弁護士法人かごしま 上山法律事務所 TOPICS

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裁判長が証人尋問中に居眠り高知地裁所長が口頭注意処分も検討

2021-07-14 | 裁判員制度

★ あまり 司法裁判関係の報道記事がない今日この頃ですが・・・
6月に続いての裁判官の居眠りの記事です。
被告人の立場からはなるほどと思いますが
これを言い出すと収拾がつかなくなるのではないか・・・と思っています。
「処分」とか書いてありますが、ほめられたことではないにしろ
 今後居眠り警察 を誘発しないでしょうかね。
皆さん、生きにくい世の中が大好きなのですね。
 そもそも、裁判員裁判の導入の理由は未だによく分かっておらず
当時の刑事司法にそこまで問題があったわけではないと認識しています。
起訴状一本主義とか予断排除の原則とか刑訴法の基本原則を大きく曲げてしまったので、法廷に緊張感が亡くなったと言えばそうかもしれません。
裁判官が居眠りできるようにするための制度導入だったというようなことになりませんことを祈ります。

※ 引用
毎日新聞の配信記事です。


 高知地裁の裁判官が2019年10月の裁判員裁判中に居眠りをしたとして、当時の地裁所長が裁判官を口頭で注意していたことが13日、地裁への取材で分かった。裁判官は居眠りの事実を認めており、森崎英二・現所長は取材に対し「司法に対する国民の信頼を損なった。今後こうしたことがないように、裁判官の職責の重要性を今一度自覚させるように努める」とのコメントを発表。処分についても検討する。
 地裁によると、裁判官は60代男性で現在は刑事部の責任あるポストを務めている。居眠りがあったのは2019年10月に開かれ、強盗致傷罪に問われた被告の裁判員裁判。この裁判官は裁判長を務めていたが、証人尋問中に居眠りし、見かねた被告側の弁護士から書記官に苦情が寄せられた。裁判後に当時の地裁所長が口頭で注意したという。
 この裁判官を巡っては今年4月の裁判員裁判でも外部から居眠りの指摘を受けた。地裁は調査したが、「目をつぶって審議を聞くことがあり、眠っていたように見える可能性がある」と結論付けた。また、居眠りの原因や睡眠障害の有無について地裁は「個人のプライバシーがあるので答えられない」と取材に回答した。
 高知県弁護士会に所属する弁護士の一人は「人間を裁くという最も緊張感が必要とされる場面で居眠りという行為はあってはならない。事実だとしたら、道義的な責任が問われる」と憤った。


公判中に裁判官が居眠り翌日に謝罪、開廷30分遅れる

2021-06-10 | 裁判員制度


こういうことが起きないように裁判員裁判を導入したというのに・・・
というのは冗談ですが
修習時代とか裁判官が良く居眠りをしていたのを見た記憶があります。

一番気になるのは最後の一文
被告人(ら)に対しては謝罪はしなかったのでしょうか。

※ 引用


 7日に開かれた覚醒剤取締法違反事件の裁判員裁判の公判中に、新潟地裁の裁判官が居眠りしていたことが10日、地裁への取材で分かった。裁判官は翌8日の公判前に裁判員ら関係者に謝罪。開廷が約30分遅れる影響が出た。
 新潟地裁によると、居眠りがあったのは覚醒剤取締法違反罪などに問われた被告2人の裁判で、7日は被告人質問が行われていた。外部からの指摘で居眠りが判明。裁判官は地裁の調査に「前夜よく眠れず、睡魔に襲われ、一瞬意識を失うことが何度かあった」と話しており、複数回に及んだとみられる。
 ほかの裁判官2人とともに裁判員、検察官、弁護人らに謝罪した。




裁判員裁判 検証記事 西日本新聞 その3

2019-06-28 | 裁判員制度
裁判員として評議に参加する場合
冒頭で裁判長以下の裁判官の年収を尋ねてみたらいいと思う。
刑事裁判に市民が参加する意味が良く分からなくなると思う。

※引用
【裁判員制度10年(3)】重い負担 6割超が辞退 経験共有へ「守秘義務」の壁も
【裁判員制度10年(3)】重い負担 6割超が辞退 経験共有へ「守秘義務」の壁も|【西日本新聞ニュース】
刑事裁判に市民の視点を取り入れる「裁判員制度」が導入されて5月で10年を迎えた。裁判員に選ばれた人々は殺人などの重大事件に向き合い、悩...

【裁判員制度10年(3)】重い負担 6割超が辞退 経験共有へ「守秘義務」の壁も|【西日本新聞ニュース】
【裁判員制度10年(3)】重い負担 6割超が辞退 経験共有へ「守秘義務」の壁も|【西日本新聞ニュース】
刑事裁判に市民の視点を取り入れる「裁判員制度」が導入されて5月で10年を迎えた。裁判員に選ばれた人々は殺人などの重大事件に向き合い、悩み抜いて有罪・無罪を判断してきた。しかし辞退率は年々上昇。「守秘義務」の分かりづらさや、経験を社会に還元する難しさも指摘されている。制度の課題を追った。
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 裁判員に選任されたことを告げた女性(41)に、勤務先の上司は冷ややかだった。「裁判に出席するなら会社は休み扱い。有給休暇も認められない」
 当時勤めていたのは、福岡県内にある正社員約50人の中小企業。この女性が1人で給与計算や社会保険の手続きを担当していた。
 職場に迷惑をかけて申し訳ないとも思ったが「遠い存在だった司法を身近に感じてみたい」と参加を決めた。渋る上司には「有給休暇は自由に使えるはず」と訴え、何とか理解を得た。
 福岡地裁で2016年にあった殺人事件の審理期間(初公判から判決まで)は40日。週末は職場でたまった仕事をこなした。
 女性は「慣れないことばかりだったが、自分の意見も言うことができた。よい経験になった」と話し、こう付け加えた。「働く人が参加しやすい仕組みを整えてほしい。誰もが参加できてこそ、司法に多様な意見が反映されると思う」
辞退率、昨年は過去最多の67%
 裁判員は20歳以上の市民から無作為に選ばれる。辞退するには「70歳以上」「重い病気やけが」などの理由が必要だ。ただ、辞退率は制度が始まった09年の53・1%から上昇し、昨年は過去最多の67%だった。
 辞退が増える理由の一つに送り出す側の問題がある。民間調査機関「労務行政研究所」(東京)は昨年、7739社に裁判員休暇制度があるか調査。回答した440社のうち「ある」は56%、従業員300人未満では41%にとどまった。
 裁判員裁判の平均審理期間は昨年は10・8日、最長では207日。九州のある信用組合の幹部はこう話す。「うちみたいな中小で職員が長期間休んだら業務に支障が出る。休暇制度を作る余裕はない」
 一方で、最高裁が昨年行った裁判員へのアンケートでは「非常によい経験」「よい経験」との回答が96・7%に上った。経験者の評価は高いのに増える辞退者-。市民団体「裁判員ネット」(東京)代表の大城聡弁護士は「市民参加の制度なのに10年たっても環境が整っていない。社会の中で制度が孤立しているのではないか」と懸念する。
「何をやるのか分からず不安だった」
 最高裁が5月15日に発表した総括報告書は、辞退率上昇の背景として、国民の関心の低下も挙げた。
 制度開始前、裁判所トップが街頭でチラシを配り、企業に休暇制度の導入を要請した。だが、啓発活動は下火になり、市民が裁判員に関する情報に触れる機会はほとんどなくなった。福岡商工会議所の担当者も「ここ数年、裁判所からの協力要請はない」と話す。
 「何をやるのか分からず不安だった。事前に情報があれば、裁判員に選ばれても『すっ』と入っていけたのに」。福岡地裁で裁判員を経験した60代の男性はこう話した。
 甲南大の笹倉香奈教授(刑事訴訟法)は「司法に市民の目が入り、閉鎖的だった刑事裁判に風穴があいた。課題もあるが、法教育などを通じて制度を周知し、検証を続けることが根付きにつながるはず」と話す。
「裁判員になったことも話してはだめなの?」
 刑事司法に市民感覚を生かし、その経験を社会に還元する-。誰もが選ばれる可能性がある裁判員制度の定着は道半ば。さらに、裁判員経験の「共有」も課題となっている。
 福岡市内のビルの一室で5月11日、裁判員経験者や弁護士、元裁判官ら11人が菓子やコーヒーが置かれたテーブルを囲んでいた。
 「裁判員になったことも話してはだめなの?」「控訴審が裁判員判決を覆すことはどう思う」
 裁判員経験者の女性と弁護士が2014年に立ち上げた裁判員交流会「インカフェ九州」。18回目となるこの日のテーマは「分かりにくい守秘義務」だった。裁判員経験がない女性2人も「関心がある」と加わり、3時間半、自由に意見を出し合った。
 福岡地裁で15年に裁判員を務めた白石弘子さん(62)が疑問を口にした。「法廷で出た内容は話してもいいと言われたけど、評議の秘密との境界が分からなかった。何となく理解はできるけど…」
守秘義務に尻込み
 白石さんが審理を担った殺人事件の裁判員判決は実刑。判決自体に迷いはなかった。ただ、裁判員を終え、気になることがある。被告の男は知的障害があった。評議でもそのことが検討された。刑務所でどんな生活をするのか、社会復帰後の受け皿はあるのか。誰かに聞きたいと思った。でも、守秘義務に尻込みした。
 白石さんは「評議は公判の内容を基に進む。どこまで話していいのか区別がつかなくなって、全て話してはいけない気がした」と率直な思いを語った。
 評議の内容や経過を漏らさないよう課される守秘義務は重荷になるが、裁判員制度には経験を社会に還元する狙いもある。熊本地裁で3月に裁判員を担当した男性は「非常に良い経験になった。自分の子どもたちにも伝えたい」と話した。
 参加した元福岡高裁判事の森野俊彦弁護士(大阪弁護士会)は「裁判官は『経験をどんどん話してください』と背中を押すべきだ。その上で、注意点を丁寧に示せばいい」と指摘する。
市民の側から裁判所へ働き掛ける動きも
 経験者の負担を減らし、制度の浸透を図る-。より良い裁判員制度にするため、市民の側から裁判所へ働き掛ける動きもある。
 裁判員経験者らでつくる市民団体「裁判員ACT」(大阪市)は1月、大阪地裁に8項目の提言書を提出した。「守秘義務の範囲を具体的に説明する」「裁判官と経験者による公開座談会を開く」ことを求めた。
 ACTの礒野太郎さん(47)は、経験者から「家族にも話すつもりはなく、墓場まで持って行くつもりだった」と打ち明けられた。「抽象的な説明では萎縮する。貴重な経験を重荷にしてはいけない」と思う。
 裁判員法は、制度の趣旨に「司法に対する国民の理解の増進と信頼の向上」を記す。刑事裁判に携わった市民の声が広がってこそ、理解は進み、深い根を張るはずだ。
制度は発展途上 裁判員の負担軽減を
 裁判員制度の成果や課題について、九州大の土井政和名誉教授(刑事政策)に聞いた。
 -制度への評価は。
 「裁判官が供述調書など書面に頼る『調書裁判』から、法廷で証人や被告に直接話を聞く『公判中心主義』が主流になった。裁判員は自分で見聞きしたことを重視するため、分かりやすい裁判が実現しつつある」
 「公判前整理手続きでは争点や証拠が絞られすぎて、被告に有利な証拠まで制限される懸念がある。検察側の証拠についても、全面開示を目指すべきだ」
 -市民に死刑の判断が委ねられることもある。
 「死刑求刑事件は、多数決ではなく全員一致にする必要がある。被告の生命に関わる判断で、多数決では心理的負担が大きすぎる」
 -量刑の幅が広がった。
 「市民感覚が反映された結果だ。ただ、裁判は情緒的なものではなく、量刑傾向を踏まえ、被告にとって公平な判断が求められる」
 -遺体写真などの証拠を加工するケースが増えた。
 「精神的な負担は大きいが、悲惨な写真も証拠である以上は見るべきだろう」
 -制度への関心が低下しているとの指摘もある。
 「辞退率の上昇は大きな課題。背景には長期化する審理や仕事面の負担、人を裁くことへの漠然とした不安がある。人手不足に悩む中小企業には、国や自治体の財政的な支援も必要だ」
 -守秘義務について。
 「裁判員法の条文では全て話せないとの誤解を生みかねず、守秘義務の内容を具体的に示す必要がある。有意義な経験も、広がらなければ意味はない」
 -今後のあり方は。
「発展途上だと考えている。見つかった課題を改善し続けてこそ、より市民に身近な制度になるはずだ」
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連載「裁判員制度10年」
 この記事は西日本新聞とYahoo!ニュースの連携企画による連載記事です。国民が裁判員として司法に参加する「裁判員制度」開始から10年、司法と国民との距離は近づいたのかを振り返ります。


裁判員裁判 検証記事 西日本新聞 その2

2019-06-27 | 裁判員制度
「裁判員判決に対する高裁の破棄率は10年は4・6%、18年は11・8%だった。」
〇裁判員の負担軽減の配慮はするが、最終的には裁判官が正しい。であれば、最初から裁判官が判断したほうが期間的には被告人にメリットがある。
『評議の場で、裁判官は類似事件の量刑傾向を提示。「求刑超えの判決は高裁で覆ることが多い」とも話したという。その後、全員が目を閉じた。裁判官が読み上げる量刑に、それぞれが手を挙げた。死刑求刑に対し、結論は無期懲役だった(最高裁で確定)。
 「過去の傾向に基づいた判断を、と迫られているようだった」。女性は市民感覚が生かされたとは、今も思えない。』
〇裁判員の市民感覚はどこで生かせばいいのか?

西日本新聞の記事からです。

※引用
【裁判員制度10年(2)】「痛烈なメッセージ」求刑上回る判決も 量刑相場に市民感覚、判決に幅

 刑事裁判に市民の視点を取り入れる「裁判員制度」が導入されて5月で10年を迎えた。裁判員に選ばれた人々は殺人などの重大事件に向き合い、悩み抜いて有罪・無罪を判断してきた。中には法律の「プロ」の固定概念を打ち壊す、量刑相場を大きく越えた判決もある。市民感覚を反映したはずの裁判員判決だが、一方で高裁での破棄率は上昇。現状と課題を追った。
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「無期懲役に処する」
宮崎地裁の裁判員裁判は16年2月、求刑(懲役25年)を超える判決を導いた。
 被告の男は、女性を殺害、遺体を切断したとして殺人や死体損壊の罪に問われていた。「猟奇的で非人間的」と断じた判決は、有期刑の上限(同30年)も上回った。
 担当検察官だった若杉朗仁弁護士(福岡県弁護士会)は法廷で目を閉じたまま判決を聞いた。「これが市民感覚か」
 法律の「プロ」として事件に向き合ってきた自負があった。市民が被告を裁く側に立ち、事実認定や量刑を判断する裁判員制度には否定的だった。
 しかし、地裁判決に固定観念を打ち壊される。判決は求刑について「事件の特殊性や全体としての悪質さを適切に評価していない。市民感覚に照らして不当に軽い」と批判。若杉弁護士は法曹三者(裁判官と検察官、弁護士)の量刑相場に対する「裁判員からの痛烈なメッセージ」と感じた。
裁判員制度の開始前、裁判官は類似事件の判決や求刑など詳細なデータを基にした、裁判所内部の検索システムを参考に量刑を決めていた。これにより、判決のばらつきは少なかった。
 裁判員裁判でもシステムを参考にするが、市民感覚が反映されて量刑に幅が出るようになった。性犯罪や幼児虐待事件では求刑を上回る判決が増加。一方、介護疲れによる殺人事件などでは執行猶予に保護観察を付ける判決も増えた。
 ただ、市民が考え抜いた一審判決が高裁で覆されるケースも増えている。宮崎の女性殺害・死体損壊事件の控訴審判決は、一審判決を「量刑判断を誤った」として破棄し懲役25年に減刑。最高裁で確定した。
 控訴審の結論は被告に有利に傾くとは限らない。知人女性への殺人罪などに問われた男について、福岡高裁は昨年9月、傷害致死罪を適用し懲役10年(求刑無期懲役)とした裁判員裁判判決を破棄。殺人罪を認定して懲役22年とした。
 裁判員判決に対する高裁の破棄率は10年は4・6%、18年は11・8%だった。
 「納得できない。市民の声を反映させるという制度の意義を感じなかった」。福岡県豊前市で女児=当時(10)=が殺害された事件の裁判員裁判。福岡地裁で16年に裁判員を担った女性(31)は判決後、裁判長にこう訴えた。
 自身にも幼い娘がいた。審理を重ねるたびに胸が締め付けられ、同じような被害者を出したくないという思いが募った。
 評議の場で、裁判官は類似事件の量刑傾向を提示。「求刑超えの判決は高裁で覆ることが多い」とも話したという。その後、全員が目を閉じた。裁判官が読み上げる量刑に、それぞれが手を挙げた。死刑求刑に対し、結論は無期懲役だった(最高裁で確定)。
 「過去の傾向に基づいた判断を、と迫られているようだった」。女性は市民感覚が生かされたとは、今も思えない。
  検察統計によると、裁判員制度が始まった09年以降、殺人罪(未遂を含む)の起訴率は4割減った。裁判員は直接証拠を重視する傾向にあり、検察側が殺意を認める供述がない事件の起訴に慎重になっていることが一因とみられる。手堅く起訴すれば、上がるはずの有罪率もわずかに下がった。刑事司法に詳しい弁護士は「疑わしきは被告人の利益にという刑事裁判の原則が、市民参加で一定程度実現されてきた」と指摘する。 
 統計では、殺人罪(同)の起訴率(検察官が起訴か不起訴かを決めた人のうち起訴した人の割合)は制度開始前の06年は56・8%。制度が始まった09年は48・4%、17年は28・2%に減った。これには、殺人容疑で送検され、傷害致死罪で起訴するなど罪名が起訴時に軽くなる「罪名落ち」は含まれない。
 成城大の指宿信教授(刑事訴訟法)は「裁判員は直接証明できる証拠を重視し、推論に対しては慎重な傾向にある。制度開始以降、起訴猶予になるケースが増えている」と分析する。
 千葉県で16年に男女3人が包丁で襲われた通り魔事件で、千葉地検は殺人未遂容疑で逮捕された女を「殺意を認める証拠がない」として傷害罪で起訴した。
 事件を担当した日弁連刑事弁護センター副委員長の菅野亮弁護士は「裁判員前なら殺人未遂罪で起訴された事件だった」と話す。裁判員事件を約50件担当し、うち2割は、不起訴処分や罪名落ちだったという。
 裁判員制度が始まり、検察側は慎重になっているのか。法務省刑事局長は15年の衆院法務委員会で「(起訴率の)低下傾向は裁判員制度前から始まり、制度と連動しているとは言いがたい」と述べた。
 99・9%と言われる有罪率は、裁判員裁判でわずかに下がった。最高裁の司法統計では、09~17年の一審の平均有罪率は99・8%で、裁判員裁判に限れば99・2%だった。16年(98・8%)と17年(97・8%)は99%を割った。
 菅野弁護士は「裁判員は裁くことに慣れておらず、真剣に証拠と向き合い、市民目線で判断していることの表れだ」と評価する。
 九州大法科大学院の田淵浩二教授(刑事訴訟法)は「証拠を絞り込み、公判での証言や被告人の供述に重きを置く『公判中心主義』が進んだ。長時間の取り調べなど強引な証拠固めが減り、冤罪(えんざい)を生まない司法制度改革が進んできたと言える」と話した。 
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連載「裁判員制度10年」
この記事は西日本新聞とYahoo!ニュースの連携企画による連載記事です。国民が裁判員として司法に参加する「裁判員制度」開始から10年、司法と国民との距離は近づいたのかを振り返ります。




裁判員裁判 検証記事 西日本新聞

2019-06-27 | 裁判員制度
統合証拠だって一定の評価が加えられているでしょう。
統合証拠からは評価に従った認定への誘導しか感じません。
裁判員裁判が証拠裁判主義とか起訴状一本主義とかと
どういう関係になっているのか理解できません。

西日本新聞記事からです。


 刑事裁判に市民の視点を取り入れる「裁判員制度」が導入されて5月で10年が経過した。裁判員に選ばれた人々は殺人などの重大事件に向き合い、悩み抜いて有罪・無罪を判断してきた。制度の導入後、裁判所は裁判員にストレスを与える遺体の写真などの「刺激証拠」に慎重になり、代わりにイラストを採用するケースもある。また裁判員の「負担軽減」のため、公判前に証拠を絞る手続きも。この10年で浮かんだ懸念や、今後の課題とは。
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 裁判員に配られた遺体の写真は顔や傷痕がイラストに置き換えられていた-。
 福岡市で女子予備校生=当時(19)=が刺殺された殺人事件。福岡地裁で2017年に裁判員を務めた女性(51)は、加工された写真に違和感を覚えた。
 「悲惨な写真だからといって、実物を見ないで公正な裁判ができるの」。代用されたイラストは、被告の元少年=事件当時(19)=の殺意を示す重要証拠だった。
 初公判から判決まで約3週間、元少年と向き合った。反省しているのか、どう償うのか、更生の可能性は…。被害者の両親や兄の意見陳述にも耳を傾けたが、ふと、被害者のことが頭から離れる瞬間があった。
 女性を含む裁判員6人と裁判官3人が導いた判決は懲役20年(求刑懲役22年)。検察、被告側ともに控訴せず確定した。
 刑事裁判は、同一の証拠に基づいて裁くことが大前提。そのことを踏まえた上で、女性は「裁判員にもさまざまな感覚がある。写真かイラストか、選べるようにしてほしい」と思う。
 転機となったのは、13年に裁判員経験者が起こしたある裁判だ。
 強盗殺人事件で裁判員を担当した女性が、遺体の写真を見て急性ストレス障害になったとして、損害賠償を求めて国を提訴。福島地裁判決は、裁判員制度は合憲とする一方、「裁判員を務めたこととストレス障害発症には因果関係がある」との判断を示した。
 この判決以降、裁判所は遺体の写真など「刺激証拠」の採用に慎重になる。
 「証拠に対する配慮をお願いします」。名古屋市内で80代夫婦が殺害された強盗殺人事件。名古屋地裁の裁判長は、争点を整理する公判前整理手続きで、検察官にこう求めたという。
 弁護人の二宮広治弁護士に示された遺体の写真は傷痕が緑や青色に塗られていた。この写真を証拠採用した裁判員判決は今年3月、強盗殺人罪を否定、殺人と窃盗罪を認定し、被告の男を無期懲役(求刑死刑)とした。
刑事訴訟法1条が掲げる法の目的は「事案の真相究明」。検察は、裁判所が刺激証拠の必要性を認めない傾向に危機感を抱く。
 法務省で3月にあった裁判員裁判の在り方を議論する検討会。東京高検の横田希代子総務部長は裁判所の対応について「刑事訴訟法の目的から乖離(かいり)している。最も証明力の高い証拠が使われず、被害者や遺族の心情にも反するのではないか」と懸念を示した。
 「加工写真は悲惨さを減殺させる点で被告に有利になる」。二宮弁護士はこう認めた上で「刑事裁判の鉄則は証拠による事実認定。裁判員裁判でも変わらないはず」と疑問を呈する。
 予備校生殺害事件の判決から1年半。裁判員を担った女性は今も消えない思いを抱える。「被害者や遺族の苦しみを理解した上で裁くことができただろうか」。殺人事件の裁判に向き合った、市民の素直な声だ。
公判前整理手続きは、裁判員が参加する初公判前に、裁判官と検察官、弁護士の三者が協議し、証拠や争点を絞り込む。福岡市で生後4カ月の長女を踏みつけて殺害したとして、殺人などの罪に問われた女の裁判員裁判でも、この手続きが行われた。弁護側は殺意を否定、責任能力も限定的だと主張した。
 福岡地裁で目にした被告の女は想像していたよりも弱々しく見えた。検察官の質問に消え入るような声で答え、弁護士の隣の席ではうつむいたままだった。
 「なぜ、わが子を殺したのか、被告のことをきちんと理解したい」。裁判員の女性(50)はそう思った。
 だが、審理日程はあらかじめ決まっていた。唯一の手掛かりとなるはずだった母親は「支援を約束する」と手紙を寄せただけ。女性は「直接、母親から被告の性格や幼少期の様子を聞きたい」と思ったが、その機会はなかった。
 裁判員判決は昨年10月、殺意と完全責任能力を認めて懲役7年(求刑懲役12年)を言い渡した。
 女性は「真剣に裁判に向き合ったが、事前に用意された証拠の中でしか判断できなかったのは残念だった」と語った。
公判前整理手続きは審理を迅速化し、裁判員の負担を軽減する目的で導入された。手続きは非公開で、終了後は原則、新たな証拠採用はできない。
 福岡地裁で2017年にあった強盗致傷事件の裁判員裁判。被告の男は起訴内容を一部否認した。事件には複数人が関与し、共犯とされた少年は捜査段階では「男は謀議に加わっていた」と供述したが、法廷では「加わっていなかったかもしれない」と証言した。
 弁護人の船木誠一郎弁護士は、少年から供述が変遷した理由を聞き出そうとした。だが、事前に定められた質問時間では納得のいく答えは得られなかった。
 判決は、少年の捜査段階の供述を採用し、強盗致傷罪で男を有罪とした。
 「公判は生き物」とも言われる。法廷で被告や証人が主張を変え、検察側の立証が崩れて無罪につながったケースもある。船木弁護士は「裁判員の負担軽減も重要だが、刑事裁判は被告のためにある。裁判所は公判が始まっても必要な証拠は採用するなど柔軟に対応する必要がある」と話す。
 公判前整理手続きは長期化も課題になっている。裁判員制度が始まった09年は2・8カ月だった平均期間は昨年は8・2カ月に延びた。浜松市で12年にあった殺人事件では最長の6年2カ月かかった。
 最高裁がまとめた司法研究報告書は「長期化の根本的な原因は、争点、証拠の整理が的確に行われていないこと」と分析するが、公判開始が遅れると、被告や証人の記憶が薄れて真相究明が妨げられる懸念もある。
 専修大の飯考行教授(法社会学)は課題はあるとした上で、「公判前整理手続きで、短期間の審理が可能になった面もある。より良い制度にするため検証を続けることで、迅速化と質の確保の両立が可能になるはず」と指摘する。

 連載「裁判員制度10年」
 この記事は西日本新聞とYahoo!ニュースの連携企画による連載記事です。国民が裁判員として司法に参加する「裁判員制度」開始から10年、司法と国民との距離は近づいたのかを振り返ります。

裁判員制度 施行 10周年

2019-05-21 | 裁判員制度
裁判員10年 裁判官インタビュー(6)「裁判が立体的、カラフルに」仙台地家裁・大川隆男裁判官(45) 22件担当



私には、裁判員制度が成功しているとは思えないし、国民に支持されているとも思いません。

10周年ということで、基本的に肯定的な意見ばかりを目にしますが、裁判官のインタビューにも大きな違和感を感じます。

★ 立体的に、あるいはカラフル な裁判  の意味が分からない。

★ 専門家同士では、法的に正しい、証拠的に正しい、論理的に正確であるといった点が重視されていました。業界トークと言いますか。法律家目線で正しさを追究していくと大体細かすぎる作業になる。見る人が見れば『すげー』ってなったと思いますが、国民から見たら『なんだこれ』というところがあって。1つ目の供述調書と2つ目を比べてちょっと違うことを発見して喜んでいたようなところがあったのですけど、じゃあそこまで必要だったか、結論に意味があったのかといえば行き過ぎていたんじゃないかと思います。『精密司法』と呼ばれますが、今の『核心司法』でもクオリティーは下がっていません    そうかなあ?

★ ネーティブ世代は資料に埋もれてページを繰ることをしていません。彼らこそが未来です。頼もしいですね     そうなんだ

★ 社会とは何か、人生とは何か、を考えさせられる部分があるのかなと思います     被告人の刑事責任を問う場面でそれやらなきゃいけませんか

★ 変わり目は狙わないといけません      弁護士をそういう風に見ているんだ。

★ 制度が切り変わる時期に立ち会えたことに、深い知的刺激を感じます。いつもトライ精神で、エラーがあったとしてもそれを礎として未来を改善できればと

  全体と通して 裁かれる被告人のことはほとんど言及されておられません。

  おそらく、多くの裁判官もそのように考えられているように思います。

  そのあたりが、どうも違和感を感じる根本的なところのような気がしています。

※引用

裁判員10年 裁判官インタビュー(6)「裁判が立体的、カラフルに」仙台地家裁・大川隆男裁判官(45) 22件担当


 −−裁判員裁判の導入で、刑事裁判はどう変わりましたか

 「刑事裁判が立体的に、あるいはカラフルになりました。社会の多様な経験が刑事裁判に持ち込まれ、裁判員の方々と証拠や量刑事情を評価していく。裁判官裁判も間違っていたとは思いませんが、比較的定番化しやすい。裁判官だけの判断よりやっぱり厚みが増すなあと思いますね。評議を通じて裁判員の話を聞いているとしみじみ思います」

 「結局、専門家同士では、法的に正しい、証拠的に正しい、論理的に正確であるといった点が重視されていました。業界トークと言いますか。法律家目線で正しさを追究していくと大体細かすぎる作業になる。見る人が見れば『すげー』ってなったと思いますが、国民から見たら『なんだこれ』というところがあって。1つ目の供述調書と2つ目を比べてちょっと違うことを発見して喜んでいたようなところがあったのですけど、じゃあそこまで必要だったか、結論に意味があったのかといえば行き過ぎていたんじゃないかと思います。『精密司法』と呼ばれますが、今の『核心司法』でもクオリティーは下がっていません」

 「刑事裁判とは何だったのか。必要な要素を絞って突き詰めた結果、裁判が非常に分かりやすくなりました。本来の刑事裁判の理念に沿っていると考えます。基本的には法律家のための仕事ではなく、国民に還元されなければなりません。その観点がこれまで若干抜けていたのかなと思います」

 −−裁判官の仕事の変化はありましたか

 「とても合理化されました。昔の刑事裁判の特徴は、裁判官室に戻って法廷でもらった大量の調書を読んでいました。1つの事件で最大でロッカー2つ分になることもありました。公判期日が飛び飛びなので、また同じ記録を何度も読み返すという効率の悪い仕事をしていました。もちろん裁判員裁判の連日の審理も大変です。判決までは朝から夕方まで、集中力と体力を要するのですが、裁判員のみなさんとの評議は非常に効率的。以前のように目をチカチカさせながら資料を読み込むということはなくなりました。メリハリのついた仕事になりました」

 「以前は何年もの長期間にわたる裁判はいくらでもありました。でも事件が風化してから判決が出るのでは、やはり国民の皆さんの理解を得られない。昔は長く時間をかけることが尊いみたいな発想、価値観がありました。特に重大事件や贈収賄は(裁判を)早く進めるもんじゃないという雰囲気が検察官や弁護人にもありました。今は法曹三者で納期を見つけて進めようという共通認識ができた。一定の枠組みで集中して成果を上げるという、今の時代に合った働き方が、裁判員裁判によって、偶然ではあるけれどもたらされたといえます」

 −−導入からの10年間で裁判員裁判に変化はありますか

 「果てしない試行錯誤を繰り広げてきた10年。全く違うやり方になっていると思います。争点整理や審理計画などの改善で、数え切れないほどいろいろな試みがありました。ありますよね、『あの人は今』みたいな、大きく変わってしまっているものって。改善は実際の審理を踏まえています。昔は刑事裁判の運用は、華道や茶道のように作法がしっかり決まっていた感じがありました。今はとにかく、現在あるものが正しいとは誰も思っていなくて、よりよい裁判に向けて議論しようじゃないかと。安住するのではなく、どんどん変えていこうという活気、熱気があります」

 「非常に変革の時代です。私なんか、『裁判員イミグラント(移民)』の世代ですが、『裁判員ネーティブ(先住民)』はこれもう、非常に頼もしい。デジタルイミグラントとデジタルネーティブみたいなね。私は制度の導入前が10年、導入後が10年と、ちょうど裁判官としての経験が半々の世代です。過去を知っているので、昔はこうだったからと引きずられる思いがありますが、ネーティブ世代は資料に埋もれてページを繰ることをしていません。彼らこそが未来です。頼もしいですね」

 「まだ全く完成ではなく、試行錯誤が続いている状態です。私は米国に留学しましたが、陪審員制度が憲法にあるのが当たり前と受け止められています。逆に日本は司法への市民参加で後発国ですが、後発がゆえにうまく改善を繰り広げ、世界で最も洗練された制度になるのではないかと思います」

 −−裁判員経験者の多くはいい経験だったと感じているといいます。なぜ良かったと感じているのだと思いますか

 「日本は比較的平和で、多くの人は犯罪に直ちには縁がありません。裁判員になると、それほど深く関心を持っていなかった犯罪について考えることになります。それも、かなり深くご覧いただく。刑事裁判には人間模様があり、なかなか考えさせられることが多いです。裁判官と被告人ってかなり距離があるようにみえて、実はちょっとした運命の歯車の違いで立場が分かれる。むしろ私が被告人席に立っていたのかなと考えることも私自身よくあります。社会とは何か、人生とは何か、を考えさせられる部分があるのかなと思います」

 −−評議ではどのように振る舞っているのですか

 「これまで裁判員裁判は全て右陪席として参加しました(3月末時点)。右陪席は意外とキャスチングボートが回ってくることが多いんです。司会じゃないときは自由に振る舞っています。私はそんなにしゃべるタイプでもないと思います。が、そうでもないと周りには言われたりします。自分は勝手に人見知りキャラだと思い込んでいるんですが。慣れて、お互いを知って、話をするうちに皆さんと混ざっていく感じですかね」

 「評議ではいろいろな意見をうかがいたいと思っています。和やかな雰囲気作りや、信頼関係を築くことは大事です。ただ評議室がシーンとなることはありません。日本人は議論が下手だといわれますが、それはものすごいステレオタイプだと思います。日本人観を改めた方がいい。奥ゆかしい人にはどうですかと聞きますが、自分の意見はしっかりおっしゃる方が多いです」

 −−検察官の主張立証の変化や、改善してほしい点はありますか

 「検察官は組織的に対応してかなり主張立証スタイルが洗練されていますが、公判に向けた準備にマンパワーがうまく配分されるとさらによくなるのかなと思います。検察官は準備が大変になったと思っています。かつては捜査段階で証拠を固めるというモデルでしたが、公判でも勝負しないといけない。公判までどうなるか必ずしも読めないので、いろいろなパターンを想定して準備することになると思います。改善点があるのは裁判所も同じで、裁判官も検察官も弁護人も、裁判員ネーティブが中枢になってくれば自然と変わってくるのかなと思います。どんどん手直しすることが必要だと思います」

 −−弁護人に変化はありますか

 「若い人や中堅に特に熱気があります。私は最近までロースクールに派遣されていました。弁護士志望の学生はまずは知的財産、国際などの分野に目を奪われますが、私は『今は一周回って刑事弁護ですよ』と言っていました。変化の時代は今までのルールが必ずしも成り立たない。ということは若い人が新しいことをしてもいきなりスタンダードになれます。変わり目は狙わないといけません」

 −−どの点に裁判所の変化の余地があると考えていますか

 「ひとつの大きなテーマは裁判員との協働。もっと深化させるべきじゃないかと。10年を経て、50年、100年と続けるためにここを深掘りすべきだというのは、恐らく裁判官共通の認識であります。裁判員がより理解しやすい争点、判断テーマを決め、よりわかりやすい主張立証活動をしてもらい、そうすると自然と皆さんが法廷で得た心証を語り合えるはずです。公判前整理手続きと、公判、評議、判決が一つの線でつながるように、とよく言われますが、それをより実体化する。より一層、裁判官の力を発揮していただきたいです」

 −−裁判官としての今後の意気込みを教えてください

 「制度が切り変わる時期に立ち会えたことに、深い知的刺激を感じます。いつもトライ精神で、エラーがあったとしてもそれを礎として未来を改善できればと。道なき道ですし、刑事事件それ自体に鉛のような重みがあって緊張の連続の仕事ですが、離陸していく時代の裁判官で幸運だったなと。坂の上の雲を目指して登るみたいな…産経新聞ですからね(笑)(※「坂の上の雲」は産経記者だった司馬遼太郎が産経新聞に連載した小説)。坂を登るような雰囲気で、同僚の刑事裁判官とも、良い制度のために建設的な議論をしている良い時代。まだ発展途上ですが、一つ一つの事件を大事にしながら発展に貢献していきたいなと思います」

 ■大川隆男

 おおかわ・たかお 平成11年判事補。福島地裁会津若松支部判事補、仙台高裁判事、東京地裁判事などを経て、31年4月から仙台地家裁判事。45歳。同年2月に東京地裁で、準強制わいせつ罪に問われた男性医師に無罪(求刑懲役3年)を言い渡した。

3D事件・事故イラストデザイナー

2017-11-10 | 裁判員制度



09年から裁判員制度が始まり「凄惨な現場写真にショックを受ける人もいる。言葉で説明するよりも理解してもらえる」と商機を見いだした。

裁判員の心理的負担の軽減ということでしょうか。

この画像処理を証拠として考えていいのだろうか。

証拠扱いではないのかな。

裁判員として被告人に対する判断をするのですから、凄惨な写真もあるだろうし、目を背けたくなる事実にも向き合わなければならいとは考えないのですかね。



日経新聞からの引用です。

※引用

立体画像で再現簡単 メガソフト、交通事故や火災検証


 ソフトウエア開発のメガソフト(大阪市)は、交通事故や火災などの現場を立体画像で手軽に再現できるソフトを開発した。「火柱」や「車」などの画像素材を用意し、事故がどのように起きたか現場検証に活用可能な立体画像が作成できる。損害保険会社などに売り込む考えだ。ロングセラー商品に育った住宅設計ソフトの独自技術を応用し、新たなニッチ分野を開拓する。


「火柱」などの素材があり、火事の火元などを再現できる。
 製品名は「3D事件・事故イラストデザイナー」。火元を再現できる「火柱」や交通事故を再現する際に使う「自動車」など約3千点の画像素材をそろえた。

 利用者は「ドア」や「押し入れ」などの画像素材を選択して、部屋の間取りなどを再現する。「火柱」を設置すれば、どこが火元で、どのように燃え広がったのか可視化できる。現場の見取り図などを平面図で表現するソフトはあるが、イメージしやすい立体画像で再現するのは珍しい。

 交通事故における警察の現場見取り図などでの活用を想定し、車の画像素材も豊富に用意した。車のドアはマウスなどの操作によって開閉を可能にし、車内も立体画像で表現。様々な角度から検証できるように360度で状況を確認できるようにした。車の中から運転手が見た風景を再現することも可能だ。子どもなどの飛び出しが運転手の目線から、どう見えたかなどを検証できる。

 「人物」の画像素材も乳児や幼児、大人など体形別のモデルをそろえた。手首やひじなど計38カ所を動かせ、簡単に姿勢を再現できる。

■損保や警察の利用見込む

 井町良明社長は「警察官などから現場検証で立体画像を使いたいという声があった」と明かす。09年から裁判員制度が始まり「凄惨な現場写真にショックを受ける人もいる。言葉で説明するよりも理解してもらえる」と商機を見いだした。

 損害保険会社や弁護士事務所のほか、消防署や警察署での利用を見込む。例えば、火災現場で活動した消防士は間取りや火元などを記す火災調査書類を書く必要がある。平面図よりも現場の状況を把握しやすい立体画像ソフトの需要が期待できるとみている。

 12月上旬からサンプル版の無料提供を始める。利用者から意見を集めて2年後をめどに正式版を販売する。価格は100万円以内にする方針。販売から2~3年で累計3千本の販売を目指す。

■技術者が顧客対応

 1983年創業のメガソフトは、他社があまり目を付けないニッチ市場を切りひらいてきた。96年から販売する住宅設計ソフト「3Dマイホームデザイナー」が看板商品で、販売本数は累計75万本に及ぶ。

 建築の専門知識は必要なく、誰でも簡単に住宅の間取りを再現できる手軽さが売りだ。間取り図の上に家具などを配置。ボタンを押せば、平面の間取り図を立体画像に変換できる。使える机や壁紙などの画像素材が5万点以上と豊富なことも支持されている理由だ。

 住宅ソフトは競合が多いが、他社製品は画像素材が少なく、機能が複雑で使い勝手が悪いという。井町良明社長は「立体画像を採用した住宅ソフトで目立った競合はいない」と話す。

 メガソフトの売上高(2017年8月期)は8億4千万円、従業員は38人の中小企業だが、強みとするのが顧客の声を取り込む姿勢だ。コールセンターを設けず、技術者がいる開発部門が顧客対応窓口としての役割を果たす。道路使用許可申請書に利用できる「3D工事イラストワークス」や飲食店向け「厨房プランナー」を開発してきた。

 規模が小さい市場でも、利用者の要望を積極的に取り込むことで優位な立場を築くことができる。

何より大切なのは・・・

2017-06-28 | 裁判員制度


何より大切なのは、刑事裁判(裁判員裁判を含む)が被告人に刑罰を科する重大な手続であること
だからこそ被告人の権利が最大限に尊重されなければならないこと
裁判員の負担軽減等の名のもとに被告人の権利がゆがめられてはならないこと
を社会全体であらためて認識することである。


と私は思う。


読売新聞の社説から引用です。

※引用

裁判員辞退増 参加促す環境整備を進めたい

 裁判員の候補に選ばれても、辞退する人の割合が増加傾向にある。

 最高裁によると、昨年の辞退率は65%近くにまで上昇した。裁判員制度が始まった2009年は53%だった。このままでは、国民の多様な考え方を刑事裁判に反映させる制度の趣旨が損なわれかねない。

 多くの人が参加できるよう、環境整備に知恵を絞りたい。

 辞退率を押し上げている原因の一つが、審理の長期化だろう。京都地裁で始まった連続変死事件の裁判員裁判は、象徴的な例だ。

 筧千佐子被告が、夫と交際相手の計4人に対する殺人罪や強盗殺人未遂罪に問われている。

 検察側は、被告が青酸化合物を用いて、財産目的で毒殺した、などと主張する。直接証拠が乏しいため、状況証拠を積み重ねて、被告以外に犯人はあり得ないことを立証する方針だ。

 弁護側は全面無罪を訴える。被告は認知症だとして、責任能力などを争う方針も示す。

 48回の公判が予定され、審理期間は135日にも及ぶ。証人は50人を超える見通しだ。裁判員の心身に、極めて大きな負担がかかることは間違いない。

 地裁は、多数の辞退者が出ることを見越して、過去最多の920人を候補者名簿から抽出した。辞退率は最終的に8割を超えた。

 会社勤めや自営業の人が、仕事を犠牲にして、これだけ長期にわたり重責を全うするのは現実的に難しいだろう。辞退者が続出するのは、無理からぬ面がある。

 裁判所側も、辞退を柔軟に認めている。国民に過度な負担を強いれば、裁判員制度への支持を失うとの懸念がうかがえる。

 結果として、長期の公判で裁判員を引き受けるのは、まとまった時間を確保できる人に限られてしまう。6人の裁判員の構成が特定の層に偏るのは、決して好ましい状況とは言えまい。

 無論、時間をかけた慎重な審理は重要だが、それが裁判員への参加を妨げる要因となっている現状は、可能な限り改善すべきだ。裁判所には、一層の効率的な審理が求められる。連日の開廷を避けるといった工夫も必要だ。

 最高裁は、辞退率上昇の要因として、非正規雇用の増加も挙げる。社内での立場が弱く、休暇を取りにくいためだろう。従業員が裁判員に選ばれたら、参加を認める雰囲気作りは欠かせない。

 何より大切なのは、裁判員制度の趣旨を社会全体で改めて認識することである。

裁判員裁判の控訴審での 破棄率

2017-05-22 | 裁判員制度
裁判員判決、破棄率が年々高く 制度開始8年



裁判員裁判の控訴審での破棄率が高くなっているという話題です。

最後のコメントとして 司法制度として正しく機能した結果 とありますが
司法制度の中での裁判員裁判が 機能の観点から位置づけられたことはあったかなあ???


※引用

裁判員判決、破棄率が年々高く 制度開始8年
神戸新聞NEXT
(神戸新聞)

 裁判員裁判で市民裁判員が下した一審判決を、プロの裁判官のみで審理する高裁(控訴審)判決で破棄する割合(破棄率)が高まっている。2016年に控訴審を終えた376人中、約13%の49人で一審が破棄された。10年と比較すると約8・4ポイント上昇した。裁判員制度は21日で開始から8年。市民感覚が反映された一審判決を、控訴審でどこまで尊重すべきかが課題となっている。

 最高裁の司法統計によると、裁判員裁判の控訴審での破棄率は、10年が4・6%。11〜13年も1桁台だったが、14年に11・3%、15年には14・2%にまで上昇し、16年は約13%だった。一方、一審が通常裁判の控訴審判決では、11〜15年の破棄率は9%台で推移し、16年は11・2%に上った。

 最高裁の司法研修所は裁判員制度スタート前年の08年、「裁判員による判決を二審もできる限り尊重すべき」との見解を示しているが、控訴審での破棄率は、14年から3年連続で通常裁判を上回っている。

 今年は大阪高裁が3月、神戸市の小1女児殺害事件の君野康弘被告(50)と大阪・ミナミの通り魔殺人事件の礒飛(いそひ)京三被告(41)に対し、裁判員裁判で審理された一審の死刑判決をいずれも破棄し、無期懲役とした。控訴審は計画性の程度や従来の量刑との公平性を重視した。

 甲南大法科大学院の渡辺修教授(刑事訴訟法)は「市民の良識を生かした判決を積み重ねるのが裁判員制度導入の目的だった。裁判官が従来の判例や量刑を優先し、裁判員の判断を尊重する考えを失っているのではないか」と指摘する。

 一方、裁判員制度に詳しい関西学院大法科大学院の丸田隆教授(英米法)は「控訴審判決は高裁が適正な手続きで一審判決を是正したもの。裁判員による判決の破棄率が高いのは、一審の判断を軽視しているのではなく、司法制度として正しく機能した結果と言える」と話した。

除外決定  裁判員制度

2017-05-15 | 裁判員制度
毎日新聞からの引用です。


※引用

<裁判員制度>裁判官のみ審理急増 16年元暴力団声かけ後

 ◇「裁判員除外」いずれも暴力団関連事件 小倉支部が最多

 21日に施行から丸8年を迎える裁判員制度を巡り、殺人などの対象事件の裁判で起訴された計20人の被告が裁判官のみの審理で行うと決定され、うち13人が2016年以降の決定であることが、最高裁のまとめで分かった。制度上、裁判員に危害が及ぶ可能性があるような事件では「除外決定」が認められているが、昨年以降に急増した背景には、昨年5月に福岡地裁小倉支部で元暴力団員が裁判員に声をかけた事件が影響した可能性がある。識者の間では「やむを得ない」と理解する声がある一方、疑問視する指摘も出ている。

 最高裁によると、除外決定を受けた事件の被告は15年までの6年半には7人だったが、16年は10人と急増。今年も3月までに3人の事件が除外された。地裁(支部含む)別では小倉支部が最も多く9人で、他に福岡8人▽福井2人▽岡山1人−−。いずれも暴力団関連事件だった。

 裁判員法3条は、裁判員に危害が及ぶ可能性があり裁判員の確保が難しい場合、裁判官が職権か、検察側や弁護側からの請求で裁判官だけの公判に変更できると定める。「具体的な危険性」が認められなければ除外できないとされており、施行当初は除外請求が却下された例も複数あった。

 だが、16年5月に小倉支部の殺人未遂事件の初公判後、傍聴に来た特定危険指定暴力団「工藤会」系元組員らが裁判所の外で裁判員に「あんたらの顔は覚えとる」と声をかけ、その後、裁判員法違反(請託、威迫)容疑で逮捕される事態が起きた。殺人未遂事件は公判途中で除外決定がなされた。福井地裁は16年12月、銃刀法違反事件の除外決定の中で声かけ事件に触れ、「裁判員が職務を行うことに強く躊躇(ちゅうちょ)することは容易に予想される」と指摘した。

 こうした傾向について、暴力団対策に詳しい澤田和也弁護士は「現実に裁判員に対する危険が生じ、裁判所は裁判員の安全を重視する判断に傾いているのだろう。当面はやむを得ないのではないか」と話す。裁判員制度に詳しい大出良知・東京経済大教授(刑事訴訟法)は「小倉のようなケースは裁判所などの対応いかんで避けられる可能性が高い。裁判員裁判は国民が犯罪や刑事司法の実情に向き合うべきであるとの考えが基本にあり、安易な裁判員の除外は制度の趣旨に反する」と疑問視する。



裁判員の負担  ということを最優先させる運用だとこういうことになりますね。

プラクティス & プロシーディングス

2017-05-08 | 裁判員制度
刑事裁判教材を全面改訂 「分かりやすさ」重視、裁判員裁判に対応 司法研修所、四半世紀ぶり

刑事裁判教材を全面改訂 「分かりやすさ」重視、裁判員裁判に対応 司法研修所、四半世紀ぶり
05月02日 23:34産経新聞

 最高裁司法研修所が、法曹になるための研修を積む司法修習生向けの刑事裁判教材を、四半世紀ぶりに全面改訂した。5月に施行8年を迎える裁判員裁判の進め方を、審理や評議といった場面ごとに再現。図表を使い、技術的な法律知識よりも「裁判の流れ」を分かりやすく表現したのが特徴だ。大学の書店にも並ぶなど、活用が広がっている。

 検察官「検察官の主張としては、被害者の腹部を『めがけて』突き刺したという意味になります」

 弁護人「こちらは、偶然に包丁が被害者の腹部に刺さったのであり、被告人は腹部をめがけて刺したわけではないという主張です」

 研修所が新たに作ったのは、「プラクティス刑事裁判」「プロシーディングス刑事裁判」の2冊組教材。実際の裁判の流れを解説するプラクティスでは、男が知人男性を包丁で刺してけがを負わせた殺人未遂事件を題材に、公判前整理手続きなどで想定される裁判官や検察官、弁護人のやり取りが紹介されている。

 教材は、1年間の修習期間の皮切りに当たる「導入修習」で使用。これまでは平成2年刊行の教材を部分的に改訂しながら使用していたが、各地の裁判員裁判で積み重ねられた工夫をまとめる形で全面改訂した。

 プラクティス(税別2500円)と、より基礎的な知識を解説したプロシーディングス(同1574円)は28年9月までに完成し、市販もされている。

 「現場の議論を反映し、裁判の進め方の一例を示したかった」と細田啓介上席教官。技術的な解説よりも基礎作りのため、図表を多数掲載。「1審の刑事裁判手続きのいわばゴールは判決」など分かりやすい表現にも努めた。出版元によると売れ行きは好調で法科大学院を持つ大学の書店にも置かれているという。

 ベテラン刑事裁判官は「裁判所が作った初の本格的な裁判員裁判の教本。修習の場が各地の裁判所に移っても、研修所と一貫した方針で指導できる」と指摘。細田上席教官は「教材を基に法曹三者の議論が発展すれば、今後の改訂にも反映したい」としている。


裁判員裁判については、疑問なく継続するということなんですね。

タイトル自体が わかりやすくはない  と思う。


判決期日 延期

2016-05-31 | 裁判員制度
【工藤会】裁判員接触「恐れていた事態」「前例なく対応難しい」法曹関係者、深刻に受け止め


恐れていた → 予想された
前例なく → 起きた時に考えよう

市民感覚を反映する  →  反映するけどそのまま受け入れるわけではない。高裁ではひっくり返ることも多い。

あらためて思う  すごい制度設計だ。

※引用

裁判員接触「恐れていた事態」「前例なく対応難しい」法曹関係者、深刻に受け止め

 「恐れていたことが現実になった」。暴力団幹部の知人とみられる人物が裁判員に接触したことが明らかになった福岡地裁小倉支部の裁判について、法曹関係者らは一様に深刻に受け止めた。各地の地裁で暴力団絡みの事件を審理している裁判員や今後の候補者に動揺を与えるおそれがあり、なぜこういう事態を招いたのか、裁判所に迅速な検証を求める声が上がった。

立件難しいのでは

 「裁判員への威迫行為は想定されていたとはいえ、実際に起きた場合にどうするかは別の問題。前例がないだけに、非常に難しい対応になるだろう」

 関西地方のある検察幹部は驚きを隠せない。小倉支部のケースで裁判員に掛けられた言葉は「よろしく」という趣旨。直接的な依頼とも脅迫ともいえない。再発防止の観点からも捜査の必要性は高いが「立件は難しいのでは」と予測した。

 声を掛けた人物は、公判を傍聴して裁判員の顔を把握した可能性が高いとみられる。刑事訴訟規則には、裁判に出廷した証人らが威迫されないよう、傍聴人を退廷させることができるとの規定があるが、裁判員を対象にしたものではない。現行制度では、今回のような事態を完全に防ぐのは不可能ともいえる。

市民に恐怖感も冷静対応を

 元東京高裁部総括判事の門野博弁護士(東京弁護士会)は「市民に恐怖感を与えたのは事実だろうが、同様の問題が多発しているわけではない」と冷静な対応を呼びかける。暴力団絡みの事件から裁判員を一律除外するのも「市民感覚を反映するという制度の趣旨にかんがみれば短絡的」とし、裁判員に声を掛けた人物の捜査や、今回の事例に関する裁判所の検証が優先だと話した。

日程 公表

2016-03-31 | 裁判員制度
裁判員裁判などの日程 ホームページで公表へ


傍聴を希望する人がいるんだ。

公表を求める声が上がっているんだ。

裁判員裁判など ってどういうこと   どこで線引きをするんだろう?

裁判員裁判に関心がある人がいることのアピールだと思うけど逆効果じゃないかなあ。


※引用

裁判員裁判などの日程 ホームページで公表へ


裁判の傍聴を希望する人から審理の日程をインターネットで公表するよう求める声が上がっていることを受け、最高裁判所は、全国の裁判員裁判などの日程を初めて裁判所のホームページで公表することを決めました。

裁判員裁判  破棄 差し戻し

2016-01-21 | 裁判員制度
「無関係メール誤解し判決」 東京高裁、一審破棄

朝日新聞の記事からです。


※引用

「無関係メール誤解し判決」 東京高裁、一審破棄

 覚醒剤の密輸事件の裁判で、東京高裁が20日、裁判員裁判で行われた一審・東京地裁の訴訟手続きを「違法だった」と認める異例の判決を言い渡した。一審判決を破棄し、別の裁判員らによる審理に差し戻した。

 20日に控訴審判決を受けたのは、2013年9月にインドから覚醒剤約9キロを密輸しようとしたとして、覚醒剤取締法違反などの罪に問われたシンガポール国籍の男性被告(67)。弁護側は「被告は中身が違法薬物とは知らなかった」と無罪を主張した。裁判員が加わった昨年3月の一審判決は、被告が知人に送ったメールの内容などから、「中身が違法薬物かもしれないと認識していた」と判断し、懲役12年、罰金700万円を言い渡した。

 しかし、高裁判決は「メールの宛先が事件と無関係だったのに、内容を誤解した」と一審判決を批判。検察側も論告でこのメールに触れなかったことから、「裁判官であれば当然疑念を抱くはずで、補充立証を促すなど、誤解したまま判断する危険を防ぐ義務があった」と述べた。


内容よく分かりませんが、内容を誤解したというのは、事実認定に不備があるということで、違法とまで評価できるのかなあ。
裁判員裁判 続ける意味があるのだろうか?


評議

2015-11-24 | 裁判員制度
「弁護士の説明わかりにくい」返上へ 「評議」を再現、技術向上を狙う 裁判員裁判で活用

※ 産経新聞の記事からです。

「弁護士の説明わかりにくい」返上へ 「評議」を再現、技術向上を狙う 裁判員裁判で活用

 裁判員裁判での弁護士の技術アップに模擬評議を生かす取り組みが広がっている。弁護人の説明は検察官に比べて「わかりにくい」との指摘も多いが、背景には、裁判官と裁判員が非公開で判決について話し合う評議の実態を弁護士が把握できていない、という現状がある。弁護士会に地裁や地検も協力し、裁判官や検察官を派遣。本番さながらの審理と評議を再現し「裁判員に伝わる説明」を探るのが狙いだ。

 意見真っ二つ

 東京・霞が関の弁護士会館で行われた東京の3つの弁護士会の「合同研修」。模擬評議室で意見が交わされる映像が、傍聴の弁護士らが集まる会場に中継された。

 3年目となる今年7月の研修の題材は、夜道で背後から当時28歳の女性に抱きつくなどし、けがを負わせたとする架空の強制わいせつ致傷事件。男性被告(35)には痴漢行為で罰金刑を受けた過去があった。

 模擬裁判と模擬評議を1日半の日程で行い、一般から選ばれた裁判員役が刑の重さを議論した。東京地裁の裁判官3人のほか、東京地検の検察官も参加。被告役は男性弁護士が務めた。

 女性のけがは全治約5日で、服の上から胸を触ったという「強制わいせつ致傷の中では軽い事案」(弁護士会関係者)。被告は罪を認めているが反省の色は薄く、同種前科もある。懲役3年6月の求刑に対し、裁判員役の意見は実刑3人、執行猶予3人と真っ二つに割れた。結局、議論の末に懲役3年、保護観察付き執行猶予5年の判決とした。

 研修に関わった弁護士は「裁判長が裁判員に自由に意見を述べてもらっていたのが印象的。拮抗(きっこう)した議論で興味深かった」と話す。

 量刑判断とずれ

 最高裁が平成26年に行った裁判員経験者アンケートで、検察官の法廷での説明が「わかりにくかった」という回答は4・7%だったのに対し、弁護人は17・8%。アンケートが始まった21年以来、6年連続で弁護人が検察官を上回った。

 なぜ、弁護人の説明が伝わらないのか。ベテラン刑事裁判官は「弁護人の法廷での主張・立証が裁判員裁判での刑の決め方とマッチしていない」と話す。

 評議ではまず、凶器やけがの程度など「犯情」から同種事件の中で軽いのか重いのかを判断して量刑の大枠を検討。その後、犯行に至る経緯や反省の度合いなど「一般情状」を考慮して量刑を調整する。

 この裁判官は、今回のように被告が罪を認めている自白事件の場合、「一般情状ばかり主張し、犯情の主張をしない弁護人も多い」と、評議とのずれを指摘。「結論を出す過程を見てもらうことで、どう主張すればどういうふうに評議で話題になるかが分かる」と研修の効果に期待する。東京の取り組みは各地に広がっている。大阪弁護士会が14日に模擬評議を行ったほか、千葉県弁護士会が26、27日、広島弁護士会も12月3日に実施予定だ。東京の研修に関わった木田卓寿(たかとし)弁護士は「具体的な評議のイメージをつかむことができた」と意義を説明。弁護士会の“汚名返上”に向けた試みに注目が集まる。


評議決定の場面を除いて 評議の過程を公開あるいは傍聴できるようにしたらいいのに。