映画『ホーリー・マウンテン』

2012年09月21日 | 映画の感想



監督 アレハンドロ・ホドロフスキー
アレハンドロ・ホドロフスキー (The Alchemist)
ホラシオ・サリナス (The Thief)
Ramona Saunders (The Written Woman)
Juan Ferrara (Fon)
Adriana Page (Isla)
Burt Kleiner (Klen)

砂漠で磔にされている盗賊(ホラシオ・サリナス)が、裸の子供たちに石を投げつけられた後、自らの力で十字架から降り立ち、腕のない小人と共に町へ向かった。喧騒の町で盗賊は捕えられ、石膏で作られたキリスト像が積み重ねられている鏡の間に閉じ込められる。やがてそこから脱出した彼は、高い塔のてっぺんにたどりつき、そこで練金術師(アレハンドロ・ホドロフスキー)と出会った。彼らと大工場を所有する者、兵器産業を支配する者、戦争玩具の製造者、警視総監、建築家など9人の男女は、山頂に不死の賢者たちが憩うという「聖なる山」に向けて旅立つことになる。そして彼らは自我の桎梏から解き放たれるために経なければならない苛酷な儀式の連続の後に、ついに「聖なる山」の山頂にたどりつくが…。

★★★☆☆
やりたいようにやっていいよ、とお金を渡された監督が、本当にやりたいことをすべてやっちゃった映画。映画の作り手が、白日夢のように憧れる掟破りをやってみせるラストは、痛快・・・いや、監督のしてやったりという痛快な顔が目に見えてくる。ロケ撮影されていた前作『エル・トポ』がヌーベルバーグ風、フェリーニやパゾリーニの神話に材を撮った遍歴劇を思わせたが、今作はシンメトリックなセット映像などが印象深く、ジャック・タチ監督の映画を彷彿とさせるところがあった。しかしやってることは相変わらずのエログロ怪奇趣味。悟りを求めるとかいって不死を求める9人の男女にしても、欲望を類型化したり現代社会の幾多の局面を象徴したりというよりも、なんか似通っていて思いつきっぽいし。うん、作り込んでいるところは作り込んでいるけど、実際演っていることはなんとも即興的なのだ。なんともドラッギーなマントラ世界である。泥棒が自分のコピー像に囲まれて悶え苦しんでいるように、ホドロフスキーが自身の偶像に囲まれて叫んでいる。


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