日伊相互文化普及協会

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イタリア人と携帯電話

2007-07-04 13:57:30 | Weblog
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初めてイタリア人が携帯を使ってるのを見たのは、12年前の春のペルージャ。中世の城壁前でした。
40代くらいの男が両足を踏ん張り、胸を張って、こぶしを宙に振りまわしながら、天を仰いで叫んでました。
少しはなれた所から、呆然と携帯男を眺める私の足は固まってました。

その頃、日本ではイタリアより携帯が普及、年輩層や専業主婦、子供を除くとかなりの人達が携帯を持っていました。



日本で電車内のマナーがうるさくいわれるようになった頃、イタリアの電車内では小声で話すとか、用件を言って切る、留守録にするなどということは考えられない事でした。
特にミラノ、フィレンツェ、ローマ間を走る電車、ユーロスター線の車内通話量はすざまじいもので、大半の人が携帯を耳に当ててたんじゃないでしょうか。
もともと大声のイタリア人は相手の顔が見えない電話だと更にトーンは上がります。



会話は座席を乗り越えて、車内は個人別空間が綾織り成す居間のようです。
電話を切った人は、隣が話していると負けじと、また誰かにピッ、ピッ、ピッ、ピッ。

「マンマ、アントニオったら全然私のいうこと聞かないのよ、別れようかしら、クスン・・」
(私:こんなかわいい娘を泣かせてっ!)
「また、太ったのよお、いよいよ中年太りよ、そうそっ、今度のダイエット法はねえっ・・」
(私:食べすぎよ、顔見れば分かる。もちょっと静かにしゃべってよ)
「今度こそ離さないよ、アンナ、君は世界一だよ、アモーレ・ミ~オォ~」
(私:会って言いなよ、んなことっ、アホガキ)
「バカンス用のキャンピングカー、買い替えたんだ、ま、クレジットだけどさ」
(私:家のローンあと何年だっけ。ち、余計な事思い出しちゃった。)
「バレたんだよ、汚職、バッカだよなあ、あいつ、要領悪いんだな、俺見ろ、俺」
(私:んなこと、ここで言って平気なの?)
「爺さん、自転車乗れなくなったんじゃ、おだぶつだな」
(私:どこのじいさんかわかんないけど、落ちたみたいね)
「ほーほっほっ、宅の船上パーティにいらっしゃいません?ロマンチックですことよぉ」
(私:ふん、船上でも戦場でも勝手にさわげば。声でかすぎんのよっ、トーン下げろっ)
日本でもこんな内容は話されますが、周りに遠慮しながらが多いです。
大きな声で話すと嫌な顔もされます。



イタリア人は、どこでも、いつでも自分の人生舞台に没頭するんでしょか。
天真爛漫で見栄や体裁がないのはいいことだと思うんですが、ユーロスターの車内はそんな人たちに通信革命が降りかかって、タガが外れた人たちが詰め込まれた箱のようでした。



いくつものプライベートを延々と聞いていると、ホント、疲れます。
「エーッ、ホントなのっ!!!」という嬌声が上がると(えっ、何が、どうしたのっ?)と耳がビクッ。とても疲れます。
うるさいなあ、やだなあ、と思ってた人もいたのでしょう、さすがに最近は、マナーについてのアナウンスが流れています。
電話にどうしても出たい時は「スクージ(すみません)」と回りに断りを入れてから、手短に用件を言って切っています。



ミラノの路上や公共の場所も傍若無人でしたが、最近は変わりました。
ジェラッテリーアにいた時、かかってきた携帯に出た私は、私の腐れ縁おせっかいばあさんに「外出なさいっ、外っ」としかられました。
ふん、自分だってこの前までレストランや、道のど真ん中に足踏ん張って大声上げてたくせに。


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