爽やかな風と光に誘われて
新緑の中を歩く
鳥の囀りも
明るく聞こえる
風が吹くたびに
スローモーションを描きながら
花びらが舞う
この季節は
希望が溢れているような
何もかも新しく
生まれ変わるような
そんな上向きの波動を
持っている
どんなに辛いことがあっても
どんなに理不尽な所業があっても
世界はいつも
軌道を回っている
どんなに寒い冬も
いつかは暖かい春になり
どんなに惜しんでも
桜は散り
台風は過ぎ
夜は明け
また陽が差す
世界はいつも
普遍という言葉を連れて
回っている
また同じようで
唯一無二の時間を
廻らせている
人は いつも清らかで
美しくいられる訳ではない
心の中には どこか
陰りや闇がある
清廉潔白であることが
いつも正しい訳ではない
一点の曇りも濁りもない
そんな世界は不自然だ
むしろ
闇があるからこそ
光を眩しく感じられることもある
闇があるからこそ
心が休まることもある
ひらひらと
妖精のように
朝の光を浴びて舞う
散りゆく姿まで
可憐で美しい
散りゆく姿は
侘しさを象徴していると
昔は思っていたけれど
今はなぜだか
そう思わない
踊るように飛んで舞って
地面に落ちてもなお
「情景」となる
なにも悲しくないよ
最後までキラキラ輝いているよ
ほら、見て見て
と
ニコニコ笑ってる
伸びゆく小さな緑を見ているだけで
なぜか
満たされた気分になる
いつまでも
透き通った時間が続くようで
川の流れのように
澄みわたっていく空のように
小さな緑があるだけで
わたしは なにかに戻っていく
わたしは どこかに還っていく
河川敷の
木立のはしっこに
聳え立つ
緑の大木
風もない
静かな光の中
さわさわ
さわさわと
絶え間なく動く
手のひらのような
葉っぱたち
巨きな影に
先っぽまで行渡る感受性が
揺れて
それは
あの木のように
ざわめく
ざわめき
よこたわる
揺れる葉っぱの 間から
のぞいた空が
うすく青く
透き通っていた
顔を出したばかりの
みどりいろ
これから広がる
世界のはじまりを
僕に伝えてる
そしてその向こうに
見える空が
まっすぐ
果てしなく
澄み渡っていた
何気なく
庭を横切ったら
ちょこちょこと顔を出す
淡い緑の 新芽たちと
小さなつぼみが
目に留まった
冬の間
風に吹かれて
地面につくほど
しなってたのに
春が来れば
にょきにょきと
みんなが顔を
出していた
厳しい寒さに
ぐっと耐えていた分
ほっとした顔が
うれしそうで
思わず
手をたたいた
季節がめぐって
また会えたね
きみの いのちに
拍手をおくるよ
手をつないで
笑顔をおくるよ
ありがとう
また会えたね