野田順康 

つぶやき

成長の陰照らす知恵を

2008-12-12 13:24:41 | Weblog
2008年10月30日木曜日
西日本新聞朝刊9面


成長の陰照らす知恵を
国連ハビタット福岡本部 野田順康本部長
アジア都市ジャーナリスト会議(ACJC)で今回「調和ある都市」がテーマとなった背景は何か――。国連人間居住計画(ハビタット)福岡本部の野田順康本部長に聞いた。

「アジアの持続可能な発展に、日本の経験は力になる」
一九八五年に四十八億人だった世界の人口は現在六十七億人で、二〇三〇年には八十三億人に達すると予測されている。増加する人口の大半は発展途上国に張り付くことになるが、とりわけアジアの途上国では、経済成長のエンジンである都市部の人口増が「人口爆発」と呼べるほど急激に進むことになる。
行政のインフラ整備は人口増のスピードに追いつけない。巨大化する都市では、上下水道もなくトイレもない、過密化した居住区「スラム」が広がっていく。
 しかも、こうした都市の内部では富裕層と貧困層の格差も広がるのだ。
 実際、過去十五年間、アジアの都市では、タイやマレーシアのような例外はあるものの、ネパール、中国、カンボジアなど多くの国々で所得格差が急速に拡大している。
 アジアの経済成長は都市の貧困層を低賃金で雇用し、先進国との価格競争に勝ち抜くという構図で進んでいるからで、貧しい者はずっと貧しいという悪循環が繰り返されている。こうした不平等な発展は、やがて社会的不安定につながっていく。
 われわれは知恵を絞らなければならない。社会的公平性を実現し、地域の均衡ある発展を果たし、成長と自然環境を調和させるにはどうすべきか。
 今回のACJCは、そうした「調和ある都市」の実現に向けて各国のジャーナリストに考えてもらう場となる。
 開発計画の策定方法や公害克服の歴史、富の再分配システムとしての税制など、日本の経験は大いに力となるはずだ。経済成長や都市化は、どうすれば持続可能な形で達成できるのか。調和ある都市づくりに挑戦する、活発な論議を期待したい。