日伊相互文化普及協会

日伊相互文化普及協会のブログです。

魔女のおせっかい 2

2008-12-30 13:51:36 | Weblog
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この記事は前回の記事、魔女のおせっかい①の続きです

さて、ミラノに帰った私は市役所で秘書が撮ってくれた記念写真をマリアンジェラに見せました。
アウグストは書道の額を手に、にっこりとほほえんでいます。
もう一枚は私が市庁舎からもらった写真集を手にして、その横でアウグストが私を見てニッコリしている写真。

いい男が好きなマリアンジェラ。彼女の目は光りました。
「んまっ、この人貴族じゃないのかえ」
「さあ」
「いい男だねえ、背も高いしスタイルもいいし、髪の毛も黒々してるよ」
「性格も悪くはないのよ、けっこう仲良くなっていろいろ助かってるの」
何気ない会話のあと、マリアンジェラは何かを思い出したように黙ってしまいました。
「どしたの?」と私。
「いい男とはあんまり仲良くしないほうがいいよ」



ミラノのあと、日本に帰った私にマリアンジェラから電話がありました。
「アウグストから電話があったよ」
「へえ、なんて?」
「まあ、挨拶のつもりなんだろうけどさ、なんだかさ、いろいろ言ってたね。あたしのことをあんたの母親みたいなもんだと思って、あたしを手なずけようってんじゃないだろうね」
「何のためによ」
ばあさんを手なずけても、アウグストの町にも、私の仕事にも役に立つとは思いませんが。
「いい男はろくでもないんだよ」

2ヶ月ほどしてまた私はアウグストの町に行きました。今度はあまり時間がなくて、2日ほどの間に講座やセミナーの計画を進めて、ミラノには寄らずにローマから日本に帰ってきました。
ミラノに寄らなかったのはばあさんには気にくわなかったようです。



日本にいる私に、マリアンジェラから電話がかかってきました。
「おととい、○○(アウグストの町)へ行ってきたよ、野外コンサートの見物もしてきたよ」
「へえ。(それはまた、わざわざ・・・・?)」
「ふん。あの男、アウグストはさ、広場のど真ん中にいたよ」
そりゃいるでしょ、自分の町のイヴェントほったらかしたら市長じゃないですよ。

以下はマリアンジェラの電話で聞いた客観的な状況です。

「こんにちは、わたくし、ミラノのマリアンジェラ・コルノでございます」
「おお、あなたが。ようこそフェスティバルにいらっしゃいました。ここはにぎやか過ぎますので市庁舎の私の部屋でお話ししませんか?」
「いえいえ、ちょっと、ほら、あそこの鶏小屋が見えるテラスででも(ふん、誰がおまえの部屋なんかへ行くかい。鶏小屋のそばで充分だよ)」
と二人は広場の隅のテラスへ。ここからは広大なオリーブや葡萄畑の丘が眺め渡せて、テラスの真下では鶏が駈けずり周っています。





「この写真をご覧あそばせ」
「おや、Emiさんのご家族ですね」
「ま、そんなものでございますが、この二人の子供たち、私にとっては孫も同然、この子たちの幸せのために私は生きてるようなものですのよ」
「それはそれは」
「お分かりいただけまして? あなたはご結婚なされている身、スキャンダルはあなたの立場上よくはございませんわ(おまえやEmiはどうでもいいんだ、あたしやこの子供たちの平和を壊すでないよ)」
「それはどういう意味で」
「お分かりだとは思いますが(とぼけるでないよ、この女ったらしが)」
「はあ」
「よろしいこと、今後Emiには一切の連絡をしないでいただきたいのです。もちろん、わたくしにもでございます。しーかっりとお約束させていただきましたことよ。(わかったかい、二度とEmiにかかわるでないよ、ふん)」



私は受話器を落としてしまいました。
(陶芸教室は・・・、絵画教室は・・・、私が築いてきたものが・・・・・)

マリアンジェラは昔「いい男」に狂って家庭崩壊をしそうになったのでしょう、そうに違いありません。
そういえば昔、彼女のそばに映画俳優のような男がちらついていたこともありました。



当時はマリアンジェラは私を子ども扱いをしていたので「大人の秘め事」を私には話さなかったに違いありません。

ここまでやるとは・・・・。
以後、私はばあさんを警戒して私に起こった話は10分の1にひかえています。
しつこく聞かれても生返事。
人の人生にちょっかいを出す年寄りは、こうして孤独になっていくのでしょう。ふん。


日伊相互文化普及協会         Emi

皆さん、良いお年をお迎えください。

魔女のおせっかい 1

2008-12-26 19:13:15 | Weblog
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12月15日のブログ、「イタリア人の不倫観」の続きを書きます。

ドキドキ、ワクワクの好きなイタリア人、明るいちょっとした火遊びには寛大のようです。
でも、家庭生活を脅かすようになったり、人を悲しませるのは人道に外れることとされます。カトリックの国ですからそれは厳しいです。

友人が外道に走りそうになると周りの親しい人たちは、熱心に忠告をしたり、おせっかいを焼いて軌道に戻そうとします。



数年前、私はイタリア中部の、人口が2万人ほどの小さな町にいました。
日本ではメジャーではありませんが、イタリアでは「宝石を散りばめた中世の町」として有名です。ローマ時代、中世の姿がそのまま残っていて、車や現代服を着た人がいなければタイムスリップをしたのではと思うほど。おとぎ話に出てくるようなかわいい町です。

この町に着く前に、私は市長に宛てて、何度も同じ内容のファクスを送っていました。
返事が来ないから。
イタリアの行政のこと、すんなりと返事が来ないのは承知もしていましたので返事なしのまま直接市役所に行きました。



市庁舎では朝9時から昼の1時まで市長と一般市民が会見します。
時はすでに12時を回っていましたが、私の前にはパン屋のおかみさん風、農家の人風、学校の先生風の3人が並んでいて私は最後でした。

パン屋のおかみさんは小麦の仕入先の変更を相談に来たんでしょうか?
農家の人は種まきの時期を聞きに来たんでしょうか?
学校の先生は手に余る悪がきのことを嘆きに来たんでしょうか?

前の人が市長室に出入りするたびに、おなかも好いて退屈だった私は中をチラチラ覗いてSindaco(市長)と呼ばれている人を品定めしました。
「お、禿げてない・・・・、おなかも出てない、太ってない・・・、ふーむ、背も高いな」
この年代にしては珍しいんでないの」と思いました。

市長の名はアウグスト。私たちはその夜また会うことになりました。
「きみ、今夜僕と二人っきりで食事を一緒にどう?」とか、私が「星の見えるバールでお茶でもしましょうよ」と言ったわけではありません。



イタリアでは公に町を訪れた遠方のお客様には敬意を払い、なんらかの公の場に招待するのは普通のことです。
ちょうどその夜、町の劇場でコンサートがあったので招ばれることになりました。
これで互いの挨拶は終了したことになりますね。

劇場の席についたもののアウグストは今日一日が忙しくて昼食抜き、今までコーヒーくらいしか摂ってないというので、「公の形式」はそこそこに、外へ出てカフェテリアに入りました。
彼の話はけっこうおもしろく、アウグストも日本に興味を持っていたので話ははずみました。
そして、この町のアグリトゥリズモでやる陶芸や絵画の講座や夜行性自然動物観察セミナーなどを市がサポートをしてくれることになりました。

ある晩、「気晴らしに飛ばすかい?」とアウグストが言うので高速道路に出ました。
夕食を食べていなかったので高速道路を降りて私の知らない町のカフェテリアでちょっとしたものをつまんでいました。
なんとなく違和感を覚えて振り向くと、私たち二人をじっと見ている人達がいました。
その目は好奇心そのもの。
アウグストはご近所の町の指導者、このあたりの人たちが彼の顔を知っていてもおかしくはないでしょう。



「だったら来て挨拶でもすればいいのに。なんか変・・・」
とアウグストを見るとアウグストは窓の外の街灯を眺めていました。
その姿はなんか絵になるんですねえ。
今思えば映画に出てくる不倫の香りのする、いい男ってところかもしれません。
そう、彼には不倫印のオーデコロンが似合うのです。

仕事が一段楽してミラノに帰るとき、私はアウグストに「腐れ縁のミラノの世話焼きばあさん」の住所と電話番号を渡しました。
ばあさんの性格はブログ「元旦の魔女」で分かってもらえるかと思います。よかったら覗いてみてください。

では、次回に続きます。

日伊相互文化普及協会           Emi

クリスマスとお正月

2008-12-24 13:27:46 | Weblog
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「イタリア人の不倫感」に続いて、ミラノの腐れ縁の世話焼きばあさんが私の不倫疑惑にいきり立ったことを書く予定でしたが、なにしろ今日はクリスマスイブ。
似つかわしくない記事なのでこの次にまわすことにしました。




ミラノでは12月に入るとCorso Buenos Aires をはじめ、そこら中の通りや広場は膨大な電飾でいきなりど派手に変わります。



ショーウィンドーにはミニチュアの*プレセピオが並び、「ああ、カトリックの国なんだなあ」と実感します。
でも、いったい誰が買うのかなあ、と毎年思います。
一度買えば何年でも使えるものだもの。



*プレセピオ
 キリストの生誕場面を模倣したもの。
 幼子キリスト、マリア、東方の三博士、羊飼い、馬や羊が星空の下で集い、キリストの生誕を祝います。


町の角々にも大小のプレセピオが設えられます。
聖地アッシジの町のクリスマスは都会の派手さはなく、シックです。
落ち着きの中にもクリスマスムードはどの町よりも濃く漂っています。
プレセピオは町のいたる所に設えられていて、サン・フランチェスコ寺院の脇にあるのは、等身大のキリストやマリア、羊、馬などでとてもリアルです。



アッシジ大地震のあった年にはサンタ・キアラ教会前の広場に家族用の水色のテントが張られて、その中にプレセピオが再現されたこともありました。
寒空の下できびしい夜を明かした震災の日を偲んだものでしょう。

ポーポロ広場では生誕劇も催され、全国から来る観客でにぎわいます。
劇の最中に馬が言うことを聞かなくて苦戦することも度々です。
羊は黙っておとなしくしていますが。




この時期になると必ず広場の隅で焼き栗を売る人がいます。
真っ赤なセーターは毛玉がいっぱい 毎年同じセーターを着ています。
顔は髭に覆われていて、目は悟ったような優しさを湛えています。
焼き栗を買うとニコニコしながら必ずおまけで多めに入れてくれます。
私はこの焼き栗売りを「幸せの栗おっちゃん」と呼んでいます。

昔のクリスマス料理は地方によってかなり特色があったのですが、今はわりと均一化されたものになりました。
レンズ豆の料理と共に出されるザンポーネ(豚足をくり抜いて中にミンチ肉を詰め込んだもの)は有名です。
レンズ豆はお金がたまるという縁起を担いでいます。



ザンポーネはかなり脂っこくて、私は一切れで降参です。
日本で食べるのでしたら徹底的に茹でて脂を抜いて、マスタードと酢醤油で食べるとおいしいです。本来は脂もおいしいので、抜くのはもったいないのですが。

クリスマスは翌年の1月6日まで続きます。
大晦日は年が変わるまで外では馬鹿騒ぎが続きます。
絶え間なく聞こえてくる爆竹は日本のようにかわいいものではありません。
毎年死傷者が出るくらい。まるで手榴弾です。
ミラノは年々取締りが厳しくなって来ているのでそう心配ないかもしれませんが、地方都市によっては無法地帯、なれない日本人は外へ出ないほうが無難なのでは。

元旦。
この日は遅くまで寝ています。
町も静かでまあ、正月らしいといえるでしょう。
2日にはもう仕事が始まり、町は通常通りに戻ります。
なんかそっけない気分になりますが、一応はまだクリスマス期間です。
日本人から見ると盛大なクリスマス期間 → チョコッと正月 → ちょっと間の抜けたようなクリスマス、 と続いて混乱するかもしれません。



1月6日はエピファナ(ベファーナ)という魔女が子供たちにプレゼントを持ってきます。
良い子にはおもちゃやお菓子で、悪い子には石炭です。
町の菓子屋さんには石炭がたくさん売られますが、これは実はキャンディであったりチョコレートであったり。

私の友人たちは子供たちや孫たちが言うことを聞かないと、「エピファナが石炭を持ってくるよ」と脅すのですが、今の子供たちは小学校へ入ると学校でもパソコンを使います。
インターネットの情報時代、子供たちには騙しは通らなくなりました。

6日が過ぎるとクリスマスは終わります。
商店はいっせいにセールを開催。3割引きは普通で、半額以下になることも。
日本人の姿も結構見かけますよ。





日伊相互文化普及協会         Emi

イタリア人の不倫観

2008-12-15 16:21:33 | Weblog
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イタリアを表すのにアモーレ(愛する)、カンターレ(歌う)、マンジャーレ(食べる)という言葉があります。
今日はアモーレについて。
イタリアの若い人たちは恋愛においてはだいたいの人がとてもウブです。
二股などはまず考えないようです。
そして情熱の塊のような心で結婚します。



結婚してからは奥さんや夫しか目に入らない人たちもいますが、そこは好奇心の強いイタリア人、魅力を感じるものには惹かれます。
「心に鍵はかけられない」

貞淑な夫や妻も多いのですが、中には抜き差しならない仲になることもあります。
イタリアは簡単に離婚ができません。
ですから面倒なことを起こしたくない、平和が好きなイタリア人は、妻や夫に知られないように徹底的に隠します。

不倫をしている人たちを世間では「間違ってる!」などとは言いません。
半ばうらやましそうな目で見てるような気もします。
以前、なじみのホテルから日本にファクスを送る時、冗談で「愛人に心の内を送るのよ」と言ったことがあります。
ホテルマンは「ブラーバ!!」と言って私に拍手をしました。

不倫をしている当人の周りの人達はそのことをけっこう知っています。
なぜか・・・。
不倫でハッピーになっている当人は隠しておくことができないんですね。
夫が、妻がいる身でありながら、すばらしい恋を知ってしまった苦悩(?)を友人に語るのです。
友人は「ほどほどにね」と羨望の混じったまなざしを不倫をしている友人に向けて、忠告をします。
けっして友人の夫や妻に言いつけたりはしません。
「人の恋路を邪魔する奴は馬に蹴られて死んじまえ」ということわざが日本にもあります。
イタリアでは邪魔をする人間は最低な奴です。

ですが、友人の不倫が家庭崩壊につながりそうだと思ったら、ものすごくおせっかいを焼いて友人の目を覚まさせようとします。
イタリアでは不倫は明るいものでなければならないのです。



「心に鍵はかけられない」
ステキな人と一緒にいたいのは分かります。
私はお茶を飲んだり、食事をしたり、たまには遠方にドライブに行ったりする程度のほのぼの不倫ごっこが一番いいのではと思っています。

私の20年来の友人ソフィア(仮名)は不倫をしています。ごっこではない方の。
大勢で食事をする機会があったとき、
「マルコも連れてっていい?」と聞くので、単なるソフィアの友人だと思って「もちろんよ」と答えました。
「彼、ハンサムじゃないけど心がステキなの」と目を潤ませました。
「?」と私。
「三ヶ月になるかしら」
ソフィアは嬉しくて嬉しくてたまらない様子。

イタリア人は嬉しいことを隠しておけないんですね、さすがに夫や妻に不倫をのろけたりしませんが。

ソフィアの恋は彼女の友人のほか、彼女の母親と長男も知ってます。
家庭紛争の火種になるこの不倫は絶対に彼女の夫に告げられることはないでしょう。

ほとんどのイタリア人は家庭を壊す前に不倫に決着をつけているように見ました。
不倫のあとはいい友人同士になって長い付き合いが続くようです。
この友人同士の関係には、何も知らない夫や妻も加わっています。




次回は私の不倫疑惑にとち狂った、「腐れ縁のミラノの世話焼きばあさん」が私の人生に強引に割り込んだ話を書きたいと思います。

日伊相互文化普及協会        Emi

習慣の違い

2008-12-03 17:35:42 | Weblog
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10月7日(火)(2008年 第12回イタリア研修在伊中)
毎年恒例になったオルヴィエートのジャパンフェスタ。日本料理を作ってイタリア人に食べてもらっています。
今年は芽かぶそうめんや海苔巻き、鶏肉の竜田揚げなどを中心に10品目ほどを用意しました。
デザートはホームメイド協会に所属している福原先生と木村先生が和菓子を作ってくれました。


・ホームメイド協会先生方の作った和菓子


・平野製麺所のめかぶそうめん(1番人気でした)


テーブルの足まで食べるといわれるイタリア人。旺盛な食欲で、1人が軽く4人分は食べたんじゃないかしらと思うほどでした。
この催しはちょっと有名になり、近年では遠方からもそしてローマあたりからもたくさんの人が来てくれます。



イタリアでの立食バイキング形式のパーティのことをちょっと。
(間に出てくる写真は今年のジャパンフェスタの様子です)
日本のパーティだとたいてい食事が始まる前に誰かが挨拶をして、乾杯をして、そして食事が始まりますね。
このやり方、イタリアではなじみがありません。



イタリアでは「パーティは○○時からよ」と言うとその時間の前後に現れます。
食事のまえに食前酒を飲みながらおしゃべりをして、バイキングが始まるのを待ちます。
招待する側はだいたい人数が揃ったのを見て、自然に食事に流れるように料理の配慮をします。
なんかいつの間にかパーティが始まっているという感じです。



以前こんなことがありました。
ある日本の栄養士学校の先生と生徒たちがこのジャパンフェスタで料理を作ったことがありました。
この時、パーティ全体を先生たちが仕切るというので、私は口を出さず見守ることにしました。

食前酒を飲みながらの歓談はなく、イタリア人たちは何も口にしないまま料理を待ちました。
時間に忠実な日本人です。料理は告知通りの時間にテーブルに並べられました。
食前酒もツマミも口にしていなかったイタリア人たちは「ワオッ!!!」と目を輝かせて料理を自分のお皿にとりわけ食べ始めました。

驚いたのは校長先生。
「まだ私、挨拶をしてないのよっ、乾杯もまだよっ、なんで食べちゃうのよっ!!!」
時すでに遅し、食べ始めたイタリア人はもう止まりません。

それとなくイタリアと日本のパーティの違いを校長先生には言っておいたのですが、校長先生には私の言うことは理解ができない様子でした。


・井上さんのお茶のデモンストレーション


このパーティは2日間に渡って行われました。
「食前酒やつまみを出したらいかがですか?」
私は校長先生に提案しました。
「ダメよ、そんなことしたら酔っ払ってせっかく作った料理がもったいないわ」
大丈夫、イタリア人は酔っ払ったりはしませんよ、と思いましたが、パーティで酔う習慣のある日本人には分からないかも・・・、と校長先生の好きにさせました。

校長先生はルイーサ(スローフード協会オルヴィエート会長)に「今日は料理がテーブルに並んでも、挨拶が終わるまで、ぜ~ったいに!食べないように皆さんに言ってください」と頼みました。

料理がテーブルに並び、イタリア人たちが料理に向かったのでルイーサは慌てて大声で叫びました。
「皆さん食事の前にちょっとだけ、日本から来たマエストロのお話を聞いてください!!!」
イタリア人たちは遠い日本から来て日本食を自分たちに食べさせてくれる人たちの挨拶を聞くのは当然だと静かにし、神妙な顔で校長先生を尊敬のまなざしで見つめました。


・ロカンダのオーナーの秘書シモーナ 和服で参加しました


校長先生は自分は誰それで、日本でこんなことをしている人間だと自己紹介をしました。
日本ではパーティなんかや、知らないもの同士が集まったりすると自己紹介をする習慣がありますね。
この習慣も日本とイタリアでは違います。

イタリアでは自分の紹介は他の人に任せ、自分は黙っています。
公然の場で自分についてああだ、こうだ、としゃべるのはいいこととされていません。
たしなみが足りないと思われてしまうこともあります。
肩書きや経歴などをしゃべると「それがどうした」と反感を買う場合もあります。

あつかましいミラノの腐れ縁の世話焼きばあさんでさえ、自己紹介は絶対にしません。
誰かが彼女について話し始めると控えめに少し前に出るだけです。
でもイタリア人は公を離れ、個になると自己主張は強くなります。日本以上でしょう。


・この人は書にえらく惚れ込んでしまってました。


校長先生は自己紹介が終わると、日本食と健康について話し始めました。
イタリア人はおりこうに聞いていました。
話の区切りで校長先生はイタリア人たちにお辞儀をしました。
イタリア人たちは「もう、食べてもいいのね」と腰を浮かしました。
「まだよ、まだ!」 
と校長先生。

校長先生はお辞儀のあと、今日作った料理の説明を始めました。
生徒さんたちはテーブルから次々と料理の入った皿を取り、その皿を持ってイタリア人たちの間を練り歩きました。
天麩羅、和え物、煮物、焼き物、汁物・・・・。おいしそうです。
料理を見つめるイタリア人たちの顔は少し険しくなっているかに見えました。

校長先生の言いたいことは一通り終わりました。
すると校長先生は教頭先生を名指しました。
この教頭先生、何かを察したのか、自己紹介を簡潔にすませて退きました。



さあ、これでイタリア人たちは食べられるんでしょうか?
いえ、いえ、生徒代表の挨拶があるんです。
この人の自己紹介は長く、長く、現在までに至った自分の経歴や家庭、子供たちの話も披露してくれました。
イタリア人たちは見知らぬ人の個人生活には関心がありません。
日本人なら辛抱強く聞くのでしょうが、忍耐のないイタリア人には辛いことです。
(なにしろ学校で運動会がないほどで・・・、ないというよりできないそうです)

私がパーティを任せたのはこのとききり。

この時以外でのジャパンフェスタでは食前酒をふるまいながら出席者人数を把握して料理を出します。
「今日はお集まりくださいまして・・・・」とかの挨拶も乾杯もやりません。
日本人もイタリア人と一緒にテーブルに混じって食事を摂りながら料理についてのおしゃべりを楽しみます。レシピや伝統食材の詳細は紙に書いて全員に配ります。
そしてデザートの頃に、料理を作った人たちに立ち上がってもらい、私がそれぞれの紹介をします。
お腹が満ち足りたイタリア人たちからは大拍手が湧きます。

イタリア人に料理を見せたらすぐに食べさせること。
彼等におあずけは酷です。


日伊相互文化普及協会          Emi

銀座ノンニーノでの秋季懇親会を終えて

2008-12-01 17:06:29 | Weblog
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36名が参加した秋季懇親会は全員の方に喜んでいただけました。
東京都以外からは九州の福岡や宮崎、四国の愛媛、大坂、静岡、茨城、千葉、山形、北海道は札幌からと遠方からいらしてくださいました。
参加者全員の皆さん、楽しい時を共有させてくださり、本当にありがとうございました。

南日本酪農協同株式会社オフィス・オッティモが協賛された食材は、谷本シェフとマリオシェフによって見事な料理となってテーブルを飾りました。
オフィス・オッティモの有機人参はなんと糖度が11%だそうです。



今回のメニューはこちら

北海道野菜のオーブン焼き
北海道野菜のフォカッチャ
日高モッツァレッラとアンチョビのカロッツァ
イワシのオーブン焼き
サーモンのマリネ
日高モッツァレラのカプレーゼ
アフェッタート・ミスト
ブロッコリ・アンチョビ・パンチェッタのソテー
アナゴのマリネ オリエンタル風
フリッタータ・ウオヴォ(イタリア風オムレツ)
パプリカのロースト
ハタとアンコウのラザニア
ソーセージのパイ包み
ソーセージとトマトのパスタ
牛頬肉の煮込みパスタ
豚足・豚タン・耳・牛頬肉のパテ
ボリートミスト・緑の香草ソース
日高マスカルポーネのティラミス
日高マスカルポーネのチーズスフレケーキ



次回は2009年の2月末を予定しています。
また、皆さんの日頃のご活躍を紹介させていただきたいと思っています。

(注)オリーブオイルのご注文は今週をもって締切らせていただきます
   ご希望される方は今週中にご連絡ください。
   缶の容量は1ℓ、3ℓ、5ℓです。

下に今回の懇親会の様子とメニューの一部の写真を載せます。
ご覧下さい。
会場 パステランテ・銀座ノンニーノ
料理総括 谷本英雄氏























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