ある予感

　私のブログを読んでいただいている方にはお子さんがいるお母さんも多いので、予め申し上げておいた方がいいと思いますが、この記事はとても耐えがたいような内容を含んでいるので読まない方がいいです。

　
　と言うのも、例の秋田の幼児の連続殺人事件の話です。私は最初にあの母親が近所の男の子を殺した容疑で逮捕された時点で、事故死だとされていた自分の娘も殺したと考えるのが合理的な説明だろうと思い、人にもそう言いました。その予感がどうも当たっていたようです。……合理的じゃないって反論が当然ありますね。確かに自分で殺しておきながら「事故じゃない、事件だ」って言い回るのはとても奇妙です。そのままにしておけば疑われることもなかったんでしょうから。

　仮に娘の死が事故だったとして、それに納得いかないから他の子が殺人とわかる形で発見されるようにするというのは、非人間的だという点を別にすればある意味で合理的です。連続して変死体が見つかればその関連性を捜査するのは当然ですから。……ところが、娘を自分で手にかけていたんだったらそんなことをするのはおかしな話ですね。でも、私はその場合であってもやっぱり合理的な気がしました。合理的という言葉を間違って使っているのかもしれませんが。

　まず、外側から考えると小さな町で、立て続けに幼児が死ぬというのは異常です。一人の犯人が（最初のは殺人じゃなくて過失致死とかでもいいんですが）関与したものだと考えた方が安心できるような気がします。つまり異常なことをするのは一人だけだったと誰でも思いたいでしょう。しかし、これでは事件の説明にはなっていません。

　容疑者の内側から考える必要がありますが、その場合、彼女の供述がいちばん大きなポイントになるでしょう。しかし、私は現時点でそれに頼りすぎるのはやめた方がいいと思います。理由は簡単です。報道されているところによると、これまで彼女はその時々で様々なウソを言ってきたからで、今も事実にせよ、動機にせよ、本当のことを言っている保証はどこにもありません。今後、法廷とかで「自分は娘も男の子も殺していない」と言い出す可能性は十分あります。特に娘の方の事件は彼女の供述以外の物証が見つかるかどうか、警察・検察は頭が痛いでしょう。

　でも、私には彼女が二人とも殺していたと考えるのがいちばん腑に落ちてしまいます。とても恐ろしいことですが、自分の娘を何らかの理由で殺したのにそれが警察を始めとした世間では認めてもらえない、だからもう一人殺した、そんな単純なことだろうと思うのです。これを彼女本人が意識していたかどうかは知りませんし、よく言われる自己顕示欲が強い劇場型犯罪というふうにも思いません。ただ自分の犯した罪が誰にも相手にされないのは、孤独なんだろうなって思うだけです。殺人というのはある種の人たちにとってはとても魅力的なもので、誰かが止めてあげないとやめられないものなんじゃないかという気もします。

　内側から考えるというのはやっぱり危険なことだろうと思います。よく新聞なんかでは「犯人の心の闇が明らかにならないまま裁判は終結してしまった」なんてことを気楽に書いていますが、心の闇というものがあるとすればふつうの人は知らない方がいいと思います。「人殺しの気持ちなんかわかってたまるか」っていうのはとても健全な道徳だと思いますから。……でも、私には闇でもなんでもなくて、犯罪者の行動や心理が明確なメカニズムみたいに見えてしまうことが多いんですが。