まちづくりぷらす

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論文情報ナビゲータと学長研究奨励費結果報告書

2007年10月02日 | 政治・行政
国立情報学研究所の論文情報ナビゲータ(通称CiNii)はたまにお世話になっています。
この簡易検索で「本文あり」にチェックして検索すると論文が出てきます
(大学の紀要が中心で、あまりレベルの高い論文はないですが…)。

とはいえ、基礎的な知識をさっと入れるには十分すぎる情報量です。

そんなCiNiiになぜかわたしの名前が載っています(笑)
というのも学部時代に、金沢大学学長研究奨励費をもらっていて、
その「結果報告書」がCiNiiに登録されているからです。

なぜか、もう1人の名前が間違っています(修正できないのかなぁ)。
結果報告書を書いたときの記事はこちら。相変わらずまぬけです。

結果報告書の全文はUPしていなかったので、コピーしておきます。
ほんとうは昨年ブラッシュアップしてどっかに投稿しようと思っていたのですが、
結局仙台都市総合研究機構がなくなり、事情が大きく変化したのでお蔵入り。
うーん、実に惜しいことをしたような気もします。

そうそう、自分の名前ブログ名で検索すると、いろんなトコにヒットします。
こういうくだらないことで、CiNiiに登録されていることを知ったわけです(笑)
あと、はてなアンテナに登録してくださっているとはありがたいなーとか。

いつまで実名でブログを続けられるかは分かりませんが、
これからも不定期更新で続けていくので、よろしくお願いします。

【以下長文なので、お時間のある方はお読みください】
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「金沢市における住民参加の政策形成」

(代表)わかお(法学部公共システム学科)

1.背景と研究目的
 かつて行政サービスが問題となる際には、多くの場合市民運動が起こり、市民は行政に対して強烈な抵抗を示した。そのような抵抗を抑えるために、市民参加によってあらかじめ意見を聞き、同意を得る手法が定着した。しかし、市民参加は行政が市民の意見を聞く姿勢を示す「ポーズ」になっている場合も多く、その制度は形骸化していると言われることもある。しかし、現実としてさまざまな類型の市民参加制度が存在する以上、それを把握することは重要な課題である。
 また、市民参加とは異なる流れとして、自治体による政策形成の必要性が地方分権を大きな契機として提起されるようになった。さまざまな政策形成の手法が存在するものの、昨今大きな注目を浴びている手法として、全国で設立が相次ぐ自治体シンクタンクがあげられる。
 上述した市民参加と自治体による政策形成両面の視点を生かし、市民参加による政策形成手法として位置づけられる「金沢まちづくり市民研究機構」や、宇都宮市、上越市、仙台市における自治体シンクタンクの事例研究から、市民参加による政策形成手法がどの程度有効かを考察する。
 「金沢まちづくり市民研究機構」とは、金沢市が2003年に設置した市民参加による政策形成手法である。市民がグループごとに分かれ、ディレクター(学識経験者)の指導を受けながら、1年間政策提案を目指し活動する。その提案は各部局に振りわけられ、可否が検討され一部の政策提案が予算要求される。このような形で、白紙から政策提案を作り上げる市民参加の例はあまり多くない。自治体シンクタンクのなかには、市民参加による政策研究を行っている事例もある(本論文では上越市と仙台市の事例がそれに当たる)。
 現在、市民研究機構においては、市民研究員間に能力差があり、それがグループの政策提案能力の差につながっているとされる。それゆえ、グループによっては、実現可能性の低い政策提案がなされているとの批判がある。ただこの問題は、「市民」参加である以上起こりうることだと考えられる。では、市民参加を行っている自治体シンクタンクではどのように解決したのか、それは市民研究機構にとって大きな示唆を与える。事例研究から導いた考察に基づいて、市民研究機構におけるさまざまな課題改善手法の提案へ結びつけることを目的とする。

2.研究方法
 文献による調査に基づき、市民参加手法と自治体における政策形成手法を概観した。その上で、下記団体にヒアリング調査を行った。金沢まちづくり市民研究機構においては、研究代表者が市民研究員として参加していたため、その参与観察も知見として取り込んだ。

 表.各自治体シンクタンクと金沢まちづくり市民研究機構の概要

 出典:ヒアリングより筆者作成

3.研究成果と考察
(1)組織体制
 自治体シンクタンクそのものが、既存のライン組織を越えた組織であるがゆえに、首長の強いリーダーシップによって作られる場合が多いことが宇都宮市、上越市、仙台市の事例から明らかとなった。しかしそれは逆に、首長の政策構想を強力に推進するという目的を有した自治体シンクタンクの組織基盤は、首長が変わることで不安定になる可能性が高いともいえる。そのような状況は、首長が変わり組織体制の見直しを迫られている仙台市の状況からも理解できる。また、政策研究には一定の客観性が求められるため、任意団体型の仙台市のみならず、自治体内部設置型である宇都宮市と上越市の自治体シンクタンクも外部からのチェック機能を取り入れている。
 政策研究を行うことは、職員の人材育成という観点からも大きな意味を持っていることが3つの事例および金沢市政策研究所(金沢市における自治体シンクタンク)から理解できる。しかし、宇都宮市および上越市の研究員が指摘していたように、自治体シンクタンク自体の政策研究能力は高まりづらい現状にあるといえよう。それは、自治体シンクタンクがその研究員を自治体職員で調達する場合が多いからである。自治体職員から研究員を調達するということは、人事異動の対象となり、自治体シンクタンクで身につけた政策研究能力を流出することにつながる。それを補完するために、宇都宮市では専門研究嘱託員を導入することで政策研究能力の維持をはかっている。
 政策研究能力は高まりづらいが、自治体としての政策形成能力を高める上で自治体シンクタンクは大きな機能を果たすことになろう。政策研究能力を身につけた自治体職員が各担当部局において仕事を行うことで、政策研究能力を存分に生かした政策形成が可能であろう。とりわけ市民研究員制度を導入している上越市と仙台市では、市民との恒常的なコミュニケーションを行うことになる。そのため、市民意識を「想像できる」職員を増やすことにつながると考えられる。その職員が市民セクターと行政セクターの間に立つコーディネーターとしての役割を発揮する可能性は高い。金沢市においては、金沢まちづくり市民研究機構と金沢市政策研究所の連携が一部のグループでは行われているが、全グループで行われているわけではないため、市民意識を強く念頭に置いた自治体職員の人材育成は、他の機会にはかられることになろう。

(2)業務
 宇都宮市、上越市、仙台市における自治体シンクタンクの事例は、調査研究事業、政策形成支援事業の2つを柱として業務を行っている。調査研究事業では、自治体シンクタンクとして打ち出すべき長期的視野に立った政策研究(シンクタンク機能)と担当部局の要望による短期的な課題解決を目指した政策研究(コンサルティング機能)があることが明確となった。
 そして長期的視野に立った政策研究(シンクタンク機能)が有効に利用されるためには、各部局での政策立案の取り組みを支える政策形成支援事業も大きな役割を担うだろう。上越市の研究員が指摘したように、この調査研究事業と政策形成支援事業を毎年ていねいに行っていくことが部局を越えた政策形成の実現には不可欠なものと考えられる。しかし、それを行うには人的資源が少ないため、シンクタンク機能もしくはコンサルティング機能のどちらかに傾注せざるを得ないという現状がこれら3つの自治体シンクタンクから明らかになった。
 金沢まちづくり市民研究機構における金沢市の業務はかなり限定的であり、市民による自立的な政策研究が行われている。市民研究機構活動の運営方針は、市民研究員の代表とディレクターによって構成される機構会議で決定されるため、その方針転換も機構会議を通して決定される。

(3)研究テーマ
 宇都宮市、上越市、仙台市の自治体シンクタンクは、「地域の実情を反映した政策提案」を出すことを念頭において研究テーマの設定を行っている。その点で3つの自治体シンクタンクは「自治体シンクタンクとして求められる機能」を果たしているといえよう。
 金沢まちづくり市民研究機構の場合は、テーマ設定の段階から公募を行い地域ニーズの把握に努めている。しかし、テーマ設定は最終的にディレクターの意向により決定されていることが施策担当者の発言から明らかになった。そのため、ディレクターのできる範囲での研究が行われているという現状がある。ここで、本来目指すべき研究部門と研究テーマの乖離が発生するといえる。
 また、事例研究で示したとおり、研究部門の1は「金沢世界都市戦略・世界の都市政策交流部門」と位置づけられ、総合的な政策パッケージを提言することを目的としているはずであるが、研究テーマでは「金沢らしさの具体化に関する研究」となり、具体的な提言を出すという目的を有していると理解できる。参与観察や市民研究会へのオブザーバー参加でも同様のことが明らかとなっている。金沢まちづくり市民研究機構は、各研究部門における研究成果を総合し「金沢世界都市構想」に資する提言提出を目的としているため、このように研究部門と研究テーマが乖離することは課題といえる。
 また、市民研究機構の各グループは密接に関連する政策分野もありながら連携をあまり行っていないことが参与観察と市民研究会の見学から明らかになった。この点を解決しなければ、金沢まちづくり市民研究機構全体の政策提言をブラッシュアップすることは不可能であろう。

(4)自治体政策への反映方法
 この自治体政策への反映方法が宇都宮市、上越市、仙台市の各自治体シンクタンクと金沢まちづくり市民研究機構にとって大きな課題となっている。内部設置型(宇都宮市・上越市)の出す政策提案が反映されやすく、任意団体型(仙台市)のものが反映されにくいという単純な図式にはなっていない。全体的に自治体シンクタンクとして果たすべき長期の視点を打ち出すこと(シンクタンク機能)よりも、短期的な政策課題を解決する(コンサルティング機能)方向に軸足を置いているといえよう。
 それは、長期的視野に立った政策提案ばかり行っていると、「自治体シンクタンクとは何をやっている組織なのか」という批判を受けるためであろう。それに対し、短期的な政策課題を解決する場合、担当部局で起こっている問題をすぐに解決するという「駆け込み寺」的な側面がかなり強くなる。長期的視野を打ち出した政策でもなく、部局を超えた横断的かつ抜本的な改革案を打ち出すわけでもないので、政策提案の実現性は比較的高まることになる。
 しかし、自治体シンクタンクに求められる機能は、本来長期的視点に立った政策や横断的かつ抜本的な政策案を提示することである。それを達成するには、担当となるそれぞれの部局はもちろんのこと、上越市の研究員が示したように、市民やマスコミを巻き込んだ「外からの風」が必要となるという認識を共有することが重要である。報告書として完成させることが目的ではなく、最大限政策を反映させることを目標にするのならば、その後の取り組みの支援(政策形成支援)も必要となる。
 金沢まちづくり市民研究機構では、最大限予算化を目指すために研究期間を予算作成時期に合わせている。この取り組みは、他の自治体シンクタンクの政策反映方法にも示唆を与えるだろう。しかしながら、市民参加による横断的かつ抜本的な改革案を提示しても企画課で政策提案をピックアップし各部局に割り振るとなると、市民参加による政策形成のメリットは薄れかねないともいえる。
 また金沢まちづくり市民研究機構は、市民の政策提案を強力に推進する体制になっていないことも大きな課題である。市民参加を行う上越市と仙台市の自治体シンクタンクの場合、その研究員はみずから作った政策提案を最大限反映させるため、担当部局との交渉を行うと考えられる。対照的に金沢まちづくり市民研究機構では、企画課が担当課であるがその仕事だけを行うわけではないため、このような役割は果たしにくいと考えられる。

(5)市民研究員
 市民研究員の考察では、市民研究員制度を導入していないうつのみや市政研究センターを除外する。NPOなどによる市民活動が盛んになってきた場合、大きな課題となるのが市民研究員を確保する方法であろう。仙台市の場合、市民研究員制度を導入した1995年と現在の市民活動の状況は大きく異なっている。そのため、市民研究員制度の位置づけが変容しているといえる。これは、都市の成熟度にも大きくかかわるが、市民活動が盛んになってきた場合、避けては通れない課題となろう。
 市民研究員と一口にいっても実際は多様である。仙台市の場合、年齢・性別・職業などのバランスを考慮しているため、市民意識の把握やその視点を最大限取り入れようとしていることがうかがえる。つまり、市民を育てるという人材育成的な意味合いもかなり強いといえよう。対照的に上越市の場合、「専門的知識を持った市民の参加が多い」。つまり、その目的は専門性を高めることが主であり、研究所の研究員を増やすのと同様の効果を持つと考えられる。金沢まちづくり市民研究機構の場合、専門的知識を有した市民の多いグループとそうでないグループがあるため、市民を育てるという人材育成の側面(仙台市の事例)と専門的知識を提案に生かすという側面(上越市の事例)があるといえる。
 市民研究員が専門的知識を持つか否かにかかわらず、縦割りのセクションを横につなぐパイプづくりを担っていることには変わりないといえる。このような市民参加を行うことが部局を越えた改革提案につながるため、シンクタンク機能が強まるといえよう。
 また、市民研究員の「まちづくりのリーダー」としての活用方策も大きな課題となる。とりわけ金沢まちづくり市民研究機構の場合、毎年80名近くの市民研究員経験者が生まれる。政策提案したことを実現するためには、「行政でできること」もあれば、「市民でできること」もある。もちろん「両者の協働」を必要としている政策もある。市民研究員経験者は、「その市民でできること」と「両者の協働」を推進していく主体として活動することが望ましいといえよう。

4.結論
 考察を踏まえて、金沢まちづくり市民研究機構の課題改善につなげるための手法提案を行う。「市民による政策提案のレベルアップをはかり、その提案が自治体政策に反映されること」という方向性を定めて3つの手法を提案する。

(1)金沢まちづくり市民研究機構と金沢市政策研究所がさらに連携して政策提案を行う
 両者の連携は合同研究会を通して一部のグループで行われていることは、「(1)組織体制」の考察部分で示した。しかし、金沢まちづくり市民研究機構の市民研究会と金沢市政策研究所の「ゼミナール」や「研究グループ」との合同研究会は単発のものであり、周期的に合同研究を行っていないことが考察から明らかになった。そのため、このような合同研究会をさらに多く開催し、政策提案を練り上げることは大きな意味を持つ可能性がある。合同研究の意義は、上越市、仙台市といった市民研究員制度を持つ自治体シンクタンクの事例からも明らかである。合同研究により市民・職員相互の理解を深めることは、政策提案の実現性を高めることにつながると考えられる。また職員の人材育成という観点からも非常に効果的な手法であることが、上越市、仙台市の事例から示されている。
 また、「(4)自治体政策への反映方法」の考察でみたように、市民の政策提案を強力に推進する体制を作る必要があろう。それを作るには、この「ゼミナール」や「研究グループ」が大きな役割を果たすことになる。この「ゼミナール」や「研究グループ」のメンバーが「市民研究機構政策具現化プロジェクトチーム」として、各担当部局との交渉に当たることも考えられるだろう。

(2)金沢まちづくり市民研究機構とNPOが連携し政策提案を行う
 身近な地域の問題に関しては、地域で実際に活動するNPOを活用することも有効であろう。それは、地域に密着しある専門分野に特化し活動を続けているため、課題発見能力が高いからである。当然政策における問題点も把握している。しかし、実際に政策提案能力が高いとは言いがたい状況にある。また自治体はNPOの課題発見能力を政策形成能力の向上にうまく生かせていない。そのため、市民研究機構とNPOの共同研究を行うことも、ひとつの手法として有効に機能する可能性が高いといえよう。
 この場合、金沢まちづくり市民研究機構がコミュニティシンクタンク(市民がコミュニティの課題解決のために行う調査研究、政策提案を専門的な立場から支援するとともに、市民的視点から行政施策へのアドバイスや代替案の作成を担う組織)的な色彩を強めることになる。つまり、手法提案「(1)金沢まちづくり市民研究機構と金沢市政策研究所がさらに連携して政策提案を行う」に比べて、自治体職員の関与が減ることになる。そのため、自治体政策への反映度は若干低くなるだろう。しかし、市民と行政の協働により、政策の執行段階を担うことが多くなってきたNPOと連携して政策を提案するということは、政策執行の実効性を高めるという観点からは一考に値する。
 またさらなる効果も現れる。それは、市民研究員経験者の活用方法である。「(5)市民研究員」の考察部分で示したとおり、毎年80名近くになる市民研究員経験者の活用方策は大きな課題となっている。しかし現在、市民研究員を市民活動へつなぐ手法は確立されていないように思われる。そこでこのような共同研究を行うことは、市民活動への参加障壁を低くする効果を持つといえる。

(3)市民研究機構全体で政策提案の整合性を高める
 市民研究機構の各グループは政策分野が同じであっても、あまり連携を行っていない。そのため、同じ方向性の提案に関しては、市民研究機構全体の政策提案に整合性を持たせるために、各グループの提案内容を一致させることが望ましい。そうすることで、政策提案のブラッシュアップが可能となり、政策提案の実現性も高まると考えられる。

参考文献
・阿部孝夫『政策形成と地域経営』学陽書房、1998年。
・今井照『自治体政策のイノベーション』ぎょうせい、2004年。
・兼子仁編著『広報広聴と情報政策』労働旬報社、1986年。
・金沢まちづくり市民研究機構ホームページ
http://www.city.kanazawa.ishikawa.jp/shiminkikou/ (2005年11月8日アクセス)
・金安岩男・横須賀市都市政策研究所編『自治体の政策形成とその実践―横須賀市の挑戦』ぎょうせい、2003年。
・神原勝「二元代表民主制における議会の機能」『月刊自治フォーラム』2001年6月号。
・来栖紀雄『広報広聴課』ぎょうせい、1992年。
・澤昭裕・経済産業研究所編『民意民力』東洋経済新報社、2003年。
・世古一穂『市民参加のデザイン』ぎょうせい、1999年。
・総合研究開発機構「日本のシンクタンク情報」ホームページ
 http://www.nira.go.jp/icj/tt-idxj/index.html (2006年1月11日アクセス)
・田村秀『政策形成の基礎知識』第一法規、2004年。
・日本都市センター「都市政策研究データベース」ホームページ
http://www.toshi.or.jp/citydb/index.shtml (2006年1月19日アクセス)
・松下啓一『協働社会をつくる条例―自治基本条例・市民参加条例・市民協働支援条例の考え方』ぎょうせい、2004年。
・室井力編『住民参加のシステム改革』日本評論社、2003年。
・森啓『自治体の政策形成力』時事通信社、2003年。
・山内弘隆・上山信一編『パブリック・セクターの経済・経営学』NTT出版、2003年。
・渡邉満「行政と住民等との合意形成の手法(パブリックインボルブメント)」『郵政研究所月報』2001年8月号。

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