★ 刑事裁判でのIT化もこのような状況です。
まあ、文中にあるズームで死刑判決とか考えると
判決による感銘力とか何なのかとは思いますが
時代にそぐわなくなっているのは否定できないように思います。
日本経済新聞のネット記事からです。
※引用
新型コロナウイルスの影響の下、日本の刑事裁判でIT活用の遅れが目立っている。海外ではオンライン化で感染を防ぎつつ審理の停滞を防ぐ工夫が進む。被告の必要以上の長期勾留や判決の遅れにもつながる問題で、有識者は「改革を進めないと司法への信頼が失われる」と警鐘を鳴らす。
2019年参院選を巡り、元法相の河井克行被告と妻の案里被告が起訴された公職選挙法違反事件の公判では、「ビデオリンク」と呼ばれる遠隔審理を通じて多数の証人尋問が実施されることが話題を呼んだ。
ビデオリンクは性犯罪などの被害者の保護を主な目的として01年に導入された仕組みだ。ビデオモニターを法廷に設置し、庁内の別室や遠方の裁判所で話す証人らの様子を映す。被告と証人は法廷で直接顔を合わせる必要がない。
刑事訴訟法は別の裁判所からビデオリンクを行う条件として、証人が遠くに住んでいて「年齢、職業、健康状態その他の事情」で出廷が難しい場合などと定めている。
河井夫妻の事件で検察側証人の大半は選挙区の広島に住む政界関係者で、ビデオリンクの利用は約40人に上る見通し。高齢者や基礎疾患を持つ人が対象という。東京地裁は感染防止を考慮したとみられる。
もっとも、こうした"積極運用"は限定的だ。最高裁によるとビデオリンクの実施人数は15年度以降、年200~300人台にとどまる。コロナの第1波で緊急事態宣言が出た際は、各地の裁判員裁判など多くの公判期日がビデオリンクを使うこともなく取り消され、延期になった。3~5月に東京地裁で34件、大阪地裁でも20件超の期日が取り消された。
米英は導入推進
コロナが理由であっても、審理の先送りは被告の勾留長期化につながりかねない。日弁連は「感染防止を重視するあまり、必要限度を超えた被告の人権制約がされてはならない」と批判する。甲南大の渡辺修教授(刑事訴訟法)は「ビデオリンクは(人数の少ない)専門的な鑑定人の証言などにも便利で用途が広い。より幅広く活用すべきだ」と話す。
感染防止の徹底と、刑事手続きの両立は各国共通の課題だ。諸外国ではオンライン化で解決を図る試みが始まっている。
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米国は3月に成立した「コロナウイルス支援・救済・経済安全保障法(CARES法)」に関連し、身体拘束に関する判断や、罪状認否などの手続きで、審理をビデオ会議システムで進めることを認めた。
米国で多くの著名人が起訴された名門大学を巡る入試不正事件では、人気ドラマ「フルハウス」の出演女優にビデオ会議システム「ズーム」で判決が言い渡された。
英スコットランドでは陪審員が映画館の客席で社会的距離(ソーシャルディスタンス)を保ちつつ、遠隔で評議に臨む取り組みを進める。
密集を避けるための措置で、映画館は法廷のように静粛な環境が得られるほか、音響設備などが充実しておりストレスがない状態で裁判手続きを進められるという。スコットランド当局は「裁判の遅れの影響を受けた被告、被害者、証人に安心感を与えることができる」としている。
ズームで「死刑」
一方、過度なIT化が人権を侵害しかねない例も出ている。米CNNなどによると、ナイジェリアでは殺人の被告にズーム経由で死刑が言い渡され、「非人道的だ」との批判が出た。
一般に刑事裁判では冤罪(えんざい)防止の観点から厳格な手順を踏むことが求められている。欧米でも、法廷での対面のやりとりを省くことには批判の声もあり、ITを使った効率化とのバランスも問題になる。
日本では7月に閣議決定された「世界最先端デジタル国家創造宣言・官民データ活用推進基本計画」で、逮捕や捜索などに必要な裁判所の令状のオンライン発行や、刑事書類の電子データ化が検討課題に挙げられた。ただ本格的な議論はこれからで、実現には時間がかかるとみられる。
菅義偉首相はデジタル化の推進を政権の旗印に掲げる。成城大の指宿信教授(刑事訴訟法)は「日本の司法は諸外国と異なり『国民へのサービス』であるとの視点が欠けている。新型コロナ禍の中、司法への信頼を高めるためにも、利便性を考慮した運用が求められる」と指摘している。