何気ない毎日から、俺が変わった日
♯1初めての出会い
俺は最近なんだか寂しい感じがしていた。もちろん、ずっと一人でいる訳ではないがどことなく寂しいと思っていた。それを思ってか俺といつも仕事をしているセイジが話し掛けてきた。
「どうした、トウマ。何か考え事でもあるのか?」
「いや、別に無い。気にしないでくれ」
「気にしないでくれと言われると、ますます気になるな…。トウマ、何かあれば私に相談するのだぞ」
「セイジには隠し事できないな…。最近俺どこと無く寂しいなと思う事が多いんだ」
「ほう、トウマは側に誰も置いていないのか」
「俺は今の所いないな。俺一人で全部できると思っていたから」
俺とセイジはとある組織に属していて、その中でも地位が高く重要なポジションである五人の将である。セイジは直属ではないが五人の将の下位に当たる四人の将の内闇将アヌビスを仕事上のアシスタントとしていた。
俺とセイジは組織の研究所で必要な研究を続けていた。
「トウマも私の様にパートナーを置けばいいのだ。最も、私だってトウマに取って重要なパートナーのつもりなのだが」
「俺だってそう思ってるよ、セイジ。そういう意味とはちょっと違うんだと感じるんだ」
「そうか、ならば私が口を挟む事ではないな」
「俺の話を聞いてくれてありがとう、セイジ。俺の中で何か整理できた感じだよ」
「私がトウマに取って少しでも役に立つ事ができれば嬉しい事はない、良かったな、トウマ」
セイジは嬉しそうに俺の肩をポンと叩いた。
俺はセイジに話を聞いてもらって気持ちがスッとしたせいかその日の仕事を久しぶりに気持ち良く終える事ができた。
研究所の仕事着である青い服に白衣を羽織った服装から下着の青いスーツに青い鎧を装備した姿に着替え、俺は研究所を出た。普通なら寄り道もせず天将の自室へ向かうのだが今日だけは何故か真っ直ぐ帰る気にならず組織の広大な基地を一周して頭を切り替えようかと思っていた。少し歩いて基地の所々にあるベンチに座っていたら今日の任務を終えた兵士達が俺の前を通って行った。任務中はマスクをしていて表情等分からないのだが今はマスクを取り素顔で歩いていたのでどのような顔の兵士なのかはっきり分かった。通り過ぎた兵士の一人の顔を見た時、俺は今まで感じた事の無い気持ちになった。
『あっ、俺、どうしたんだろう…。彼の顔を見た途端何とも言えない気持ちになったのは…』
頭を切り替えようとして基地の中を歩いていたのに、ますます頭の中がゴチャゴチャになったような気がした。とりあえずこのままではいけないと思い、予定を少し変更してこの後少し歩いた後に自室へ戻りあの兵士の情報を調べようと思った。
ベンチから腰を上げ俺は10分程歩いた後で天将の私室に戻り、急いで基地のスーパーコンピュータに繋がっている端末を立ち上げた。このスーパーコンピュータは研究所での高度なデータ処理や基地の維持、組織の運営等組織の心臓部に当たるものだ。あの兵士の情報と言っても、知っているのは顔だけで名前も所属も分からない中でこの基地から探すのは困難だろうと思った。
結局、画像データの照会をしているだけで一時間半程掛かり俺は探していた兵士のデータを探り当てた。
「…あいつ、シュウって言うのか。所属も何も分からないのに探そうとした俺も結構無茶していたな」
俺はシュウを捜し当ててホッとしていたのと自分の無計画さを反省していた。
「そういえば、目的を果たしたら急に腹が減ったな。外に出るか」
俺はシュウのデータを自分の端末に保存して私室を出た。俺は普段夕食の時間は殆ど変わらないのに今日だけは空腹すら忘れてシュウの事を調べていたのである。俺が食事を採るのは組織の上部の人間だけが出入りできる高級食堂といった所だ。俺が夕食に食べたい物をトレーに乗せテーブルに落ち着くと後ろから声が聞こえた。
「トウマ、ここいいかい?」
俺が振り向くと、そこには水色の鎧を着た水将シンが立っていた。
「あ、ああ…。構わないが」
「じゃ、隣に座らせてもらうよトウマ」
シンは笑いながら俺の隣の椅子に座った。
シンとは普段あまり会わないが、俺に対しては割と気さくに振る舞う感じだった。だがそんなシンも俺に見せる一面だけでなくクールで組織のトップに立つ威厳も持ち合わせていた。
「シン、今日は一体何の用だ?」
「セイジから聞いたよ。トウマ、最近様子が変だって…」
「別に変じゃないだろう、シン。ったくセイジは話を大きくして…」
「どうやらそうみたいだね、それは良かった。で、何かあったの?」
「別に何があったって訳じゃないんだけど、ちょっと気になる人ができたって言うか…」
「トウマからそんな事を聞くなんて珍しいね。それでどうなった?」
「まだ、何もしてないよ。何とか所属と名前が分かる程度だし…」
「なんだ、それなら僕も付き合うよ。トウマの気になる人というのも気になるからね」
「明日、任務が終わったら会いに行こうと思ってるんだ」
「そうか、じゃあ僕も一緒に呼んでくれ」
「分かった。シンに話を聞いてもらって良かった、ありがとう」
「うん、僕もトウマと話せて良かったよ」
シンはそう言うと持ってきた夕食を食べ終えた後、俺の側から立ち去った。
「急に俺に会いに来たと思ったら、シンらしいな…」
俺はシンの気遣いに嬉しくなった。テーブルに置いてある夕食を全て平らげ一服すると、自室に戻った。
俺は翌日の研究所での任務を終え、研究所を出るとシンと昨日約束していた場所で落ち合った。
「時間通りだ、トウマ」
「まあな。時間は守らないといけないからな」
「シュウのいる所はもう分かっているんだよね、トウマ」
「それはバッチリさ。何の為にシュウを捜し当てたか分からないだろう?」
「それもそうだね。組織でも屈指の頭脳のトウマがそれをしない訳が無いからな」
「ふふっ、そうだな。シン」
俺はシンの言葉に笑いながら返事をした。
「じゃあ、シュウの所へ行ってみよう」
俺とシンはシュウが所属する部隊の詰め所まで行った。詰め所と行ってもそこは兵士が任務時間外に待機する場所であり、ベッドだけが並んだ縦長の部屋と食事の配給を受けるホールと簡易な設備が整っている談話・娯楽室
がある。俺が詰め所の責任者を呼び出し、シュウの所在を尋ねるとしばらくしてシュウが詰め所入り口までやって来た。
「私の事をお呼びでしょうか、天将様」
シュウは少し緊張した様子で俺に話し掛けた。
「ああ、シュウに用があってここまで来た」
「そんな、呼び付けて頂いたら私の方から行ったのに…」
「過ぎた事はいいだろう。ところで俺の直属になってくれないか?」
「俺!いや、私が天将様の直属ですか」
「嫌なら無理にとは言わないが…」
「そ、そんな嫌だなんてそんな事ありません!」
「よーし、それならこちらも歓迎しよう。正式な手続きが済んだら改めて俺が迎えに来るからな」
俺は笑いながらシュウに手を差し出した。シュウは俺が手を差し出した事に気が付くと、ハッとして慌てて手を出して固く握手をした。
俺とシンはシュウと別れて基地内のカフェでくつろいでいた。
「シン。俺とシュウが話していた時、何も話さなかったな」
「二人が話している時に僕が割って入れないだろう?それに僕はトウマの気になる人を見に来たのが目的だから話す事も無いと思ってね」
俺はシンが気を遣ってくれている事に気が付いた。
「あ、ああ…。ありがとう、シン」
「いいよ、そんな事。それよりシュウっていい人、いや兵士みたいだね」
「分かるか、シン」
「なんとなくだよ。見た所真面目で任務もこなせそうだし、トウマが気に入ってるなら相性もいいんじゃないかな?」
シンはカップに入った紅茶を飲みながら言った。
「そうか、シンが言ってくれるのなら大丈夫だな」
「うん、大丈夫だよ」
シンは笑いながら俺に言った。
俺はシンと別れたすぐさま私室に戻り、端末を立ち上げて急いでシュウを直属として迎える手続きを済ませた。する事は済ませたものの、すぐに手続きした事が反映される訳ではないので俺はシュウが正式に直属になるまでの時間が長く感じてもどかしかった。
一週間経って俺はシュウを直属に迎える申請が降り、大急ぎでシュウを迎える準備をして申請が降りた当日に兵士の詰め所にシュウを迎えに行った。
「シュウ、約束通り迎えに来たぞ」
「待っていました。天将様」
シュウは身の回りの荷物をまとめて俺が来るのを待っていてくれた。
「天将の私室にシュウの部屋もちゃんと用意したからな。俺のサポート、よろしく頼むな」
「俺の方こそ、よろしくお願いします!」
シュウは慌てて深く頭を下げた。
シュウは本当に真面目で素直な男なんだなと実感した。まだ直属になったばかりで二人でいる暮らしもまだまだだけどゆっくりと仲を深めて行きたいと思った。
♯1初めての出会い
俺は最近なんだか寂しい感じがしていた。もちろん、ずっと一人でいる訳ではないがどことなく寂しいと思っていた。それを思ってか俺といつも仕事をしているセイジが話し掛けてきた。
「どうした、トウマ。何か考え事でもあるのか?」
「いや、別に無い。気にしないでくれ」
「気にしないでくれと言われると、ますます気になるな…。トウマ、何かあれば私に相談するのだぞ」
「セイジには隠し事できないな…。最近俺どこと無く寂しいなと思う事が多いんだ」
「ほう、トウマは側に誰も置いていないのか」
「俺は今の所いないな。俺一人で全部できると思っていたから」
俺とセイジはとある組織に属していて、その中でも地位が高く重要なポジションである五人の将である。セイジは直属ではないが五人の将の下位に当たる四人の将の内闇将アヌビスを仕事上のアシスタントとしていた。
俺とセイジは組織の研究所で必要な研究を続けていた。
「トウマも私の様にパートナーを置けばいいのだ。最も、私だってトウマに取って重要なパートナーのつもりなのだが」
「俺だってそう思ってるよ、セイジ。そういう意味とはちょっと違うんだと感じるんだ」
「そうか、ならば私が口を挟む事ではないな」
「俺の話を聞いてくれてありがとう、セイジ。俺の中で何か整理できた感じだよ」
「私がトウマに取って少しでも役に立つ事ができれば嬉しい事はない、良かったな、トウマ」
セイジは嬉しそうに俺の肩をポンと叩いた。
俺はセイジに話を聞いてもらって気持ちがスッとしたせいかその日の仕事を久しぶりに気持ち良く終える事ができた。
研究所の仕事着である青い服に白衣を羽織った服装から下着の青いスーツに青い鎧を装備した姿に着替え、俺は研究所を出た。普通なら寄り道もせず天将の自室へ向かうのだが今日だけは何故か真っ直ぐ帰る気にならず組織の広大な基地を一周して頭を切り替えようかと思っていた。少し歩いて基地の所々にあるベンチに座っていたら今日の任務を終えた兵士達が俺の前を通って行った。任務中はマスクをしていて表情等分からないのだが今はマスクを取り素顔で歩いていたのでどのような顔の兵士なのかはっきり分かった。通り過ぎた兵士の一人の顔を見た時、俺は今まで感じた事の無い気持ちになった。
『あっ、俺、どうしたんだろう…。彼の顔を見た途端何とも言えない気持ちになったのは…』
頭を切り替えようとして基地の中を歩いていたのに、ますます頭の中がゴチャゴチャになったような気がした。とりあえずこのままではいけないと思い、予定を少し変更してこの後少し歩いた後に自室へ戻りあの兵士の情報を調べようと思った。
ベンチから腰を上げ俺は10分程歩いた後で天将の私室に戻り、急いで基地のスーパーコンピュータに繋がっている端末を立ち上げた。このスーパーコンピュータは研究所での高度なデータ処理や基地の維持、組織の運営等組織の心臓部に当たるものだ。あの兵士の情報と言っても、知っているのは顔だけで名前も所属も分からない中でこの基地から探すのは困難だろうと思った。
結局、画像データの照会をしているだけで一時間半程掛かり俺は探していた兵士のデータを探り当てた。
「…あいつ、シュウって言うのか。所属も何も分からないのに探そうとした俺も結構無茶していたな」
俺はシュウを捜し当ててホッとしていたのと自分の無計画さを反省していた。
「そういえば、目的を果たしたら急に腹が減ったな。外に出るか」
俺はシュウのデータを自分の端末に保存して私室を出た。俺は普段夕食の時間は殆ど変わらないのに今日だけは空腹すら忘れてシュウの事を調べていたのである。俺が食事を採るのは組織の上部の人間だけが出入りできる高級食堂といった所だ。俺が夕食に食べたい物をトレーに乗せテーブルに落ち着くと後ろから声が聞こえた。
「トウマ、ここいいかい?」
俺が振り向くと、そこには水色の鎧を着た水将シンが立っていた。
「あ、ああ…。構わないが」
「じゃ、隣に座らせてもらうよトウマ」
シンは笑いながら俺の隣の椅子に座った。
シンとは普段あまり会わないが、俺に対しては割と気さくに振る舞う感じだった。だがそんなシンも俺に見せる一面だけでなくクールで組織のトップに立つ威厳も持ち合わせていた。
「シン、今日は一体何の用だ?」
「セイジから聞いたよ。トウマ、最近様子が変だって…」
「別に変じゃないだろう、シン。ったくセイジは話を大きくして…」
「どうやらそうみたいだね、それは良かった。で、何かあったの?」
「別に何があったって訳じゃないんだけど、ちょっと気になる人ができたって言うか…」
「トウマからそんな事を聞くなんて珍しいね。それでどうなった?」
「まだ、何もしてないよ。何とか所属と名前が分かる程度だし…」
「なんだ、それなら僕も付き合うよ。トウマの気になる人というのも気になるからね」
「明日、任務が終わったら会いに行こうと思ってるんだ」
「そうか、じゃあ僕も一緒に呼んでくれ」
「分かった。シンに話を聞いてもらって良かった、ありがとう」
「うん、僕もトウマと話せて良かったよ」
シンはそう言うと持ってきた夕食を食べ終えた後、俺の側から立ち去った。
「急に俺に会いに来たと思ったら、シンらしいな…」
俺はシンの気遣いに嬉しくなった。テーブルに置いてある夕食を全て平らげ一服すると、自室に戻った。
俺は翌日の研究所での任務を終え、研究所を出るとシンと昨日約束していた場所で落ち合った。
「時間通りだ、トウマ」
「まあな。時間は守らないといけないからな」
「シュウのいる所はもう分かっているんだよね、トウマ」
「それはバッチリさ。何の為にシュウを捜し当てたか分からないだろう?」
「それもそうだね。組織でも屈指の頭脳のトウマがそれをしない訳が無いからな」
「ふふっ、そうだな。シン」
俺はシンの言葉に笑いながら返事をした。
「じゃあ、シュウの所へ行ってみよう」
俺とシンはシュウが所属する部隊の詰め所まで行った。詰め所と行ってもそこは兵士が任務時間外に待機する場所であり、ベッドだけが並んだ縦長の部屋と食事の配給を受けるホールと簡易な設備が整っている談話・娯楽室
がある。俺が詰め所の責任者を呼び出し、シュウの所在を尋ねるとしばらくしてシュウが詰め所入り口までやって来た。
「私の事をお呼びでしょうか、天将様」
シュウは少し緊張した様子で俺に話し掛けた。
「ああ、シュウに用があってここまで来た」
「そんな、呼び付けて頂いたら私の方から行ったのに…」
「過ぎた事はいいだろう。ところで俺の直属になってくれないか?」
「俺!いや、私が天将様の直属ですか」
「嫌なら無理にとは言わないが…」
「そ、そんな嫌だなんてそんな事ありません!」
「よーし、それならこちらも歓迎しよう。正式な手続きが済んだら改めて俺が迎えに来るからな」
俺は笑いながらシュウに手を差し出した。シュウは俺が手を差し出した事に気が付くと、ハッとして慌てて手を出して固く握手をした。
俺とシンはシュウと別れて基地内のカフェでくつろいでいた。
「シン。俺とシュウが話していた時、何も話さなかったな」
「二人が話している時に僕が割って入れないだろう?それに僕はトウマの気になる人を見に来たのが目的だから話す事も無いと思ってね」
俺はシンが気を遣ってくれている事に気が付いた。
「あ、ああ…。ありがとう、シン」
「いいよ、そんな事。それよりシュウっていい人、いや兵士みたいだね」
「分かるか、シン」
「なんとなくだよ。見た所真面目で任務もこなせそうだし、トウマが気に入ってるなら相性もいいんじゃないかな?」
シンはカップに入った紅茶を飲みながら言った。
「そうか、シンが言ってくれるのなら大丈夫だな」
「うん、大丈夫だよ」
シンは笑いながら俺に言った。
俺はシンと別れたすぐさま私室に戻り、端末を立ち上げて急いでシュウを直属として迎える手続きを済ませた。する事は済ませたものの、すぐに手続きした事が反映される訳ではないので俺はシュウが正式に直属になるまでの時間が長く感じてもどかしかった。
一週間経って俺はシュウを直属に迎える申請が降り、大急ぎでシュウを迎える準備をして申請が降りた当日に兵士の詰め所にシュウを迎えに行った。
「シュウ、約束通り迎えに来たぞ」
「待っていました。天将様」
シュウは身の回りの荷物をまとめて俺が来るのを待っていてくれた。
「天将の私室にシュウの部屋もちゃんと用意したからな。俺のサポート、よろしく頼むな」
「俺の方こそ、よろしくお願いします!」
シュウは慌てて深く頭を下げた。
シュウは本当に真面目で素直な男なんだなと実感した。まだ直属になったばかりで二人でいる暮らしもまだまだだけどゆっくりと仲を深めて行きたいと思った。
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