Landscape diary ランスケ・ ダイアリー

ランドスケープ ・ダイアリー。
山の風景、野の風景、街の風景そして心象風景…
視線の先にあるの風景の記憶を綴ります。

福島 on the Road ・ 7/25、広野

2012-07-25 | 風景

 

夏休みにも係わらず早朝の電車は高校生たちで混雑していた。

屈託なく「昨日K先輩とね」弾ける笑顔で話す彼女たちに訊いてみたい衝動に駆られる。

「あなたたちは10年後、どんな免疫不全による疾患が待っているか判らないんだよ」と。

「そんなこと覚悟の上だよ」と冷めた眼差しで、少年少女たちは言い放つかもしれない。

大人が考えている以上に、子供たちは自分たちの置かれた立場を理解している。

以前NHKの震災特集で観た南相馬の若者たちも「自分たちはモルモットだ。もう子供なんか産めない」

と冷めた目線でカメラに向かって淡々と喋っていたのを思い出す。

いわき市で乗り換えて、常磐線運行区間終点、広野へ。

広野一つ手前の駅で、幼い二人の子供を連れた母親がホームへ降りてゆく。

その後ろ姿に視線が張りついてしまう。

「まだ、こんな所で幼い子供と暮らしているのか?」

 

 

駅員さんに地図を示して行ける範囲を確認。

楢葉町との境、Jヴィレッジ手前に検問があるようだ。駅からおよそ2km程度。

駅前は閑散としている。

「除染作業中」と表示された工事車両ばかりが、通りを行き来する。

足立ナンバー、札幌ナンバー、宮城に青森、全国から来ているみたいだ。

プレハブの建設会社の建物が目につく。

アパートや民宿、それに国道沿いのパチンコ屋なんかも原発関連の作業事務所や宿泊施設になっている。

国道を走る大型バスやトラックは、みんな車体の前に通行許可証のようなプレートをつけている。

広野は、まさに原発作業の前線基地。私たちにとって可視範囲の最前線かもしれない。

 

 

日立や東芝の原子炉製造メーカーも施設を借り受け常駐。

廃炉も含めて、彼らには、これから長い時間が待っている。

 

最初に出会った人は、どうも原発関連の人だったらしい。

「もう避難区域の解除が出たので、住民の人も沢山帰ってきてますよ」と楽観的。

ところが二人目以降は、皆さん悲観的意見ばかり。

「仮設住宅のあるいわき市に住んでいるけど、帰るのは荷物を取りに帰る昼間だけ。」

「2学期から学校が始まるみたいだけど、スクールバスで通う人もいるみたい」

と先行きに対して楽観的な話は、まったく聞こえてこなかった。

今も街に住んでいるのはお年寄りばかりのような気がした。

 

検問の機動隊車両は高知ナンバー。

カメラを構えると「写真撮影注意」といきなりスピーカーから警告が(吃驚)

そうとう彼らも過敏になっているようだ。

道を返して駅に帰ってゆくと、街中が除染作業中。

その作業を見ていると気の遠くなるような果てしもない行為のように思える。

京大の小出さんは、「除染は放射能の除去ではなく移動にすぎない」と切り捨てている。

その半減期を考えると私も、そう思えてくる。

でも政府としては、そのまま放置することも出来ないだろう。

それでも作業する下請けの人たちに対して「ご苦労様です」という言葉しかかけられない。

彼らは毎日、高い放射能値の只中で果てしもない作業を繰り返しているのだから。

 

 

街を離れて海を目指した。

街からは高い煙突の広野火力発電所が目立つ。

田圃は、ほとんど耕作していない。

一カ所、放射能の影響を調べる耕作地があった。

 

線路の向こうは放置された草っ原が広がる。

お爺さんに訊くと津波が河口から川を遡ったらしい。

河口周辺も復興工事の真っ最中だった。

野っ原に立てられた手造りの看板、「ガンバッペ福島」「大好き、広野」が心に沁みる。

 

 

地震による罅割れや倒壊で解体する建物を多く見た。

それでも、この地で生きてゆこうと新築された住宅も目にした。

正午前の高い陽射しに影ばかり濃い閑散のとした街は

やはり何か白昼夢を見ているような現実感を著しく欠いてみえた。

 

 


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4 コメント

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福島の放射線量 (ランスケ)
2012-07-26 06:58:07
おはようございます。

今朝の郡山市の放射線量は0.276msv。
全国の観測地点の中では相変わらず一番高い数値を示しています。
昨日訪れた広野では、町内広報として除染後の放射線量をアナウンスしていました。
0.26msv。除染してこの数値。
除染していない場所は、どれくらいなのか?
幹線道路から外れて、そんな場所をウロウロ歩き回っていたので怖いような(汗)

さて今日は、どうしょうか?
人の暮らしと自然が共存する阿武隈山地の里山風景を、じっくり見てみたい気がします。
そんな風景写真が私の原点だから。
返信する
東北は日本の原点 (ホッホ)
2012-07-26 20:56:05
雨ニモマケズ
       宮沢賢治


雨ニモマケズ
風ニモマケズ
雪ニモ夏ノ暑サニモマケヌ
丈夫ナカラダヲモチ
慾ハナク
決シテ瞋ラズ
イツモシヅカニワラツテヰル
一日ニ玄米四合ト
味噌ト少シノ野菜ヲタベ
アラユルコトヲ
ジブンヲカンジョウニ入レズニ
ヨクミキキシワカリ
ソシテワスレズ
野原ノ松ノ林ノ陰ノ
小サナ萱ブキノ小屋ニヰテ
東ニ病氣ノコドモアレバ
行ツテ看病シテヤリ
西ニツカレタ母アレバ
行ツテソノ稲ノ束ヲ負ヒ
南ニ死ニサウナ人アレバ
行ツテコハガラナクテモイ、トイヒ
北ニケンクワヤソシヨウガアレバ
ツマラナイカラヤメロトイヒ
ヒドリノトキハナミダヲナガシ
サムサノナツハオロオロアルキ
ミンナニデクノボートヨバレ
ホメラレモセズ
クニモサレズ
サウイフモノニ
ワタシハ
ナリタイ


雨ニモマケズの詩が
ランスケさんと重なります。
返信する
旅を終えて (ランスケ)
2012-07-27 05:23:31
おはようございます。
帰りのバス車中です。
結局、東北の旅最終日は、石巻でした。
津波に呑まれた北上川河口の街は照りつける陽射しの暑い一日でした。

ホッホさん、ありがとう。
法華経に帰依した賢治には遠く及ばないけど、この夏二度目の東北の旅は何かを私の中にもたらしたと思います。
それを、じっくり考えてみます。
返信する
26日の放射線量の訂正 (ランスケ)
2012-07-28 14:36:12
ごめんなさい。
26日に書いたコメントの放射線量の単位が間違っていました。
msv(ミリシーベルト)ではなくμsv(マイクロシーベルト)です。

関連して広野町の放射線量のモニタリング資料をみつけました。http://www.town.hirono.fukushima.jp/sangyo/kukansenryochosakekka.html
これは高い。
この値で避難解除して帰還しろというのか?
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