分割では、二次相続がスムーズになるよう母親の相続する割合を減らすとともに、代償債務・代償債権を使うことで、煩瑣な手続きとならないようにしています。 また相続発生に当たり、相続人に所在が不明の方が含まれるケースもありますが、その場合は家庭裁判所に財産管理人選定の審判を申し立て、手続きを進行させるのが一般的です。 

曽根 惠子
 株式会社夢相続代表取締役
 公認不動産コンサルティングマスター
 相続対策専門士


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2021-04-15 | 雑感
ブログ開設から 5671日 なのだそうです
ご覧になった方 ありがとうございます

ブログなるものがないときには、HPに書いていました
当時は新聞報道も裁判司法関係のネタが結構あり
特に裁判員裁判とか刑事司法改革 
結果的に検察庁焼け太り政策のころは書くネタも豊富でした。

東日本大震災のころからそういう記事が大幅に減って
しまったような気がします
そのころから、いろいろな情報を得るためにマスコミが権力に
接近していったような気がします
何しろ初めてのことなのでその道のプロがいないですから
取材しようにも大変だったのでしょう
その結果が社会のいろいろなところで忖度とかを生んで
現状に至っているんじゃないか なんて個人的には考えています

これからは書くことも変わってくるかもしれませんが
ボチボチとやっていきたいと思います。

今後ともよろしくお願いします。

今日(4/2)から  遅生まれ ???

2021-04-02 | 雑感
 昨日、令和3(2021)年4月1日生まれの子どもが小学校に入学するのは、令和9(2027)年の4月でしょうか、それとも令和10(2028)年の4月でしょうか。

 学校教育法には、「保護者は、子の満6歳に達した日の翌日以後における最初の学年の初めから」小学校等に就学させる義務を負うという規定(第17条第1項)があります。
小学校の学年は4月1日に始まります。
満6歳になる日が4月1日であれば、その「翌日以後における最初の学年の初」は翌年の4月1日ということになり、その子どもは翌年の4月1日に小学校に入学することになります。
一方、満6歳になる日が3月31日であれば、その翌日の4月1日に小学校に入学することになり、「早生まれ」ということになります。

 それでは、満6歳になるのはいつでしょうか。
 年齢計算ニ関スル法律という法律の第1項には「年齢ハ出生ノ日ヨリ之ヲ起算ス」と規定されています。つまり、生まれた時刻が何時かを問わず、その生まれた日を第1日目として年齢を計算することになっています。
 そうすると、令和3(2021)年4月1日生まれの子どもは、令和9(2027)年3月31日限りをもって満6歳になり、翌日の4月1日から小学校に入学するため、「早生まれ」ということになります。
 冒頭の問の答えは、令和9年の4月入学ということになります。
 今日(4/2)生まれた方は、令和10年の4月入学になります。

 年齢計算ニ関スル法律第1項のように期間を計算する場合にその初日を含めることを初日算入といいますが、年齢以外の期間を計算する場合は初日を算入しないのが原則です。期間の計算は、原則として民法の規定(第138条~第143条)によることになっており、それによると、時間によって期間を定めた場合はその時から起算しますが、日、週、月又は年によって期間を定めた場合は、初日を算入しません。ただし、その期間が午前零時から始まるときは、初日を算入します。また、期間が満了するのは、その期間の最後の日が終了した時点です。

レクサス 暴走裁判 というタイトルは トヨタに 可哀想すぎるけど・・・

2021-02-26 | 雑感
★ 刑事弁護の中ではよく遭遇する状況と感情です。

「結局、裁判所は、自らの手による再現見分を見送った。自分の目の前で石川の運転体勢を確認すれば、アクセルペダルに足が届くかどうか、仮に石川が足を縮めたりしても一目瞭然のはずなのに、それをせず、回りくどい検察、弁護側双方の再現記録をもとに判断するのか、不可解だった。」

立証責任の話になれば、裁判所が非難されることはありません。
被告人に対し、「自分の責任並びに遺族ら及び被害者らと向き合う機会を与える」と述べた裁判所は、事実(可能な限り近づける真実)に自分で向き合うことはしません。

文春オンラインの記事の引用です。

※引用
《レクサス暴走裁判》「罪と向き合え」「不当な判決だ」元事件捜査のプロと巨大組織はなぜ法廷で争ったのか

 2018年に起きたトヨタの高級車レクサスの暴走による死亡事故で、自動車運転死傷処罰法違反(過失運転致死)などで起訴された元東京地検特捜部長の石川達紘弁護士に対し、東京地裁は2月15日、禁錮3年、執行猶予5年(求刑禁錮3年)の判決を言い渡した。弁護側は「暴走は車の不具合が原因」と無罪を主張したが、裁判所は、「誤ってアクセルペダルを踏み込んだ」とする検察側に軍配を上げた。元特捜検察のエースがプライドを賭けた約1年にわたる裁判を振り返る。

「罪と向き合え」と厳しい説諭
 「禁固3年、執行猶予5年に処す」
 今年2月15日午後1時半、東京地裁818号法廷に裁判長の三上潤の声が響いた。マスクをつけた石川達紘は有罪もあり得ると想定していたのか、主文の言い渡しを受けても表情は変わらなかった。

 三上は「判決理由の朗読に約1時間かかるので」と石川を着席させたうえ、検察側が「踏み間違い」の根拠とするアクセルペダル裏の圧痕や事故記録装置(イベント・データ・レコーダー、EDR)の解析記録などについて「合理的で説得力がある」などとして、これを否定する弁護側の主張を一蹴した。
「アクセルペダルを踏んだ記憶がない」との石川の供述についても「信用できない」と断定。車の発進時やその後のハンドル操作などで「(石川が)ろうばいして」との表現を4回も使った。
 そのうえで、「本件の過失は、全体としてみれば重大で、現時点では自分の責任に向き合っているとはいえないが、前科はなく、遺族が厳罰を望まない旨記載された示談書も作成されている。責任を明確にした上で、社会内で自分の責任並びに遺族ら及び被害者らと向き合う機会を与える」と述べて言い渡しを終えた。
 石川は身じろぎもせず、三上に視線を向けていたが、閉廷後、足早に法廷を退出した。石川側は即日、東京高裁に控訴。主任弁護人の小林正樹弁護士が「電子制御技術が発達した現代の自動車に対する知見に乏しい証人らの証言を基にした検察官の主張をそのまま鵜呑みにしたものであり、かつ、被告人の運転体勢に関する弁護人らの検証請求を却下するなど、およそ真実解明の姿勢に欠けた裁判体による極めて不当な判決であって、到底受け入れることはできない」とのコメントを発表した。

 筆者は、2020年2月17日の初公判からこの日の判決まで、コロナ禍による中断をはさんで全8回の公判の一部始終を傍聴した。
 石川は知る人ぞ知る元特捜検察のエースである。1965年検事任官。76年のロッキード事件の捜査で特捜検事として頭角を現し、東京地検特捜部副部長時代の86年には、ロッキード事件以来10年ぶりの政治家訴追となる撚糸工連事件を摘発。特捜部長時代の90年には、バブル崩壊後の大型経済事件の走りとなる仕手グループ「光進」による相場操縦事件を摘発。仕手戦に便乗して株取引で儲けた稲村利幸衆院議員(当時)の脱税事件、住友銀行(当時)行員らの浮き貸し事件などを掘り起こした。

 特捜部が摘発した金丸信元自民党副総裁の5億円闇献金事件の罰金処理が「甘すぎる」と特捜部に批判が集中した93年、最高検検事だった石川は、旧知の国税幹部が持ち込んだ金丸の蓄財資料をもとに脱税で捜査するよう最高検首脳を説得。特捜部の金丸逮捕を演出した。

 不良債権処理をめぐる大蔵省(現財務省)の金融失政に批判が集まっていた98年、東京地検検事正として金融機関の接待漬けになっていた大蔵官僚を収賄容疑で摘発する捜査を指揮したが、捜査方針をめぐり法務省幹部らと対立。99年、事実上、中央から追放される形で福岡高検検事長に転出。2001年に名古屋高検検事長で退官。弁護士を開業し、経済事件の被告人の弁護、複数の上場企業の監査役、社外役員として存在感を示してきた。
 その石川が、晩年に交通死亡事故を起こして刑事被告人となり、無罪を主張して法廷で古巣の検察と戦うこととなった。検察権力に関心を持つ筆者としては外せない取材だった。

「警察+トヨタ」との対決
 事故で家族を失ったご遺族への不謹慎を承知でいうと、裁判の争点も興味深かった。検察側が、事故車に搭載されたEDRの記録などをもとに「石川が運転操作を誤った」とするのに対し、石川側は「車に不具合があり勝手に暴走した。(石川の)過失はなかった」と主張していた。石川が無罪になれば、トヨタの技術の粋を凝らしたレクサスに何らかの不具合があったことになり、トヨタのブランドは大きく傷つく。
 EDRは、エアバッグの展開状況を事後的に検証する目的で自動車メーカーやエアバッグサプライヤーが製造し、車に設置している。データの記録方法や記録項目、その正確性などについて国土交通省などの中立機関が認証したものではない。
 警視庁は、トヨタから解析機材を借りて事故車のEDRからデータを抽出し、それをもとに交通事故捜査経験が長くデータ処理の訓練を受けた警察官が「鑑定書」を作成。検察はアクセルペダル裏についた圧痕とこの「鑑定書」を「踏み間違い」と判断する根拠としていた。
 石川がもし無罪になれば、警視庁とトヨタの関係にも焦点が当たる可能性があった。
 裁判は、かつて「特捜検察のエース」である事件捜査のプロと、日本ナンバーワンの巨大企業、警察との闘いでもあったのだ。

 のちに触れるが、筆者は、石川本人や弁護団が、事故を鑑定した警視庁の警察官やその補助をしたトヨタ社員らを法廷で厳しく問い詰める「現場」を目撃することになった。

 事故を簡単に振り返っておこう。
 判決や石川側の説明によると、検察時代の部下だった弁護士ら4人と千葉県でゴルフをする予定だった石川は、2018年2月18日朝、メンバーの女性を拾うため、東京都渋谷区内の道路わきに運転していたトヨタの高級車レクサスLS500hを停車した。車は自動的にパーキングブレーキがかかった。

 まもなく女性が現れたため、石川は車の後部トランクへの荷物の搬入を手助けしようと、トランクを開け、シートベルトを外してドアを開けて右足から外に出ようとしたところ、車が動き出し、どんどん加速。最終的に100キロを超す猛スピードで突っ走った。

 石川によると、右足をドアに挟まれた状態で、ハンドルにしがみつき、暴走を止めるため、左手をハンドルから離し、パーキングレバーを操作しようとしたが、うまくいかず、反対車線の右側歩道を超えたところで意識がなくなったという。
 車は、反対側の歩道にいた堀内貴之さんをはねて死亡させ、店舗に突っ込んだ。車の暴走距離は約320メートルに及んだ。車は大破し、石川は右足甲を骨折し救急車で港区内の病院に搬送された。警視庁が事故車を検証した結果、ブレーキコイルが焼け、部品がすり減っていた。
「足は宙に浮いていた」記憶にこだわった石川
 石川は事故当時78歳。警視庁は、事故車に搭載されていたEDRの解析結果や、アクセルペダルの裏についた圧痕などから、石川が、車から降りようとした際、誤ってアクセルペダルを踏み込んで自車を急発進させ、その後も、ブレーキと勘違いしてアクセルペダルを踏み続けた、と見立てた。

 石川が警視庁の見立てを受け入れれば、よくある、高齢者の踏み間違い事故として粛々と処理され、世間の注目も集まらずに終わっていただろう。しかし、石川には、車が発進した際、アクセルペダルを踏んだ記憶がなかった。踏み続けた記憶もなかった。自由な左足は宙に浮いたままだった感覚が残っていた。アクセルペダルを踏んでいないとすれば、車が何らかの不具合で勝手に動き出したことになり、自分に暴走の責任はないのではないか、と考えた。
 石川は警視庁の捜査員に「アクセルペダルを踏み込んだ記憶がない」と訴えたが、警視庁側は、「衝突4・6秒前から衝突時まで、常にアクセル開度が100%(アクセルペダルを最大限踏み込んだ状態)を記録している」とするEDRの解析記録やアクセルペダル裏の圧痕の存在を石川に示し、石川から「自由になる左足でアクセルペダルを踏んだ記憶はまったくないが、踏んだかもしれない」との供述調書をとり、事件を18年12月21日、東京地検に送致した。

 納得がいかない石川は、東京地検に対し、事故時の運転体勢を再現する実況見分を要請。同地検は翌19年1月24日、警視庁を指揮して東京都交通局都営バス品川自動車営業所港南支所でシート位置などを事故車と同じにした同型車を使って再現見分を行った。
 石川によると、両手でハンドルを握ることは可能だったが、左足はどうやってもアクセルペダルにもブレーキペダルにも届かなかったという。
「事故車の座席位置に座った瞬間、事故前に座席を後ろに下げ少し背もたれも倒していたことを思い出した。前傾して運転する癖があり、停車して時間があると、いつも、リラックスするためにそうしていた」

 石川によると、警視庁側は、足の届かない場面を含めて写真を撮影。「事実が固まった」として引き上げようとしたところ、捜査員が追いかけてきて再度、石川に乗車を求め、普通の座席位置で写真を撮ったという。

 その後、警視庁は19年2月8日、事故現場で防犯カメラなどの映像をもとにシート位置を事故時と同じにセットした車に石川と身長、体重が同じ警官を乗せて、事故時の石川の運転体勢の再現見分を行い、左足でアクセルペダルを踏むことができた、とする見分結果をまとめた。しかし、この再現見分を含め、捜査段階で右足をドアに挟んだ状態での再現見分は行われなかった。
 石川は1月24日の実況見分で撮影した「足が届いていない」ものを含む写真を判断資料にするよう検察に求めたが、警視庁は提出に応じなかったという。石川は「左足がアクセルペダルに届かない以上、車に何らかの機械的、電子的な不具合があって暴走した」と主張したが、東京地検は、「事故車には電子的・機械的な異常は認められなかった」とし、石川が左足でアクセルペダルを踏んだことが暴走の原因だとして3月22日、起訴した。
略式処分を視野に入れた検察幹部
 交通事故で歩道の人を死なせると、公判請求するのが当時の検察の起訴基準だった。禁固以上の刑が言い渡されると、石川は弁護士資格を失う。

 実は、検察部内では石川の起訴前に、公判請求ではなく略式命令による罰金処分の可能性についても検討していた。その場合、被害者側への慰謝を尽くし、「踏み間違い」による過失の容疑を認めたうえ、略式手続について異議がない旨を書面で明らかにする必要があった。
 起訴後の19年3月25日、石川の事件の決裁ラインの検察幹部は筆者にこう語った。
「(検察に貢献した)OBを法廷に立たせたくなかった。石川さんがまだ弁護士をやりたいのなら、前科はつくが、罰金でよかった。容疑を認めれば、求略(求略式命令)の道もあった。要は、記憶の問題。パニックになっているのだから、本当は何が起きたかわからないはず。踏んだか踏まないか、曖昧なままにしておけばよかった。ところが、踏んだことは一切ない、と言ってしまっている。それでは罰金処理は無理だった」
 この幹部の意図するところが、石川側に伝わったかどうかは定かでないが、石川は、自らの記憶に基づく事実を無視できなかった。検事、弁護士として法曹人生55年。事実認定のプロとして生きてきたプライドがあった。さらに、罰金処理を受け入れると古巣との裏取引のように見られることも危惧し、公判で白黒をつける道を選んだとみられる。(#2に続く)

「命を返して欲しい」元特捜検察のエースとトヨタ…レクサス暴走致死事件“アクセルペダルの行方”と重い量刑

「足が届いたかどうか」をめぐる攻防
 さて、公判。2019年1月24日の再現検証で、事故時の運転体勢からして左足がアクセルペダルに届いていなかった、と確信する石川は、その事実が固まれば、EDRの解析など以前に暴走の責任がないことがはっきりすると考えていた。
 そのため、2020年2月18日の第2回公判で、石川側は、19年1月24日、2月8日の再現検証にも立ち会っていた検察側証人の警視庁交通捜査課交通鑑識係警部補の寛隆司を攻め立てた。

 寛は整備士資格のほかEDRデータの解析ツールメーカーのアナリスト資格、警視庁の交通事故解析研究員の資格を持ち、事故車のEDRデータを解析した鑑定書を作成していた。

 松井巖弁護士がまず、2月8日の再現見分について質問した。松井は元福岡高検検事長。検察でも有数の捜査、公判のプロだった。大柄で貫録がある。松井は、石川の代役の警官の右足をドアに挟んだ状態での見分でないことを寛に確認したうえで、左足がアクセルペダルに「届いた」とする写真について「とてもアクセルを底まで踏み込んでいるように見えない。あなたにはそう見えるのか」と突っ込んだ。寛は「写真ではなくて、私は肉眼で、目視で踏まれているのを確認していますので、先生がおっしゃっているのは写真の撮れ具合で。実際には、これはちゃんと踏めています」
「私の目には、左足がアクセルペダルに触るか触らないか分からないようにしか見えない」
「踏んでいると見えます」
「あなたの目じゃなくて、はっきりとわかる形の写真、ないしビデオを証拠化してここに付けるべきだったのでは」
 後輩の立ち会い検事が「異議。誤導だ」と指摘したが、松井は引かなかった。
「なぜ、完全に踏み込んだ写真を撮らなかったのか」
「その写真がそうなんですとしか申し上げられない」
「カミソリ達紘」と立ち会い検事の問答
 続いて、被告人の石川本人が質問に立つ。現役時代は「カミソリ達紘」の異名をとった。
 1月24日の見分について「あなたは、私の目の前で事故車の座席の位置を測定してきて、曲尺(かねじゃく)で私の目の前で示されましたね」
「私が計測しました」

「はい」
「座った後に足はどうなってましたか」

「足は届かないということで」
「あなたは、その場で目で見ているでしょう」
 立ち会い検事がここで遠慮がちに異議を唱える。
「言い合いの様相。必要であれば、弁護人からお尋ねいただくか」
 裁判長も「冷静に」と諭すが、石川の追及は続く。80歳とは思えない迫力だ。
「それで、あなた、背後にカメラマンがいて、右背後から私の足の写真を撮ったのは見ておられますね」
「はい、計測しながら」
「その写真が、全然出てこないのはどうしてですか」
「わかりません」
「だって、実況見分を、調書をあのとき作ったでしょう。そのとき撮った写真が、警察に要求しても全然出てこないんですけれども、どうしてですか」
 検事がたまりかねたように異議を申し立てる。
「証拠開示のやり取りを警察官に求めるのは意味がない」「意見を押し付ける尋問になっている」
 石川は尋問を撤回したが、追及を続ける。
「あなたの鑑定書には、1月24日に実際に私がその現場にいて、足の長さを見て、どういう状況かをあなたが見ていながら、その内容は鑑定書に盛られなくて、その後の2月8日に改めてあなたが仮想運転者を使ってやったのは、それを鑑定書に書いているのはどうしてですか。私が実際にいたのに、どうして私のことを書かなかったんですか。あの実況見分を」
「それは、記憶に基づく再現で出来上がった資料なので、これを鑑定書の疎明資料として使うことはちょっとできないという判断です」

足が届くかどうか、自分の目で確認しなかった裁判官
 石川側は、公判前整理手続きの段階から、事故時の運転体勢について裁判所による再現見分を求めてきたが、裁判所は検察の反対を受けて判断を留保し、双方の立証が終わった段階で見分を行うかどうか判断するとした。
 そのため、石川側は改めて、シート位置などを事故車と同じにした同型車を使っての実況見分を自前で行い、その写真とビデオを裁判所に提出した。裁判所は、このビデオと警視庁が事故現場で行った見分ビデオを法廷のモニターで検証した。
 弁護側のビデオについては、筆者が傍聴席から見た限りでは、画面が暗く、撮影角度のせいもあるのか石川の左足とアクセルペダルの距離感はよくわからなかった。先に証拠調べをした2月8日の仮想運転者による再現見分のビデオも同様だった。
 結局、裁判所は、自らの手による再現見分を見送った。自分の目の前で石川の運転体勢を確認すれば、アクセルペダルに足が届くかどうか、仮に石川が足を縮めたりしても一目瞭然のはずなのに、それをせず、回りくどい検察、弁護側双方の再現記録をもとに判断するのか、不可解だった。

 結局、公判の最大の争点は、(1)アクセルペダル裏に残った圧痕が、石川の踏み込みによって生じたものか、(2)警察が、石川がアクセルペダルを踏み込み続けた根拠としたEDRデータは信用できるか、の2つとなった。いずれも、専門技術知識にかかわる問題だ。
 検察側は、警視庁の寛と、トヨタ自動車お客様関連部主査の吉田一美、タイヤ構造力学、交通事故解析の専門家である技術コンサルタントの山崎俊一の3人を証人に立てた。
 吉田は、トヨタで車両の完了検査業務やアフターサービス、事故対応などを担当。制御用コンピュータープログラムの開発などに携わった経験はなかった。トヨタはこの事故で、警視庁にEDRデータの解析ツールなどの機材を貸しており、吉田は警視庁が行う再現検証や車の機能検査などに「作業補助」として立ち会っていた。

 一方、弁護側は、元独立行政法人「交通安全環境研究所」(現独立行政法人自動車技術総合機構)リコール技術検証部リコール技術検証官(みなし公務員)で技術コンサルタントの出川洋を証人に立てた。
 1972年横浜国大工学部機械工学科卒。日産自動車でエンジン開発、制動プログラム開発に携わり、日産退職後の2011年にリコール技術検証官。16年に退官するまで約50件の調査に携わった自動車技術の専門家だ。

EDRデータの信用性をめぐる攻防
 寛は「本件車両は、センサー及びコンピュータ内部の制御CPUなどに異常が出た場合、燃料や電気の供給が遮断・抑制されるよう設計されており、車両の構造上、制御CPUなどの異常によりエンジンやモーターの回転数が異常に上昇する(暴走する)ことはない」とし、自らが作成した「鑑定書」をもとに、石川が右足から降車しようとして誤って左足でアクセルペダルを踏み込んだため、車が急発進した、と主張。
 アクセルペダル裏にあった圧痕も、石川がアクセルペダルを全開に踏み込んだ状態で衝突したことを裏付ける、とした。吉田もこの証言に沿う証言をした。
 これに対し、出川は、石川側の依頼で、車載のドライブレコーダーや法廷に提出されたEDRの解析データを詳細に検討した結果として、「事故車はブレーキ制御コンピュータなど電動パーキングブレーキの不具合で、ブレーキが解除され、または制動力が弱まり、クリープ現象で発進。その後、急加速し途中でパーキングブレーキがかかったが、そのまま暴走した、との結論に至った」などと証言。
 さらに、「EDRデータでは、衝突直前の約5秒間、事故車のアクセル開度が100%になっているが、同データには、同時にブレーキペダルを踏んだとみられる記録もある。左足でブレーキペダルを踏みながら、同時にアクセルペダルも開度100%で踏み込むという、説明のつかない相互に矛盾するデータが認められる」として、EDRデータの信用性に疑問を投げかけた。

 弁護側は、出川証言で検察側のEDRデータをもとにした起訴事実がぐらついたとの心証を固め、「検察側の立証不十分で無罪の可能性もある」と希望を膨らませたが、判決はその思いを木っ端みじんに砕いた。
 判決は、弁護側が、「専門性に欠ける」と指摘した検察側証人について「適格性や資質に問題は認められない」と一蹴。圧痕をめぐる論争について「アクセルペダルを最大に踏み込んだ状態でさらに前方から衝突などの強い力がかかることで生じるものである」との寛証言はEDRデータにも整合し合理的で信用できるとした。
 EDRデータの信用性についても「私企業の設計・製造に係るものとはいえ(略)記録されたデータの正確性の高さから交通事故解析の資料としても使われ(略)自己診断機能も付いている。専用のツールを用いて正しい手順によれば誰が読みだしても同じデータが得られる上、システム上データの改変はできない仕様になっている」と認定。EDRデータに相互に矛盾する記録がある、との弁護側の主張について、それを否定する寛や吉田の証言に整合性、合理性がある、として退けた。

 そのうえで「本件車両の構造上、その一部に不具合が生じたとしても不具合の連鎖が生じて暴走状態に陥る可能性を低減させ、また生じた不具合が記録され易くする工夫が施されている」と認定。「事故時の発進・走行の原因となるような不具合が本件車両に存在したという現実的な可能性は考え難い」と結論づけた。
 石川側の「足が届かなかった」との主張については、「運転シート上における臀部の位置等によっては、被告人の左足がアクセルペダルを踏み込むことは可能であった(略)具体的な被告人の姿勢等については証拠上不明であるが、本件における罪となるべき事実の認定に支障を来すものではない」とし、さらに「被告人自身の再現には恣意性を完全には排除できない」とした。つまり、石川が「ずる」をして足を実際より縮めていた疑いが残る、との判断だ。これは石川のプライドを大いに傷つけたとみられる。

 事故の被害者側についても触れておかなければならない。石川が無罪を主張して起訴事実を争ったことが、事故の被害者遺族らにとっては責任逃れに映ったようだ。
 20年10月2日、検察側の論告に先立って行われた被害者側の意見陳述で、事故で亡くなった堀内の妻は「(法廷では)謝罪の言葉を聞きたかったが、被告は、自分は被害者だ、などと言い、胸をえぐられるようだった。命を返してほしい。今後は人を傷つけたり悲しませたりしない生き方をしてほしい」と声を震わせた。人一人死んでいるのに責任を認めないのか、という素朴な感情の発露だった。陳述後、石川は、堀内の妻に深々と頭を下げた。
 続いて意見陳述した店舗兼住宅を破壊された被害者は「過失がないとか、自分も被害者だとか、自分のことしか頭にない。執行猶予ではだめ」とさらに厳しかった。

 判決によると、石川が加入していた任意保険により堀内の遺族には1億1000万円を支払う示談が成立。建物被害者側とは示談交渉継続中だが、5000万円を超す損害賠償金が支払われたという。
 石川にくだされた禁固3年、執行猶予5年の判決は、同様の交通死亡事件と比較すると重い。被害者側が厳しい意見陳述をしたからといって裁判所の有罪無罪の判断に影響することはないとみられるが、量刑には一定の影響があったかもしれない。
第2ラウンドは
 かくして、かつて「特捜検察のエース」と呼ばれた男と古巣検察との闘いの第一幕は、元エースの完敗となった。だが、当の石川はさほどショックは受けておらず、さばさばとしているようだ。
「それほど、落ち込んでいない。かといって、かんかんに怒っているわけでもない。しょうがないね。(裁判所は)ちゃんと判断しないで、という感じ。控訴については弁護団と基本的に同じ考えだった」(小林弁護士)
 今年夏以降に審理が始まるとみられる控訴審では、一審判決について論理則、経験則と証拠の矛盾を主張するだけでは展望がない。頼りにしていた技術専門家証言を一蹴されているだけに、一審では審理されなかった新たな証拠がないと厳しい戦いとなる。

 弁護側は「控訴審において、本判決の不当性を明らかにし、被告人に対する無罪判決を勝ち取ることとする」と自信満々だ。何か、状況を変える「隠し玉」があるのだろうか。