まちづくりぷらす

ブログをお引っ越ししました。
すでに更新は停止しています。

ひたかみの原稿UPLOAD!

2006年11月01日 | まちづくり
まちづくり政策フォーラムの機関誌「ひたかみ」に寄稿した内容をアップします。お題は、「まちづくり政策フォーラムにかかわって」というものでした。グリーンツーリズムのことも書く予定でしたが、話がバラバラになるので今回は美里町まちづくり会議に絞って書いてみました!

-----
「まちづくり政策フォーラムにかかわって」
東北大学公共政策大学院1年 わかお

1.まちづくり政策フォーラムとの出会い
 筆者は現在、東北大学公共政策大学院で「公共政策」―とりわけ「小規模事業者金融の課題とその解決のための政策的支援」をテーマにグループ研究を行っている。しかしながら、入学当初から物足りなさを感じていた。その理由は、筆者が「積極的に地域とかかわり、地域のなかで着実に行動する」ことを求めていたためであり、カリキュラムだけでは足りないことが次第に明らかとなった。

 そんなとき、筆者の管理するブログ(http://blog.goo.ne.jp/u-lev2)の記事に対して、代表理事の増田氏からコメントをいただいた。地域とかかわり地域のなかで行動したいと考えていた筆者にとって、NPO活動はなじみ深く(というのも、金沢大学法学部在籍時に、NPOとのかかわりが多かったため)、すぐに事務局長の芦立氏とメールで連絡を取り、その後事務所に伺った。

 そこで、まちづくり政策フォーラムがかかわる活動の紹介をして頂いた。そのなかから筆者の関心分野とも合致する「美里町まちづくり会議」のファシリテーション業務にかかわることになった。筆者が住民参加に興味を持ったきっかけは、卒業論文で「市民参加による政策形成」をテーマに研究を行ったためである。その結果「まちづくりの担い手」育成を今後の課題として捉えていたことから、その検証という意味合いも有していた。

2.美里町まちづくり会議とは
 美里町は宮城県の北部に位置しており、人口は約2万6千人である。2006年1月に小牛田町と南郷町との合併により誕生した新しい町である。そのため、新町総合計画を策定することになる。新町総合計画の素案は、行政職員によって組織される「策定委員会」を中心に作成される。

 美里町まちづくり会議は、新総合計画の素案に対して提言を行う住民組織として位置づけられる。公募で集められた委員約30名が新総合計画について議論を行い、新総合計画に住民グループの政策提言案を盛り込むことを目的としている(第1の目的:住民参加による政策形成としての側面)。現在は、福祉・教育グループ、産業・防災グループ、行政改革・住民参加グループの3分科会で議論を進めている。この分科会の議論のファシリテーションと、全体会議でのファシリテーションがまちづくり政策フォーラムに与えられた役割である。

 各グループの進度は若干異なるものの、現在は11月中に行われる中間報告に向けて、政策提言の絞り込みを図る段階にある。最終的に政策提言を終える2007年3月末以降も、住民組織として美里町のまちづくりにかかわることを目指している(第2の目的:「まちづくりの担い手」育成としての側面)。

 筆者が美里町まちづくり会議にかかわりはじめたときには、委員の一部はまさに「言いたい放題」。美里町職員やファシリテーターに噛み付くのは当たり前だった。率直に言えば、「この委員たちは、いったい何の目的で来たのだろうか」と感じることも多かった。

 しかしながら、最近では各グループ内で議論をまとめる委員がいたり、自分の話ばかりしている委員を注意する委員が出はじめたりと、グループ内で議論がまとまるようになった。このような状況下でファシリテーターは、各グループの議論を見守りながら、軌道修正を行いつつ、政策提言の的を絞る手伝いを行っている。「あれもこれも」行政に要望するのではなく、「あれかこれか」ポイントを絞って政策提言をするためには、的を絞る作業が重要になろう。

 また、第2の目的である「まちづくりの担い手」育成を図るために、さまざまな活動を担保する政策提言を行うことが求められる。このような政策提言を生み出すべく、ファシリテーターとして「自分たちでやらなくてはならない」ことを委員に自覚してもらえるように議論を進めている。

3.美里町まちづくり会議の意義
 上記のとおり示してきた美里町まちづくり会議は、自治体の政策形成手法として、また「まちづくりの担い手」育成としてどのような意義をもつのだろうか。既存の政策形成、New Public Management(新公共経営)に基づく住民本位の政策形成、そして協働を指向した政策形成(以下、協働型政策形成という)を分けて筆者なりに考えてみたい。

(1)既存の政策形成では、行政が公益に照らして何を政策として打ち出すかを考える
(2)NPM型政策形成では、行政が中心となって住民を顧客と捉えて顧客満足度を高めるための政策を作る
(3)協働型政策形成では、住民は「自分たちに何ができるか」を考えつつ、行政と政策を作る

 (1)の場合、住民参加はほとんどなく、行政が唯一の政策形成主体であった(広報広聴手法で住民の意見を聞くことはある)。(2)の場合、住民を顧客と捉えるため、政策マーケティングとして住民参加を指向することもある。(3)の場合、住民は①自分たち住民でできること、②行政といっしょにできること、③行政単独でしかできないこと、に政策提言を分けて考えることになる。美里町まちづくり会議の場合、上記分類で(2)と(3)の間に位置するといえよう。
 
 筆者が卒業論文で研究した自治体シンクタンク(政策研究の専門組織)における市民研究員制度では、研究活動を終えたらそれで終わり、その後の市民活動への橋渡しというのがうまくいっていない場合が多かった(上記分類で(2)の段階にある)。本来は、まちづくりの核となる人材育成も企図しているが、市民研究員の活動と市民活動との間には大きな障壁があると考えられる。
 
 まちづくり政策フォーラムの活動を記録した『協働で地域づくりを「変える」「つなぐ」「活かす」』を読むと、橋渡しを意識した取組みが多く見られることがわかる。また、研究活動の一環として実践活動を行っているというのも特徴がある。本稿で取り上げた美里町まちづくり会議も同様に、次年度実践活動を行う住民組織としての飛躍を目指している。

 このような取組みは「まちづくりの担い手」育成に効果的である。つまり、住民参加による政策形成という側面だけではなく、その後の住民自身の実践活動まで視野に入れた取組みである「協働型政策形成」を行うことが自治体に求められているのではないだろうか。