海の方角から、季節はずれの西風に乗って、粉雪混じりの強風が吹きつけ、風音は思わずダウンジャケットのマフラーに手をやった。カシマスタジアムの
照明は雪で霞んでいて、見知らぬ星の表面を照らす、高性能の幻燈のようにピッチを見下ろしていた。
「今日は試合ができるのだろうか?」。三月の初旬とは思えない、季節はずれの大雪のせいで、カシマスタジアムには1メートル近い大雪が降って、スタッ
フの必死の作業にも関わらず、ところによってはかなりの雪が残っていた。まずます激しくなりそうな粉雪の中、ピッチの向こう側の観客席は黒く滲んだ墨の
ように見えた。そうだ、こんな風景は子供の頃から何度も見てきた。風音が生まれた下北半島の田名部の近くの恐山に吹雪く雪はこんなものではなかった。
ごうごうと音を立てて吹きつける粉雪は、結界門をさらに純白に研ぎ澄ませた未知の空間に変貌させ、妖しく垂れたまん幕は、ちぎれるほど激しくたなびき、
大きな卒塔婆は見知らぬ惑星の墓標のように見えたのだった。純白の雪をかぶったたくさんの地蔵菩薩は、子供の目にもたとえようもなく、神聖なものに
映った。
予定の試合時刻はもう30分も過ぎていた。やっと雪かきが終わって、何とか試合ができそうだった。岳は今、何を思っているのだろう?昨夜、電話し
た時には、この初戦は絶対に勝つと言っていた。しかも私のために二点は取ると約束してくれたのだ。風音は岳の鼻息の荒さを思い出して、真っ白なスタ
ンドの中で一人笑った。周囲の観客も試合が行われるのかどうか、半信半疑でじっと耐えるように座っていた。
やっとアントラーズの選手たちが出てきた。岳がどこにいるのか雪のせいでよく見えない。風音は眼を凝らした。ああ、あそこだ。今日は一番後ろにい
る。背番号の20は判別できなかった。高校の時からアントラーズでプレーしたいって言っていたっけ。四年前の岳に比べて身体はがっしりしたものの、
堂々と大股で歩く男らしい歩き方は変わっていない。青森山田高校の高校生だった頃、何度手をつないであちこちを歩き回ったことだろう。変わったのは
むしろ私の方だ。風音は昨夜の踊りの激しい稽古で痛めた左足にそっと触れてみた。もっと素晴らしい踊りを踊らなければ。そしてそれを岳に見てもらわ
なければ・・・・・。
虚空に響き渡るように試合開始のホイッスルが鳴った。彼方からセイレーンの澄んだソプラノが聞こえたように思った。
なお、この小説はフィクションであり、現実のアントラーズの柴崎 岳選手とは、まったく関係はありません。柴崎選手のファンの方、ご了承いただきた
いと思います。柴崎はインフルエンザも治り、無事、日本代表チームに合流しているようですね。
個人的には前野の移籍は残念です。山本が想像以上に良かったにせよ、左SBは層が薄く、控えであっても前野がいてくれた方が安心でした。アルビ
レックス新潟はいいチームです。岡本もいます。活躍の場はあると思うので、是非ともレギュラーポジションで活躍することを祈っています。また、レンタル
移籍の栃木SCから戻ってきた、鈴木隆雅も何とかレギュラーに食い込んで欲しいと思います。
まだ、どうなるのかわからない山村と西も是非、アントラーズに残って欲しいと思います。柳沢のコーチ就任には驚きました。ちょっと若すぎるような気
もしますが・・・・・。とにかく赤崎を鍛え抜いて欲しいです。柳沢の全盛期時代のような選手に成長させてほしいですね。
BS1のアジアカップ2011決勝のオーストラリア戦の岩政のディフェンス、素晴らしいですね!
ネタがないせいもあって、フィクションに挑戦してみました。
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