年末年始に図書館からストラヴィンスキーのCDを片っ端から借りて聴いていました。3大バレエを始めとしたよく聴いたことのあるのは除きましたが、それでもいろいろあって感心しちゃいました。発表年代順に並べてみます。
① 弦楽四重奏のための3つの小品1914年:アルバンベルク四重奏団によるもので、弦楽四重奏のためのコンチェルティーノ1920年とラウール・デュフィの追悼のための2重カノン1959年、アイネムの弦楽四重奏曲第1番がカップリングされています。3つの小品はペトルーシュカのような芝居小屋的な雰囲気があり、コンチェルティーノは春の祭典に近いバーバリズムを感じさせて、一般的なストラヴィンスキーのイメージを弦楽四重奏の形で聴くことができます。アイネムの作品も地味ですが、冒頭部分がなかなか魅力的です。
② オペラ・ロシニョール(ナイチンゲール)1914年:ブーレーズ指揮で、とても短いオペラです。死神に憑かれた中国の皇帝をナイチンゲールが救うという「トゥーランドット」みたいなお話で、日本からの使者も出てきます。音楽、特に第1幕はドビュッシーの「ペレアスとメリザンド」を思わせるところがあります。全編夜が舞台なんでよけいそんな感じです。
③ 11の楽器のためのラグタイム1918年:アシュケナージのピアノ・指揮で、息子のディミトリがクラリネットを演奏しています。トリオ版(クラリネット、ヴァイオリン、ピアノ)の兵士の物語1919年や七重奏曲1953年といった室内楽曲がカップリングされています。
④ バレエ・プルチネルラ1920年:ホグウッド指揮による声楽パート付きので、ダンバートンオークス協奏曲1938年とカップリングされています。さらにチャーミングな序曲の原曲になったガローのトリオ・ソナタとペルゴレージのシンフォニアも入っていて、いかにもホグウッドらしい工夫がされています。
⑤ 「ペトルーシュカ」からの3楽章1922年:キーシンのピアノで、スクリャービンの5つの前奏曲、ピアノ・ソナタ第3番、メトネルの追憶のソナタがカップリングされています。この曲が難曲であることはのだめのお蔭で広く知られるようになったんじゃないかって思いますが、それだけにキーシンの超絶技巧が快感で、音がやたら多いのを整然としたタッチで弾くので腕が3本あるんじゃないかって思わせます。のだめ関連のCDをショップで立ち聞きしたらますますそれを実感して、ストラヴィンスキーはピアノが上手じゃなかったらしいのになって思いました。
⑥ ピアノ・ソナタ第2番1924年:ヴェデルニコフの演奏で、ショスタコーヴィッチのピアノ・ソナタ第1番、第2番とカレトニコフのレント・ヴァリエーションとカップリングされています。
⑦ バレエ・ミューズを導くアポロ1947年版:エサ-ペッカ・サロネンの指揮で、弦楽のためのニ調の協奏曲と古いイギリスのテキストによるカンタータがカップリングされています。
⑧ ピアノと管楽器のための協奏曲1950年版:ポール・クロスリーのピアノ、エサ-ペッカ・サロネンの指揮で、ピアノとオーケストラのためのカプリッチョ1949年版、管楽器のシンフォニー、ピアノとオーケストラのための楽章がカップリングされています。
⑨ オペラ・放蕩児の遍歴1951年:ケント・ナガノ指揮によるもので、18世紀のイギリスを舞台にした英語のオペラです。音楽に力があってきびきびしてて、舞台を見てみたいなって思いました。
⑩ バレエ・アゴン1957年:ムラヴィンスキーの指揮で、ウェーバーの舞踏への勧誘やラヴェルのボレロなどがカップリングされています。
本を読みながらだらっと聴いただけですし、ライナーノーツも読んでないので、全部についてコメントはできませんが、これだけ聴いてもわりと飽きが来なかったです。それはよく言われるようにカメレオンのようにいろんなスタイルの音楽を書いたからですが、②、④、⑦、⑨、⑩と舞台作品が多いこととも関係しますけど、とてもサーヴィス精神旺盛な人だったからかなって思います。しかし、そういうことを含めてなんとなくバルトークやショスタコーヴィッチよりも低く見られてるような気がするのは私だけでしょうか。
何だかいいですね、その職人芸っぷり。
マスカーニのイリスというオペラも日本が舞台になっていて登場人物の名前がosakaだのkyotoだのっていうのに笑っちゃったことがありますが、20世紀のオペラになにげによく登場するのですね、Japan…
それにしても、そんなマニアックなものが図書館に揃ってるのですか!
それが一番いいなあ…
二十世紀最大の作曲家という説も強いですが、それは様々な見解があるでしょう。
本年も宜しく。
区の図書館はほとんど行ったことがあるんですが、いつも行くところ以外は「とりあえず並べときました」程度のものしかないので、とても恵まれてるなって自覚があります。
12音とかセリーとかの技法はアカデミックで、学校で教えられるような代物でしょうけど、ストラヴィンスキーの音楽はそうじゃないからでしょうね。
時代としての20世紀を代表というか表現している作曲家を挙げると、ショスタコーヴィッチとアイヴズだろうと私は思いますが、ストラヴィンスキーもその資格は十分あると思います。