Cosmos Factory

伊那谷の境界域から見えること、思ったことを遺します

昭和13年(1938)12月7日のある紙面

2022-12-18 23:41:08 | つぶやき

 

 ある家を訪れ、古い時代のものを調べていた。それらを包むように使われていた新聞は、昭和60年ころのものだったが、衣装を納めていた木箱の底に敷かれていた新聞は、それら新聞と変色具合はそっくりだったので、同じ時代の新聞かと思って確認してみると、戦前の新聞であった。表題には「新愛知」とあり、1888年(明治21年)創刊の日刊新聞で現在の中日新聞であった。実は昭和60年ころの新聞も「中日新聞」であって、その家では大昔から中日新聞を購読していたことがわかる。

 新聞は昭和13年(1938)12月7日のもの。9面右上には「両軍メンバー交換」という見出しが見え、金鯱対名古屋のプロ野球戦の結果が掲載されている。「金鯱」は「名古屋金鯱軍」といって昭和11年(1936)から同15年(1940)まで存在していたチーム。いっぽう「名古屋」は現在の中日にあたる。かつては野球のチームを「軍」と呼んでいたことがわかるが、いまもって「巨人軍」と称しているのも当時の名残なのだろうが、さすがに「軍」と呼んでいるのは巨人だけのこと。記事上位にスポーツ関係の記事が並ぶことからスポーツ記事専用の紙面かと思うとそうでもなく、朝比奈策太郎の「訪獨の旅を終えて」という紀行文や軍事の記事も掲載されている。

 9面の裏側、ようは10面は一面広告である。『キング』新年号の広告であるが、『キング』は大正13年(1924)11月に創刊して雑誌で、昭和32年(1957)に廃刊したもの。大日本雄辯會講談社(現在の講談社)の看板雑誌であるとともに、日本出版史上初めて発行部数100万部を突破した国民的雑誌だという。定価80銭と記されている。大きな見出しには「最新世界大地圖」とあり、付録として世界地図が付いていたようで「畳一枚にも近い豪華地圖」と宣伝している。当時は満州国が存在しており、「支那全土並に付近大地圖」について「支那全土を中心に満州国、ソ聯、印度、佛領印度支那等東洋の大勢明示」と解説している。小説がたくさん掲載されているようで、「菊池寛の「海軍武士道」と「愛憎の書」という小説や、吉川英治の「魔粧佛身」という小説のタイトルが見える。


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