日伊相互文化普及協会

日伊相互文化普及協会のブログです。

孤食と個食

2007-09-26 14:28:45 | Weblog
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イタリア人は一人で食べるご飯にいいイメージを持っていないようです。
昔、今のように車が普及してない頃、遠くのブドウ畑に出かけたお父さんは、畑の脇で独りでお弁当を食べました。

今はあんまり見なくなりましたが、地元の人達がお昼を食べに家に帰って、誰もいなくなった工事現場で、出稼ぎにきた人がポツンとお弁当を食べている姿がありました。



小屋にこもる炭焼き人さんも独りでカルボナーラ(ベーコンとニンニクと粉チーズ、又はニンニクと粉チーズだけ。たまに野鳥の卵入り)なんかを作って食べてました。
今は炭焼きも近代化されて、独りでご飯を食べることはありません。




イタリア人にとっては一人で食べることは恐ろしいほどに「かわいそう」な孤食のようです。

伴侶に先立たれた人や事情のある人なんかが、集まって一緒に食事を摂れる「チルコロ」を持っている自治体はたくさんあります。


私は、試食をしてくれないか、とレストランから誘いを受けることが度々あります。
そんな時はオーナーが私と一緒にテーブルに付いたり、でなければ「お相手は○○がするからね」と、必ずオーナーの身内や友人をパートナーとして私のテーブルに付けます。




イタリア人は仕方なくお昼なんかを一人で食べなければならなくなると、レストランではなく顔なじみのバールへ行きます。
で、バールのおじさんやレジのおばさん、また見知った顔の人達といくらかの言葉を交わしてパニーニなどを頬ばってます。



都会の夜、セルフサービス「チャオ」で夜一人で食べている人をたまに見かけます。
その人が外国人でなく、地元の人らしいと、どうしたのかな? と思ってしまいます。
みんな無表情で黙々と食べてますから孤食なのでしょうか。

日本ではお母さんが「ご飯作ってあるから適当にね」などと言って自分のお稽古事やお友達とのお食事に出かけて行くことがあります。
子供は塾、夫は残業で、夕食を一人で済ます「お母さん妻」もめずらしくありません。
これらも個食ではなくって孤食の部類に入るのでしょうか。



私は孤食ではない、個食が好きな時と場合があります。
ひとつは長距離電車でお弁当を食べるとき。
窓の外の景色がお弁当の味をいっそう引き立たせます。
独りでしみじみ、お弁当と景色を交互に、またいっぺんに味わえます。

旅情と食べ物を一緒に味わうには個食をしたいです!

日本はいいですね。ほっといてくれます。
話しかけてきても、「見えないバリアー」を張れば、察して引っ込んでくれます。



イタリアの長距離電車。
自分で作ったパニーニと、お気に入りのワインを持って乗り込んだ電車。
どんどん都会を離れてく。
「あ、湖だ! あれ~、この森おもしろい、見たことのないキノコが採れたりして」
時間もお腹の空いたお昼時。夢のような私の時間がやってきた。

と、コンパートメントのドアが開き、おばさんが私の前にヨッコラショ。

おばさん:(ニコッ)どこ行くの?
私:   サレルノです。(ム)
おばさん:あっ、そ。
私:   ・・・・・・(これ以上話しかけないでね、と「見えないバリアー」を張る)

おばさん:(私が広げかけたパニーにを見て)そろそろお昼ね。(バッグをゴソゴソ)これねーえ、私の田舎のパンなのよ、食べてみて。(有無を言わさず私の手に握らせる)
私:   (おばさんが見てるので食べる)おいしいです。(自分のが食べたいっ)
おばさん:でしょうーっ? 今朝、娘が作ったの。アンコーナに嫁いでてねえ、やっぱりマンマの味は覚えてるのねえ、んで、なんたら、かんたら、あーでもない、こーでもない・・・。

私の湖と、空想のキノコは吹き飛びました。
が、気を取り直して、自分で作ってきたパニーニをかじり始めました。
またコンパートメントのドアが開き、今度はおじいさんと孫らしき子供が入ってきました。



ガキ:  ボク、窓のとこがいいっ!(遠慮のないガキはおばさんではなく私の方を指差しました)
じいさん: これこれ、お邪魔をしてはいかんぞ。(と言いながら私が動くのを待ってる)
私:   (ニッコリとむかつきながら)どうぞ。
ガキ:  このシニョーラ、変なパニーニ食べてる

私のパニーニにはペコリーノチーズと葉唐辛子の佃煮と焼き海苔が挟んでありました。
けっこういけるんです。
私の腐れ縁の世話焼きばあさんは、海苔の佃煮をパンに塗って食べてます。

みんなが見てるので私はパニーニを千切って3人に差し出しました。


おばさん:あら、海苔ね、昔は私、海苔をカーボン紙と思ったのよ、日本人はミステリアスねーって、ホッ、ホッ。
じいさん: 海草は身体にいいんじゃ、日本人にハゲが少ないんは海草を食べるからじゃと。
ガキ:   おいしくない、ボク髪の毛いっぱいあるからいらない!

くっそーっ、ほっといてくれーっ、個食させてよーっ、と心の中で叫びましたが、あきら
めてワインとパニーニをしまい、寝ることにしました。



イタリアで、旅情の中の個食を望むのは、遠くにあるカゲロウを追うようなものです。

日伊相互文化普及協会        Emi

ネットワーク懇親会のお知らせ「ジビエの季節」

2007-09-15 17:40:53 | Weblog
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猛暑を乗り切った皆さん、元気いっぱいで秋をお迎えですか?
懇親会を機に皆さんのご活躍が益々活発になっているのを喜んでいます。

秋季ネットワーク懇親会は少し晩秋に繰り込むことになりました。
秋に旺盛な食欲を満たし、情報交換やおしゃべりを楽しんで下さい。

料理は谷本英雄シェフが担当、メニューは追ってWeb上で発表します。
レシピや食材についてのご質問は、当日谷本シェフが説明します。




日時:2007年11月10日(土)17:00~
場所:イザベラ・ディ・フェッラーラ
   東京都千代田区神田小川町2-8 Tel 03-3259-9933
JRお茶の水駅聖橋口 徒歩5分
   地下鉄千代田線新御茶ノ水駅B3-B5出口 徒歩3分

会費:9,000円 イタリア料理(前菜からデザートまで約20品 ワイン・コーヒー付)

お申込方法:E-mail info@nichiibunka.com Fax 047-462-1583
 Faxでお申し込みの方は、こちらのページを印刷して下さい。

●個人や学校、会社等のPRは自由です。
 パンフレットや製品見本の配布ご希望の方はご持参ください。
 PRにあたってご相談ごとがありましたら日伊相互文化普及協会までご連絡ください。


*服装は改まる必要はありません。普段着でおいでください。
*定員は30名で、定員になり次第締切らせていただきます。
*料理の仕込みの都合上、キャンセルの場合は1週間以内にお知らせください。
*会費は当日徴収させていただきます。

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日伊相互文化普及協会のスタッフは10月5日~10月16日までイタリアでのイヴェントと研修のため不在です。
この期間の申し込みは戻りましてから、早い日付け順に受理をさせていただきます。

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遠方からご参加の方はお気をつけておいでください。

日伊相互文化普及協会       Emi

イタリア人め!

2007-09-13 16:40:00 | Weblog
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(株)にんべんに行ってきました。
にんべんさんは日伊相互文化普及協会がオルヴィエートで毎年10月に行っている「ジャパンフェスタ」の料理用にいつも大量の鰹節やつゆを送ってくれます。
ジャパンフェスタの2日前にはスローフードイヴェントの発祥となったOrvieto con Gustoがあります。

ワインや料理がふるまわれ、ドゥオーモ広場にはイタリア中の食材が出展します。
今年は特別に日本のブースも出してもらうことになり、大阪のお茶の会社、袋布向春園さんとにんべんさんが出展することになりました。



10月にオルヴィエートに行く人たちの中には鰹節を削ったことのない人もいます。
「それでは削り方を伝授しましょう」ということになって、にんべんツアーで日本橋の本社を訪問しました。

ちょうど日伊相互文化普及協会の、イタリア在住スタッフの佐藤礼子さんが帰国をしていたので、一緒に行くことになりました。
佐藤さんはシチリア島のトラパニにLa tavolaという料理教室を持っています。



にんべんさんでは副社長さんの高津さんが、丁寧に指導をしてくれました。
にんべんさんを出たらいきなり大雨が降り始めたので、私たちは雨宿りでお茶をすることに。


もうすぐイタリアへ行くのですから、みんなの話題は当然のことのようにイタリア。
「イタリアをよく言う人は多いわね」「ブログなんかもいいことばっかり書いてない?」
と礼子さんと私。

「イタリア大好き」「イタリアの食事」「イタリアのマンマ」「イタリア生活」などの本やブログ、またミクシィというコミュニティでもイタリアのことはポジティブなことが書いてあるのが多いです。
一度アリタリアの飛行機で邪険にされた人が「頭にきた」と書いているのを読みましたが。




一般的にイタリアが好きな人達にとって、イタリアは「い~い所」に映るようです。
でも、甘くはありませんぞ、日常生活は。
「んもうっ」「おいおい、なんなのよ」ということがいっぱいあります。
私と礼子さんはイタリアのネガティブなことに触れました。聞こえ悪くいえば悪口ですね。
礼子さんはイタリアが嫌いなわけではないからトラパニに住んでます。
私も嫌いじゃないからしょっちゅう行くのでしょう。
私たちは「イタリアなんか大嫌い」とはいえない立場にいます。




「んもう」ということはいっぱいありすぎなのでひとつだけ。
何度も何度も経験した根気と忍耐の「返事待ち」
向こうの気持ちや時間に余裕があるときにはすぐに返事は来ます。
でも、私的にしろ、仕事にしろ、ほかの事に気が行ってる時にはしつこいほどの催促が要ります。



7回ほどメールを入れても返事が来ないので、しびれを切らして担当の上司に電話をすると、
「大至急、返事を送れ!」と上司がその担当に送ったメールが、血迷って私のところに来ました。

またあるとき、頼んでいた荷物の発送の催促をメールだと危ないと思って、電話で「できるだけ早く」と言いました。相手は「もちろんさ、心配するな」と答えました。
でも2週間たっても来ない。ホントに送ったのだろうかと電話をすると「息子がインフルエンザだった」

また2週間。「あ、そうそう、送るとこだったんだよ」

また2週間。「やあ、元気かい? そーなんだよ、送らなきゃと思ってたとこだったんだよ」
最後には「チャ~オ! 元気かっ? 送った、送った、今朝、郵便局へ行ったよ!」

でも、その日は日曜日だったのです。

悪気はないんです。自分勝手でもないんです。イタリア人は気が向くことを先にやるだけなんです。



自分の気になってることが一番大事。
ですから自分が急いでる時や、自分にとって大切なことは異常なくらいにせっつきます。
「できるだけ早く」ではなく、「今すぐに!」になります。

「日本に帰って考えてから返事をする」と言っても相手の都合のいい事情だけで、その場での選択を迫られることもあります。

お盆で田舎のお墓参り。メールを受け取っていたのですが、充分時間に余裕のある用件だったので、3日間パソコンを開きませんでした。

帰ってきて受信メールを見たら「どこへ行ってしまったの?どこへ消えたの?返事を待ってるんだけど」とありました。

また考えあぐねていて、3日ほど返事を書かなかったら「なんで突然音信不通になったの? 何か君を怒らせるようなことをしたかい?」というのもありました。

この「怒らせた?」というのはけっこう何人もありました。
こちらが待たせるのはせいぜい4日以内。イタリア人が待たせるのは1ヶ月以上。



他にも「ちょっと、ちょっと~、あのねえ」ということはたくさんありますが、それを補えるほど、愛せる人種なんでしょうか、イタリア人は。きっと。
分かりません。

礼子さんと話せて、溜まっていたため息が出て軽くなりました。
日伊相互文化普及協会                 Emi

中温好みのイタリア人

2007-09-06 18:50:57 | Weblog
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火からおろしたばかりの、熱い食べ物や飲み物をフーフー吹きながら食べてるイタリア人を私は見たことがありません。



イタリアでは沸点に近い温度のものは、テーブルに上ることはありません。
スイスと隣接している地域にはフォンデュがありますが。



日本人が熱食を、吹きながら食べるのを見てイタリア人は「なんで、もうちょっと待ってから食べないのか」と言います。
イタリア人にはがっついてるように見えるらしいです。
私にはイタリア人の食べ方だってがっついてるように見えるんですが。



そういえば、本格中華の店や本場の中国では日本のラーメンほど熱くはありませんね。
私はけっこうあちこちの国で、いろんなものを食べましたが、日本人が一番あついものを食べている気がしました。



イタリア人は日本人が慣れている熱食を出されると「スコッタッ!」と叫びます。
スコッタとは沸騰とか熱湯とかを指します。

昔は日本人も中温の食べ物を食べていましたね。
今でも京都の伝統料理を出すところなんかでは、煮えたぎった料理はありませんが。



日本の熱食が一般の人達に受け入れられるようになったのは、江戸の後期からです。
河岸や建設現場の飯場、駕籠のたまり場などでは、とにかく早く食べるように要求されました。そして商業が活気づいてくると商家でも「もたもた食べてんじゃないよっ、ぐずっ!」といわれるようになりました。早く食べるのがご主人様に気に入られるひとつの要素になったんですね。
早飯は美徳となっていったのです。



美徳を習得するには熱いのが冷めるまで待ってなんかいられません。
フーフー吹きながら食べ、お茶や汁物も吹いてすすって飲みました。

この美徳はお殿様や武家、商家の家族、余裕のある家庭には浸透しませんでした。追い立て喰いを要求されなかったので、この美徳を習得することができなかったのでしょう。



超熱いものになれた日本の人々は超冷たいものも好むようになりました。
メリハリが好きになったんでしょう。
ギンギンに冷たビールもそのひとつ。あそこまで冷やすのはどうやら日本だけらしいです。



イタリア人はジェラートを除くと冷たいものも苦手です。
ジェラートはマッタリしていて、氷というのとちょっと違うようですね。
シャーベットもありますが、真夏以外は人気がありません。



今ではミラノやローマに日本食を食べさすお店があって、冷やしうどんやそうめんもあります。そんな食べ物があるのを知っているイタリア人は少なくありません。
が、25年前にミラノの腐れ縁の世話焼きばあさん(その頃は若くてきれいでしたが)が初めて我が家に来た日の昼、夏だったので氷を浮かせたそうめんを出したことがありました。

彼女はそれを見て仰天しました。
「冷たいパスタなんて身体に悪いんじゃないのか」とおののくので、「夏になると日本中がこの冷たいパスタを食べるのっ」となだめて食べさせましたが、彼女は食べたあとしばらくはお腹の心配をしてました。

彼女は今でも日本のそうめん、スパゲッティーニ・コン・ギアッチョ(氷)の話を友達にします。
とても大げさな言い方で、メチャクチャ冷たいそうめんを氷ごとバリン、バリンと食べてるように話します。



イタリアではローマ以前から食と健康について研究が続けられてきました。
ローマ時代の医学書や、中世に書かれた健康全書、アルトゥージ氏の健康のための料理本にも揃って「極端に冷たいものや熱いものは避けるべし」「冷たいものは体内で毒となる」「極端に暑いものは平静を乱す」「冷気の食は臓を固める」とか「熱いものや冷たいものを避けるように」と書いてあります。
イタリア人は昔からそんな医学者たちや健康本に洗脳されてきたのでしょうか。

イタリア人にとって氷は身体に悪いはず。ローマ時代、エトナ山の雪を持ってこさせて、世界で一番最初にジェラートを作ったローマ人は何を考えていたんでしょうか。


健康には良くないけど、美味しいものは食べたいというのは、昔も今も世界共通のジレンマなのかしら。


日伊相互文化普及協会              Emi