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令和3年(行ヒ)第285号 行政措置要求判定取消、国家賠償請求事件 令和5年7月11日 第三小法廷判決

2023-07-12 | 民事

☆いわゆる経産省トイレ使用事件の最高裁判決です。

※引用
令和3年(行ヒ)第285号 行政措置要求判定取消、国家賠償請求事件 令和5年7月11日 第三小法廷判決 
主 文
 1 原判決中、人事院がした判定のうちトイレの使用に 係る部分の取消請求に関する部分を破棄し、同部分 につき被上告人の控訴を棄却する。 
2 上告人のその余の上告を棄却する。 
3 訴訟の総費用は、これを10分し、その1を被上告人の負担とし、その余を上告人の負担とする。
 理 由
 上告代理人山下敏雅ほかの上告受理申立て理由(ただし、排除された部分を除 く。)について 
1 本件は、一般職の国家公務員であり、性同一性障害である旨の医師の診断を 受けている上告人が、国家公務員法86条の規定により、人事院に対し、職場のト イレの使用等に係る行政措置の要求をしたところ、いずれの要求も認められない旨 の判定(以下「本件判定」という。)を受けたことから、被上告人を相手に、本件 判定の取消し等を求める事案である。
 2 原審の適法に確定した事実関係等の概要は、次のとおりである。
 ⑴ 国家公務員法86条は、職員は、俸給、給料その他あらゆる勤務条件に関 し、人事院に対して、人事院若しくは内閣総理大臣又はその職員の所轄庁の長によ り、適当な行政上の措置が行われることを要求することができる旨を規定し、同法 87条は、上記の要求のあったときは、人事院は、必要と認める調査、口頭審理そ の他の事実審査を行い、一般国民及び関係者に公平なように、かつ、職員の能率を 発揮し、及び増進する見地において、事案を判定しなければならない旨を規定する。
 ⑵ア 上告人(昭和▲▲年生まれ)は、平成▲年4月、≪略≫として採用され、  同16年5月以降、経済産業省の同一の部署で執務している。 上記部署の執務室がある庁舎(以下「本件庁舎」という。)には、男女別のトイ レが各階に3か所ずつ設置されている。なお、男女共用の多目的トイレは、上記執 務室がある階(以下「本件執務階」という。)には設置されていないが、≪略≫複 数の階に設置されている。
 イ 上告人は、生物学的な性別は男性であるが、幼少の頃からこのことに強い違 和感を抱いていた。上告人は、平成10年頃から女性ホルモンの投与を受けるよう になり、同11年頃には性同一性障害である旨の医師の診断を受けた。そして、上 告人は、平成18年頃までに、≪略≫を受けるなどし、同20年頃から女性として 私生活を送るようになった。 また、上告人は、平成22年3月頃までには、血液中における男性ホルモンの量 が同年代の男性の基準値の下限を大きく下回っており、性衝動に基づく性暴力の可 能性が低いと判断される旨の医師の診断を受けていた。なお、上告人は、健康上の 理由から性別適合手術を受けていない。
 ⑶ア 上告人は、平成21年7月、上司に対し、自らの性同一性障害について伝 え、同年10月、経済産業省の担当職員に対し、女性の服装での勤務や女性トイレ の使用等についての要望を伝えた。これらを受け、平成22年7月14日、経済産 業省において、上告人の了承を得て、上告人が執務する部署の職員に対し、上告人 の性同一性障害について説明する会(以下「本件説明会」という。)が開かれた。 担当職員は、本件説明会において、上告人が退席した後、上告人が本件庁舎の女性 トイレを使用することについて意見を求めたところ、本件執務階の女性トイレを使 用することについては、数名の女性職員がその態度から違和感を抱いているように 見えた。そこで、担当職員は、上告人が本件執務階の一つ上の階の女性トイレを使 用することについて意見を求めたところ、女性職員1名が日常的に当該女性トイレ も使用している旨を述べた。
 イ 本件説明会におけるやり取りを踏まえ、経済産業省において、上告人に対  し、本件庁舎のうち本件執務階とその上下の階の女性トイレの使用を認めず、それ 以外の階の女性トイレの使用を認める旨の処遇(以下「本件処遇」という。)を実 施することとされた。 上告人は、本件説明会の翌週から女性の服装等で勤務し、主に本件執務階から2 階離れた階の女性トイレを使用するようになったが、それにより他の職員との間で トラブルが生じたことはない。 また、上告人は、平成23年▲月、家庭裁判所の許可を得て名を現在のものに変 更し、同年6月からは、職場においてその名を使用するようになった。
 ⑷ 上告人は、平成25年12月27日付けで、国家公務員法86条の規定によ り、職場の女性トイレを自由に使用させることを含め、原則として女性職員と同等 の処遇を行うこと等を内容とする行政措置の要求をしたところ、人事院は、同27 年5月29日付けで、いずれの要求も認められない旨の判定(本件判定。以下、本 件判定のうち上記のトイレの使用に係る要求に関する部分を「本件判定部分」とい う。)をした。
 3 原審は、上記事実関係等の下において、要旨次のとおり判断し、本件判定部 分の取消請求を棄却した。 経済産業省において、本件処遇を実施し、それを維持していたことは、上告人を 含む全職員にとっての適切な職場環境を構築する責任を果たすための対応であった というべきであるから、本件判定部分は、裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用し たものとはいえず、違法であるということはできない。 
4 しかしながら、原審の上記判断は是認することができない。その理由は、次 のとおりである。
 ⑴ 国家公務員法86条の規定による行政措置の要求に対する人事院の判定にお いては、広範にわたる職員の勤務条件について、一般国民及び関係者の公平並びに 職員の能率の発揮及び増進という見地から、人事行政や職員の勤務等の実情に即し た専門的な判断が求められるのであり(同法71条、87条)、その判断は人事院  の裁量に委ねられているものと解される。したがって、上記判定は、裁量権の範囲 を逸脱し又はこれを濫用したと認められる場合に違法となると解するのが相当であ る。
 ⑵ これを本件についてみると、本件処遇は、経済産業省において、本件庁舎内 のトイレの使用に関し、上告人を含む職員の服務環境の適正を確保する見地からの 調整を図ろうとしたものであるということができる。 そして、上告人は、性同一性障害である旨の医師の診断を受けているところ、本 件処遇の下において、自認する性別と異なる男性用のトイレを使用するか、本件執 務階から離れた階の女性トイレ等を使用せざるを得ないのであり、日常的に相応の 不利益を受けているということができる。 一方、上告人は、健康上の理由から性別適合手術を受けていないものの、女性ホ ルモンの投与や≪略≫を受けるなどしているほか、性衝動に基づく性暴力の可能性 は低い旨の医師の診断も受けている。現に、上告人が本件説明会の後、女性の服装 等で勤務し、本件執務階から2階以上離れた階の女性トイレを使用するようになっ たことでトラブルが生じたことはない。また、本件説明会においては、上告人が本 件執務階の女性トイレを使用することについて、担当職員から数名の女性職員が違 和感を抱いているように見えたにとどまり、明確に異を唱える職員がいたことはう かがわれない。さらに、本件説明会から本件判定に至るまでの約4年10か月の間 に、上告人による本件庁舎内の女性トイレの使用につき、特段の配慮をすべき他の 職員が存在するか否かについての調査が改めて行われ、本件処遇の見直しが検討さ れたこともうかがわれない。 以上によれば、遅くとも本件判定時においては、上告人が本件庁舎内の女性トイ レを自由に使用することについて、トラブルが生ずることは想定し難く、特段の配 慮をすべき他の職員の存在が確認されてもいなかったのであり、上告人に対し、本 件処遇による上記のような不利益を甘受させるだけの具体的な事情は見当たらなか ったというべきである。そうすると、本件判定部分に係る人事院の判断は、本件における具体的な事情を踏まえることなく他の職員に対する配慮を過度に重視し、上 告人の不利益を不当に軽視するものであって、関係者の公平並びに上告人を含む職 員の能率の発揮及び増進の見地から判断しなかったものとして、著しく妥当性を欠 いたものといわざるを得ない。
 ⑶ したがって、本件判定部分は、裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用したも のとして違法となるというべきである。 
5 以上と異なる原審の判断には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違 反がある。論旨は理由があり、原判決中、本件判定部分の取消請求に関する部分は 破棄を免れない。そして、以上に説示したところによれば、上記請求は理由があ り、これを認容した第1審判決は正当であるから、上記部分につき被上告人の控訴 を棄却すべきである。 なお、上告人のその余の上告については、上告受理申立て理由が上告受理の決定 において排除されたので、棄却することとする。 よって、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
 なお、裁判官宇賀克也、同長嶺安政、同渡 惠理子、同林道晴、同今崎幸彦の各補足意見がある。 
 裁判官宇賀克也の補足意見は次のとおりである。 
1 本件で第1審と原審とで判断が分かれたのは、①上告人が女性ホルモンの投 与や≪略≫等により女性として認識される度合いが高いことがうかがわれ、その名 も女性に一般的なものに変更されたMtF(Male to Female)のトランスジェンダ ーであるものの、戸籍上はなお男性であるところ、このような状態にあるトランス ジェンダーが自己の性自認に基づいて社会生活を送る利益をどの程度、重要な法的 利益として位置付けるかについての認識の相違、及び②上告人がそのような状態に あるトランスジェンダーであることを知る同僚の女性職員が上告人と同じ女性トイ レを使用することに対する違和感・羞恥心等をどの程度重視するかについての認識 の相違によるのではないかと思われる。
 2 本件を検討するに当たって、上告人が戸籍上はなお男性であることをどのように評価するかが問題になる。本件で、経済産業省は、上告人が戸籍上も女性にな れば、トイレの使用についても他の女性職員と同じ扱いをするとの方針であったこ とがうかがわれるが、現行の性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律の 下では、上告人が戸籍上の性別を変更するためには、性別適合手術を行う必要があ る。これに関する規定の合憲性について議論があることは周知のとおりであるが、 その点は措くとして、性別適合手術は、身体への侵襲が避けられず、生命及び健康 への危険を伴うものであり、経済的負担も大きく、また、体質等により受けること ができない者もいるので、これを受けていない場合であっても、可能な限り、本人 の性自認を尊重する対応をとるべきといえる。本件においても、上告人は、当面、 性別適合手術を受けることができない健康上の理由があったというのであり、性別 適合手術を受けておらず、戸籍上はなお男性であっても、経済産業省には、自らの 性自認に基づいて社会生活を送る利益をできる限り尊重した対応をとることが求め られていたといえる。
 3 経済産業省は、職員の能率が充分に発揮され、かつ、その増進が図られるよ うに服務環境を整備する義務を負っているところ(国家公務員法71条1項)、庁 舎内のトイレについて、上告人の自らの性自認に基づいて社会生活を送る利益に配 慮するとともに、同僚の職員の心情にも配慮する必要がある。本件で経済産業省 が、女性職員が上告人と同じ女性トイレを使用することに対する違和感・羞恥心等 を重視してとった対応が上告人の自らの性自認に基づいて社会生活を送る利益に対 する制約として正当化できるかを検討すると、法廷意見が指摘するとおり、上告人 が女性トイレを使用することにより、トラブルが生ずる具体的なおそれはなかった と認められる。 そして、本件判定が行われた平成27年5月29日の時点では、上告人が女性の 服装で勤務を開始してから4年10か月以上経過しており、上告人がその名を変更 し職場においてその名を使用するようになった平成23年6月からは約4年が経過 していた。したがって、本件判定時には、たとえ、上告人がMtFのトランスジェンダーで戸籍上はなお男性であることを認識している女性職員が、本件執務階とそ の上下の階の女性トイレを使用する可能性があったとしても、そのことによる支障 を重視すべきではなく、上告人が自己の性自認に基づくトイレを他の女性職員と同 じ条件で使用する利益を制約することを正当化することはできないと考えられる。 さらに、上告人が戸籍上は男性であることを認識している同僚の女性職員が上告 人と同じ女性トイレを使用することに対して抱く可能性があり得る違和感・羞恥心 等は、トランスジェンダーに対する理解が必ずしも十分でないことによるところが 少なくないと思われるので、研修により、相当程度払拭できると考えられる。上告 人からカミングアウトがあり、平成21年10月に女性トイレの使用を認める要望 があった以上、本件説明会の後、当面の措置として上告人の女性トイレの使用に一 定の制限を設けたことはやむを得なかったとしても、経済産業省は、早期に研修を 実施し、トランスジェンダーに対する理解の増進を図りつつ、かかる制限を見直す ことも可能であったと思われるにもかかわらず、かかる取組をしないまま、上告人 に性別適合手術を受けるよう督促することを反復するのみで、約5年が経過してい る。この点については、多様性を尊重する共生社会の実現に向けて職場環境を改善 する取組が十分になされてきたとはいえないように思われる。
 4 結論として、本件判定部分は、本件の事実関係の下では、人事院の裁量権の 行使において、上告人がMtFのトランスジェンダーで戸籍上はなお男性であるこ とを認識している女性職員が抱くかもしれない違和感・羞恥心等を過大に評価し、 上告人が自己の性自認に基づくトイレを他の女性職員と同じ条件で使用する利益を 過少に評価しており、裁量権の逸脱があり違法として取消しを免れないと思われる。 裁判官長嶺安政の補足意見は次のとおりである。 私は、法廷意見に賛成であるが、さらに以下の点を敷衍しておきたい。 本件説明会において、担当職員が、数名の女性職員の態度から違和感を抱いてい ると見たことから、経済産業省としては、職員間の利益の調整を図ろうとして、本 件処遇を導入したものと認められるところではあるが、トイレの使用への制約という面からすると、不利益を被ったのは上告人のみであったことから、調整の在り方 としては、本件処遇は、均衡が取れていなかったといわざるを得ない。もっとも、 上告人は、本件説明会の翌週から女性の服装等で勤務するようになったというので あるから、本件処遇は、急な状況の変化に伴う混乱等を避けるためのいわば激変緩 和措置とみることができ、上告人が異を唱えなかったことも併せて考慮すれば、平 成22年7月の時点において、一定の合理性があったと考えることは可能である。 しかし、本件判定時に至るまでの4年を超える間、上告人は、職場においても一 貫して女性として生活を送っていたことを踏まえれば、経済産業省においては、本 件説明会において担当職員に見えたとする女性職員が抱く違和感があったとしても、それが解消されたか否か等について調査を行い、上告人に一方的な制約を課し ていた本件処遇を維持することが正当化できるのかを検討し、必要に応じて見直し をすべき責務があったというべきである。そして、この間、上告人によるトイレ使 用をめぐり、トラブルが生じることもなかったというのである。上記の経緯を勘案 し、また、自認する性別に即して社会生活を送ることは、誰にとっても重要な利益 であり、取り分けトランスジェンダーである者にとっては、切実な利益であるこ と、そして、このような利益は法的に保護されるべきものと捉えられることに鑑み れば、法廷意見がいうように、人事院が上告人のトイレの使用に係る要求を認めな いとした本件判定部分は、著しく妥当性を欠いたものであると考える次第である。 
 裁判官渡 惠理子の補足意見は次のとおりである。
 私は、その主文および理由ともに、法廷意見に賛同するものであるが、トランス ジェンダー(MtF)である上告人による本件庁舎内のトイレ利用の検討について 補足意見を述べておきたい。 私は、経済産業省に施設管理権等に基づく一定の裁量が認められることを否定す るものではないが、原判決も認めるとおり、性別は、社会生活や人間関係における 個人の属性として、個人の人格的な生存と密接かつ不可分であり、個人がその真に 自認する性別に即した社会生活を送ることができることは重要な法益として、その判断においても十分に尊重されるべきものと考える。 もっとも、重要な法益であっても、他の利益と抵触するときは、合理的な制約に 服すべきことはいうまでもなく、生物学的な区別を前提として男女別トイレを利用 している職員に対する配慮も必要であり、したがって、本件についてみれば、トラ ンスジェンダーである上告人と本件庁舎内のトイレを利用する女性職員ら(シスジ ェンダー)の利益が相反する場合には両者間の利益衡量・利害調整が必要となるこ とを否定するものではない。 しかしながら、女性職員らの利益を軽視することはできないものの、上告人にと っては人として生きていく上で不可欠ともいうべき重要な法益であり、また、性的 マイノリティに対する誤解や偏見がいまだ払拭することができない現状の下では、 両者間の利益衡量・利害調整を、感覚的・抽象的に行うことが許されるべきではな く、客観的かつ具体的な利益較量・利害調整が必要であると考えられる。本件につ いてみれば、上告人は、性別適合手術を受けていないものの、本件説明会の翌週か ら女性の服装等で勤務するようになり、社会生活を送るに当たって、行動様式や振 る舞い、外見の点を含め、女性として認識される度合いが高いものであったという ことができたのであり、上告人による女性トイレの利用に当たっては、法廷意見や 1審判決が判示するとおり、女性職員らの守られるべき利益(上告人の利用によっ て失われる女性職員らの利益)とは何かをまず真摯に検討することが必要であり、 また、そのような女性職員らの利益が本当に侵害されるのか、侵害されるおそれが あったのかについて具体的かつ客観的に検討されるべきである。 そして、本件についてみれば、経済産業省は本件説明会において女性職員が違和 感を抱いているように「見えた」ことを理由として、上告人に対しては執務する部 署が存在する階のみならずその上下の階、あわせて3フロアの女性トイレの利用も 禁止するという本件処遇を決定し、その後も、上告人が性別適合手術を受けず、戸 籍上の記載が男性であることを理由にこれを見直すことなく約4年10か月にわた り本件処遇を維持してきたものであり、このような経済産業省の対応が合理性を欠 - 10 - くことは明らかであり、また、上告人に対してのみ一方的な制約を課すものとして 公平性を欠くものといわざるを得ない。とりわけ、一般に、当初はトランスジェン ダーによる自認する性別のトイレ利用に違和感を持ったとしても当該対象者の事情 を認識し、理解することにより、時間の経過も相まって緩和・軽減することがある とする指摘がなされており(一件記録によれば、このように考えていた女性職員ら が存在したこともうかがわれる)、また、誤解に基づく不安などの解消のためトラ ンスジェンダーの法益の尊重にも理解を求める方向で所要のプロセスを履践するこ とも重要であるという指摘もなされている。そして、このような観点からは、仮に 経済産業省が当初の女性職員らからの戸惑いに対応するため、激変緩和措置とし て、暫定的に、執務する部署が存在する階のみの利用を禁止する(その必要性には 疑問が残るが、たとえ上下2フロアの女性トイレ利用まで禁止する)としても、徒 らに性別適合手術の実施に固執することなく、施設管理者等として女性職員らの理 解を得るための努力を行い、漸次その禁止を軽減・解除するなどの方法も十分にあ り得たし、また、行うべきであった。 また、原審の認定事実によっても、本件説明会において女性職員らが異議を述べ なかったことの理由は明らかではない。上告人が男性であると認識していたため に、上告人が女性トイレの利用を希望することを知って戸惑う女性職員が存在する ことそれ自体は自然な流れであるとしても、本件説明会において女性職員らが異議 を述べなかった理由は一義的ではなく複数あり得るものである。すなわち、女性職 員らが、上告人にその自認する性別のトイレ利用を認めるべきであるとの認識の下 で異議を述べなかったことも考えられる(一件記録によれば、このような女性職員 の存在もうかがわれる)。また、女性職員らが、異議ある旨の意見を多数の前で述 べることに気後れした可能性がないとは言い切れないものの、戸惑いながらも上告 人の立場を配慮するとやむを得ないと考えた場合や反対することは適切ではないの ではないかと考えた場合(一件記録によれば、このように考えた女性職員らの存在 もうかがわれる)などの理由による場合も十分にあり得ると考えられる。原判決が、こういった女性職員らの多様な反応があり得ることを考慮することな く、「性的羞恥心や性的不安などの性的利益」という感覚的かつ抽象的な懸念を根 拠に本件処遇および本件判定部分が合理的であると判断したとすると、多様な考え 方の女性が存在することを看過することに繋がりかねないものと懸念する。 以上のとおり、トイレの利用に関する利益衡量・利害調整については、確かに社 会においてこれまで長年にわたって生物学的な性別に基づき男女の区別がなされて きたことやそのような区別を前提としたトイレを利用してきた職員に対する配慮は 不可欠であり、また、性的マイノリティである職員に係る個々の事情や、例えば、 職場のトイレであっても外部の者による利用も考えられる場合には不審者の排除な どのトイレの安全な利用等も考慮する必要が生じるといった施設の状況等に応じて 変わり得るものである。したがって、取扱いを一律に決定することは困難であり、 個々の事例に応じて判断していくことが必要になることは間違いない。 しかしながら、いずれにしても、施設管理者等が、女性職員らが一様に性的不安 を持ち、そのためトランスジェンダー(MtF)の女性トイレの利用に反対すると いう前提に立つことなく、可能な限り両者の共棲を目指して、職員に対しても性的 マイノリティの法益の尊重に理解を求める方向での対応と教育等を通じたそのプロ セスを履践していくことを強く期待したい。
 裁判官林道晴は、裁判官渡 惠理子の補足意見に同調する。
 裁判官今崎幸彦の補足意見は次のとおりである。 
トランスジェンダーの人々が、社会生活の様々な場面において自認する性にふさ わしい扱いを求めることは、ごく自然かつ切実な欲求であり、それをどのように実 現させていくかは、今や社会全体で議論されるべき課題といってよい。トイレの使 用はその一例にすぎないが、取組の必要性は、例えばMtF(Male to Female)の トランスジェンダーが意に反して男性トイレを使用せざるを得ないとした場合の精 神的苦痛を想像すれば明らかであろう。 本件説明会において、上告人は、女性職員を前に自らがトランスジェンダーであることを明らかにしているが、引き続き行われた意見聴取の際には女性職員から表 立っての異論は出されていない。その後上告人は本件処遇に従い使用を許された階 の女性トイレを使用しているところ、その期間は本件判定の時点で約4年10か月 (休職期間を除いても約3年8か月)にわたっているが、その間何らの問題も生じ ていない。加えて、原審の認定事実によれば、本件説明会に先立ち、上告人は、平 成10年頃から継続的に女性ホルモンの投与を受け、平成20年頃からは私的な時 間の全てを女性として過ごすようになっており、そのことを原因として問題が生じ たことはなかったというのである。 法廷意見は、こうした事案において、直接には上告人の行政措置要求に対する人 事院の本件判定部分の当否を判断の対象としているが、実質においては上告人に対 する経済産業省当局の一連の対応の評価が核心であったことはいうまでもない。そ の観点から得るべき教訓を挙げるとすれば、この種の問題に直面することとなった 職場における施設の管理者、人事担当者等の採るべき姿勢であり、トランスジェン ダーの人々の置かれた立場に十分に配慮し、真摯に調整を尽くすべき責務があるこ とが浮き彫りになったということであろう。 課題はその先にある。例えば本件のような事例で、同じトイレを使用する他の職 員への説明(情報提供)やその理解(納得)のないまま自由にトイレの使用を許容 すべきかというと、現状でそれを無条件に受け入れるというコンセンサスが社会に あるとはいえないであろう。そこで理解・納得を得るため、本件のような説明会を 開催したり話合いの機会を設けたりすることになるが、その結果消極意見や抵抗 感、不安感等が述べられる可能性は否定できず、そうした中で真摯な姿勢で調整を 尽くしてもなお関係者の納得が得られないという事態はどうしても残るように思わ れる(杞憂であることを望むが)。情報提供についても、どのような場合に、どの 範囲の職員を対象に、いかなる形で、どの程度の内容を伝えるのか(特に、本人が トランスジェンダーであるという事実を伝えるか否かは場合によっては深刻な問題 になる。もとより、本人の意思に反してはならないことはいうまでもない。)といった具体論になると、プライバシーの保護と関係者への情報提供の必要性との慎重 な較量が求められ、事案によって難しい判断を求められることになろう。 こうした種々の課題について、よるべき指針や基準といったものが求められるこ とになるが、職場の組織、規模、施設の構造その他職場を取りまく環境、職種、関 係する職員の人数や人間関係、当該トランスジェンダーの職場での執務状況など事 情は様々であり、一律の解決策になじむものではないであろう。現時点では、トラ ンスジェンダー本人の要望・意向と他の職員の意見・反応の双方をよく聴取した上 で、職場の環境維持、安全管理の観点等から最適な解決策を探っていくという以外 にない。今後この種の事例は社会の様々な場面で生起していくことが予想され、そ れにつれて頭を悩ませる職場や施設の管理者、人事担当者、経営者も増えていくも のと思われる。既に民間企業の一部に事例があるようであるが、今後事案の更なる 積み重ねを通じて、標準的な扱いや指針、基準が形作られていくことに期待した い。併せて、何よりこの種の問題は、多くの人々の理解抜きには落ち着きの良い解 決は望めないのであり、社会全体で議論され、コンセンサスが形成されていくこと が望まれる。 なお、本判決は、トイレを含め、不特定又は多数の人々の使用が想定されている 公共施設の使用の在り方について触れるものではない。この問題は、機会を改めて 議論されるべきである。 (裁判長裁判官 今崎幸彦 裁判官 宇賀克也 裁判官 林 道晴 裁判官 長嶺安政 裁判官 渡 惠理子)

誰のためのIT化か

2022-05-18 | 民事



今年に入り九弁連大会のシンポのテーマを募った際に

「誰のためのIT化か」

というテーマの応募がありました。
拙速という批判も聞かないうちに改正法が成立したということです。

一番正解に近いのは「裁判所のため」ではないかと思います。

それにしても
6カ月以内に審理を終える裁判に同意する弁護士がどれだけいるか。
同意しないことが繰り返されると裁判所がプレッシャーをかけてくるのではないか。
など今後の運用も気がかりです。

★引用


 民事裁判や離婚調停を全面的にIT化する民事訴訟法などの改正案が17日、参院法務委員会で可決され、18日の本会議で成立する見通しとなった。記録の電子化、オンライン提出、ウェブ会議などが一気に進む。裁判所はシステムの構築を進め、2025年度までに順次、実現する。 

司法IT化で裁判はこう変わる 

 民事裁判のIT化では、記録は原則電子化され、訴状の提出から判決の送達までオンラインで可能になる。オンラインでのやり取りは、弁護士らは義務化されるが、弁護士をつけない原告・被告には従来通りの紙での運用も認める。  法廷の審理も、原告・被告は口頭弁論にウェブ会議で参加できるようになるほか、遠くに住む証人に限って認めていた証人尋問のウェブ参加条件もなくなる。
  IT化により、膨大な紙を持ち寄っていた裁判を効率化、迅速化し、利用しやすくする。IT化の遅れで外国企業が日本での訴訟を敬遠し、日本企業が他国での裁判を強いられる現状の解消も期待されている。
  手続き面では、双方が同意すれば6カ月以内に審理を終え、その後1カ月で判決を出す制度ができる。双方が争った訴訟の地裁審理は平均13・9カ月(20年)かかっており、スピード決着で使い勝手を高める。  
 性犯罪やDV(家庭内暴力)を受けた被害者が提訴する場合、安全確保のために訴状などに住所や氏名を記載しなくていい秘匿制度も創設される。 
 また、離婚調停を全てIT化する家事事件手続法の改正案も成立する。

明日(2022年4月1日)たくさんの人が成年年齢に達します

2022-03-31 | 民事

★ 明日の時点で18歳以上20歳未満の方(2002年4月2日生まれから2004年4月1日生まれまでの方)は,明日(2022年4月1日)成年に達することになります。

いろいろ関連する問題がありますね。 

法務省のHPからの引用です。
※引用
 成年年齢の引下げに関して,よくある質問をQ&Aとして記載しています。

【目次】
Q1 どうして民法の成年年齢を18歳に引き下げるのですか?
Q2 成年年齢は,いつから18歳になるのですか?
Q3 成年年齢の引き下げによって,18歳で何ができるようになるのですか?
Q4 お酒やたばこが解禁される年齢も18歳になるのですか?
Q5 消費者被害の拡大が懸念されていますが,どのような対策をとるのですか?
Q6 養育費はどうなるのですか?
Q7 どうして女性の婚姻開始年齢を18歳に引き上げるのですか?
Q8 成人式はどうなりますか?

【説明】
Q1 どうして民法の成年年齢を18歳に引き下げるのですか?
A 我が国における成年年齢は,明治9年以来,20歳とされています。
  近年,憲法改正国民投票の投票権年齢や,公職選挙法の選挙権年齢などが18歳と定められ,国政上の重要な事項の判断に関して,18歳,19歳の方を大人として扱うという政策が進められてきました。こうした政策を踏まえ,市民生活に関する基本法である民法においても,18歳以上の人を大人として取り扱うのが適当ではないかという議論がされるようになりました。世界的にも,成年年齢を18歳とするのが主流です。  成年年齢を18歳に引き下げることは,18歳,19歳の若者の自己決定権を尊重するものであり,その積極的な社会参加を促すことになると考えられます。
 
Q2 成年年齢は,いつから18歳になるのですか?
A 成年年齢を18歳に引き下げることを内容とする「民法の一部を改正する法律」は,2022年4月1日から施行されます。
  2022年4月1日の時点で,18歳以上20歳未満の方(2002年4月2日生まれから2004年4月1日生まれまでの方)は,その日に成年に達することになります。  2004年4月2日生まれ以降の方は,18歳の誕生日に成年に達することになります。
 
Q3 成年年齢の引き下げによって,18歳で何ができるようになるのですか?
A 民法の成年年齢には,一人で有効な契約をすることができる年齢という意味と,父母の親権に服さなくなる年齢という意味があります。
  成年年齢の引下げによって,18歳,19歳の方は,親の同意を得ずに,様々な契約をすることができるようになります。例えば,携帯電話を購入する,一人暮らしのためのアパートを借りる,クレジットカードを作成する(支払能力の審査の結果,クレジットカードの作成ができないことがあります。),ローンを組んで自動車を購入する(返済能力を超えるローン契約と認められる場合,契約できないこともあります。),といったことができるようになります。
  なお,2022年4月1日より前に18歳,19歳の方が親の同意を得ずに締結した契約は,施行後も引き続き,取り消すことができます。
  また,親権に服することがなくなる結果,自分の住む場所(居所)を自分の意思で決めたり,進学や就職などの進路決定についても,自分の意思で決めることができるようになります。もっとも,進路決定について,親や学校の先生の理解を得ることが大切なことに変わりはありません。  そのほか,10年有効パスポートの取得や,公認会計士や司法書士などの国家資格に基づく職業に就くこと(資格試験への合格等が必要です。),性別の取扱いの変更審判を受けることなどについても,18歳でできるようになります。
 
Q4 お酒やたばこが解禁される年齢も18歳になるのですか?
A 民法の成年年齢が18歳に引き下げられても,お酒やたばこに関する年齢制限については,20歳のまま維持されます。また,公営競技(競馬,競輪,オートレース,モーターボート競走)の年齢制限についても,20歳のまま維持されます。  これらは,健康被害への懸念や,ギャンブル依存症対策などの観点から,従来の年齢を維持することとされています。
 
Q5 消費者被害の拡大が懸念されていますが,どのような対策をとるのですか?
A 民法では,未成年者が親の同意を得ずに契約した場合には,原則として,契約を取り消すことができるとされています(未成年者取消権)。未成年者取消権は未成年者を保護するためのものであり,未成年者の消費者被害を抑止する役割を果たしてきました。成年年齢を18歳に引き下げた場合には,18歳,19歳の方は,未成年者取消権を行使することができなくなるため,悪徳商法などによる消費者被害の拡大が懸念されています。  政府としては,小・中・高等学校等における消費者教育の充実(例:契約の重要性,消費者の権利と責任など)や,若者に多い消費者被害を救済するための消費者契約法の改正,全国共通の3桁の電話番号である消費者ホットライン188の周知や相談窓口の充実など,様々な環境整備の施策に取り組んできました。
  今後も,「成年年齢引下げを見据えた環境整備に関する関係府省庁連絡会議」を開催して,政府全体で環境整備に取り組んでいきたいと考えています。
 
Q6 養育費はどうなるのですか?
A 子の養育費について,「子が成年に達するまで養育費を支払う」との取決めがされていることがあります。成年年齢が引き下げられた場合にこのような取決めがどうなるか心配になるかもしれませんが,取決めがされた時点では成年年齢が20歳であったことからしますと,成年年齢が引き下げられたとしても,従前どおり20歳まで養育費の支払義務を負うことになると考えられます。
  また,養育費は,子が未成熟であって経済的に自立することを期待することができない場合に支払われるものなので,子が成年に達したとしても,経済的に未成熟である場合には,養育費を支払う義務を負うことになります。このため,成年年齢が引き下げられたからといって,養育費の支払期間が当然に「18歳に達するまで」ということになるわけではありません。例えば,子が大学に進学している場合には,大学を卒業するまで養育費の支払義務を負うことも多いと考えられます。
  なお,今後,新たに養育費に関する取決めをする場合には,「22歳に達した後の3月まで」といった形で,明確に支払期間の終期を定めることが望ましいと考えられます。
 
Q7 どうして女性の婚姻開始年齢を18歳に引き上げるのですか?
A 現在,婚姻開始年齢(結婚ができるようになる年齢)に男女差が設けられているのは,男女間で心身の発達に差異があるためであるとされています。しかし,社会・経済の複雑化が進展した今日では,婚姻開始年齢の在り方に関しても,社会的,経済的な成熟度をより重視すべき状況になっています。そして,社会的・経済的な成熟度といった観点からは,男女間に特段の違いはないと考えられることから,婚姻開始年齢における男女の取扱いの差異を解消することにしたものです。
  その上で,高校等進学率が98パーセントを超えていることなどからしますと,婚姻をするには,少なくとも18歳程度の社会的・経済的成熟が必要であると考え,女性の婚姻開始年齢を18歳に引き上げることとしたものです。
  女性の婚姻開始年齢の引上げについても,2022年4月1日から施行されます。
  なお,2022年4月1日の時点で既に16歳以上の女性は,引き続き,18歳未満でも結婚することができます。
 
Q8 成人式はどうなりますか?
A 成人式の時期や在り方に関しては,現在,法律による決まりはなく,各自治体の判断で実施されていますが,多くの自治体では,1月の成人の日前後に,20歳の方を対象に実施しています。
  成年年齢が18歳に引き下げられた場合には,そもそも18歳の方を対象とするのか,高校3年生の1月という受験シーズンに実施するのか,2022年度は3学年分同時に実施するのかといった問題があると指摘されています。
  政府としては,成年年齢引下げを見据えた環境整備に関する関係府省庁連絡会議において,関係者の意見や各自治体の検討状況を取りまとめた上で情報発信し,各自治体がその実情に応じた対応をすることができるよう取り組んでいきたいと考えています。


損害賠償事件 判決  大分地裁

2021-03-17 | 民事
★ 加治木支部や都城支部でお世話になった 府内裁判官の名前が・・・

事故態様とかは記事だけではよく分からないので、何とも言えません。
このような事故態様をカバーする損害保険の対象範囲内であれば
保険会社としても詳細な主張立証をすることになります。
過失相殺の点について参考になる先例なのか気になります。

毎日新聞の記事からです。
※引用

中学生に790万円賠償命令 徒歩でぶつかり79歳転倒、後遺症

 大分市で歩いて登校中の13歳の女子中学生(当時)にぶつかられた79歳(同)の女性が、転倒したけがで後遺症が残ったなどとして約1150万円の賠償を求めた訴訟の判決で、大分地裁が中学生に約790万円の支払いを命じていた。府内覚裁判官は「中学生が注意義務を怠った過失がある」と認定し、過失相殺も認めなかった。
 判決などによると、女子中学生は2017年9月、学校近くの通学路の歩道(幅約2・2メートル)を、同級生と2人で歩いて登校。前方の生徒4人を追い抜く際に、前から歩いてきた女性とぶつかった。両手に野菜を持っていた女性は尻餅をつき、腰の骨を折った。その後、女性は脊椎(せきつい)に運動障害を残すなどの後遺症があった。

 女性側は「中学生は歩行者を追い抜こうとしたのだから、進行方向から対向してくる歩行者がいないことを確認する注意義務があった」と主張。中学生側は「いきなり速度を上げたり、進路を変えたりするような危険行為はしておらず、歩行者同士が多少ぶつかることはやむを得ない」と反論していた。
 判決で府内裁判官は「歩道は約2・2メートルの幅しかなく、歩行者同士が衝突する具体的な危険が発生していた。中学生は安全に留意することなく漫然と生徒を追い抜こうとしており注意義務を怠った」と指摘。「事故の発生に女性に寄与があったとは認められず、過失相殺をするのは相当ではない」と判断した。判決は15日付。




逸失利益 定期金賠償

2020-07-09 | 民事
図らずも、交通事故関係の紹介が多くなっていますが、

逸失利益の定期金賠償が認められました。

中間利息控除の話と絡みますが、現状では、被害者にとっては有利な方向でしょうか。
「相当な場合」について判例が集積されるかな?
判例の末尾の紹介

「定期金による賠償に関する実体規定が存しないことから,どのような場合 に,あるいは,どのような事情を考慮して定期金による賠償の対象となると解する ことができるか(相当性の判断)については,解釈に委ねられている。この点については,不法行為に基づく損害賠償制度の目的及び理念に照らし,定期金による賠 償制度の趣旨,手続規定である判決の変更を求める訴えの提起の要件との関連性等 を考慮して検討すべきものであると考えられ,定期金による賠償に伴う債権管理等 の負担,損害賠償額の等価性を保つための擬制的手法である中間利息控除に関する 利害を考慮要素として重視することは相当ではないように思われる。」
 
※引用

 交通事故で重い障害が残った場合、将来の労働で得られるはずだった「逸失利益」の賠償方法が争われた訴訟の上告審判決が9日、最高裁第1小法廷であった。  小池裕裁判長は、被害者側が求めた毎月一定額の定期払いを認めた一、二審判決を維持し、保険会社側の上告を退けた。  後遺障害の逸失利益の賠償方法について、最高裁で争われたのは初めて。小法廷は「交通事故の被害者が後遺障害の逸失利益について定期金賠償を求めている場合、損害賠償制度の目的理念に照らし相当と認められるときは、定期金賠償の対象となる」とする初判断を示した。保険実務への影響が見込まれる。  原告の男性(17)は4歳だった2007年2月、北海道の市道を横断中に大型トラックと衝突。高次脳機能障害で「生涯働くことはできない」と診断され、運転手や保険会社などに損害賠償を求めた。逸失利益については、実務上原則となっている一括の「一時金賠償」ではなく、毎月一定額を受け取る「定期金賠償」を求めた。  保険会社側は賠償方法を争ったが、一審札幌地裁は「被害者が望めば定期金賠償は可能。民事訴訟法もその前提に立っている」と判断。事故がなければ就労可能だった18~67歳まで、毎月約35万円を支払うよう命じた。二審札幌高裁も、定期金賠償であれば後遺障害や賃金水準が変化した場合、賠償額の変更申し立てが可能と指摘し、「男性側の請求は、特質を踏まえた正当なものだ」と追認していた。 



民事裁判のIT化福岡地裁などウェブ会議導入へ

2020-02-03 | 民事
★ 民事裁判のIT化

一部地裁ではじまるのは、とりあえずやってみようということなんでしょうか。
成果が出るのかよくわかりませんが、真面目に取り組む人が馬鹿を見ないような仕組みにしてほしいですね。

西日本新聞からの引用です。

※引用

 争点整理手続きにウェブ会議などを導入する民事裁判のIT化が2月3日に一部地裁で始まるのを前に、福岡地裁は30日、模擬手続きを報道陣に公開した。モニター上に顔が見える状態で地裁の2部屋をインターネットでつなぎ、代理人弁護士役の裁判官らが主張の確認を実践した。
 ウェブ会議などの手続きは東京、大阪、名古屋など全国8地裁と知的財産高裁(東京)で運用が始まる。九州では福岡で先行し、他の地裁でも順次開始される予定。
 この日は、土地の賃貸借契約に関する模擬訴訟のウェブ会議が公開された。裁判官と書記官、被告の代理人役がいる部屋と、原告の代理人役がいる部屋をつなぎ、モニター上で土地の契約書を示しながら双方の主張を確認した。
 民事裁判では争点整理のため非公開の弁論準備手続きが行われるが、遠方の代理人は電話で参加することが一般的。模擬手続きを担当した福岡地裁の古市文孝裁判官は「従来の電話会議とは異なり、代理人の表情を見ながら書面を使って込み入った議論もできる。裁判の迅速化にもつながるのではないか」と話した。 


遺産分割の協議、期限10年=所有者不明土地で対策―法制審原案

2019-11-29 | 民事
★ 10年の期間をどう考えるかですね。

所有権の放棄ができると定めた場合にその手続とか国有化された土地の管理の問題は結構出てきそうな気がしますが・・・

時事通信の記事からです
※引用

遺産分割の協議、期限10年=所有者不明土地で対策―法制審原案
 所有者不明土地の対策をめぐり、法制審議会(法相の諮問機関)が年内にまとめる中間試案の原案が分かった。土地の遺産分割に関する協議期限を10年と定め、それ以降は民法の「法定相続分」を適用する。原案は12月3日の法制審部会に提示される。
 土地の所有者が死亡すると、配偶者や子といった「相続人」が協議し、遺産分割を行う。しかし、期限は現在設けられておらず、相続人の所在が分からないなどの理由で協議されないまま、土地が放置されるケースが多かった。そのため、原案には遺産分割の協議が行われず10年が経過すれば、法定相続分に応じた分割が可能と明記する。
 期限を設定することで、遺産分割の協議を促すとともに、所有者が分からない土地の増加を抑えることが期待されている。
 原案は、土地の所有者が死亡した際の相続登記の申請を義務付ける。価値の低い土地などでは煩雑な手続きを嫌って、登記しないケースがあることが指摘されている。一定期間内に登記申請を行わなかった場合、罰則を科すことを盛り込む。あわせて、登記手続きを簡素化し、法定相続人が全員そろわなくても登記を認める。
 また、民法が現在認めていない土地所有権の放棄も可能とする。権利の帰属に争いがないことや、管理が容易なことが条件。所有権が放棄された土地は民法の規定で国有地となる。 


民事手続 IT化 模擬裁判

2019-10-11 | 民事
昨日はIT模擬裁判の第1回目を見ました。
もう古い話ですが、民事裁判の新様式導入ののち
弁論準備手続終了時点で争点整理書面を作る扱いが
あったと思うのですが
裁判官によって必ず作る人と作らない人があったりして
いつの間にか廃れていった記憶があります。
そういう整理書面を一緒に作りましょう的なことなのかなあとは思いましたが
裁判官が大好きな要件事実のチャートにきれいに乗っかる事件は良いとしても
(ホントに良いかどうかは疑問だけど)
そういう事件ばかりではないよな気もするし
昨日もありましたが、「そこは当事者に確認します」で
そのうち、当事者も横に座ることになり・・・その手続が煩雑になって
「じゃあ裁判所の期日でやりましょうか」・・・
となるような気もしました。 



民事訴訟の迅速化

2019-09-04 | 民事
★ IT化の議論と絡めてのことですが初耳でした。

予算要求をする以上は、何らかの成果のアピールが必要不可欠なのでしょう。

それにしても、上から目線の裁判官や法務官僚は、

「なんでこんなに時間がかかるんだよ。」 

と思っていらっしゃるんでしょうね。

あまり、良い弁護修習を受けられていないものと想像します。

共同通信の記事からです。
※引用


 最高裁や法務省などでつくる研究会が、民事裁判の審理を半年以内に終える特別な訴訟手続きの導入を検討していることが3日、関係者への取材で分かった。原告が希望し、被告が同意すれば、争点を絞り込むなどして審理を迅速化する。審理期間は3分の1ほどに短縮される見通しで、早期決着が必要な企業間紛争などに対応しやすくなるとしている。
 研究会は民事裁判のIT化を検討しており、報告書を年内にまとめる方針。来年2月の法制審議会で民事訴訟法の改正が諮問される見通しで、報告書は参考資料となる。
 最高裁の統計では、2018年に終了した一般的民事裁判は審理に平均16カ月かかっている。




訴訟費用の負担

2019-07-23 | 民事
結論的にはおかしいんじゃないだろうか。
こういうケースでも支払う方向で和解を勧めるんですね。
裁判官は疑問を感じないんだろうか。
感じつつも自分の正義に照らして和解を勧めるんでしょうね。

※引用

父親が起こした裁判、当時4歳の原告が費用負担 122万円を10年分割 仙台高裁で和解

 仙台市泉区の分譲マンションで罹患(りかん)したシックハウス(SH)症候群を巡る訴訟で敗訴した提訴時4歳の原告女性(19)に対し、国が手数料や鑑定費などの訴訟費用の負担を求めた訴訟は17日、仙台高裁で和解した。遅延損害金を含む債権計約122万円を女性が負担すると確認した上で、今後10年間は毎月500円の分割払いとし、10年後に残額全てを支払う内容。
 和解条項には「仙台地裁の歳入徴収官は債権の発生原因や内容に十分に配慮し、支払いの延期や債権内容の変更、免除を含む管理事務を適正に処理する」との内容が盛り込まれた。
 昨年9月の仙台地裁判決によると、女性は2005年にSH症候群と診断された。父親を法定代理人とし東京の大手不動産会社に損害賠償を求める訴えを同地裁に起こし、12年に最高裁で敗訴が確定した。
 母親は既に死亡し、父親は敗訴後に訴訟費用の免責許可決定を受け、訴訟費用約92万円が女性の負担とされた。女性側は実質的に訴訟を起こした父親が支払い義務を負うと主張。地裁は「父親による訴訟行為と女性の訴訟費用の負担(義務)は別問題」と判断した。
 女性側の千葉晃平弁護士は「現行法上は当時4歳でも親が起こした訴訟の費用負担を求められてしまうのが現実。同様の事態を避けるためにも、救済できる何らかの立法措置が検討されるべきだ」と話した。

土地についての相続登記の義務化 相続放棄制度

2019-02-08 | 民事
土地の相続登記を義務化 所有者不明問題で法改正へ


2020年の臨時国会までに法案がまとめられるだろうか。

日本経済新聞の記事からです。

※引用

土地の相続登記を義務化 所有者不明問題で法改正へ

法務省は8日、所有者不明の土地が増えている問題を解消するため、民法と不動産登記法を見直すと発表した。相続登記の義務化や所有権の放棄を認める制度の創設、遺産分割の話し合いができる期間の制限などが柱となる。山下貴司法相が14日の法制審議会(法相の諮問機関)総会で諮問する。2020年の臨時国会に改正案を提出したい考えだ。

法相は8日の閣議後の記者会見で「所有者不明土地は民間の土地取引など土地の利用を妨げている。対策は政府全体で取り組むべき重要な課題だ」と述べた。

所有者不明の土地は不動産登記簿などの所有者台帳で所有者がすぐ分からなかったり、判明しても連絡がつかなかったりする土地を指す。増田寛也元総務相ら民間有識者の研究会による16年の推計によると全国で約410万ヘクタール。40年には約720万ヘクタールにまで広がる見込みだ。所有者を探す費用や公共事業の遅れなどの経済損失額は同年までの累計で約6兆円に上る。

こうした土地は所有者が亡くなった後に相続人が決まらず放置されたり、相続人が登記簿上の名義を書き換えなかったりして発生する例が多い。権利関係を外部からわかりやすくするため、法務省は相続時の登記の義務化を検討する。登記していなければ罰金などを科すことも視野に入れる。

現在は相続登記は任意で、登記するかどうかは相続人の判断に委ねられる。名義が死亡者のまま長年放置されれば、法定相続人が分からなくなる可能性がある。土地の購入や賃借をしたい人がいても取引が進まない。

相続人同士が遺産分割を話し合いで決める期間にも制限を設ける。話し合いでの合意や家庭裁判所への調停申し立てがされずに被相続人が亡くなって一定期間が過ぎれば、法律に従って自動的に権利が決まるようにする。期間は3年、5年、10年の複数案がある。

土地の所有権を放棄できるようにする制度も検討する。例えば「遠方に住む親から土地を相続したが、手入れが難しく手放したい」などのケースでも、現在は放棄を認めていない。放棄を認める条件や、第三者機関や自治体など受け皿となる機関について議論する。税逃れや将来放棄するつもりで管理をしないなど、モラルハザードが発生しない仕組みも課題だ。

相続人のいない土地も活用を促す。被相続人が複数の土地を持っていた場合、債権者などが土地ごとに相続財産管理人を選任できるようにする。管理人は相続人がいないかどうかを調べた上で、土地をもらうべき人に分けたり、売却して債務の支払いに充てたりする。

相続人の調査にかかる期間を現行の10カ月から最短3~5カ月に短縮する。選任の費用負担も減らす。全ての土地を調べる現行制度では時間が長くかかり、費用もかさんでいた。管理人を介しやすくし、自治体や企業などへ売却を促す。

法務省の対策は新たな不明土地の発生を防ぐ仕組みが中心となる。すでにあるものも含めて不明土地を減らし、抜本的な解決に結びつけられるかは未知数だ。

黙秘権  民事

2018-12-11 | 民事
都町女性死亡 捜査で供述拒否 両親が男性提訴へ


さすがに義務違反があるという構成は難しいと思う。

遺族の方の気持ちは理解できますが、法的構成になじむかは非常に難しいです。

原告側からの相談も被告側からの相談も いろいろな意味で受任が難しい案件でしょう。

大分日日新聞からの引用です。

※引用

都町女性死亡 捜査で供述拒否 両親が男性提訴へ

 大分市都町の路地で昨年7月、女性会社員=当時(31)=が遺体で見つかった事件で、亡くなる直前まで一緒に行動したとされ、器物損壊罪で有罪判決を受けた男性(27)に対し、女性の両親が損害賠償を求めて提訴することが10日、関係者への取材で分かった。男性は県警や地検の捜査で黙秘した。両親は「娘がどのように亡くなったのか知ることができず、精神的苦痛を受けた」と訴えている。
 男性は女性が亡くなった日の朝に、行動を共にした唯一の人物とされる。公判でも供述を拒み、死亡した経緯は明らかにならなかった。捜査機関などへの黙秘権は認められている。遺族らに対し、何も説明しないことが権利侵害につながっていないか、審理されることになる。
 両親の代理人弁護士によると、近く大分地裁に提訴する方針。「両親は非常に苦しんでいる。男性が何らかの事情を知っていることは明らか。説明する義務がある」と主張する。
 女性は昨年7月29日朝、飲食店ビルの屋上から転落したとみられ、同日夜に見つかった。
 男性は三宮さんが利用していた飲食店の従業員だった。同日朝、2人でビルに入った後、三宮さんのバッグを持った男性が1人で隣のビルから出てきたとされる。その後、近くのビルの階段下にバッグを隠したとして器物損壊罪に問われ、大分地裁は昨年12月、罰金30万円の有罪判決を言い渡した。
 男性は保護責任者遺棄致死の疑いでも逮捕されたが、大分地検は同月、不起訴処分にした。

 黙秘権は刑事訴訟法で容疑者や被告らに保障された権利だ。男性は判決後、罰金を支払って刑事上の償いを終えたとされるが、両親側は民事上の責任を追及。いまだに遺族へ説明しないことが民法上の「他人の権利、利益の侵害」に当たると指摘する。犯罪被害者や遺族の「知る権利」の観点からも議論を呼びそう。
 黙秘権は憲法38条の「何人も、自己に不利益な供述を強要されない」との規定が根拠。捜査機関による拷問や自白の無理強いを防ぐ狙いがある。
 最高裁の判例はこの条文を「刑事上の責任を問われる恐れのある事項」について定めたものだと説明。取り調べや裁判で質問に対し黙っていても不利な扱いを受けないとされる。
 一方、民事訴訟法は原告や被告の黙秘権についての規定がない。訴訟当事者が「正当な理由なく陳述を拒んだ」場合は、「相手方の主張を真実と認める」ことができるとしている。
 両親の代理人弁護士は「捜査機関に対する黙秘権は認められても、遺族との関係は別。何も説明しないことを正当化することはできない」と強調した。

公示送達

2018-08-08 | 民事
11年前の確定判決、異例の取り消し…東京高裁


公示送達の申立

住民票の除票には転居先が記載されていたが見落としたということのようですね。

賠償請求権が時効を迎える昨年になっても女性から支払いがなかったとありますが

その間に具体的な請求をしなかったんですかね。

そしたら、もっと早く争われたと思うのですが・・・。

※引用

11年前の確定判決、異例の取り消し…東京高裁


 東京高裁(中西茂裁判長)が7月、「被告側に裁判が起こされたことを伝えないまま裁判を開いたのは違法」として、2007年8月に確定していた民事訴訟の1審判決を取り消していたことがわかった。1審の裁判所が、被告の住所が判明しているにもかかわらず訴状を郵送せず、提訴されたことを掲示板に貼り出す「公示送達」の手続きを経て審理に入っていたことが問題視された。確定判決が10年以上を経て取り消されるのは異例。

 問題になったのは、埼玉県の男性(68)が東京都練馬区に住んでいた女性(45)に800万円の損害賠償支払いを求めた訴訟。男性は07年、現金をだまし取られたとして、代理人を付けない本人訴訟でさいたま地裁川越支部に提訴した。

 民事訴訟は、訴状が被告の手元に届いた段階で始まるとされ、送達先は原告側が確認する必要がある。男性が女性の住所地を調べたところ、表札もなく、居住が確認できなかったため、「女性は無断で引っ越した」と判断。同年6月、同区役所から取得した女性の住民票(除票)を同支部に提出し、公示送達を申し立てた。

 除票には女性の転居先の住所が記載されていたが、同支部はこれを見落として男性の申し立てを認め、訴状が提出されたことを示す書面を敷地内の掲示板に貼り出した上で、同年7月に第1回口頭弁論を開いた。女性が出頭しないまま、同支部は男性の請求を認める判決を言い渡し、同年8月に確定した。

 しかし、この賠償の請求権(10年)が時効を迎える昨年になっても女性から支払いがなかったため、男性は新たに、時効の中断を求める訴訟を同支部に提起。女性はこの新たな訴訟の訴状を受け取った際、自分が07年にも訴訟を起こされていたことを知ったという。

 女性は「知らないところで行われた訴訟は無効」として昨年12月、07年の1審判決の取り消しを求め、東京高裁に控訴を申し立てた。

 これに対し、今年7月19日の高裁判決は、「除票に記載された住所を確認しないまま行われた公示送達は無効だ」とした上で、「原告男性は除票の記載内容を理解できなかった可能性があり、(同支部は)男性に調査を促すべきだった」と指摘。同支部の訴訟手続きは違法だったとして、確定していた1審判決を取り消し、改めて審理するよう同支部に命じた。

 女性の代理人弁護士は、「1審には明らかな落ち度があった。前代未聞の事態で、裁判所は再発防止に努めてほしい」と話している。一方、さいたま地裁は「高裁から記録が届いていないため、コメントは差し控える」としている。

     ◇

 ◆公示送達=訴訟当事者の住所などが不明の場合、裁判所書記官の権限で、訴状や呼び出し状、判決などが出ていることを示す書面を、裁判所の掲示板に貼り出す特別な手続き。原則、掲示から2週間が経過すると相手方に到達したとみなされ、効力が生じる。住所の特定に時間がかかることで裁判が長期化する事態を避けるなどの目的がある。

コピー代

2018-07-24 | 民事
カルテ、コピー1枚で5千円も 厚労省「不適切」と注意


協同組合や離島について 謄写料を議論することが多いのですが、
1枚でも100枚でも 手間自体はそんなに変わらない。
枚数はコピー機の能力の問題という実態はあると思います。
人件費等の手数料が5000円以上というのが実態に合うかどうかということではないでしょうか。


朝日新聞の記事からです。

※引用

カルテ、コピー1枚で5千円も 厚労省「不適切」と注意


 診療録(カルテ)のコピーを患者らが請求した際に求められる料金が、病院間で大きく違うことが厚生労働省の調査でわかった。対象となった全国の主要病院の2割近くは、白黒コピー1枚でも5千円以上かかる設定だった。厚労省は20日、自治体に通知を出し、実際の費用を積み上げて料金を決めるよう医療機関に周知するよう求めた。

 カルテや検査結果などの診療記録は、治療をめぐるトラブルがある場合や、自身の病状や治療を詳しく知りたい場合に請求される。2003年に厚労省が指針を作成。個人情報保護法は、本人が希望すれば病院や診療所は原則開示する義務があるとし、実費を勘案した合理的な範囲で手数料をとれると定めている。

 厚労省が昨年、高度な医療を提供する特定機能病院と大学病院の計87施設を調べると、白黒1枚の請求でも16%は手数料などで5千円以上になり、3千円台も15%あった。一方、67%は1千円未満で手数料がないか、低額だった。また、5%の病院は渡す際に医師の立ち会いが必須だった。そのために高額になるケースもある。

 通知では、請求内容によって費用が変わりうる点や一律の料金設定は「不適切な場合がある」と注意を求め、医師の立ち会いを必須とするのは「不適切」としている。

認否しない

2018-07-23 | 民事
旧優生保護法の違憲性、国は見解示さぬ方針 強制不妊


事後的にせよ、こういう訴訟追行を正面から打ち出すということは

これから行政府で何らか違憲の疑いのある事案について

行政府の判断で動く ということはなくなるのでしょうね。


朝日新聞の記事からです。

※引用

旧優生保護法の違憲性、国は見解示さぬ方針 強制不妊

 旧優生保護法により不妊手術を強制されたのは違憲だなどとして、仙台地裁で争われている国家賠償訴訟で、国は「憲法判断は司法が下すべきだ」として違憲かどうかの見解を示さない方針を固めた。地裁から違憲性の認否を示すよう、裁判初期では異例の要請を受けていた。複数の政府関係者が明らかにした。

 原告は「旧優生保護法は子どもを産むことの自己決定権を奪い、違憲だ」と訴えた。国は違憲性に触れず、救済立法しなかったのは違法ではないと主張。地裁は「判決で憲法判断をする」とし、7月末までに見解を示すよう国に求めた。国は応じないことになる。

 政府内では「当時全会一致で成立した法律を、今になって違憲だったとはいえない」など、合憲と主張するべきだとの声が根強い。ただ、すでに自民・公明両党の与党ワーキングチーム(WT)と超党派議連が救済・支援法案の作成に向け協議している点を重視。最終的に「違憲かどうかを判断するのは司法であり、行政が憲法判断する理由はない」(政府高官)とした。

 原告側弁護団は地裁が要請した後の取材に、「認否を示さないことは絶対に許さない」と話しており、反発は必至だ。