弁護士法人かごしま 上山法律事務所 TOPICS

業務の中から・・報道を見て・・話題を取り上げます。

忘年会 と 使用者責任

2018-04-23 | 労働
忘年会での暴行「会社に責任」…「業務の一環」


企業側のコンプライアンスやガバナンスの相談を受けたりしますが

意外とこういう使用者責任の及び範囲については、問題意識を持ちにくかったりするのだなあ

と感じることがあります。

読売新聞の記事からです。

※引用

忘年会での暴行「会社に責任」…「業務の一環」


 業務時間外の職場の宴会で起きた従業員同士のトラブルに企業が責任を負うべきかどうかが争われた民事裁判で、東京地裁が企業の使用者責任を認め、賠償を命じる判決を言い渡した。

 入社や異動に伴い歓送迎会が増えるこの季節、宴席に参加する社員の行動には、企業も注意を払う必要がありそうだ。

 提訴したのは、東京・新橋の海鮮居酒屋で正社員として働いていた男性(50)。訴状などによると、男性は2013年12月、上司の店長から忘年会に誘われた。休みの予定だったが、「参加しますよね?」と念を押され、他の従業員も9人全員が参加すると聞いて承諾した。

 忘年会は、深夜から焼き肉店で1次会が開かれ、午前2時30分頃からカラオケ店で2次会が始まった。男性は、その席で酔った同僚から仕事ぶりを非難され、「めんどくせえ」と言い返すと、殴るけるの暴行を受けた。男性は 肋骨 ろっこつを折るなどして約3週間後に退職した。

 加害者の同僚は15年3月、傷害罪で罰金30万円の略式命令を受け、男性は15年8月、居酒屋の経営会社「フーデックスホールディングス」(東京)と同僚に約177万円の賠償を求めて提訴した。

 同社側は「業務外の私的な会合で本社に報告がなく、忘年会も禁じていた」と主張したが、今年1月22日の東京地裁判決は、忘年会への参加を店長から促され、本来休みだった従業員を含む全員が参加した経緯を重視。2次会は電車もない時間に始まり、判決は「全員が2次会にも参加せざるを得ず、1、2次会とも仕事の一環だった」と判断した。

 さらに、判決は「会社が忘年会を禁じても会社は使用者責任を負う」として、約60万円の支払いを同社と同僚に命じ、確定した。

 男性は取材に対し、「会社員として上司に誘われて自分だけ忘年会に参加しないのは難しい。判決が忘年会を業務と認めたのは当然だ」と話す。同社の担当者は「コメントできない」としている。

 労働問題に詳しい嶋崎 量 ちから弁護士は「建前上は自由参加の宴会でも、実質的には全員参加で断れない状況であれば、企業に責任が生じ得ることを再認識すべきだ」と指摘している。



大阪弁護士会 高齢者・障害者総合支援センター (愛称・ひまわり)の活動

2017-10-03 | 労働


一年間の相談件数が2700件、平日だけだと一日10件ぐらいですね。

人口と対応できる弁護士のマンパワーの問題がありますが

鹿児島でも相談体制の充実を図る必要があります。


個人的に窓口で相談を受け付けるよりはネットワークづくりの方がトータルでは鹿児島になじむかもしれませんね。


読売新聞 大阪版の記事からです。

※引用

大阪弁護士会の「高齢者・障害者総合支援センター」(愛称・ひまわり)は2日、これまで週3日実施していた無料の電話相談(06・6364・1251)を週5日に増やした。高齢化の進展に伴い、相談件数が増加しているため。


 ひまわりの電話相談は1998年にスタート。年金や介護保険、成年後見制度などについて専門的な研修を受けた弁護士から無料でアドバイスを受けることができ、昨年度の相談件数は約2700件に上った。2日からは、祝日を除く平日すべて(午後1~4時)で相談を受け付ける。

 一方、ひまわりは、大阪弁護士会館(大阪市北区)で弁護士が面談に応じる来館相談(有料)や、自宅や施設に弁護士が出向く出張相談(有料)も行っており、6日までは来館での相談を特別に無料で受け付けている。

残業代を歩合給から差し引いて計算する賃金規則の有効性

2017-03-01 | 労働

残業代が生じた場合、売り上げに応じて支払われる歩合給から、残業代と同額を差し引いて計算していた場合でも一律に無効とはならない
実質的に割増賃金の支払いがあったかどうか審理するために差し戻し


※引用


平成27年(受)第1998号 賃金請求事件
平成29年2月28日 第三小法廷判決

主 文
原判決中上告人敗訴部分を破棄する。
前項の部分につき,本件を東京高等裁判所に差し戻す。
理 由
上告代理人長尾亮,同中垣美紀,同飯野雅秋の上告受理申立て理由(ただし,排除されたものを除く。)について
1 本件は,上告人に雇用され,タクシー乗務員として勤務していた被上告人らが,歩合給の計算に当たり残業手当等に相当する金額を控除する旨を定める上告人の賃金規則上の定めが無効であり,上告人は,控除された残業手当等に相当する金額の賃金の支払義務を負うと主張して,上告人に対し,未払賃金等の支払を求める事案である。
2 原審の確定した事実関係等の概要は,次のとおりである。
(1) 上告人は,一般旅客自動車運送事業等を目的とする株式会社である。
(2) 被上告人らは,第1審判決別紙雇用日等一覧表の「雇用年月日」欄記載の年月日頃,上告人との間で労働契約を締結し,タクシー乗務員として勤務していた。
(3) 上告人の就業規則の一部であるタクシー乗務員賃金規則(以下「本件賃金規則」という。)は,本採用されているタクシー乗務員の賃金につき,おおむね次のとおり定めていた。
ア 基本給として,1乗務(15時間30分)当たり1万2500円を支給する。
イ 服務手当(タクシーに乗務せずに勤務した場合の賃金)として,タクシーに乗務しないことにつき従業員に責任のない場合は1時間当たり1200円,責任のある場合は1時間当たり1000円を支給する。
ウ(ア) 割増金及び歩合給を求めるための対象額(以下「対象額A」という。)を,次のとおり算出する。
対象額A=(所定内揚高-所定内基礎控除額)×0.53+(公出揚高-公出基礎控除額)×0.62
(イ) 所定内基礎控除額は,所定就労日の1乗務の控除額(平日は原則として2万9000円,土曜日は1万6300円,日曜祝日は1万3200円)に,平日,土曜日及び日曜祝日の各乗務日数を乗じた額とする。また,公出基礎控除額は,公出(所定乗務日数を超える出勤)の1乗務の控除額(平日は原則として2万4100円,土曜日は1万1300円,日曜祝日は8200円)を用いて,所定内基礎控除額と同様に算出した額とする。
エ 深夜手当は,次の①と②の合計額とする。
① {(基本給+服務手当)÷(出勤日数×15.5時間)}×0.25×深夜労働時間
②(対象額A÷総労働時間)×0.25×深夜労働時間
オ 残業手当は,次の①と②の合計額とする。
① {(基本給+服務手当)÷(出勤日数×15.5時間)}×1.25×残業時間
②(対象額A÷総労働時間)×0.25×残業時間
カ(ア) 公出手当のうち,法定外休日(労働基準法において使用者が労働者に付与することが義務付けられている休日以外の労働契約に定められた休日)労働分は,次の①と②の合計額とする。
① {(基本給+服務手当)÷(出勤日数×15.5時間)}×0.25×休日労働時間
②(対象額A÷総労働時間)×0.25×休日労働時間
(イ) 公出手当のうち,法定休日労働分は,次の①と②の合計額とする。
① {(基本給+服務手当)÷(出勤日数×15.5時間)}×0.35×休日労働時間
②(対象額A÷総労働時間)×0.35×休日労働時間
キ 歩合給(1)は,次のとおりとする(以下,この定めを「本件規定」という。)。なお,本件賃金規則には,従前支給していた賞与に代えて支払う賃金として,歩合給(2)が定められている。
対象額A-{割増金(深夜手当,残業手当及び公出手当の合計)+交通費}
ク なお,本件賃金規則は平成22年4月に改定されたものであるところ,同改定前の本件賃金規則においては,所定内基礎控除額の基準となる1乗務の控除額が,平日は原則として3万5000円,土曜日は2万2200円,日曜祝日は1万8800円とされるとともに,公出基礎控除額の基準となる1乗務の控除額が,平日は原則として2万9200円,土曜日は1万6400円,日曜祝日は1万3000円とされていた。また,上記エからカまでの各計算式において「基本給+服務手当」とされている部分がいずれも「基本給+安全手当+服務手当」とされていたほか,賞与が支給されていたために上記キの歩合給(2)に相当する定めはなく,「歩合給」として,上記キの歩合給(1)と同様の定めがあった。
(4)ア 被上告人らは,平成22年2月から同24年2月までの間,本件賃金規則上の本採用のタクシー乗務員として,第1審判決別紙個人別賃金計算書の「所定乗務数」及び「公出乗務数」の各欄記載のとおり勤務した。
イ 上記アの期間における被上告人らの揚高(売上高)は,第1審判決別紙個人別賃金計算書の「所定税抜揚高」及び「公出税抜揚高」の各欄記載のとおりであった。これらに基づいて,本件賃金規則の定め(ただし,平成22年3月支給分は同年4月の改定前の定め)により,残業手当,深夜手当,公出手当,交通費及び歩合給(1)(同年3月支給分については「歩合給」。以下,両者を区別せずに「歩合給」という。)の額を計算すると,それぞれ,同計算書の「残業手当」,「深夜手当」,「公出手当」,「通勤交通手当」及び「歩合給」の各欄記載のとおりであり,上告人は,被上告人らに対し,上記各欄記載の額の金員を支払った。また,上記の期間について,被上告人ごとに各月の対象額Aの額を計算すると,同計算書の「対象額A」欄記載のとおりであった。
3 原審は,上記事実関係等の下において,本件規定のうち,歩合給の計算に当たり対象額Aから割増金に相当する額を控除する部分は無効であり,対象額Aから割増金に相当する額を控除することなく歩合給を計算すべきであるとした上で,被上告人らの未払賃金の請求を一部認容すべきものとした。その判断の要旨は,次のとおりである。
(1) 本件賃金規則は,所定労働日と休日のそれぞれについて,揚高から一定の控除額を差し引いたものに一定割合を乗じ,これらを足し合わせたものを対象額Aとした上で,時間外労働等に対し,これを基準として計算した額の割増金を支払うものである。ところが,本件規定は,歩合給の計算に当たり,対象額Aから割増金及び交通費に相当する額を控除するものとしている。これによれば,割増金と交通費の合計額が対象額Aを上回る場合を別にして,揚高が同額である限り,時間外労働等をしていた場合もしていなかった場合も乗務員に支払われる賃金は同額になるから,本件規定は,労働基準法37条の規制を潜脱するものである。同条の規定は強行法規であり,これに反する合意は当然に無効となる上,同条の規定に違反した者には刑事罰が科せられることからすれば,本件規定のうち,歩合給の計算に当たり対象額Aから割増金に相当する額を控除している部分は,同条の趣旨に反し,ひいては公序良俗に反するものとして無効である。
(2) 本件規定が対象額Aから控除するものとしている割増金の中には,法定外休日労働に係る公出手当が含まれており,また,労働契約に定められた労働時間を超過するものの労働基準法に定める労働時間の制限を超過しない時間外労働(以下「法内時間外労働」という。)に係る残業手当が含まれている可能性もあるが,本件規定は,これらを他と区別せず一律に控除の対象としているから,これらを含めた割増金に相当する額の控除を規定する割増金の控除部分全体が無効になる。
4 しかしながら,原審の上記判断は是認することができない。その理由は,次のとおりである。
(1)ア 労働基準法37条は,時間外,休日及び深夜の割増賃金の支払義務を定めているところ,割増賃金の算定方法は,同条並びに政令及び厚生労働省令(以下,これらの規定を「労働基準法37条等」という。)に具体的に定められている。もっとも,同条は,労働基準法37条等に定められた方法により算定された額を下回らない額の割増賃金を支払うことを義務付けるにとどまり,使用者に対し,労働契約における割増賃金の定めを労働基準法37条等に定められた算定方法と同一のものとし,これに基づいて割増賃金を支払うことを義務付けるものとは解されない。
 そして,使用者が,労働者に対し,時間外労働等の対価として労働基準法37条の定める割増賃金を支払ったとすることができるか否かを判断するには,労働契約における賃金の定めにつき,それが通常の労働時間の賃金に当たる部分と同条の定める割増賃金に当たる部分とに判別することができるか否かを検討した上で,そのような判別をすることができる場合に,割増賃金として支払われた金額が,通常の労働時間の賃金に相当する部分の金額を基礎として,労働基準法37条等に定められた方法により算定した割増賃金の額を下回らないか否かを検討すべきであり(最高裁平成3年(オ)第63号同6年6月13日第二小法廷判決・裁判集民事172号673頁,最高裁平成21年(受)第1186号同24年3月8日第一小法廷判決・裁判集民事240号121頁参照),上記割増賃金として支払われた金額が労働基準法37条等に定められた方法により算定した割増賃金の額を下回るときは,使用者がその差額を労働者に支払う義務を負うというべきである。
他方において,労働基準法37条は,労働契約における通常の労働時間の賃金をどのように定めるかについて特に規定をしていないことに鑑みると,労働契約において売上高等の一定割合に相当する金額から同条に定める割増賃金に相当する額を控除したものを通常の労働時間の賃金とする旨が定められていた場合に,当該定めに基づく割増賃金の支払が同条の定める割増賃金の支払といえるか否かは問題となり得るものの,当該定めが当然に同条の趣旨に反するものとして公序良俗に反し,無効であると解することはできないというべきである。
イ しかるところ,原審は,本件規定のうち歩合給の計算に当たり対象額Aから割増金に相当する額を控除している部分が労働基準法37条の趣旨に反し,公序良俗に反し無効であると判断するのみで,本件賃金規則における賃金の定めにつき,通常の労働時間の賃金に当たる部分と同条の定める割増賃金に当たる部分とを判別することができるか否か,また,そのような判別をすることができる場合に,本件賃金規則に基づいて割増賃金として支払われた金額が労働基準法37条等に定められた方法により算定した割増賃金の額を下回らないか否かについて審理判断することなく,被上告人らの未払賃金の請求を一部認容すべきとしたものである。そうすると,原審の判断には,割増賃金に関する法令の解釈適用を誤った結果,上記の点について審理を尽くさなかった違法があるといわざるを得ない。
(2) なお,原審は,本件規定のうち法内時間外労働や法定外休日労働に係る部分を含む割増金の控除部分全体が無効となるとしており,本件賃金規則における賃金の定めについて検討するに当たり,時間外労働等のうち法内時間外労働や法定外休日労働に当たる部分とそれ以外の部分とを区別していない。しかし,労働基準法37条は,使用者に対し,法内時間外労働や法定外休日労働に対する割増賃金を支払う義務を課しておらず,使用者がこのような労働の対価として割増賃金を支払う義務を負うか否かは専ら労働契約の定めに委ねられているものと解されるから,被上告人らに割増賃金として支払われた金額が労働基準法37条等に定められた方法により算定した割増賃金の額を下回らないか否かについて審理判断するに当たっては,被上告人らの時間外労働等のうち法内時間外労働や法定外休日労働に当たる部分とそれ以外の部分とを区別する必要があるというべきである。
5 以上によれば,原審の前記判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。論旨は理由があり,原判決中上告人敗訴部分は破棄を免れない。
そして,被上告人らに支払われるべき未払賃金の有無及び額等について更に審理を尽くさせるため,上記部分につき本件を原審に差し戻すこととする。
よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 大谷剛彦 裁判官 岡部喜代子 裁判官 大橋正春 裁判官木内道祥 裁判官 山崎敏充)

過労死 事案

2017-01-30 | 労働

過労死の事案の損害賠償事件です。

「2店舗の店長で、県内他の9店舗で店長不在時の代理業務を兼務」

とあります。

勤務時間はどのようになっていたのでしょうね。

しかし、死亡から判決まで4年半余りかかっていますね。


毎日新聞の記事からです。

※引用

<店長過労死訴訟>会社側に4600万円支払い命令…津地裁

 三重県内の「ミスタードーナツ」のフランチャイズ店に勤務していた男性店長(当時50歳)が過重な業務によって過労死したとして、遺族が店を経営する製菓会社「竹屋」(四日市市)と社長らに約9500万円の損害賠償を求めた訴訟で、津地裁(岡田治裁判長)は30日、約4600万円の支払いを命じる判決を言い渡した。

 訴状などによると、男性は2011年7月から津市内の2店舗で店長を務めたほか、県内の他の9店舗で店長不在時の代理業務を兼務。12年5月15日早朝、車で通勤中に不整脈により死亡した。

 四日市労働基準監督署が13年7月、過労死と認定していた。

雇い止めに関する 最高裁判例

2016-12-02 | 労働
平成27年(受)第589号 労働契約上の地位確認等請求事件
平成28年12月1日 第一小法廷判決
主 文
1 原判決中,被上告人の労働契約上の地位の確認請求及び平成26年4月1日以降の賃金の支払請求を認容した部分を破棄し,同部分につき第1審判決を取り消す。
2 前項の部分に関する被上告人の請求をいずれも棄却する。
3 上告人のその余の上告を棄却する。
4 訴訟の総費用は,これを5分し,その2を上告人の負担とし,その余を被上告人の負担とする。
理 由
上告代理人三浦邦俊,智大助の上告受理申立て理由について
1 本件は,上告人との間で期間の定めのある労働契約(以下「有期労働契約」という。)を締結し,上告人の運営する短期大学の教員として勤務していた被上告人が,上告人による雇止めは許されないものであると主張して,上告人を相手に,労働契約上の地位の確認及び雇止め後の賃金の支払を求める事案である。
2 原審の適法に確定した事実関係等の概要は,次のとおりである。
(1) 被上告人は,平成23年4月1日,上告人との間で,Y学園契約職員規程(以下「本件規程」という。)に基づき,契約期間を同日から同24年3月31日までとする有期労働契約を締結して本件規程所定の契約職員となり,上告人の運営するA短期大学の講師として勤務していた(以下,被上告人と上告人との間の労働契約を「本件労働契約」とい。)。
(2) 本件規程には,次の内容の定めがある。
ア 契約職員とは,一事業年度内で雇用期間を定め,上告人の就業規則28条に定める労働時間で雇用される者のうち,別に定めるところによる契約書により労働契約の期間を定めて雇用される者をいう。
イ 契約職員の雇用期間は,当該事業年度の範囲内とする。雇用期間は,契約職員が希望し,かつ,当該雇用期間を更新することが必要と認められる場合は,3年を限度に更新することがある。この場合において,契約職員は在職中の勤務成績が良好であることを要するものとする。
ウ 契約職員(助手及び幼稚園教諭を除く。)のうち,勤務成績を考慮し,上告人がその者の任用を必要と認め,かつ,当該者が希望した場合は,契約期間が満了するときに,期間の定めのない職種に異動することができるものとする。
(3) 上告人は,平成24年3月19日,被上告人に対し,同月31日をもって本件労働契約を終了する旨を通知した。被上告人は,同年11月6日,本件訴訟を提起した。上告人は,平成25年2月7日,被上告人に対し,仮に本件労働契約が同24年3月31日をもって終了していないとしても,同25年3月31日をもって本件労働契約を終了する旨を通知した。また,上告人は,平成26年1月22日付けで,被上告人に対し,本件規程において契約期間の更新の限度は3年とされているので,仮に本件労働契約が終了していないとしても,同年3月31日をもって本件労働契約を終了する旨を通知した(以下,この通知による雇止めを「本件雇止め」という。)。
(4) A短期大学を含む上告人の運営する三つの大学において,平成18年度から同23年度までの6年間に新規採用された助教以上の契約職員のうち,同年度末時点において3年を超えて勤務していた者は10名であり,そのうち8名についての労働契約は3年目の契約期間の満了後に期間の定めのないものとなった。
3 原審は,上記の事実関係等の下で,本件雇止めの前に行われた2度の雇止めの効力をいずれも否定して本件労働契約の1年ごとの更新を認めた上で,要旨次のとおり判断し,本件労働契約が平成26年4月1日から期間の定めのない労働契約(以下「無期労働契約」という。)に移行したとして,被上告人の請求をいずれも認容すべきものとした。
採用当初の3年の契約期間に対する上告人の認識や契約職員の更新の実態等に照らせば,上記3年は試用期間であり,特段の事情のない限り,無期労働契約に移行するとの期待に客観的な合理性があるものというべきである。被上告人は,本件雇止めの効力を争い,その意思表示後も本件訴訟を追行して遅滞なく異議を述べたと
いえる以上,本件雇止めに対する反対の意思表示をして無期労働契約への移行を希望するとの申込みをしたものと認めるのが相当である。そして,上告人においてこれまでの2度にわたる雇止めがいずれも客観的に合理的な理由を欠き,社会通念上相当と認められない結果更新され,その後無期労働契約への移行を拒むに足りる相当な事情が認められない以上,上告人は上記申込みを拒むことはできないというべきである。したがって,本件労働契約は無期労働契約に移行したものと認めるのが相当である。
4 しかしながら,原審の上記判断は是認することができない。その理由は,次のとおりである。
本件労働契約は,期間1年の有期労働契約として締結されたものであるところ,その内容となる本件規程には,契約期間の更新限度が3年であり,その満了時に労働契約を期間の定めのないものとすることができるのは,これを希望する契約職員の勤務成績を考慮して上告人が必要であると認めた場合である旨が明確に定められていたのであり,被上告人もこのことを十分に認識した上で本件労働契約を締結したものとみることができる。上記のような本件労働契約の定めに加え,被上告人が大学の教員として上告人に雇用された者であり,大学の教員の雇用については一般に流動性のあることが想定されていることや,上告人の運営する三つの大学において,3年の更新限度期間の満了後に労働契約が期間の定めのないものとならなかった契約職員も複数に上っていたことに照らせば,本件労働契約が期間の定めのないものとなるか否かは,被上告人の勤務成績を考慮して行う上告人の判断に委ねられているものというべきであり,本件労働契約が3年の更新限度期間の満了時に当然に無期労働契約となることを内容とするものであったと解することはできない。そして,前記2(3)の事実関係に照らせば,上告人が本件労働契約を期間の定めのないものとする必要性を認めていなかったことは明らかである。また,有期労働契約の期間の定めのない労働契約への転換について定める労働契約法18条の要件を被上告人が満たしていないことも明らかであり,他に,本件事実関係の下において,本件労働契約が期間の定めのないものとなったと解すべき事情を見いだすことはできない。以上によれば,本件労働契約は,平成26年4月1日から期間の定めのないものとなったとはいえず,同年3月31日をもって終了したというべきである。
5 以上と異なる原審の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。論旨はこれと同旨をいうものとして理由があり,原判決中,被上告人の労働契約上の地位の確認請求及び平成26年4月1日以降の賃金の支払請求を認容した部分は破棄を免れない。そして,以上に説示したところによれば,同部分に関する被上告人の請求はいずれも理由がないから,同部分につき第1審判決を取り消し,同請求をいずれも棄却すべきである。なお,その余の請求に関する原審の判断は是認することができるから,上告人のその余の上告については,これを棄却することとする。
よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。なお,裁判官櫻井龍子の補足意見がある。
裁判官櫻井龍子の補足意見は,次のとおりである。
私は法廷意見に賛同するが,近年,有期労働契約の雇止めや無期労働契約への転換をめぐって,有期契約労働者の増加,有期労働契約濫用の規制を目的とした労働契約法の改正という情勢の変化を背景に種々議論が生じているところであるので,若干の補足意見を付記しておきたい。
1 まず,本件は,法廷意見に述べるとおり,有期労働契約の更新及び無期労働契約への転換の可能性,その場合の判断基準等が,当事者間の個別契約の内容となる本件規程に明記され,一方,被上告人も契約締結の際,契約内容を明確に理解し,了解していたと思われ,雇止めの措置はその基準等に照らし特段不合理な点はなかったと判断できる事案であったといえる。本件においては,無期労働契約を締結する前に3年を上限とする1年更新の有期労働契約期間を設けるという雇用形態が採られているところ,被上告人が講師として勤務していたのは大学の新設学科であり(原判決の引用する1審判決参照),同学科において学生獲得の将来見通しが必ずしも明確ではなかったとうかがわれることや,教員という仕事の性格上,その能力,資質等の判定にはある程度長期間が必要であることを考慮すると,このような雇用形態を採用することには一定の合理性が認められるが,どのような業種,業態,職種についても正社員採用の際にこのような雇用形態が合理性を有するといえるかについては,議論の余地のあるところではなかろうか。この点は,我が国の法制が有期労働契約についていわゆる入口規制を行っていないこと,労働市場の柔軟性が一定範囲で必要であることが認識されていることを踏まえても,労働基準法14条や労働契約法18条の趣旨・目的等を考慮し,また有期契約労働者(とりわけ若年層)の増加が社会全体に及ぼしている種々の影響,それに対応する政策の方向性に照らしてみると,今後発生する紛争解決に当たって十分考慮されるべき問題ではないかと思われる。
2 さらに,原審の判断についても一言触れておきたい。
原審の判断を,仮に,判例が積み重ねてきたいわゆる雇止め法理,あるいは労働契約法19条2号の判断枠組みを借用して判断したものととらえることができるとしても,雇止め法理は,有期労働契約の更新の場合に適用されるものとして形成,確立されてきたものであり,本件のような有期労働契約から無期労働契約への転換の場合を想定して確立されてきたものではないことに原審が十分留意して判断したのか疑問である。
すなわち,原審は無期労働契約に移行するとの被上告人の期待に客観的合理性が認められる旨の判断をしているが,有期労働契約が引き続き更新されるであろうという期待と,無期労働契約に転換するであろうという期待とを同列に論ずることができないことは明らかであり,合理性の判断基準にはおのずから大きな差異がある
べきといわなければならない。無期労働契約への転換は,いわば正社員採用の一種という性格を持つものであるから,本件のように有期労働契約が試用期間的に先行している場合にあっても,なお使用者側に一定範囲の裁量が留保されているものと解される。そのことを踏まえて期待の合理性の判断が行われなければならない。
もとより,このような場合の期待の合理性は,日立メディコ事件(最高裁昭和56年(オ)第225号同61年12月4日第一小法廷判決・裁判集民事149号209頁)をはじめこれまでの裁判例に明らかなとおり,労働者の主観的期待を基準に考えるのではなく,客観的にみて法的保護に値する期待であるといえるか否かを,様々な事情を踏まえて総合的に判断すべきものであるということを念のため付け加えておきたい。
以上の考え方に照らすと,仮に原審の判断枠組みに沿って考えるとしても,本件は無期労働契約転換についての期待に客観的合理性があったと認めることができる事案とはいえず,雇止めは有効と判断すべきこととなろう。
(裁判長裁判官 大谷直人 裁判官 櫻井龍子 裁判官 池上政幸 裁判官 小池 裕 裁判官 木澤克之)

パワハラ

2016-08-02 | 労働
パワハラ休業訴訟で和解、福井地裁 JA福井市南部と男性幹部


パワハラの事案です。
和解成立なので、詳細な主張等は分かりません。
損害賠償請求訴訟ですが、労務関係は継続するでしょうからいろいろとまだ整理すべきことが残ります。

福井新聞の記事からです。

※引用

パワハラ休業訴訟で和解、福井地裁 JA福井市南部と男性幹部

 JA福井市南部の男性幹部(55)が、パワーハラスメントや過重労働で休業を余儀なくされたとして、同JAに約620万円の損害賠償を求めた訴訟は1日、福井地裁(佐藤志保裁判官)で和解が成立した。原告側によると、JA側が男性に約565万円を支払う内容。

 訴状によると、指導経済部長だった男性は2013年の組織改編で業務が増えた上、組合員からの債権回収も担当。回収が滞ると当時の理事長から「いい学校を出ているのに本当に仕事ができない」と叱責(しっせき)を受けた。同年末から休業を強いられ、14年3月にうつ病と診断された。

 福井労働基準監督署は15年9月、労災と認定していた。

 JA福井市南部は「職員の待遇改善に努め、労災が起きないよう取り組む」としている。

損害賠償

2016-04-26 | 労働
<過酷労働訴訟>破産マッサージ会社と和解


雇用調整助成金824万円を不正受給した会社のようですね。

『ブラック企業』に焦点を当てた集団提訴は全国初 として紹介されています。


※引用

<過酷労働訴訟>破産マッサージ会社と和解


 過酷な労働を強いられ早期退職を余儀なくされたとして、仙台市青葉区のマッサージ会社「REジャパン」=2015年3月に破産=で働いていた元従業員の20代の男女6人が元取締役計15人に計約3800万円の損害賠償を求めた訴訟は25日、元社長=福島刑務支所収監中=を除き、仙台地裁で和解が成立した。
 元従業員側によると、和解内容は非公表。代理人は「会社破産後も取締役に責任を追及できることが証明された。横行するブラック企業に対する大きな武器になる」と語った。元社長とは条件が折り合わず、判決となる見通し。
 訴えによると、6人は10〜12年に入社。求人は正社員だったが、実際には個人事業主扱いの外交員だった。時間外労働に対する割増賃金は支払われず、取得できる年次有給休暇も実際より少ない日数を示されていたという。
 訴訟は若者を正社員として大量採用し、使い捨てにする「ブラック企業」が社会問題として注目され始めた13年11月に提起された。同問題を巡る全国初の集団提訴とみられる。

新電力  破産も?

2016-03-14 | 労働
特定規模電気事業者(新電力)大手、日本ロジテック(協)が破産申請へ


東スポの見出しみたいだけど・・・。

政府の政策がいかに見通しなく進められるかを示した事例だと思う。
政策担当者は責任は取ってくれない。

※引用

特定規模電気事業者(新電力)大手、日本ロジテック(協)が破産申請へ


 日本ロジテック(協)(TSR企業コード:298943107、法人番号:6010005012356、中央区佃1-11-8、設立平成19年11月、払込済出資総額9990万円、代表理事:軍司昭一郎氏)は3月11日、破産手続きを水野晃弁護士(みなつき法律事務所、千代田区四番町7-16、電話03-5214-3585)、島本泰宣弁護士(東京双葉法律事務所、千代田区平河町2-10-6、電話03-3263-8055)ほか3名に一任した。弁護士によると「破産を選択肢の一つとして調査を進めていく。調査終了次第、債権者に対して負債額等を伝える。3月31日まで電力共同購買事業を行う」と話している。
 負債総額は71億6061万円(平成27年3月期決算時点)だが変動する可能性がある。

 平成19年11月に12社の組合員により発足した事業協同組合。設立当初は共同流通センターの運営などを目的としていたが、経済産業省より特定規模電気事業者(新電力、PPS)の認可を受けて平成22年4月より電力小売事業に参入した。このほか、ETC割引制度共同利用事業(高速道路の多頻度割引制度を利用して組合員に利用料金を割安で提供)と、外国人技能実習生の受け入れ事業(外国人実習生の受入窓口となり組合員向けに斡旋)の3事業を手掛けていた。
 東日本大震災以降、相次ぐ原発稼働停止を受けて国内の電力市場が急変。再生可能エネルギー特別措置法(平成24年7月施行)に基づく再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度の開始を追い風に、電力小売事業の需要が大幅に増加。平成24年3月期は売上高4億2600万円にすぎなかったが、契約数の増加から平成27年3月期は売上高約555億7700万円と驚異的な伸びをみせ、電力小売事業が売上高の99%を占め、電気供給量(小売)は新電力の中で5番目のシェアを占めていた。
 しかし、業容拡大の一方、自前の発電所を持たず電力会社や企業、自治体の余剰電力を購入し安価に再販売するビジネスモデルのため、利幅は薄かった。また、関係会社を通じて建設を予定していた発電施設への資金負担などが重荷となり、資金繰りが悪化。平成27年5月には経済産業省より同組合が4月30日期限の納付金(電気使用者から支払われた賦課金)を納付しなかったとして再生可能エネルギー特別措置法に基づく公表措置を受けるなど信用不安が広がった。
 その後も資金繰りが改善することなく、電力の仕入先への未払いがたびたび発生。こうしたなか、28年2月25日に当社が新電力の登録申請を取り下げ、電力小売事業からの撤退を表明していた。以降、当社に売電していた電力会社や自治体では未払いによる回収難の問題が表面化したほか、電力供給先の契約者は新たに契約の切り替えが必要となるなど混乱が拡大。また、3月11日には経済産業省より「2月29日を期限とした納付金について同日までに納付がなく、催促状により3月10日を期限に催促したが同日までに納付していない」として再度の公表措置を受けていた。

不利益変更禁止

2016-02-22 | 労働
退職金減額「十分な説明を」 最高裁初判断、労働者の自由意思必要


労働契約の内容である労働条件は,労働者と使用者との個別の合意によって変更することができるものであり,このことは,就業規則に定められている労働条件を労働者の不利益に変更する場合であっても,その合意に際して就業規則の変更が必要とされることを除き,異なるものではないと解される(労働契約法8条,9条本文参照)。もっとも,使用者が提示した労働条件の変更が賃金や退職金に関するものである場合には,当該変更を受け入れる旨の労働者の行為があるとしても,労働者が使用者に使用されてその指揮命令に服すべき立場に置かれており,自らの意思決定の基礎となる情報を収集する能力にも限界があることに照らせば,当該行為をもって直ちに労働者の同意があったものとみるのは相当でなく,当該変更に対する労働者の同意の有無についての判断は慎重にされるべきである。そうすると,就業規則に定められた賃金や退職金に関する労働条件の変更に対する労働者の同意の有無については,当該変更を受け入れる旨の労働者の行為の有無だけでなく,当該変更により労働者にもたらされる不利益の内容及び程度,労働者により当該行為がされるに至った経緯及びその態様,当該行為に先立つ労働者への情報提供又は説明の内容等に照らして,当該行為が労働者の自由な意思に基づいてされたものと認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するか否かという観点からも,判断されるべきものと解するのが相当である。

上記のような本件基準変更による不利益の内容等及び本件同意書への署名押印に至った経緯等を踏まえると,管理職上告人らが本件基準変更への同意をするか否かについて自ら検討し判断するために必要十分な情報を与えられていたというためには,同人らに対し,旧規程の支給基準を変更する必要性等についての情報提供や説明がされるだけでは足りず,自己都合退職の場合には支給される退職金額が0円となる可能性が高くなることや,被上告人の従前からの職員に係る支給基準との関係でも上記の同意書案の記載と異なり著しく均衡を欠く結果となることなど,本件基準変更により管理職上告人らに対する退職金の支給につき生ずる具体的な不利益の内容や程度についても,情報提供や説明がされる必要があったというべきである。

本件基準変更に対する管理職上告人らの同意の有無につき,上記(ア)のような事情に照らして,本件同意書への同人らの署名押印がその自由な意思に基づいてされたものと認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するか否かという観点から審理を尽くすことなく,同人らが本件退職金一覧表の提示を受けていたことなどから直ちに,上記署名押印をもって同人らの同意があるものとした原審の判断には,審理不尽の結果,法令の適用を誤った違法がある。


産経新聞の記事からです。

※引用

退職金減額「十分な説明を」 最高裁初判断、労働者の自由意思必要

 山梨県内の信用組合が合併を繰り返し、誕生した山梨県民信用組合(甲府市)が退職金を大幅に減らす規定変更を行ったことは無効として、旧峡南信組出身の元職員が山梨県民信組に合併前の基準での退職金を支払うよう求めた訴訟の上告審判決で最高裁第2小法廷(千葉勝美裁判長)は19日、賃金や退職金を減額するなどの不利益変更には「事前に経営者側が十分な説明を行うなど、労働者側が自由意思に基づいて同意していることが必要だ」とする初判断を示した。

 その上で、原告側敗訴とした2審判決を破棄し、東京高裁に差し戻した。高裁では、原告側敗訴の判決が見直される可能性がある。

 山梨県民信組は平成16年に新たな退職金規定を導入し、職員側も同意した。しかし、旧峡南信組出身の職員にとっては、退職金がゼロになるか大幅に減額される内容だった。

 1、2審はいずれも「職員側の同意は有効」として請求を棄却したが、第2小法廷は「労働者は経営者側の命令に従うべき立場にあり、意思決定の基礎になる情報収拾能力も限られる。形式的に同意しているだけでは不十分だ」と指摘した。