日伊相互文化普及協会

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スローフード詣で

2008-05-01 15:35:38 | Weblog
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スロー、ナチュラル、グリーン、ロハス、などなどといった言葉に関わっている日本の団体の中には、「近寄りたくないなあ」と思えるような人がたくさんいます。

「今年はスローフードの大会があるからねえ、いや~、たいへんだわ!!」、
「そりゃあ、行かないわけにはならんだろうね!」
「忙しいのよ、大会に行くから!!!」
鬼の首を取りに行くようですねえ。よほどのことをしに行くつもりでいるのでしょうか。
彼らの言う大会とは偶数年にトリノで行われるスローフード協会主催の食品見本市、サローネ・コン・グストのことです。



スローフードのイベントはいろいろありますが、ここではサローネ・デル・グストのような屋内イベントと、町全体の屋外や屋内を会場にしてしまうオルヴィエート・コン・グストのようなイベントについて触れてみます。

まず、サローネ・デル・グストの評判ですが、最近はマイナーな噂を多く聞きます。
巨大企業がスポンサーになってからスローフードの趣旨がずれてきた、出展食品の質が低下してきた、イヴェントに来る人たちも・・・(行った人たちに申し訳ないので書きません)。



ある賞を受賞したという、サローネ・デル・グストの出展オリーブオイルを試飲した時のこと。
日本の人たちは口々に「美味しい!」「さすが!!」と褒め称えていました。
でも、私は「まさか?!」と思いました。
私のほかにもう一人「全然いいと思わないけどなあ・・」とつぶやいた日本人が一人いました。その人はイタリアに住んで、で食について学んだ人です。



また、このイヴェントを見に来るたくさんの人達がかっぱらいや置き引き、スリなどの被害にあっています。
近隣諸国で、普段良からぬことをしている人達が、かきいれ時とばかりに寄ってくるのです。
今や被害は甚大で、警察も手が回らないほどだそうです。
私の知り合いの日本人たちも被害にあってます。

けれどもこのイヴェントは「スローフード詣で」をするには便利です。
誰でも世話なく行けるのですから。





町全体が会場になるイヴェントの内、オルヴィエートで催されるオルヴィエート・コン・グストの場合。
ゆったりと落ち着いて、文化的、学術的な雰囲気に包まれています。
城壁の中の、町全体が博物館といわれる中世の面影をそっくり残す、街全体が会場となります。
このイヴェントに来るのは文化人や食品関係者、教育関係者、「まとも?」なスローフーダーが主です。



食品や食材の展示はドゥオーモ広場です。
料理を食べる会場となるのは、ローマ時代に建てられた市庁舎だったり、もと貴族の館や枢機卿の屋敷、修道院といったところの庭園です。




3600年前にエトルリア人が建設した、オルヴィエートの真下にある古代地下都市の一部も料理会場になります。
前菜からデザートまで毎年内容は違い、その年のテーマを表現します。
参加するには事前に手続きを踏んで、届け出る必要があります。
チケットは市庁舎やスローフード協会の把握している人たちに渡されます。




スライドや同時通訳機を使う講演会やセミナーは屋内会場で行われます。
こちらも招待された人たちや、事前に聴講を申し込んだ人たちが入れます。
講演が終わった後、世界中からピックアップしたツマミやワインがふるまわれます。

料理会場や講演会会場、セミナー会場には混雑はありません。
以前、管理がゆるかったのか、料理会場に長蛇の列ができ、食べる時間が大きくずれ込んだことがありました。
以後、そうならないようにしています。





自治体の管理が行き届いているのでとても安全です。
かっぱらいやスリ、置き引きなどにハラハラせず、ゆったりと楽しめます。

このようなイヴェントには「スローフード詣で」タイプの日本人はいません。
日本からの登録の方法を知らない人がほとんどのようです。
また方法を探ろうという人たちもいないようです。
めんどくさいから、簡単に誰でもいけるところへ行けば楽です。






スローフード協会本部のあるブラの町も、参詣客がたくさんいます。
サヴォイア王家の影響を受けたブラの町の景観はかわいくて、田舎町特有の落ち着きがあります。
歴史の好きな人にはいいですが、大型観光目的の人にはマイナーな所かもしれません。
ブラに来る日本の人たちは、ただ町をブラついて帰っているようですが、中には本部の建物前に来て、なんとか本部の中に入れないものかとウロチョロします。

中に入っても特に何もなく、どうってことがないんですが。
木製の、ギシギシと音の鳴るような階段を上ると、スローフード協会の本部事務室があって、中にはコンピゥタと本、スタッフがパラパラ。
一般的な事務所とは特に変わったものはありません。いえ、もっとノホホン、のんびりとした、素朴な雰囲気です。
中には入れてくれません。お仕事の邪魔になりますから。



一階のレセプションのカタツムリマークの前で、日本から持参した自分の生産物を手に写真を撮る人もいます。
その写真、何に使うのかなあ・・・。

イタリア人に聞いたのですが、お昼ごはんのワインで酔っ払った日本人たちが本部の前で大声を出したり、1階のレセプションで空威張りをしたりしたそうです。
また、女を連れて来いと、同伴の通訳に言い、通訳を困らせたこともあったそうです。
女とは「お商売の人」。その日本人は官庁の方だったそうです。





世界70ヶ所のスローシティに指定されているカサルベルトラメ市は豊かな水田地帯、町の中心にはスローフード館があります。
スローフード館に入るにはあらかじめ市に申し込みをする手続きが必要で、突然行っても入れません。

そのカサルベルトラメの市長室でテレジオ市長から「こんな人たち知ってる?」と何枚かの名刺を見せられました。日本語だけで、ローマ字印刷はありません。
「日本語はさっぱりだし、持っててもねえ。あげるよ」とテレジオ市長がいうのですが、私も持っててもしょうがないです。

この名刺の人たちは、ある日いきなり市庁舎に来て「スローフード館の前で市長と写真を撮りたい」と。
テレジオ市長は写真くらいならと、応じました。



彼らは市長と一緒の写真を撮ると、すぐにカサルベルトラメから去ったそうです。
市長は町が誇りにしている農業博物館と、世界中から傑作を集めた屋外美術館の見学を薦めたのだそうですが、彼らには関心がなかったようです。
その後、挨拶の葉書などはないそうです。

その後日本で、ある全国の食関係イヴェントがあって、覗いてみたことがありました。
ひとつのブースで一人の女性から名刺をもらいました。
「はて?」
テレジオ市長が私に見せた名刺の日本人だったのです。
「カサルベルトラメへ行って市長と写真を撮ったのはあなたたちだったのですか?」と私。
「しちょお~? はあ~、あの田舎のじいちゃんねえ~、はははっ」と彼女。

私は言葉を失って彼女のブースを去りました。
写真を撮るために、日本語しか書いていない名刺を平然と残してきた人たちに「田舎のじいちゃん」と呼ばれたテレジア市長・・・・。


スローフードは伊勢神宮やバチカン、メッカのように詣でるものではないと思います。
「スローフード詣で」がステータスになるとでも・・・?

笑われるだけで、まともな日本人の邪魔になるだけではありませぬか?

日伊相互文化普及協会       Emi

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6 コメント

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Unknown (ひとむ)
2008-05-01 17:20:21
emi節炸裂ですね(笑)
私も初めての海外出張もそんな感じでした。
名刺を配って歩くのが仕事(?)
そのうち、交渉をまとめて実績を上げなかったら、日本に帰ってくるな!という命が。日本人って目的意識が低いのでしょうか?それとも、ピントがずれているのでしょうか?追い詰められて、自分で考えるようになって、やっと、「大人の行動」が出来るような気がします。大半の日本人の人たちはそこまで達しないので、海外にいっても観光気分でしかないのでしょうね。もったいない気がします。
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Unknown (emi)
2008-05-01 23:10:18
ひとむさん
海外でいろんな事があったんですね。
自分を抑えなければならないことも。

このスローフード詣をする人達はは、ひとむさんのようなご苦労とは関係ありませんよね。

なんとも虚しい気がします。
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Unknown (fumi)
2008-05-03 15:34:43
emiさん、いつも素敵なイタリア情報を有難うございます。
カサベルトラメ市や、オルヴィエートのスローフード祭りなど、素敵な思い出の一杯詰まった旅行が懐かしいです。
次はいつご一緒させていただけるか、機会を狙っておりますが、なかなか都合がつかずにおります。
お世話になった市長さんやジャンルーカさんなどに、またお会いしたいです。
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Unknown (emi)
2008-05-05 18:06:56
fumiさん
元気でご活躍の様子、嬉しいです。
私もfumiさんとご一緒したイタリアの町々でのことを懐かしく覚えています。

また機会が合えばご一緒しましょう。
ドライバーのジャンルーカ君はダイエットをして激ヤセしました。まるで別人ですよ。
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Unknown (REI)
2008-05-07 20:13:00
2回ほどサローネ デル グストには行きましたが、、、もういいや、という感じです。あのものすごい人込み、そして出展している側にもやる気を感じられませんでした。個人の名前で行くと何も声をかけてこないのに、「輸入業者から頼まれて、、、」とか言うと、目の色を変えて食いついてくる彼ら。スローフードって一体なんなの?って思わされます、あのイベント。

現在、パルマでCIBUSが行なわれていますが、こっちの方が商売目的なのでよっぽど分かりやすく、サローネはスローフードの名前を語りつつ実態は、、、。

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Unknown (emi)
2008-05-16 00:20:11
REIさん
今年も色めきたってサローネに行く人たちがいます。
中には毎回の開催に行って、熱心なスローフーダーですよ、とアピールしたいような人も。
本質に気がついて欲しいです。

確かにビジネスならビジネスと明確な方が訪れる人にもありがたいです。
どっちつかずだと、怪しいものを感じてしまいます。

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