typeKIDS Report

活字書体を使う人のための勉強会

活字書体を読む —— ちょっと変わった読書会(1)

2015年05月10日 | typeKIDS_Tidbit
typeKIDS libraryは、typeKIDSメンバーによるタイポグラフィの実験による図書館です。わが国の多彩な活字書体をもちいて、詩集・小説・随筆などの名作をまるごと組んでいます。PDFファイルを無償でダウンロードすることができます。
 第1期で作成した書物のうちの3冊を紹介しましょう。いずれも欣喜堂の書体を本文組に使用し、koboやkindle用の電子書籍として作成しています。

かもめ龍爪Mで読む高村光太郎『書について』
インターネットの図書館「青空文庫」のテキスト・データ(著作権の消滅したもの)の中から高村光太郎(1883-1956)の『書について』を「かもめ龍爪M」で組んでみました。
 高村光太郎は彫刻家・画家ですが、いまは詩人としてよく知られています。東京美術学校(現在の東京芸術大学美術学部)彫刻科に在学中に与謝野鉄幹の新詩社同人となり、『明星』に寄稿するようになりました。1914年(大正3年)に詩集『道程』を出版、1941年(昭和16年)に詩集『智恵子抄』を出版しています。
 『書の深淵』という随筆の原稿からも、高村光太郎は書に強い興味を持っていたことがうかがえます。高村光太郎のペン字には力強さと勢いが感じられ、「かもめ龍爪M」にも通じるようです。「かもめ龍爪M」で組まれた『書について』を読みたいと思いました。


◆ダウンロードはこちらから かもめ龍爪Mで読む高村光太郎『書について』

きざはし金陵Mで読む恩地孝四郎『書籍の風俗』
インターネットの図書館「青空文庫」のテキスト・データ(著作権の消滅したもの)の中から、恩地孝四郎(1891-1955)の随筆を「きざはし金陵M」で組んでみました。
 恩地孝四郎は創作版画の先駆者のひとりで、日本において版画というジャンルを芸術として確立させたといわれている人です。装本家としてもよく知られています。萩原朔太郎の詩集『月に吠える』(1917年)の挿絵、装幀をはじめ多数の装本を手掛けることとなり、『北原白秋全集』(1928年)の装本によって装本家の地位を確立しました。
 戦後になると、新しい版画技術を導入して新たな道を切り開きました。生涯で、児童書・学術書・写真集・百科事典などの幅広い分野にわたって、なんと600点もの装幀を手掛けているのだそうです。恩地孝四郎に傾倒しているブック・デザイナーは多いようです。


◆ダウンロードはこちらから きざはし金陵Mで読む恩地孝四郎『書籍の風俗』 

まどか蛍雪Mで読む柳宗悦『京都の朝市』
インターネットの図書館「青空文庫」のテキスト・データ(著作権の消滅したもの)の中から柳宗悦(やなぎ・むねよし 1889¬-1961)の『京都の朝市』を「まどか蛍雪M」で組んでみました。
 柳宗悦は、学習院高等科のころから志賀直哉・武者小路実篤らと文芸雑誌『白樺』の創刊に参加しつつ、1913年に東京帝国大学哲学科を卒業しました。関東大震災を機に京都へ転居しています。その後、民間で用いられる生活必需品への関心を抱くようになり、京都の朝市を中心とした「下手物(げてもの)」の蒐集と、日本各地の手仕事の調査をはじめました。「下手物」とは、安価な品を指していう言葉として朝市に立つ商人たちが使っていたものだったといいます。
 この「下手物」という言葉にかえて、柳宗悦たちは、「民藝」という言葉を使い始めました。「民」は「民衆」の「民」、そして「藝」は「工藝」の「藝」を指します。それまで美の対象としては顧みられることのなかった「民芸」品に注目したのでした。1931年に創刊した雑誌『工藝』は「民藝」運動の機関誌として重要な役割をはたしていきました。


◆ダウンロードはこちらから まどか蛍雪Mで読む柳宗悦『京都の朝市』


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