1月3日、弟が車で津波の後の被災地に連れて行ってくれた。瓦礫が撤去され、更地となったところ、そこにまた新たに家や店を立てて頑張っているところ、逆に、誰も住まなくなったところ、あの震災、津波のまま撤去を待っているところ、様々な1年10カ月後の姿だった。
その中で、印象に残り、涙が出るほど勇気をもらったのが、石巻市雄勝町の荒浜海水浴場にあった、漫画家井上雄彦氏の壁画だった。
モノクロの壁画を見て、ピカソのゲルニカを思い出した。
ピカソは、パリ万博のスペイン館に、故郷スペインに起きた人類史上初の無差別攻撃の悲劇と抗議を、命がけで、たった一人で描き上げた。
井上氏の壁画は、津波が襲ってきた浜に作った40mの白壁に、水平線を見つめる眼差しの少年少女と樹を描いている。
そこには、地元の人たちや、この地までこの絵を見に訪れた人たちからの応援メッセージが書き込まれていた。
悲劇の絵ではなく、ここから立ち上がって、未来に向かう絵、また来るかもしれない次の津波に挑む絵として描かれたような気がする。
私も、被災地の現状の写真をアップするよりも、何もなくなった所ではなく、美しく蘇った海とともにそこからまた立ちあがっていく故郷へのメッセージとして、荒浜の写真をアップした。
かつて、この地を幾度となく襲った大津波。地元には、その悲劇を伝える言い伝えや、由来の地名が残っている。
先人の知恵と教訓を学び直し、今回の犠牲を無駄にしないためにも、次の津波に向けての備えをして行かなくてはならないと思った。
井上氏の描いた子どもたちの絵は、まさに『画竜点睛』。その強くて深い眼差しは、見る者に勇気と元気を与えるような絵だった。 |