今、里と山の境界域から山へ入ると、その周辺にはオカトラノオの白い花が盛んに咲いている。サクラソウ科トラノオ属の花なのだが、咲いている花はおおかたオカトラノオである。トラの尾のように花穂の先が細くなるとともに横に垂れ下がるように曲がっていく。トラの尾というよりはネコの尾を想像した方が雰囲気は合っている。小さな花をたくさんつけるのだが、これもまた可憐な花のひとつだ。
このオカトラノオと同属でよく似たものにヌマトラノオというものがある。字のごとく丘のトラノオに対して沼のトラノオなのだ。湿地に生えるもので、草丈は高くても1mには満たない。どちらかというとオカトラノオの方が草丈は長くなる。そういうこともあるのかヌマトラノオを見かけることは稀で、このトラノオ系の花をこの季節に意識するようになってのち、ヌマトラノオというものにお目にかかったことはなかった。簡単にいえば今まで見たこともなかったということになるのかもしれないが、草花に興味を示すようになってからまだ数年程度だから、昔のことはまったく認識の中にない。だから今以上に整備されていない水田地帯をフィールドに遊び、また移動していた時代に、もしかしたら目にしていた可能性は大きい。だからちょっと初めて見たものとも言いがたいところがある。
このネコの尻尾のような雰囲気を持つオカトラノオに対して、尾を曲げないタイプのヌマトラノオが身の回りにないものかと実は昨年から探していた。オカトラノオを見かけるたびに、立ち止まっては確認していたのだが、なかなか見つからなかった。妻の実家の裏にあるため池にもたくさんのオカトラノオが花を咲かせるが、沼のような湿地帯にもかかわらずその姿はなかった。最近ノカンゾウで触れたため池の堤体の上でそのヌマトラノオを見つけたのだ。丈の長い雑草の中に一株見つけたのだが、よく見るとオカトラノオと花の大きさが異なり、花のつき方もちょっと違う。オカトラノオとの区別は尾の曲がりがあるかないかなのだが、実はオカトラノオも花の咲き始めは尾が曲がっていないものが多い。だから真っ直ぐなものを見つけたからといって、それがオカトラノオとは限らないのだ。そのあたりを自分で確認したかったわけだが、今回花の様子でその違いが確認できた。ただ、堤体の頭に咲いているということで、湿地帯ではない。わたしの印象ではオカトラノオの方がどちらかというと湿地のようなところによく咲いているという印象がある。
撮影2007.7.22
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