麻生太郎財務相は12月7日、札幌市内での衆院選応援演説で、「少子高齢化になってて、昔みたいに働く人6人で高齢者一人の対応をしていたものが、今はどんどん子どもを産まないから。なんか高齢者が悪いようなイメージを思い切り作ってる人がいっぱいいるけど、子どもを産まないのが問題なんだからね」と言った。
例によってあわてて、「女性が子どもを産みやすくするために保育施設の充実などの環境整備を進めることが重要だという趣旨だった」と釈明したそうだが、まち・ひと・しごと創生法や本部を作って、人口減少に歯止めをかけるのを内閣の最重要課題に掲げているのだから、つい本音が出たと見るのが正解だろう。失言は「立場を忘失した発言」の略であり、暴言は「粗暴な性格が出てしまった発言」の略である。
常識的に言えば「産まないのではなく、産みたくても産める状況にないんだって。非正規で収入も低くて不安定で、職場じゃあ育休は取りにくいし、マタハラも多いの!夫は家事も育児も手伝わないし、保育所も児童手当も足りない。子育ては時間もおカネも取られる。四面楚歌だよ、まったく!」といったところだろう。つまり企業と男と政治が悪い。環境整備が重要なんて他人事みたいに言ってていいんだろうか。
もうちょっと突っ込んで言うと、どれくらい産んでもらえば満足なのだろう?…人口が減少しないためには合計特殊出生率(TFR)が2.1以上になる必要があって、これを人口置換水準と言うが、これが達成できている先進国はごく少ない。つまり少子化(麻生大臣流にコドモウマナイと言おう)は先進国共通の問題である。経済成長が続けばコドモウマナイになるのはほとんど必然だから、保育所を増やしたくらいでは焼け石に水なのは西欧各国はとっくにわかっている。麻生大臣の釈明が付け焼刃なのが透けて見える。
さらに、日本はTFRが1.4と極めて低く、韓国や台湾と並んでとってもコドモウマナイ国である。欧米の学者はカトリックのような宗教的背景と家族政策の組み合わせで出生率の差を説明することが多いが、東アジアは男尊女卑的な儒教文化圏と貧弱な家族政策の最悪の組み合わせと見られている。
女性が仕事なんかせずに家庭にいればコドモウマナイが解消すると思ってる人が多いだろう。だが、20代30代で、そんな甲斐性のある男がどれくらいいるのか計算してみてから言ってほしい。年収400万以上で正規で…といくつかの統計を見ればすぐにわかることだ。おそらくその男には最低4人の子どもを養ってもらわないと2.1は無理だろう。
TFR2.1は結婚した女性が生涯に2.1人産むという意味ではない。結婚しない(正しくは子どもを産まない)女性も含めてだから、100人の女性がいて70人しか結婚しなければ、2.1/0.7=3人産んでもらうのがノルマになる。35歳から39歳の女性の現在の有配偶率は69.8%だが、その親の世代の60歳から64歳の女性がかつて35から39歳の頃には90.3%が有配偶だった。…コドモウマナイが悪いのならケッコンシナイのが悪いということなる。
なぜ未婚・非婚がこんなに増えたのか。これもまた常識的に言えば「結婚したくないのではなく、結婚できる状況にないんだって。非正規で収入も低くて不安定で、いい出会いも世話してくれる人もいないの!それに一人暮らしでも困らないし、自由もあって好きなように時間を使える。結婚すれば相手の嫌なところも見えちゃう。結婚ってオワコンじゃん」といったところだろう。こっちも景気の回復や環境整備が重要ということかもしれないが、結婚以上にむずかしい。婚活パーティをやってる自治体もあるが、そんな問題じゃないことは明らかだ。
さて、ここからはもっとディープな話をしよう。コンドームやピルで避妊が簡単にできるようになったことがコドモウマナイの原因なのは間違いない。それどころかセックスレスがかなり若い夫婦で増えている。結婚前のカップルも同じらしい。つまりセックスが妊娠・出産につながらなくなり、さらに異性とのセックスに対するニーズも下がっている。日本人は諸外国と比べてセックスの満足度が低いことからもそれがわかる。
じゃあ、草食系的に性欲自体が衰えてるのかなんてことはわからない。田舎は娯楽がないから早く結婚するなんていうのと同じで、わかったとしてもどうしようもない。麻生さん、アキバを破壊しますか?それよりぼくはAVや風俗といった(結婚・出産とつながらない)性関連商品やサービスの産業規模がどれくらいなのかの方が興味がある。
人と深く付き合いたくない、「自分」と遊んでる方が楽しい、性欲は食欲や睡眠欲と違って、満たさないと死ぬほどの絶対的なものじゃない、相対的な欲望だ。代替物だっていっぱいある。だのに何を好き好んで結婚や妊娠なんて深い関係を持たなきゃいけないのかと若い人は感じてるように思う。
この問題はまた考えたいが、とりあえず「コドモウマナイのは誰が悪いのか?」に答案を提出しておこう。
「経済状況が悪い」とすれば90年代初めのバブル崩壊後ずっとそうなんだから、その責任は若い世代にはなく、大ざっぱに言って団塊より上の世代の責任だ。
「世の中が変化したのが悪い」としても答えは同じじゃないかな。
こんなことを言うと「世代間対立を煽るのはよくない」という意見があるだろう。
そのとおりかもしれない。
したがって、無自覚に天に唾した麻生大臣が悪い。
例によってあわてて、「女性が子どもを産みやすくするために保育施設の充実などの環境整備を進めることが重要だという趣旨だった」と釈明したそうだが、まち・ひと・しごと創生法や本部を作って、人口減少に歯止めをかけるのを内閣の最重要課題に掲げているのだから、つい本音が出たと見るのが正解だろう。失言は「立場を忘失した発言」の略であり、暴言は「粗暴な性格が出てしまった発言」の略である。
常識的に言えば「産まないのではなく、産みたくても産める状況にないんだって。非正規で収入も低くて不安定で、職場じゃあ育休は取りにくいし、マタハラも多いの!夫は家事も育児も手伝わないし、保育所も児童手当も足りない。子育ては時間もおカネも取られる。四面楚歌だよ、まったく!」といったところだろう。つまり企業と男と政治が悪い。環境整備が重要なんて他人事みたいに言ってていいんだろうか。
もうちょっと突っ込んで言うと、どれくらい産んでもらえば満足なのだろう?…人口が減少しないためには合計特殊出生率(TFR)が2.1以上になる必要があって、これを人口置換水準と言うが、これが達成できている先進国はごく少ない。つまり少子化(麻生大臣流にコドモウマナイと言おう)は先進国共通の問題である。経済成長が続けばコドモウマナイになるのはほとんど必然だから、保育所を増やしたくらいでは焼け石に水なのは西欧各国はとっくにわかっている。麻生大臣の釈明が付け焼刃なのが透けて見える。
さらに、日本はTFRが1.4と極めて低く、韓国や台湾と並んでとってもコドモウマナイ国である。欧米の学者はカトリックのような宗教的背景と家族政策の組み合わせで出生率の差を説明することが多いが、東アジアは男尊女卑的な儒教文化圏と貧弱な家族政策の最悪の組み合わせと見られている。
女性が仕事なんかせずに家庭にいればコドモウマナイが解消すると思ってる人が多いだろう。だが、20代30代で、そんな甲斐性のある男がどれくらいいるのか計算してみてから言ってほしい。年収400万以上で正規で…といくつかの統計を見ればすぐにわかることだ。おそらくその男には最低4人の子どもを養ってもらわないと2.1は無理だろう。
TFR2.1は結婚した女性が生涯に2.1人産むという意味ではない。結婚しない(正しくは子どもを産まない)女性も含めてだから、100人の女性がいて70人しか結婚しなければ、2.1/0.7=3人産んでもらうのがノルマになる。35歳から39歳の女性の現在の有配偶率は69.8%だが、その親の世代の60歳から64歳の女性がかつて35から39歳の頃には90.3%が有配偶だった。…コドモウマナイが悪いのならケッコンシナイのが悪いということなる。
なぜ未婚・非婚がこんなに増えたのか。これもまた常識的に言えば「結婚したくないのではなく、結婚できる状況にないんだって。非正規で収入も低くて不安定で、いい出会いも世話してくれる人もいないの!それに一人暮らしでも困らないし、自由もあって好きなように時間を使える。結婚すれば相手の嫌なところも見えちゃう。結婚ってオワコンじゃん」といったところだろう。こっちも景気の回復や環境整備が重要ということかもしれないが、結婚以上にむずかしい。婚活パーティをやってる自治体もあるが、そんな問題じゃないことは明らかだ。
さて、ここからはもっとディープな話をしよう。コンドームやピルで避妊が簡単にできるようになったことがコドモウマナイの原因なのは間違いない。それどころかセックスレスがかなり若い夫婦で増えている。結婚前のカップルも同じらしい。つまりセックスが妊娠・出産につながらなくなり、さらに異性とのセックスに対するニーズも下がっている。日本人は諸外国と比べてセックスの満足度が低いことからもそれがわかる。
じゃあ、草食系的に性欲自体が衰えてるのかなんてことはわからない。田舎は娯楽がないから早く結婚するなんていうのと同じで、わかったとしてもどうしようもない。麻生さん、アキバを破壊しますか?それよりぼくはAVや風俗といった(結婚・出産とつながらない)性関連商品やサービスの産業規模がどれくらいなのかの方が興味がある。
人と深く付き合いたくない、「自分」と遊んでる方が楽しい、性欲は食欲や睡眠欲と違って、満たさないと死ぬほどの絶対的なものじゃない、相対的な欲望だ。代替物だっていっぱいある。だのに何を好き好んで結婚や妊娠なんて深い関係を持たなきゃいけないのかと若い人は感じてるように思う。
この問題はまた考えたいが、とりあえず「コドモウマナイのは誰が悪いのか?」に答案を提出しておこう。
「経済状況が悪い」とすれば90年代初めのバブル崩壊後ずっとそうなんだから、その責任は若い世代にはなく、大ざっぱに言って団塊より上の世代の責任だ。
「世の中が変化したのが悪い」としても答えは同じじゃないかな。
こんなことを言うと「世代間対立を煽るのはよくない」という意見があるだろう。
そのとおりかもしれない。
したがって、無自覚に天に唾した麻生大臣が悪い。