注釈の注釈による超現実詩小説
棺詰工場のシーラカンス
【153】猫・ある種のプロセス
猫は肺結核の特効薬として調合されたが、処方箋を手に入れようと結核菌を植え付けてくる患者が後を絶たず、精神安定剤として販売せざるを得なくなった。
一口に猫といっても種類はさまざまだが、一口サイズの猫はテトラ種と呼ばれ、錠剤かカプセルの形に畳み込まれている。テトラとは手飼いの虎の速記体であるが、猫に特有の四つ乳(よつぢ)によって他の錠剤と区別できることから、数字の四をも意味するようになった。蛍光色を発する夜用タイプのネオンテトラや、銃刀法の対象となるテトラドキシン、神への信仰を取り戻すために僧侶が常用するテトラグラマトン等は、いずれも内服用の錠剤であり、体温が下がらないようテトラポットに入れて携帯するのが良いとされる。
小説家に広く愛用されているのは、普通サイズの猫である。調合された気まぐれや愛らしさ【165】から得られるのは緊張の緩和や不安の解消ばかりではない。報道帰省【71】した魚を食べる猫は、ヒゲから波状信号を発して人の脳波【85】にリンクし、魚【78】に詰まっていた情報を人ごとのように伝達してくれるのだ(ケーブルテレビ【154】もこの方式に頼っている)。猫に脳髄を歩きまわられるなり憑かれたように書きはじめる小説家たちは、猫の服用がとぎれると大恐慌【166】をきたし、その期間が長期に渡ると五、七、五でしか記事をこねることのできない俳人になってしまう。
リンク元
【144】質屋に預けられた人【71】クチコミ・報道帰省
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