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伊那谷の境界域から見えること、思ったことを遺します

遠ざかる記憶 “ほ場整備” ①

2018-05-25 23:34:06 | 農村環境

 昭和50年代の我が家(生家)の周囲の印象は、ほ場整備が盛んだったという印象が強い。我が家の周囲は昭和49年に着工した地区だったから、採択要件からいけば受益面積100ヘクタール以上という時代だった。全町を3地区に分けて事業化していたから、もちろん規模的に要件は簡単にクリアーする広範なもので、ちなみに我が家のある地域の入った地区は、413ヘクタール規模のもので昭和60年に事業完了している。当時の補助率はどの程度のものだったのだろうと思い、『飯島町誌』下巻(平成5年3月25日 飯島町)を紐解いたが、そのような記載はない。そもそもあれほど環境を大きく変えた一大事業であったにもかかわらず、まだ時を経ていないという理由なのか、県営ほ場整備事業についての記述は、たった1ページにも満たない。先にも記したが、実は戦後の歴史については、記録文書がたくさんあるにもかかわらず、蓄積されていないのではないかと思うことが度々ある。ようは数十年前のことを知ろうとしても、簡単には分からないどころか、時代の流れともいってよいのか、文書が簡単に出てこないのである。それもほ場整備事業そのものに土地改良区が関与していて、その土地改良区が現存していていればともかく、土地改良区を設立せずに実施されたほ場整備事業に関しては、その資料はほとんど喪失していると予想される。考えられるのは、市町村の役所では保存期限があって、古いものは廃棄されている場合が多い。また、現在の役所を見たとき、当時からすでに建て替えられているケースが多く、飯島町も平成になって建て替えられている。前述した土地改良区にしても、公共機関に併設されて事務所を置いていると、新築時に過去の文書を廃棄しているケースが多く、土地改良区といえども過去の資料が無いところは多い。かつてこの日記で盛んに触れた「西天竜」は、幹線水路が昭和3年に完成、その後耕地整理が行われ戦時中にほぼ完成に至っているが、当時の建物がいまだに残っているからこそ、過去の資料が残されている。間もなく1世紀を迎えようとしている西天竜の当初の資料が残されているということは、他にはあまり例を見ない貴重な事実と言える。

 我が家の水田が整備された当時の国、あるいは県の補助金はどれほどのものだったか、知ろうとして紐解いた町誌には記述がなく、昭和60年に発行された全町3地区の事業が完了した際に発行された『竣工記念誌』(昭和60年7月26日 長野県・飯島町 県営圃場整備事業祈念事業委員会)を紐解いてもそのあたりの記載はなかった。事業を企てると「補助率はどれほどか」と盛んに気にするのが当事者であるにもかかわらず、こうした補助金の記載をしないのが「常識なのか」と思わせるほど、さっぱりわからない。ということでその筋の専門書とでも言えるだろうか『長野県土地改良史』第1巻(平成11年3月31日 長野県土地改良事業団体連合会)を紐解いてみた。ところがここにも補助金に関することはほとんど記載がないことを、あらためて知った。やはりこれが「常識なのか」(執筆者は長野県担当部局の方)。ちなみに同書にはほ場整備事業に関する採択要件についての一覧がある。それによると下記表の通りで、しだいに受益面積の要件が下がっていることが解るだろう。いわゆる冠に「ほ場整備事業」と付された事業はこの表で網羅する。実は平成以降になると、「ほ場整備事業」という名称は消滅していき、目的を付したさまざまな事業に変化していく。ただし、受益面積に関してはこの表の流れどおり、しだいに要件は下がっていく。平成になるとしばらくは、県営に関しては20haという要件が続いた。では、団体営と県営という区分とは何か、ということになるが、これこそが補助率に関わった。だからこそ補助率が解らないと事業全体は見えてこないというわけである。ちなみに現在のほ場整備の主たるものは、農業競争力強化基盤整備事業というもので、受益面積20ha以上を採択要件とし、さらに事業完了時に受益面積の半分以上を担い手が耕作していること、という要件が付される。長野県では補助率について国50%、県27.5%、市町村10%、地元12.5%と定めている(事業開始時における集積率によって、完了時の集積率上乗せがある)。いまもって20haという基本受益面積は変わっていないが、さらにこの要件を下げた事業が始まろうとしている。

続く

補足 補助率については、我が家にある資料ではわからなかった。もちろん少しネット上を探してみたが、簡単に探し出せるようなものではないと分かった。補助率については後に整理してみたい。


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