映画『エル・トポ』

2012年09月21日 | 映画の感想



監督 アレハンドロ・ホドロフスキー
アレハンドロ・ホドロフスキー (El Topo)
ブロンティス・ホドロフスキー (Brontis as a child)
マーラ・ロレンツィオ (Mara)
ロバート・ジョン (Brontis as a man)

エル・トポ(アレハンドロ・ホドロフスキー)は流浪のガンマンで、息子ブロンティス(ブロンティス・ホドロフスキー)を連れて旅をしている。ある日、村を襲った山賊を退治した。退治した大佐の女マーラィ(マーラ・ロレンツィオ)を見染め、息子を置き去りにし女と出発してしまう。女にそそのかされたエル・トポは、東洋哲学者、超能力者、自然主義者、砂漠の聖者などの人格高潔な四人のガンマンを極めて卑劣な手段で倒すが、途中で拾った女ガンマン(ポーラ・ロモ)とマーラィが同性愛に走ってしまう。二人の女に裏切られ、エル・トポは瀕死の目に合う。二十年の歳月が流れ、怪しげな人々の群れの中で覚醒する。そこはフリークスで充満する地底であった。地底の人々を救うためにトンネルを掘る。そこに教会の神父に成長した息子がおり、父への復讐に燃えていたが、父子は休戦して共にトンネルを掘ることにする。しかしトンネルが貫通した時、地下のフリークス達はエル・トポの制止もきかず、近隣の町に押しかける。彼らは、恐慌をきたした町の人々によって皆殺しにされてしまう。

★★★★☆
評価しにくい映画だ。インパクトのある絵画的映像が確実に記憶に残るし、こんなに血なまぐさい臭いをはっきり感じる映画も少ない。斬新かつ予測不能の展開で面白い。ジョン・レノンやミック・ジャガーが称賛したっていうのもわかる。一般常識の束縛から解放されたい、タブーを破りたいと願うロッカーたちにとってこの常軌の逸しぶり、ドラッグぽさというのは魅力的だろうなぁ。でもちょっと待ってほしい。この映画が作られた時代ってまさにそんな時代だったと思う。70年前後のあの頃の映画って、大なり小なりこんなところ、なかっただろうか?フランスのヌーベルバーグの洗礼を受けたあと、その手法が一般映画にも浸食していなかったか?即興的な演出あるいは演出っぽさ。なぜこのカットがここで?と思うような、シュールなカットバック、フラッシュバック。民族楽器まで飛び出す唐突な音楽。そういう前衛風味みたいなのをカッコイイという風潮があって、普通のアクション映画や普通の恋愛ドラマにもしばしば使われていたんじゃないか?そのことを思うとき、この映画は、パゾリーニ監督映画とマカロニウェスタンをミックスしたものにしか思えない。そういう何とも俗っぽさが拭えない映画だと感じる。ただそう断言して余りあるのは、ホドロフスキー監督のこだわり。というか、フェティッシュぶり、変態っぷりだ。虐殺現場の血の海やら動物たちの死体やら。性描写やら奇形の人々やら。これってエログロナンセンスを楽しむ感覚に近いはず。好きなのだ、彼は。あの、『アキラ』の大友克洋と親交があるというのもうなずける。
カルト映画として、これからも評価されるだろうし、印象深い場面の数々はきっと脳裏に焼きついたままトラウマのようになってしまうにちがいない。だが、カメラのアングルや編集が悪くてわかりにくかったり、場面説明的な稚拙な音楽が気になったりする映画であることは否定できないと思うのだが。

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