野田順康 

つぶやき

イスラム国

2015-02-03 10:31:53 | Weblog
二人の日本人がイスラム国で殺害された。自己責任論を主張する向きもあるが、若い彼等が志半ばで無念の死を遂げたことに対して、衷心より哀悼の意を表したい。
第一次湾岸危機、アフガン戦争、イラク戦争を担当してきた者としては、とうとう日本もこの厄介な「文明の衝突(ハンチントン)」に巻き込まれて行くのだろうと予感する。日本政府も国民も、特に国民は全くこの事態に対する準備が出来ていないのだが、逃れることは出来そうにないので、今こそ正面から戦争・紛争、平和主義、日本の立ち位置等について国民的議論をする必要がある。安全保障、個別的また集団的自衛権、有事法制に至るまで真剣に議論して速やかにコンセンサスを作らなければならない。日本が紛争等に巻き込まれる日はそう遠くないからである。どうすれば平和を維持できるのか真摯な議論が不可欠である。
集団的自衛権について、日本政府部内には実戦の体験者がおらず、机上の空論ばかりやっていると述べたが、今回の人質救出対応を見ていても、実質的な対応は何もしていないのがわかる。私がタリバンと接触していたころは、常に地域の長や要になる者と連絡を密にし、人質事件が発生すれば彼らを通じてタリバンと直接交渉した。3度とも人質は解放されている。湯川さんが人質になって以降、日本政府はこの様な接触の努力が足りなかったのではないか。ヨルダン政府と大使館を右往左往しても何ら実質的な交渉にはなっていない。とどのつまりに日本政府高官は「見えない敵との交渉は難しい」と発言している。自分で「交渉能力がありません」と言っているのと同じである。
そもそも安倍総理はこの時期に中東訪問する必要があったのか?「パリ事件の後で中東訪問は目立つ」と本人が言ったと報道されているが、政府部内にも控える方が無難との意見が多かったと聞く。これも実戦不足であり、文明の衝突の激しさを認識できていないがゆえの誤算である。
2001年にアーミテージもランド研究所(米国空軍研究所)も30年以内にアジアで大規模な紛争が起こると予測している。我々に残された時間は少ない。