「ヨーロッパの不思議な町」 巖谷 國士 著 (読了06)
VII カフェにてーーウィーン、ブラティスラヴァ、おわりに
著者はウィーンの由緒るカフェに入る。
VII カフェにてーーウィーン、ブラティスラヴァ、おわりに
著者はウィーンの由緒るカフェに入る。
旧帝国末期のベルポック気分を巧みに演出するシックな室内(臙脂色の壁面に黄金の筋模様、濃いベージュの天鵞絨のカーテン、小ぶりのシャンデリア)に、真っ白な丸い大理石板をのせたテーブルと、オットー・ワグナーふうの黒い木製の椅子がほどよく配置されている。お客のほとんどは中年以上だ。きちんとした身なりの紳士淑女たちが、小声でおしゃべりをしたり、新聞や雑誌を読んだり、あるいはなにもせずにぼんやりとしていたりする。奥のほうには、チェスに興じる老人たちもいる。