
14時10分、先の小牛田で乗り継ぎを間違えたため一時間遅れで石巻へ到着した。
列車が駅に近づくに従がって「えっ?」と周囲の街並みを見廻していた。
これが、あの巨大な津波に呑まれた街なのか?
改札を抜けて駅前の整然とした街並みに、いっそう違和感を抱いている。
あれから500日。そんなに早く復興できるものなのか?
福島の、まったく先の見えない状況と較べると温度差を感じてしまう。
駅前のベンチでカメラを取りだしながら隣のベンチに座る人に声をかけてみた。
「石巻は結構、復興が早かったですね」
始めはニコニコしていた人の顔が強張った。
あっ、不味いことを言ってしまったようだ。
港の方へぶらぶら歩いてみた。
北上川の河口付近まで来ると、さすがに津波の生々しい痕跡が、あちらこちらに残る。
商店街には復興を誓う言葉が並ぶ。
(街角のキャクター人形は、石巻出身の漫画家、石ノ森章太郎にちなむ)
私は、どうも震災というキーワードでニュース映像に氾濫した記号を求めているようだ。
メディアに消費されたイメージを追いかけている。
くだらない。自己嫌悪に陥る。
駅前のオジサンの固い表情が甦る。
そして福島との温度差などと云って軽々しい判断を下して
短絡的にブログに掲載しなくて良かった。
帰宅して改めて、石巻の映像を、ずっと観ていた。
冷や汗がでた。
私は何も観ていない。TVが与えたものしか。
自分の眼で見たものと、その落差を埋めてゆくしかない。
2012年6月現在、石巻市役所によると、死者3445人。行方不明493人。
この数字は重過ぎる。
そして、もう一度あの津波映像を。
この車窓の風景を見れば分かるように、東北の青々と広がる田園風景には、
かけがえない懐かしさを覚える。
朝日連峰の山旅と共に、その豊かな森と水の風景、すべてが豊穣な恵みを与えてくれる
私たち日本人の原風景だと思う。
福島、最初の地に三春を選んだのは、朝日新聞の震災後からの連載記事「プロメテウスの罠」が、ちょうど三春町役場のヨウ素剤配布を取り上げていたのが影響したと思います。
政府や自治体が原発事故後、スピーディなどによる放射線の流れを予測できないまま、
ヨウ素剤配布時期をいつまで経っても決断できないでいた中、
独自に海外メデイアの報道や放射線汚染予測を入手し、ヨウ素剤配布時期を決断し町民に服用させた経緯は賞賛に値します。
何処よりも早く適切な判断でした。
配布後、監督官庁より「勝手に判断するな。すぐ回収しろ」と難癖を入れるところが、この国の縦割り行政の哀しい実態です。
朝日新聞連載の「プロメテウスの罠」http://astand.asahi.com/magazine/wrnational/special/2012040900006.htmlは、最初から欠かさずに、ずっと読み続けています。
この取材班は記者クラブに所属しない脱ポチ宣言をしているらしい。
だからこそ、あれほど踏み込んだ記事を書き続けることが可能なのだろう。
ポリフォニックというか多声的な取材内容が、毎回いろんな視点から福島の原発事故を掘り起こしています。
現在一番読むに値する新聞記事だと思っています。
過去の連載分は学研より単行本となって出版されていますから、是非御一読を。
帰宅して今週の新聞記事を読んでいると、国会事故調査委員会の最終報告書が出ていました。
あいかわらず低線量被曝については、現在の放射線規定値の域を出ていません。
広島、長崎、ハンフォード、チェルノブイリ、夥しい数の内部被曝の実態からは、因果関係を証明できないとして退けています。
放射能による遺伝子の損傷、そして免疫力の著しい低下による疾患は、子供や乳幼児ほど顕著です。
ホッホさんの云うように「フクシマ・ハート」は今現在、深く静かに潜行しています。
原発事故では誰も死んでいないじゃないか?
というバカな発言がまかり通っています。
確実なことは二人、福島原発事故に従事した労働者が死んでいます。
あいかわらず死因が急性白血病でも、放射能の影響を認めていませんが。
ネット情報では全原発労働者の内、少なくても800人から1400人くらいは死んでいるという情報も。
とにかく目に見えないだけに厄介です。
ロンドンオリンピック報道で、隅に追いやられている毎週金曜日の官邸を囲む自由参加デモは延期になって(その代わり、別の団体主催のデモに変わった)明日29日、日曜日になったようです。
もう今更、この大きなうねりは止められない。
こんな書き方は人ごとみたいで気が引けるのですが、真実なんですね。
復興とはまたおこすですから、基のまんまが理想です。
高台に移転するとか、帰ることができない人たちがいる以上、難しいことです。
何が原因か、考えていないんでしょうね。もとは福島原発ですよね。
友人は福島の立ち入り禁止区域まで行き、シャッターを切ることができなかったと言っていました。
ランスケさんの東北便り、期待しています。
政府の復興構想会議も当初は、「大自然の脅威と人類の驕りの前に、現代文明の脆弱性が一挙に露呈した。われわれの文明の性格そのものが問われる」という理想を掲げていたのです。
確かに、あまりにも広範囲に被害が及び、従来の縦割り行政では対処できないのが実態なのでしょうね。
上記のコメントでも言及したように三春町を始め、現地の役場の職員たちは知恵を絞って骨身を惜しまず、まさに滅私奉公の働きぶりです。
この現地の声を中央官庁がうまく掬えていない。
もっと地方の裁量にまかせるべきなのでしょう。
仮設住宅から移り住むはずの災害復興住宅も、まだ1%としか着工していないという現実。
それに引き替え国会は、この危機状態においても政争にあけくれる低落。
もう、今の政党政治には誰も期待していません。
さて今日29日は、官邸を囲む自由参加の人の波が最大規模に膨れ上がりそうです。
日本国民が、かってこれほど自ら強い意思を表明したことがあったでしょうか?