タイトルは往年の児童文学の名著「ぼくら三人にせ金づくり」(赤木由子著、初版昭和59年 小峰書店〔現・てのり文庫〕)のオマージュです。
まあ、今回紹介する6人は「ぼくら…」のような小学生3人組じゃなく、37~60歳までのオッサンばかりなんですが…(-_-;)。
ワタクシは逃げも隠れもない山口県民であり、郷土を愛するところ大でございますが、わが県からは毎年必ず1件以上、全国ニュースをにぎわせるバカタレが出ており、県民として大変心を痛めています。
昨年度の「山口県発・全国クラスの恥」といえば、阿武町が町内1戸あたり10万円配布すべきコロナ給付金4630万円を、誤って田口翔なるバカタレところに全額振り込んでしまい、田口がそれをネットバンクに振り込んでネコババしようと企み、電子計算機使用詐欺罪に問われた事件。
そういえば犯人の田口が山口南警察署から出てくるとき、ロン毛が強風で煽られて顔が全然見えなかったこと(;^ω^)、その光景を地元テレビ局・KRY山口放送がニュースのたびに執拗に放送していたことが、今では大変いい思い出です。
これに続く今年の「山口県発・全国クラスの恥」といえば、現在巷を大いににぎわせている中古車売買大手・ビッグモーター。
皆様も報道等でご存じの通り、ビッグモーターの出自は先般引責辞任(世間では敵前逃亡と呼ばれた(;^ω^))した先代社長が、山口県岩国市で起こした「兼重モータース」。まともな職に就けないクサレ暴走族構成員(新社長がまさにそれ)を雇い、ヤンキー魂で業績を上げたという会社ですが、まさか業界最大手になった現在でも未だ「山口県の田舎のクソヤンキー魂」のまま商売をしているとは、思ってもみませんでしたwww。
(まあ、暴走族が作った会社にガバナンスもクソもないのは、当然っちゃー当然なんですが)
まだまだ膿は出きっていないビッグモーター。今年の「山口県発・全国レベルの恥」はまだまだ巷をにぎわせそうですね。
さて、古い文献を調べておりますと、ひょんなことから「山口県発・全国レベルの恥 大正編」を発掘しました。
種本は戦前の内務省警保局が昭和3年に発行した「捜査実例集」。
この本は警察部内の刑事資料で、「大正15年及び昭和元年中各地方に於て検挙したる犯罪事件中、重要異例に属するものを記録したる(冒頭の注釈より)」もの。
そのため被疑者はおろか、関係者の住所・実名・年齢までもが全て克明に記録されているうえ、何だったら殺人事件の遺体写真までバコーン!と載っているというシロモノですが、そこは警察部内資料ですから、仕方ありません。
さて、大正15年度に起きた犯罪の中でも「重要異例」とのお褒めの言葉を頂いた(←褒められてはいない(-_-;))わが郷土発の犯罪の罪名は「通貨偽造罪(刑法第148条第1項)・偽造通貨行使等罪(同第2項)」。もう少し具体的に言えば、当時の最高額紙幣であった百円札を偽造して借金の返済に充てたらチョンバレし、そこから一味がイモヅル式に挙げられたという、「重要異例」という割には、なんとも冴えない事件です。
種本には当然、登場人物名は全て実名記載されているのですが、令和の現在にそれを明記するわけにはいきませんので、本稿では名前のみでお話を進めます。以下、登場人物。
①岩松…本件首謀者。②久逸…印刷屋。偽造の実務担当。③市之進…偽造紙幣を使った男。④輔蔵…偽札の保管者。⑤好一…偽造紙幣の見本とする真札を貸した者。⑥和吉…一番年長だが、一番ザコキャラ。
お話の主たる舞台は山口県南東部。旧国名・周防の東側であることから一般的に「周東(しゅうとう)」と呼ばれる地域…ワタクシのおもっくそ生まれ故郷が舞台となります(-_-;)。
本件は大正15(1926)年1月30日、山口県大島郡久賀町(現・周防大島町)に住む某債権者が、③市之進から取り立てた四百円のうち二百円を銀行に持っていたところ、即座に「これは偽札だ」と言われ、大慌てで大島警察署に駆け込んだところから始まります。
幸いなことに当時の周防大島は完全なる離島(大島大橋の完成は昭和50年)であったため、定期船を待つために旅館でのんびり宿泊していた③市之進は即座に逮捕。
その後の調べにより、同年2月3日までのたった4日間で①②④⑤⑥が相次いで逮捕され、本件は①が率いていたクズの集団がひと儲けを企み、60枚の百円札を偽造したものだということが発覚したのです。
(ちなみに当時の百円は、現在の貨幣価値で約15万円くらいとなります。)
主犯である①岩松(犯行当時数え年の37歳。以下同じ)は、柳井近辺出身者ばかりの本件一味の中で、唯一の他県出身者(長崎県)。
明治時代に山口県大島郡平郡村(現・柳井市平郡)沖で沈没した御用船・大阪号からのお宝(御用金を積んだまま沈んだ、という伝説がある)引き揚げをきっかけに山口県東部~広島県にかけて居を転々としていました。
いい年こいてリアル・トレジャーハンターなんかしているようなヤツですから、生来ヤマっ気が強く、事件当時は一獲千金の機会を求め、山口県東部屈指の歓楽街を有した、熊毛郡柳井町(現・柳井市)をブラブラしていました。
そんな岩松のところに自然発生的に集まってきたのが、②~⑥の面々でした。ちなみに②~⑥は全員、現在の柳井市出身者です(;^_^A。
②久逸(犯行当時35歳)は柳井の東隣・玖珂郡鳴門村(現・柳井市大畠)で、一代で印刷屋を作り上げた男。社業は順調だったもののある時点でやる気をなくし、詐欺を働いたり、ブラブラ遊んで暮らしていたクズ。
③市之進(犯行当時37歳)は当時統治下にあった朝鮮を転々とした挙句、尾羽打ち枯らして内地に戻り、事件当時は柳井から少し離れた玖珂郡由宇村(現・岩国市由宇町)の知人宅にパラサイトしていた怠け者。
④輔蔵(犯行当時43歳)は本件発生当時、事件の主舞台である柳井町の遊興街で「石原琴水」と名乗って活動映画の弁士をしていた男。
妻に飲食店をやらせており、一種のヒモ。
⑤好一(年齢不詳)は③市之進の友達の鍛冶屋。③市之進の友達だったため、一味に加わってしまった運の悪い男。
⑥和吉(犯行当時60歳)は当時柳井町在住。ロクな教育を受けなかったため字は書けないが、悪知恵は働き、詐欺で前科2犯を有する。
事件発生の前年、大正14(1925)年の暮。
①岩松が新聞を読んでいますと、「兵庫県下で偽造紙幣作成をしていた一味逮捕」という記事が目に飛び込んできました。
ヤマっ気の多い①岩松の頭に、電流走る(;^ω^)!
「そうじゃ、偽札をようけこしらえたら、一気に大金持ちじゃ!」などとアホなことを考え、早速③市之進④輔蔵を呼び出し「どうやったら偽札が手に入るか」が謀議されます。
年が明けた1月10日、①岩松は自宅に出入りしていた②久逸に声を掛けます。当初①岩松は、②の印刷人脈を使い、どこからか偽札を調達することを考えていましたが、②からの回答は
「真物そっくりは中々六つかしいが、暗い電灯の下で人を瞞着する位の物なら、他から買はないでも自分の手でできる。(種本原文ママ)」
という、①岩松の目論見を大いに励ます?ものでした。
謀議直後、②久逸は見本とするための真正百円札(⑤好一からの借り物)を受け取ると、その足で模造紙を買い求め、自宅に戻ってニセ百円札の石版を三日三晩(!)かけて作成。1月16日までにその石版で60枚のニセ百円札を刷り上げたのち、証拠隠滅のために石版を擦り落します。
60枚のニセ百円札は時を経ずして①岩松③市之進のもとへ届けられますが、念には念を。ある程度人の手を経た札に見せかけるため、①③は煎茶を煮出した液体を一枚一枚丁寧に塗るという、なかなか涙ぐましい努力をします。
60枚のニセ百円札は、6人の中では住居も社会的地位も安定している④輔蔵宅の火鉢の下に保管され、必要に応じて持ち出すこととなりました。
ニセ札とはいえ、六千円もの大金?で気を良くした①③⑥は、出資者を募ってさらに偽札を作るという、「偽札シンジケート」の設立を妄想します。
田舎の無知な金持ちのジジイを一人、なんとか騙すことに成功し「これで偽札量産体制ができる!わしらー大金持ちじゃー!」と喜んだところまではよかったのですが、ここで冒頭にお話しした通り③がヘタを打ち、全員が一網打尽に捕まった、というわけです。
ここまで読んで「⑤好一はモデル用の百円札を貸しただけなのに、なんで捕まったの?」という疑問を抱いた方もおられると思います。
実は⑤好一、百円札を貸す際に「偽札を作るため」という理由を了解の上で貸していたうえ、見本として貸した真正の百円札をなかなか返してもらえなかったことから、その代償として④輔蔵からニセ百円札33枚を受け取り、使用の目的で自宅に保管していたことで捕まったのです。マヌケですな。
以上、約100年前に起きた「山口県発・全国に晒した恥」の顛末でした。
最後に、本件検挙に功績のあった警察官の官職氏名をお伝えし、本稿を締めたいと思います。
山口県警部高橋光雄・同警部補西見正市・同巡査坪金亀太郎。
まあ、今回紹介する6人は「ぼくら…」のような小学生3人組じゃなく、37~60歳までのオッサンばかりなんですが…(-_-;)。
ワタクシは逃げも隠れもない山口県民であり、郷土を愛するところ大でございますが、わが県からは毎年必ず1件以上、全国ニュースをにぎわせるバカタレが出ており、県民として大変心を痛めています。
昨年度の「山口県発・全国クラスの恥」といえば、阿武町が町内1戸あたり10万円配布すべきコロナ給付金4630万円を、誤って田口翔なるバカタレところに全額振り込んでしまい、田口がそれをネットバンクに振り込んでネコババしようと企み、電子計算機使用詐欺罪に問われた事件。
そういえば犯人の田口が山口南警察署から出てくるとき、ロン毛が強風で煽られて顔が全然見えなかったこと(;^ω^)、その光景を地元テレビ局・KRY山口放送がニュースのたびに執拗に放送していたことが、今では大変いい思い出です。
これに続く今年の「山口県発・全国クラスの恥」といえば、現在巷を大いににぎわせている中古車売買大手・ビッグモーター。
皆様も報道等でご存じの通り、ビッグモーターの出自は先般引責辞任(世間では敵前逃亡と呼ばれた(;^ω^))した先代社長が、山口県岩国市で起こした「兼重モータース」。まともな職に就けないクサレ暴走族構成員(新社長がまさにそれ)を雇い、ヤンキー魂で業績を上げたという会社ですが、まさか業界最大手になった現在でも未だ「山口県の田舎のクソヤンキー魂」のまま商売をしているとは、思ってもみませんでしたwww。
(まあ、暴走族が作った会社にガバナンスもクソもないのは、当然っちゃー当然なんですが)
まだまだ膿は出きっていないビッグモーター。今年の「山口県発・全国レベルの恥」はまだまだ巷をにぎわせそうですね。
さて、古い文献を調べておりますと、ひょんなことから「山口県発・全国レベルの恥 大正編」を発掘しました。
種本は戦前の内務省警保局が昭和3年に発行した「捜査実例集」。
この本は警察部内の刑事資料で、「大正15年及び昭和元年中各地方に於て検挙したる犯罪事件中、重要異例に属するものを記録したる(冒頭の注釈より)」もの。
そのため被疑者はおろか、関係者の住所・実名・年齢までもが全て克明に記録されているうえ、何だったら殺人事件の遺体写真までバコーン!と載っているというシロモノですが、そこは警察部内資料ですから、仕方ありません。
さて、大正15年度に起きた犯罪の中でも「重要異例」とのお褒めの言葉を頂いた(←褒められてはいない(-_-;))わが郷土発の犯罪の罪名は「通貨偽造罪(刑法第148条第1項)・偽造通貨行使等罪(同第2項)」。もう少し具体的に言えば、当時の最高額紙幣であった百円札を偽造して借金の返済に充てたらチョンバレし、そこから一味がイモヅル式に挙げられたという、「重要異例」という割には、なんとも冴えない事件です。
種本には当然、登場人物名は全て実名記載されているのですが、令和の現在にそれを明記するわけにはいきませんので、本稿では名前のみでお話を進めます。以下、登場人物。
①岩松…本件首謀者。②久逸…印刷屋。偽造の実務担当。③市之進…偽造紙幣を使った男。④輔蔵…偽札の保管者。⑤好一…偽造紙幣の見本とする真札を貸した者。⑥和吉…一番年長だが、一番ザコキャラ。
お話の主たる舞台は山口県南東部。旧国名・周防の東側であることから一般的に「周東(しゅうとう)」と呼ばれる地域…ワタクシのおもっくそ生まれ故郷が舞台となります(-_-;)。
本件は大正15(1926)年1月30日、山口県大島郡久賀町(現・周防大島町)に住む某債権者が、③市之進から取り立てた四百円のうち二百円を銀行に持っていたところ、即座に「これは偽札だ」と言われ、大慌てで大島警察署に駆け込んだところから始まります。
幸いなことに当時の周防大島は完全なる離島(大島大橋の完成は昭和50年)であったため、定期船を待つために旅館でのんびり宿泊していた③市之進は即座に逮捕。
その後の調べにより、同年2月3日までのたった4日間で①②④⑤⑥が相次いで逮捕され、本件は①が率いていたクズの集団がひと儲けを企み、60枚の百円札を偽造したものだということが発覚したのです。
(ちなみに当時の百円は、現在の貨幣価値で約15万円くらいとなります。)
主犯である①岩松(犯行当時数え年の37歳。以下同じ)は、柳井近辺出身者ばかりの本件一味の中で、唯一の他県出身者(長崎県)。
明治時代に山口県大島郡平郡村(現・柳井市平郡)沖で沈没した御用船・大阪号からのお宝(御用金を積んだまま沈んだ、という伝説がある)引き揚げをきっかけに山口県東部~広島県にかけて居を転々としていました。
いい年こいてリアル・トレジャーハンターなんかしているようなヤツですから、生来ヤマっ気が強く、事件当時は一獲千金の機会を求め、山口県東部屈指の歓楽街を有した、熊毛郡柳井町(現・柳井市)をブラブラしていました。
そんな岩松のところに自然発生的に集まってきたのが、②~⑥の面々でした。ちなみに②~⑥は全員、現在の柳井市出身者です(;^_^A。
②久逸(犯行当時35歳)は柳井の東隣・玖珂郡鳴門村(現・柳井市大畠)で、一代で印刷屋を作り上げた男。社業は順調だったもののある時点でやる気をなくし、詐欺を働いたり、ブラブラ遊んで暮らしていたクズ。
③市之進(犯行当時37歳)は当時統治下にあった朝鮮を転々とした挙句、尾羽打ち枯らして内地に戻り、事件当時は柳井から少し離れた玖珂郡由宇村(現・岩国市由宇町)の知人宅にパラサイトしていた怠け者。
④輔蔵(犯行当時43歳)は本件発生当時、事件の主舞台である柳井町の遊興街で「石原琴水」と名乗って活動映画の弁士をしていた男。
妻に飲食店をやらせており、一種のヒモ。
⑤好一(年齢不詳)は③市之進の友達の鍛冶屋。③市之進の友達だったため、一味に加わってしまった運の悪い男。
⑥和吉(犯行当時60歳)は当時柳井町在住。ロクな教育を受けなかったため字は書けないが、悪知恵は働き、詐欺で前科2犯を有する。
事件発生の前年、大正14(1925)年の暮。
①岩松が新聞を読んでいますと、「兵庫県下で偽造紙幣作成をしていた一味逮捕」という記事が目に飛び込んできました。
ヤマっ気の多い①岩松の頭に、電流走る(;^ω^)!
「そうじゃ、偽札をようけこしらえたら、一気に大金持ちじゃ!」などとアホなことを考え、早速③市之進④輔蔵を呼び出し「どうやったら偽札が手に入るか」が謀議されます。
年が明けた1月10日、①岩松は自宅に出入りしていた②久逸に声を掛けます。当初①岩松は、②の印刷人脈を使い、どこからか偽札を調達することを考えていましたが、②からの回答は
「真物そっくりは中々六つかしいが、暗い電灯の下で人を瞞着する位の物なら、他から買はないでも自分の手でできる。(種本原文ママ)」
という、①岩松の目論見を大いに励ます?ものでした。
謀議直後、②久逸は見本とするための真正百円札(⑤好一からの借り物)を受け取ると、その足で模造紙を買い求め、自宅に戻ってニセ百円札の石版を三日三晩(!)かけて作成。1月16日までにその石版で60枚のニセ百円札を刷り上げたのち、証拠隠滅のために石版を擦り落します。
60枚のニセ百円札は時を経ずして①岩松③市之進のもとへ届けられますが、念には念を。ある程度人の手を経た札に見せかけるため、①③は煎茶を煮出した液体を一枚一枚丁寧に塗るという、なかなか涙ぐましい努力をします。
60枚のニセ百円札は、6人の中では住居も社会的地位も安定している④輔蔵宅の火鉢の下に保管され、必要に応じて持ち出すこととなりました。
ニセ札とはいえ、六千円もの大金?で気を良くした①③⑥は、出資者を募ってさらに偽札を作るという、「偽札シンジケート」の設立を妄想します。
田舎の無知な金持ちのジジイを一人、なんとか騙すことに成功し「これで偽札量産体制ができる!わしらー大金持ちじゃー!」と喜んだところまではよかったのですが、ここで冒頭にお話しした通り③がヘタを打ち、全員が一網打尽に捕まった、というわけです。
ここまで読んで「⑤好一はモデル用の百円札を貸しただけなのに、なんで捕まったの?」という疑問を抱いた方もおられると思います。
実は⑤好一、百円札を貸す際に「偽札を作るため」という理由を了解の上で貸していたうえ、見本として貸した真正の百円札をなかなか返してもらえなかったことから、その代償として④輔蔵からニセ百円札33枚を受け取り、使用の目的で自宅に保管していたことで捕まったのです。マヌケですな。
以上、約100年前に起きた「山口県発・全国に晒した恥」の顛末でした。
最後に、本件検挙に功績のあった警察官の官職氏名をお伝えし、本稿を締めたいと思います。
山口県警部高橋光雄・同警部補西見正市・同巡査坪金亀太郎。