技術構造分析講座ブログ

東工大の科学史・技術史・科学技術社会論・科学方法論研究室のブログです。公式情報、研究の詳細はホームページをご参照下さい。

映画「白バラの祈り」(梶)

2006-02-05 17:03:37 | Weblog
 東京の日比谷シャンテ・シネで映画「白バラの祈り―ゾフィー・ショル、最後の日々」を見ました。
 「白バラ」というのは、第二次世界大戦中にドイツでヒトラー打倒を市民に呼びかけた大学生のグループのことです。映画は、その一人21歳の大学生で主人公のゾフィー・ショルとその兄ハンスがミュンヘン大学でビラをまいた1943年2月18日(木曜日)から、ゲシュタポの尋問、22日(月曜日)の裁判と判決、即日の処刑までの6日間(ビラ撒きの準備をした前日を含め)にしぼって描かれています。
 映画は、尋問、裁判の様子を、東独崩壊後に発見された当時の尋問と裁判の記録に基づいて忠実に再現しているそうです。
 世に聞く日本の特高の取り調べやスターリン下の大粛清時代のソ連内務人民委員部の取り調べに比べ、ここに出てくるゲシュタポの取調官の取り調べが紳士的なのに驚きました。証拠のやり取りと議論の応酬だけです。
 裁判はまったく茶番であったことがよくわかります。「人民法廷」と称する最高裁の裁判長がベルリンからミュンヘンに飛行機でやってきて、月曜日の朝10時に開廷してわずか二時間弱で判決に至り、しかもなんの猶予もなくその日の夕方には処刑してしまいました。じつはゾフィーといっしょにさばかれた兄や友人クリストフは、軍籍にあったので本来は軍事裁判にかけるべきだったそうです。
 取調官が、ヒトラーが出てこなければ自分は仕立屋か失業者だったと言ったのが印象的でした。独裁政権にもかならずそれを下からのささえる層がいなければ続きません。スターリン政権も、「大粛清」で「古い専門家」がいなくなって社会上昇を果たした新しい専門家が支えていた(支持していた)といわれています。
 ドイツでも当時、処刑に「ギロチン」が使われていたことにびっくりしました。それも机の上に乗せられるような小型のギロチンでした。

日比谷のシネシャンテでは少なくとも2月14日までは上映しているようです。
http://www.chantercine.com/schedule/index.html
他館については、映画「白バラの祈り」のサイト
http://www.shirobaranoinori.com/ の「CinemaInfo」のページをごらんください。

2月8日までは、シネシャンテの近くの有楽町朝日ギャラリー11Fで、「ゾフィー・ショルと白バラ展」(入場無料、よいパンフレットを売っています(200円)。)をやっています。白バラについて基礎知識を得るには、関楠生『「白パラ」―反ナチ抵抗運動の学生たち』清水書院(人と思想)、1995年がよいと思います。また、今回の映画のパンフレット(700円)もよくできていました。