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伊那谷の境界域から見えること、思ったことを遺します

現代の道祖神⑧

2016-11-06 23:16:53 | 民俗学

現代の道祖神⑦より

 

 松本市神林町神は、その名のとおりかつてのマチを思わせるような空間であるものの、今はまったく農村の住宅密集地という趣を見せる。狭い道の両側に家々が並ぶが、いわゆる町割のような区画を見せたりする。この町神のNさんの家の入口に道祖神がある。神様は入っていないというから、祀られているとは言えない。ようはモニュメントと言ってもよいのだろう。そもそも男女二神が彫られていれば「道祖神」と捉えるこちら側に先入観があるからだろう。とはいえNさんは「道祖神が好きだから」と言われるから、やはりこれは道祖神を模したもの、ということで良いのだろう。向かって右側の男神は左手に本を、向かって右側の女神は同じく左手に鞠のような物を持つ。とりわけ手を握り合っているわけではなく、二人が夫婦と捉えるのも早計かもしれない。背面に「よく学び よく遊べ」と刻まれている。平成16年2月吉日に建立されたというこの道祖神、施主が教員だったということもあって、その気持ちを込めたというわけだ。

 この道祖神のこと、窪田雅之氏が『道祖神研究』5号(道祖神研究会 平成23年)に「長野県筑摩野・安曇野における新たな神々の登場―新しい道祖神碑の建立の動向と背景―」に報告されている。Nさんが道祖神に惹かれるようになったのは、道祖神碑が多く残る市内里山辺に勤務した平成初年だったという。前述したように「よく学び よく遊べ」だから、二人は幼馴染か、それとも兄妹か、といったところ。ようは子どもを表したというわけだ。

続く


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