天狗の注連切り(令和6年8月31日午後9:55~10:16)
獅子の練りが参道を進むなか、JR飯山線の踏切を越えたところにある鳥居の前では、天狗の注連切が行われる。奥信濃特有の行為で、例えばスキー場開きなどでも天狗の注連切りが行われる。いわゆるスキー場の安全を願ってという意味もあり、そもそも注連切りはその場の悪霊を祓うという意味もあるのだろう。天狗は頭にトリカブトを被り、白ずくめの上に赤色の襷を掛けている。刀を持ち手甲をし、人差し指と中指をかんじよりで縛っている。この意味について斎藤武雄氏は『奥信濃の祭り考』(1982年 信濃毎日新聞社)において、「何のためにこんことをするのか判然としないのであるが、地元の人は、燃やしたたいまつが短くなって、次のしばってある紐を解く時に手にけがをしないようにするためだといったり、もしけがをしても血のしたたりを止めるためだといっている所もある」と述べている。注連縄から20メートルほど手前に立って注連縄の方に向かって相対すると、刀を左右に振って地に刺すような動作をしたり、天を仰いだりして指で印を結び、言ってみれば歌舞伎の見栄のような所作をする。
繰り返し同じような所作をした後、刀から松明に持ち替える。その長さは2メートルほどあり、燃え尽きるまで使わず、火の勢いが弱まると新しい松明に持ち替える。前進ししたり後退したりする際には松明を振り回すものだが、桑名川の場合比較的おとなしい振りである。同じことの繰り返しの中で、いよいよ注連縄に近づいてくると、周囲からは「まだまだ」という声が飛ぶ。ようは「まだ早いぞ」という意味である。前後を繰り返した後、いよいよ天狗は注連縄に掛かっている紙垂に松明の火を付ける。すると松明から刀に再び持ち替え、注連切りとなる。注連を切る際にも前進したり後退したりし、3回目の前進で注連を切る。なかなかタイミングが合わず、切った瞬間を撮影する、とはいかなかった。
斎藤武雄氏はこの天狗の注連切りの分布域について「偶然の一致になるのか、お祭りの時の料理に、エゴヨウカンとイモナマスを作る地域と大体同じである」と述べている。
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