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この記事は前回の記事、魔女のおせっかい①の続きです
さて、ミラノに帰った私は市役所で秘書が撮ってくれた記念写真をマリアンジェラに見せました。
アウグストは書道の額を手に、にっこりとほほえんでいます。
もう一枚は私が市庁舎からもらった写真集を手にして、その横でアウグストが私を見てニッコリしている写真。
いい男が好きなマリアンジェラ。彼女の目は光りました。
「んまっ、この人貴族じゃないのかえ」
「さあ」
「いい男だねえ、背も高いしスタイルもいいし、髪の毛も黒々してるよ」
「性格も悪くはないのよ、けっこう仲良くなっていろいろ助かってるの」
何気ない会話のあと、マリアンジェラは何かを思い出したように黙ってしまいました。
「どしたの?」と私。
「いい男とはあんまり仲良くしないほうがいいよ」
ミラノのあと、日本に帰った私にマリアンジェラから電話がありました。
「アウグストから電話があったよ」
「へえ、なんて?」
「まあ、挨拶のつもりなんだろうけどさ、なんだかさ、いろいろ言ってたね。あたしのことをあんたの母親みたいなもんだと思って、あたしを手なずけようってんじゃないだろうね」
「何のためによ」
ばあさんを手なずけても、アウグストの町にも、私の仕事にも役に立つとは思いませんが。
「いい男はろくでもないんだよ」
2ヶ月ほどしてまた私はアウグストの町に行きました。今度はあまり時間がなくて、2日ほどの間に講座やセミナーの計画を進めて、ミラノには寄らずにローマから日本に帰ってきました。
ミラノに寄らなかったのはばあさんには気にくわなかったようです。
日本にいる私に、マリアンジェラから電話がかかってきました。
「おととい、○○(アウグストの町)へ行ってきたよ、野外コンサートの見物もしてきたよ」
「へえ。(それはまた、わざわざ・・・・?)」
「ふん。あの男、アウグストはさ、広場のど真ん中にいたよ」
そりゃいるでしょ、自分の町のイヴェントほったらかしたら市長じゃないですよ。
以下はマリアンジェラの電話で聞いた客観的な状況です。
「こんにちは、わたくし、ミラノのマリアンジェラ・コルノでございます」
「おお、あなたが。ようこそフェスティバルにいらっしゃいました。ここはにぎやか過ぎますので市庁舎の私の部屋でお話ししませんか?」
「いえいえ、ちょっと、ほら、あそこの鶏小屋が見えるテラスででも(ふん、誰がおまえの部屋なんかへ行くかい。鶏小屋のそばで充分だよ)」
と二人は広場の隅のテラスへ。ここからは広大なオリーブや葡萄畑の丘が眺め渡せて、テラスの真下では鶏が駈けずり周っています。
「この写真をご覧あそばせ」
「おや、Emiさんのご家族ですね」
「ま、そんなものでございますが、この二人の子供たち、私にとっては孫も同然、この子たちの幸せのために私は生きてるようなものですのよ」
「それはそれは」
「お分かりいただけまして? あなたはご結婚なされている身、スキャンダルはあなたの立場上よくはございませんわ(おまえやEmiはどうでもいいんだ、あたしやこの子供たちの平和を壊すでないよ)」
「それはどういう意味で」
「お分かりだとは思いますが(とぼけるでないよ、この女ったらしが)」
「はあ」
「よろしいこと、今後Emiには一切の連絡をしないでいただきたいのです。もちろん、わたくしにもでございます。しーかっりとお約束させていただきましたことよ。(わかったかい、二度とEmiにかかわるでないよ、ふん)」
私は受話器を落としてしまいました。
(陶芸教室は・・・、絵画教室は・・・、私が築いてきたものが・・・・・)
マリアンジェラは昔「いい男」に狂って家庭崩壊をしそうになったのでしょう、そうに違いありません。
そういえば昔、彼女のそばに映画俳優のような男がちらついていたこともありました。
当時はマリアンジェラは私を子ども扱いをしていたので「大人の秘め事」を私には話さなかったに違いありません。
ここまでやるとは・・・・。
以後、私はばあさんを警戒して私に起こった話は10分の1にひかえています。
しつこく聞かれても生返事。
人の人生にちょっかいを出す年寄りは、こうして孤独になっていくのでしょう。ふん。
日伊相互文化普及協会 Emi
皆さん、良いお年をお迎えください。
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さて、ミラノに帰った私は市役所で秘書が撮ってくれた記念写真をマリアンジェラに見せました。
アウグストは書道の額を手に、にっこりとほほえんでいます。
もう一枚は私が市庁舎からもらった写真集を手にして、その横でアウグストが私を見てニッコリしている写真。
いい男が好きなマリアンジェラ。彼女の目は光りました。
「んまっ、この人貴族じゃないのかえ」
「さあ」
「いい男だねえ、背も高いしスタイルもいいし、髪の毛も黒々してるよ」
「性格も悪くはないのよ、けっこう仲良くなっていろいろ助かってるの」
何気ない会話のあと、マリアンジェラは何かを思い出したように黙ってしまいました。
「どしたの?」と私。
「いい男とはあんまり仲良くしないほうがいいよ」
ミラノのあと、日本に帰った私にマリアンジェラから電話がありました。
「アウグストから電話があったよ」
「へえ、なんて?」
「まあ、挨拶のつもりなんだろうけどさ、なんだかさ、いろいろ言ってたね。あたしのことをあんたの母親みたいなもんだと思って、あたしを手なずけようってんじゃないだろうね」
「何のためによ」
ばあさんを手なずけても、アウグストの町にも、私の仕事にも役に立つとは思いませんが。
「いい男はろくでもないんだよ」
2ヶ月ほどしてまた私はアウグストの町に行きました。今度はあまり時間がなくて、2日ほどの間に講座やセミナーの計画を進めて、ミラノには寄らずにローマから日本に帰ってきました。
ミラノに寄らなかったのはばあさんには気にくわなかったようです。
日本にいる私に、マリアンジェラから電話がかかってきました。
「おととい、○○(アウグストの町)へ行ってきたよ、野外コンサートの見物もしてきたよ」
「へえ。(それはまた、わざわざ・・・・?)」
「ふん。あの男、アウグストはさ、広場のど真ん中にいたよ」
そりゃいるでしょ、自分の町のイヴェントほったらかしたら市長じゃないですよ。
以下はマリアンジェラの電話で聞いた客観的な状況です。
「こんにちは、わたくし、ミラノのマリアンジェラ・コルノでございます」
「おお、あなたが。ようこそフェスティバルにいらっしゃいました。ここはにぎやか過ぎますので市庁舎の私の部屋でお話ししませんか?」
「いえいえ、ちょっと、ほら、あそこの鶏小屋が見えるテラスででも(ふん、誰がおまえの部屋なんかへ行くかい。鶏小屋のそばで充分だよ)」
と二人は広場の隅のテラスへ。ここからは広大なオリーブや葡萄畑の丘が眺め渡せて、テラスの真下では鶏が駈けずり周っています。
「この写真をご覧あそばせ」
「おや、Emiさんのご家族ですね」
「ま、そんなものでございますが、この二人の子供たち、私にとっては孫も同然、この子たちの幸せのために私は生きてるようなものですのよ」
「それはそれは」
「お分かりいただけまして? あなたはご結婚なされている身、スキャンダルはあなたの立場上よくはございませんわ(おまえやEmiはどうでもいいんだ、あたしやこの子供たちの平和を壊すでないよ)」
「それはどういう意味で」
「お分かりだとは思いますが(とぼけるでないよ、この女ったらしが)」
「はあ」
「よろしいこと、今後Emiには一切の連絡をしないでいただきたいのです。もちろん、わたくしにもでございます。しーかっりとお約束させていただきましたことよ。(わかったかい、二度とEmiにかかわるでないよ、ふん)」
私は受話器を落としてしまいました。
(陶芸教室は・・・、絵画教室は・・・、私が築いてきたものが・・・・・)
マリアンジェラは昔「いい男」に狂って家庭崩壊をしそうになったのでしょう、そうに違いありません。
そういえば昔、彼女のそばに映画俳優のような男がちらついていたこともありました。
当時はマリアンジェラは私を子ども扱いをしていたので「大人の秘め事」を私には話さなかったに違いありません。
ここまでやるとは・・・・。
以後、私はばあさんを警戒して私に起こった話は10分の1にひかえています。
しつこく聞かれても生返事。
人の人生にちょっかいを出す年寄りは、こうして孤独になっていくのでしょう。ふん。
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皆さん、良いお年をお迎えください。