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【190】映画

 冬の方角にある二面や三面は、これまで景観の記録がないという理由から坦子菌類【128】の実験栽培地に選ばれ、その結果広域に渡って硝子化【158】した。この事態を受け、世界をあまねくフィルム【127】に収めて感光地化しようという主旨の活動がはじまった。未知の景観の数々を撮影して劇場で上映するごとに、世界地図が更新されていった。心象風景を求めてサキニ氏【101】の片目に一顔レフカメラ【127】を入れた頃には、撮影の範囲が見過ごされがちな市民の日常生活から菌類やバクテリア【133】の生態まで包括的に拡大していた。区役所【106】が介入するまでもなく、すべてがジャンルの升目で区切られていく過程で、取捨選択によるイデア化が進み、フィルムに映っていない世界の実在が疑われるようになった。世界の硝子化はますます進んでいる。一方、それこそが世界を保存しようとする試みなのだ【198】とうそぶく学者もいる。

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【185】博士は知ったのだ

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