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「戦争の出来る国」をめざす、秘密保護法案・NSC法案を許すな! 沖縄県紙の報道。

2013-11-14 01:34:10 | 人権

 

関連記事: 許すな!「戦争のできる国」をめざす、秘密保護法案・NSC法案
http://toyata.blog.ocn.ne.jp/blog/2013/11/nsc_34d1.html

5月27日 沖縄タイムス
社説:[秘密法の国会監視]「追認」機関でしかない

こんな権限しか与えられていない機関ではとても監視することはできない。形ばかりの設置というほかない。 自民、公明両党は特定秘密保護法の運用が恣意(しい)的にならないよう監視するとうたう「情報監視審査会」を衆参両院に設置する与党案をまとめた。常設機関とし、今週にも国会法改正案を衆院に提出する構えだが、この審査会が国会による監視機関となるのかどうか、はなはだ疑問だ。

審査会は政府から毎年、特定秘密の指定や解除などの運用状況の報告を受け、指定が不適切だと判断すれば、解除などを勧告することができる。また秘密の提供を政府が拒んだ場合は、提出するよう勧告することができる。 問題はいずれの場合も勧告に強制力がないことである。政府が特定秘密保護法に基づき「我が国の安全保障に著しい支障を及ぼすおそれ」を盾にすれば、何でも拒否することができるのである。内部告発者に対する保護も明記されていない。 これでは、審査会に監視という名前を冠しただけで、実際にチェック機能を果たすことはとうていできない。

審査会をそれぞれ議員8人で構成することも疑問だ。各会派の議員数に応じて割り振ることになり、審査会は1強の自民党が仕切ることになるのは間違いないからだ。 審査会が各省庁の膨大な特定秘密をどう選択し、提出を求めることができるかどうかも心もとない。 結局、政府主導で運用が進むのは、目に見えている。

特定秘密保護法は昨年12月、安倍政権がなりふり構わず、数の力で強行採決を繰り返して成立した。 世論の反発が高まったため、安倍政権は採決直前になって泥縄式に政府内に秘密指定が妥当かどうかを担わせる機関の設置を打ち出した。 内閣官房に「保全監視委員会」、内閣府には「独立公文書管理監」と「情報保全監察室」を置く。さらに有識者らでつくる「情報保全諮問会議」もある。だが、諮問会議は「特定秘密指定の基準」を決めるのが役割だが、1月に開かれただけだ。残りの三つの機関は、秘密指定と、指定が妥当かどうかを身内同士で検討するのと同じで、検証の意味は持たない。「第三者機関」とは呼べないのである。 独立性を持った第三者機関となる可能性を持っていたのが今回の審査会だったが、与党案は、政府の暴走の隠れみのになるだけである。

特定秘密保護法は、政府によって恣意的に秘密指定され、国民の知る権利、取材や報道の自由が侵害される懸念が強い。 三権分立の下では、政府をチェックするのは国権の最高機関で、国民の代表である国会の務めである。審査会が強制力を持たないのであれば、政府に歯止めをかけることができず、権力分立を危機に陥れてしまうものだ。 与党案は国会に与えられた重要な役割を国会議員自ら放棄しているといっていい。実効性に重大な疑問が多い審査会によって、12月に法を施行することは許されない。

3月7日 琉球新報
社説:国会監視機関 秘密法施行は危険すぎる 

ふたを開けてみると「張り子の虎」だった。自民党のプロジェクトチームは、特定秘密を監視するため衆参両院に設置する常設監視機関の原案をまとめた。同機関の活動は、既存の各委員会から要請があった時だけで、政府による秘密指定が適切かどうかの判断に踏み込まない。国会の監視機能は骨抜きになっている。安倍政権は反対の声を押し切って特定秘密保護法を成立させたが、この法律はあまりにも問題が多い。数々の危険性が払拭(ふっしょく)されない以上、施行してはならない。
 
特定秘密保護法は「特定秘密」の範囲が広く、定義があいまいだ。秘密指定に当たって官僚の恣意(しい)が働く余地が大いにある。何が秘密なのか不明で、情報漏えいについて処罰範囲が広く刑罰が重い。知る権利、言論の自由、基本的人権を侵害する恐れが大きい。政府・与党は、秘密指定をチェックするため行政内部と国会に監視機関を設置すると表明した。行政内部の監視機関として内閣官房に保全監視委員会、内閣府に情報保全監察室を設置する。しかし官僚がメンバーになる身内の組織だけに、監視が行き届くかどうか、はなはだ疑問だ。
 
そこで注目されたのが衆参両院に設置する常設の監視機関だ。国民の代表で構成する国会が、恣意的で違法な秘密指定がないか政府を監視し、必要に応じて指定解除させるのは当然だ。しかし、自民党原案は指定の適否を国会に判断させず、特定秘密の提供を省庁に求める権限や、法的拘束力も明確に位置づけられていない。各省庁が提供を拒める例外の範囲もあいまいだ。例外の範囲が広がれば恣意的な指定が増える可能性がある。背景として「国会への秘密提供が情報漏えいにつながる」と、政府や自民党幹部が考えているからだという。
 
自民党は今後、公明党との与党内調整を経て国会法改正を目指す。自民党原案通り国会に秘密指定の適否を判断させないなら、国権の最高機関としての役割は果たせない。秘密法は明らかに三権分立という民主国家の基本原理を変質させてしまう。政府が保有する情報は主権者である国民の共有財産だ。秘密法によって情報統制するのではなく、情報の適切な管理と公開の徹底、国会による監視機能の徹底こそ民主国家の基本である。

3月7日 沖縄タイムス
社説:[国会の秘密法監視]機能「骨抜き」にするな

本来公開されるべき情報が特定秘密に指定され、国民の目から隠された。おかしい。本当に、罰則によって保護するに値するほどの「秘密」なのか。違うのではないのか。指定を解除すべきだ-。 このような状況になった際、国権の最高機関である国会に、秘密指定の妥当性を監視する機能がないようでは、政府の暴走を食い止める効果は期待できない。「国会による政府監視」は形ばかりのものとなるのではないか。

自民党の特定秘密保護法プロジェクトチーム(座長・町村信孝元外相)が、国会による特定秘密のチェック機関に関する制度設計原案をまとめた。 原案によると、秘密指定を監視するため新たに国会に設けられる監視機関は、「政府による秘密指定の適否を判断しない」という。では何のための機関なのか。甚だ疑問だ。

昨年12月に成立した秘密保護法に対しては、政府が特定秘密を量産して国民の「知る権利」や取材・報道の自由を脅かすとの批判が絶えない。恣意(しい)的な運用で、秘密の範囲が広がりかねない懸念も払拭(ふっしょく)できないままだ。 にもかかわらず、法案審議が十分尽くされないうちに、安倍政権は強行採決に突き進んだ。 高まる世論の批判に対し、政府は法成立の直前、秘密のチェック機関として「保全監視委員会」「情報保全監察室」などの設置を相次いで打ち出した。 加えて自民党から示されたのが、衆参両院に監視機関として「常設の委員会」を設置する構想だ。

自民党プロジェクトチームの原案は次の内容だ。新機関は常設組織の位置付けだが、要請時のみ秘密会形式で開かれる。国会の常任・特別委員会が政府に特定秘密を含む資料などを提供するよう要請した際(1)新機関が政府に特定秘密の提供を要求(2)政府が新機関に特定秘密を提供(3)新機関で精査し委員会に対し「漏えいにならない範囲でフィードバックする」-という。

つまり秘密の内容の精査はするものの、秘密かどうかの適否の判断はしない。政府から特定秘密の提供を受け、委員会への提供内容を調整するにとどまる。 一方、国会審議で特定秘密を漏らした場合、国会で懲罰対象となる可能性がある。国会外であれば秘密保護法に基づき、最高5年の懲役などが科される。 監視機能を果たすことより情報漏えいを防ぐことを優先したこの監視機関に、一体何ができるというのか。

自民党プロジェクトチームの原案に対しては、与党公明党のプロジェクトチームでも異論が相次いだ。秘密指定の妥当性を監視する機能を持たせるべきだとの認識で一致し、自民党に修正を働き掛ける方針だという。 修正は当然だ。与野党で議論を重ね、小手先の対応ではなく、秘密指定解除を請求する権限なども明確にしてもらいたい。 実効性のある監視機能が働かないのであれば、法律を施行すべきではない。

2月13日 琉球新報
「秘密保護法は違憲」と国提訴 弁護士が静岡地裁に、全国初

昨年12月に成立した特定秘密保護法は憲法違反だとして、静岡県弁護士会所属の藤森克美弁護士(69)が13日、国を相手取り違憲・無効確認と施行の差し止めを求める訴訟を静岡地裁に起こした。藤森弁護士によると、同法の無効を求める訴訟は全国初。訴状では、特定秘密保護法により秘密事項が拡大する恐れは極めて大きく、テロやスパイ活動の防止を口実にあらゆる情報を秘密にできると主張。法案作成が秘密裏に行われ、国会で強行採決されたことを問題視し「民主的な手続きを経ているとは到底言えない」としている。

2月5日 琉球新報
社説:秘密法諮問会議 乱造への歯止め役果たせ

昨年12月に成立した特定秘密保護法は、閣僚ら行政機関の長が指定する特定秘密の範囲が曖昧で、その裁量によって特定秘密が乱造されかねない。共同通信が1月下旬に行った世論調査で、法の修正・廃止を求めた回答は74%に上った。秘密法の重大な欠陥は全く是正されないまま、安倍政権は年内の施行に突き進んでいる。膨大な情報が行政府の思うままに取り扱われる懸念が拭えない。あらためて法の廃止を強く求める。

世論の厳しい批判を受け、臨時国会の審議最終盤で安倍政権がドタバタと打ち出したのが秘密指定を監視する四つの監視機関だった。そのうち、官僚以外のメンバーで唯一構成し、政府の外から意見を出す情報保全諮問会議が1月に始動した。秘密指定や解除の基準の在り方などの検討に入っている。だが、その役割は安倍晋三首相に対する助言にとどまる。特定秘密の中身まで検証する権限は与えられていないのである。政府の独断的、恣意(しい)的な法の運用に歯止めがかけられるだろうか。実効性には大いに疑問がある。

7人のメンバーの選定には安倍首相の意向が強く反映された。法に反対する日弁連の弁護士もいるが、大半が法に賛同している初会合で、座長に就いた渡辺恒雄氏(読売新聞グループ本社会長兼主筆)は「どの政権であろうと言論・報道の自由を抑制してはならない」とあいさつした。だが、その前段で渡辺氏は「今回の法律は二重、三重に拡大解釈、権力の乱用を縛っているので大丈夫だと思う」と語っている。「知る権利」を持つ国民の代弁者として権力を縛るのではなく、法の是認の色合いが濃い形式的な議論を重ねるなら、単なる追認機関に堕してしまうだろう。
 
諮問会議を形骸化させないためにも会議の公開は不可欠だ。だが、初会合は冒頭以外は非公開だった。公開された初会合の議事録は、発言者名を伏せた要旨でしかないが、出席した官僚はその発言を全て把握している。政府は「発言者を萎縮させないため」とするが、「秘密」の在り方を問い直す会議だからこそ、全文公開が必要ではないか。国民の大半が強行成立に疑問を抱いている。国会は秘密指定をチェックする制度創設の論議を始めているが、それ以前に法を廃止し国民的議論をやり直すのが筋だ。

2月2日 琉球新報
社説:首相密約答弁 国民欺く外交は許されぬ

日米外交密約を否定して国民や国会を欺いてきた歴代首相と外務省の行為は犯罪的であり、厳しく断罪されなければならない。安倍晋三首相が国会答弁で、過去の核持ち込みに関する密約を歴代自民党政権が隠し続けたことを「間違い」と認めた一件のことだ。
 
民主党政権時に外相として密約調査を主導した岡田克也氏が、1960年の日米安保条約改定時に米核搭載艦船の通過・寄港を事前協議の対象外とした「核持ち込み」密約を例に、歴代内閣が「密約はない」との答弁を繰り返してきたことを問題視し、質問した。安倍首相は今回の答弁で、密約の存在を否定する虚偽答弁の歴史にけじめを付けたつもりだろう。
 
しかし「間違い」では済まない。うそで塗り固めた密約外交の事実は、国民主権や国権の最高機関である国会をないがしろにするものだ。安倍首相は、歴代自民党政権の不作為を国民に誠意を尽くして謝罪しなければならない。外交当局の責任を追及し、明確にするのは国会の責務だ。密約外交の経過・実態の調査委員会を設置し、国内への核持ち込みの有無を含めて徹底的に検証すべきだ。
 
首相はまた、国会答弁で「有事の際に航空機が不時着し、運搬中の文書が奪取される恐れがある場合は、奪取されないように破棄しなければいけない」と述べた。特定秘密保護法に関連し、秘密指定文書を緊急時には法が定める指定解除手続きを踏まずに廃棄する可能性があるとの認識を示したものだ。この認識は非常に危うい。不時着時という例示は一見、説得力があるように見える。しかし「緊急時」を政府が恣意(しい)的に解釈し、国民や国会の目に触れたら問題になりそうな失態を隠すために指定文書を破棄することも容易となろう。「緊急時」という適用除外は結局、国民の「知る権利」を狭めることにしかなるまい。
 
米軍関連情報が過剰に「特定秘密」に指定され、基地の監視が難しくなるとの懸念も各方面から出ている。適用除外の拡大で国民が知りたい情報は闇から闇へと葬られかねない。主権者の国民を欺く外交は過去も現在も許されない。国民は秘密法を是認していない。憲法や民主主義を破壊する悪法との批判も絶えない。秘密法を廃止し、秘密指定や情報公開の在り方について議論をやり直すべきだ。

1月31日 琉球新報
秘密文書、手続き抜きで廃棄も 首相、秘密保護法で

安倍晋三首相は31日の衆院予算委員会で、特定秘密保護法によって秘密指定した文書を、緊急時には指定解除の手続きを取らずに廃棄する可能性があるとの認識を示した。過去の日米密約を歴代の自民党政権が隠し続けたのは誤りだったと認めた。 秘密指定された文書は秘密保護法などで、指定を解除した上で首相の同意を得ないと廃棄できないとされている。安倍首相は「極めて限定的な状況」に限ると説明したものの、政府の恣意的な判断で公文書が記録から失われるとの懸念がさらに強まりそうだ。首相は「例えば有事の際に航空機が不時着し、運搬中の文書が奪取される恐れがある場合」と例示した。
 

1月7日 沖縄タイムス
首相「戦略的に領土守る」国家安全保障局始動

安倍晋三首相は7日、外交・安全保障政策の司令塔として設置した国家安全保障会議(NSC)の事務局となる国家安全保障局の発足式で「今まで以上に日本は戦略的に領土、領海、領空を守っていく」との決意を表明した。国家安全保障局は、外務、防衛両省や警察庁の出向組を中心とする計67人でこの日始動。首相や関係閣僚を構成メンバーとして先行スタートしていたNSCを補佐する体制を整えた。 初代の谷内正太郎局長は今月中に米ワシントンを訪れ、日本がモデルとしたオバマ米政権のNSC関係者と意見交換。連携強化を図る方針だ。米以外の各国との協力も積極的に進める。

The New York Times
EDITORIAL
ニューヨークタイムズ社説

Japan’s Dangerous Anachronism
December 16, 2013

The government of Prime Minister Shinzo Abe this month rammed through Parliament a state secrecy law that signals a fundamental alteration of the Japanese understanding of democracy. The law is vaguely worded and very broad, and it will allow government to make secret anything that it finds politically inconvenient. Government officials who leak secrets can be jailed for up to 10 years, and journalists who obtain information in an “inappropriate” manner or even seek information that they do not know is classified can be jailed for up to five years. The law covers national security issues, and it includes espionage and terrorism.

Just before the passage of the law, the secretary general of the governing Liberal Democratic Party, Shigeru Ishiba, likened those legally demonstrating against the state secrecy law to terrorists in his blog on Nov. 29. This callous disregard of freedom of speech greatly raised suspicion of what the Abe government really has in mind. The Japanese public clearly seems to fear that the law will infringe on press freedom and personal liberties. In a public opinion poll conducted by the Kyodo News Agency, 82 percent of respondents said that the law should be repealed or revised.

Mr. Abe is, however, arrogantly dismissive of the public’s concerns. “The law does not threaten ordinary life,” he said after the law’s passage. Showing an alarming ignorance of democracy, Gen Nakatani, a senior member of the Liberal Democratic Party, stated that “the affairs of government are distinct from the affairs of the people.”

The law is an integral part of Mr. Abe’s crusade to remake Japan into a “beautiful country,” which envisions expanded government power over the people and reduced protection for individual rights ― a strong state supported by a patriotic people. His stated goal is to rewrite the nation’s Constitution, which was imposed by the United States Army during occupation seven decades ago.

The Liberal Democratic Party’s draft constitution, made public in April last year, deletes the existing article on the guarantee of fundamental human rights. It adds that the people must respect the national flag and national anthem. It states, “The people shall be aware that duties and obligations accompany freedoms and rights and shall never violate the public order and public interest.” It also says that the prime minister will have the power to declare a state of emergency and suspend ordinary law.

Mr. Abe’s aim is to “cast off the postwar regime.” Critics in Japan warn that he is seeking to resurrect the pre-1945 state. It is a vision both anachronistic and dangerous.

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12月12日の八重山毎日紙面 西表(竹富町)の方より

12月14日 琉球新報
社説:秘密保護法公布 報道弾圧の悪法許されぬ

政府は13日、特定秘密保護法を公布した。1年以内に施行するという。公布に合わせて秘密指定の妥当性をチェックする第三者機関設置の準備室を内閣官房に設けたが、国民の「知る権利」や報道の自由を保障する道筋は何も示されていない。政府は反対世論の沈静化に躍起だが、国民は強行成立に納得していないことを銘記すべきだ。
 
法成立後、衣の袖から鎧(よろい)がのぞく事態があった。市民デモを「テロ行為」にたとえ批判を浴びた自民党の石破茂幹事長が今度は、記者会見で特定秘密の報道をめぐり「わが国の安全が極めて危機にひんするのであれば、何らかの方向で抑制されることになる」と述べ、報道機関への処罰を示唆した。すぐに訂正したが、それが政府、与党の本音だろう。石破幹事長はその後も「外へ出すと国の安全に大きな影響があると分かっているが報道する。(その結果)大勢の人が死んだとなれば『それはどうだろう』というのはある」と述べた。国民の知る権利に応える報道は、当然ながら高い公益性を有している。国や国民の安全を脅かすことを意図する報道があるかのような石破氏の言説は歪んでおり非常に危うい。
 
秘密保護法は「報道、取材の自由に十分に配慮しなければならない」と明記する。しかし、今回の発言で配慮規定は当てにならず言論規制が十分あり得ることを、石破幹事長が自ら暴露したに等しい。このように為政者によっていくらでも恣意(しい)的に解釈、運用されかねない法律は公布自体、大問題だ。琉球新報は2004年に日米地位協定を解釈する外務省の文書「日米地位協定の考え方」を入手し、「増補版」も含め読者に伝える必要があるとして、全文を掲載した。外務省は現在でもこれら文書を「米側との信頼関係を損なう」として開示を拒んでいる。
 
岸田文雄外相は先の国会で「増補版」が特定秘密保護法の特定秘密に該当するかについて「策定される統一的な運用基準に基づいて精査される」と述べ、指定の可能性に含みを残した。外相発言は、知る権利に応える公益性の高い報道であっても、官僚の恣意的な法運用で取材記者を萎縮させ、いざとなれば逮捕できることを暗示している。この法はこの国の民主主義にとって有害だと言わざるを得ない。やはり即刻廃止すべきだ。

「戦争の出来る国」へ、 新防衛計画の大綱が年内に、来年の通常国会にはいよいよ「共謀罪」そして「国家安全保障基本法」などが。

12月13日 琉球新報
社説:「共謀罪」新設 国民監視する悪法要らない

安倍政権は、話し合いをしただけで処罰される「共謀罪」新設を盛り込んだ組織犯罪処罰法改正案の検討に入った。犯罪が行われて初めて処罰するという日本の刑事法体系の原則から逸脱し、市民の会話やメールまで捜査対象となる恐れがある。戦前の治安維持法、あるいは米国統治下の沖縄のような監視・密告社会になりかねない。そのような悪法は必要ない。
 
共謀罪は具体的に犯罪が行われるはるか前の、未遂や予備段階よりさらに前に、2人以上が話し合い合意することを処罰の対象にする。思想でなく行為を処罰するという刑事法体系の基本原則に矛盾し、憲法19条(思想・良心の自由)に抵触する。共謀を証明するために、おとり捜査や、市民の日常会話や通話、メールの内容まで捜査対象になりかねない。法学者は盗聴を容易にするため通信傍受法の改正も視野に入れているとみる。
 
改正案は過去に3回廃案になっている。4年以上の懲役・禁錮を定めた600以上の罪が対象になり、捜査当局の恣意(しい)的な適用や拡大解釈が懸念されたからだ。廃案後も政府内では改正の動きが常にくすぶっていたようだ。今回は対象をテロや薬物・銃器取引、密入国などに限る方向で調整するようだが、懸念は拭えない。

石破茂自民党幹事長が特定秘密保護法案への反対運動をテロになぞらえたように、共謀罪によって、市民団体が危険な組織と見なされ監視される可能性がある。戦時下の言論弾圧事件として知られる横浜事件は、当局が目を付けた人物が友人を招いて開いた宴会を共産党再建を共謀したとみなし、治安維持法によって逮捕、4人が獄中死した。米国統治下の沖縄は米軍情報機関(CIC)が住民を監視し、住民の中の密告者から情報を収集した。目を付けられ逮捕、拷問された住民もいる。
 
強行成立させた特定秘密保護法、共謀罪、通信傍受法の三つがそろうと、主権者である国民が徹底して監視される「警察国家」が出来上がるのではないかと危惧する。安倍晋三首相が、国民監視体制を強化する一方、国会で自民党「1強」という数の力に頼って「戦争のできる国」づくりを進め続けることは許されない。まず解散して国民に信を問わねばならない。それが民主主義のルールだ。

12月13日 沖縄タイムス
秘密保護法公布、1年以内に施行 第三者機関準備室が発足

政府は13日午前、国の機密漏えいに厳罰を科す特定秘密保護法を公布した。併せて同日付で、秘密の指定・解除に関する統一基準の策定や、指定の妥当性を監視する第三者機関設置のための準備室を内閣官房に発足させた。秘密法は公布から1年以内に施行される。与党による採決強行で成立した秘密保護法は、国民の「知る権利」や取材・報道の自由を侵害する懸念が解消されないまま、施行に向けて準備が進むことになった。準備室は、内閣情報調査室職員を中心に十数人で構成する。準備室長には内閣情報調査室の能化正樹次長を充てる。

12月12日 八重山毎日
不連続線:あれだけの激しい反対にもかかわらず

あれだけの激しい反対にもかかわらず、ロクに審議も尽くさずに特定秘密保護法が成立した。これで自由民主党は国民全ての幸福を目指す国民政党ではなく、一部集団の利益追求のための政党であることが判明した。これは先日、沖縄自民党県連が辺野古移設を容認して県民党でないことを示したことと全く同じである。米国流にもう少しはっきり言えば1%の富裕層の権益確保のため残り99%の国民の自由を抑圧制限しようとの立法である憲法そのものであり、もちろん憲法違反である。何しろ中身がよく分からないのだ。時の権力の恣意(しい)によっていくらでも、その秘密の内容が変更拡大可能なのだ。

もともとこの法案は米国が米軍の機密を保持するため多数の米軍が駐留する日本に(つまり沖縄)押し付けたもので、安倍政権は「しめた!」とばかりにそれをずるく利用しているのだ。もし沖縄側が辺野古移設を容認すれば、それこそ日米両政府は巨大米軍基地建設に着手し、それに対する一切の疑問、反対、抗議、情報収集などを圧殺する狙いがあるのだ。悪法中の悪法である。戦前の治安維持法や特別高等警察(いわゆる特高)を連想する人もいるくらいだ。われわれはあくまでその非を糾断し、一年後のその法の施行を決して許してはならない。

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12月12日の八重山毎日紙面 西表(竹富町)の方より

衣の下から鎧が見えた!

12月12日 沖縄タイムス
石破氏、秘密報道の自制を要請

自民党の石破茂幹事長は12日、ニッポン放送のラジオ番組で、特定秘密保護法に基づいて指定された秘密情報を報道機関が報じることに重ねて疑問を呈し、自制を求める姿勢を示した。報道は処罰対象にならないと断った上で「外へ出すと国の安全に大きな影響があると分かっているが報道する。(その結果)大勢の人が死んだとなれば『それはどうだろう』というのはある」と述べた。 石破氏は11日の記者会見で、漏えいが禁じられる「特定秘密」を報道機関が報じた場合に処罰されることもあり得るとの見解を示し、その後に撤回している。

12月11日 琉球新報
社説:「秘密法」世論調査 反対の民意受け廃止探れ

世論は、国民の「知る権利」に背を向けた、権力の暴走にノーを突き付けている。共同通信の全国緊急世論調査で、成立したばかりの特定秘密法を今後どうするかについて、「修正」が54・1%、「廃止」が28・2%で計82・3%に上った。法律に反対は60・3%に上り、「不安」を訴える回答は70・8%を占めた。第2次安倍内閣の支持率は前回11月から10・3ポイントも下げて47・6%となり、初めて50%を切った。不支持率は38・4%で、12・2ポイントもはね上がった。当然の結果だ。法成立後も廃止を求める全国的なうねりはやまず、法の欠陥への懸念が噴出している。
 
支持率が急落した安倍晋三首相は会見を開き、「丁寧に時間を取って説明すべきだった。反省している」と述べたが、遅すぎる。法案を審議した衆参両院の特別委員会への首相の出席時間はわずか4時間余だ。反省を口にするぐらいなら、強行採決を避け、廃案か継続審議にすべきだった。後付けの「反省」は、国民の強い批判を意識したポーズにすぎまい。結局、首相は「良い法律」と自賛して本音を見せたが、数を頼りに強行採決を連発した政権与党に対する国民の目の険しさを自覚し、法廃止の道を探るべきだ。
 
会見で、首相は「通常の生活が脅かされることは断じてあり得ない。今ある秘密の範囲が広がることはない」と強調したが、具体性は全くなかった。法案審議の土壇場で、安倍政権は「保全監視委員会」「情報保全観察室」の設立をパッチワークのように打ち出した。首相の会見でも、政府に都合の悪い情報が隠され、恣意(しい)的な運用がなされることへの懸念は払拭(ふっしょく)されていない。
 
国民を情報から遠ざける法が成立すれば、政府が「乱用しない」と断言しても、取り締まる側の警察などにとって便利な道具となり、統制国家、秘密国家の色が濃くなる。歴史の教訓である。日本が戦争に突き進んでいた1941年に成立した国防保安法はスパイ防止の名目で、国の情報を「秘密」の壁で覆った。柳川平助司法大臣(当時)は「他の目的に利用することは一切致さない」と答弁したが、施行初年度だけで検挙は一般人を含めて59件に上り、憲兵らによる国民生活の監視が一気に強まった。柳川大臣の答弁が、安倍首相の釈明と重なってならない。

12月11日 沖縄タイムス
社説:[秘密法13日公布]疑問を一から検証せよ

異例ずくめの強引な国会運営で成立した特定秘密保護法が13日、公布される。法律には1年以内に施行することがうたわれているが、小手先の対応では国民の懸念をぬぐい去ることはできない。 安倍晋三首相は9日の記者会見で世論の反発を意識し、「もっと丁寧に時間をとって説明すべきだった」と述べた。本心からそう思っているのであれば、今度こそ与野党で熟議を重ね、法律の廃止か全面的見直しに着手すべきである。

共同通信社が8、9両日に実施した電話世論調査によると、特定秘密保護法を今後どうすればよいかとの問いに対し、「このまま施行」はわずか9・4%にとどまった。「修正」(54・1%)と「廃止」(28・2%)を含めると、実に82・3%が法律の見直しを求めている。法律への不安を「感じる」と答えた人も70・8%に達した。 法案成立後に実施したマスコミ各社の世論調査は、おおむね似た傾向を示している。国会周辺を取り巻いた人びとの声が国民全体に広く共有されていることを裏付けるものだ。 この事実は、成立した法律に対して国民が「ノー」を突きつけたのに等しい。 国会での相次ぐ強行採決。アリバイづくりとしかいいようのない形骸化した地方公聴会。二転三転の政府側説明。バナナのたたき売りのように成立直前に次々に発表された、法律にない新たな組織。 正当性を欠いた法律は廃止するか全面的に見直すしかない。

安倍首相は記者会見で「野党との法案修正がなされたことは大きな成果」だと強調した。ほんとにそうだったのか。修正で合意した日本維新の会もみんなの党も、参院本会議では議場から退席して棄権するか、反対票(みんなの党の3人)を投じた。 決して採決で賛成したわけではないのだ。それがなぜ「大きな成果」だといえるのか。政府自民党の国会運営には、この種の我田引水の議論や取り繕いがあまりにも多かった。

安倍首相は「秘密が際限なく広がることは断じてあり得ない」と述べた。「知る権利は奪われない」とも強調した。これらの説明には、それを担保する法律の条文がない。法律の中にチェック機能や検証機能が十分に備わっていればまだしも、それが明文化されていないのである。説得力に欠けるのはそのためだ。 たとえ首相であっても「オレを信じてくれ」では担保にならない。それが特定秘密保護法の持つ怖さである。

安倍首相は「一般の方が巻き込まれることは決してない」と指摘した。この言い方にも落とし穴がある。「一般の方」とは誰をさすのか。 憲法が保障する思想・表現の自由とは、何よりも、反対する自由、抗議する自由、政府の政策にノーを言う自由のことを言うのである。 デモとテロを混同するような与党幹事長の下で、公安部門の特定秘密が増殖したらどういうことになるのか。その懸念はぬぐい切れない。

12月11日 八重山毎日
不連続線:防衛や外交、治安に関する国の広範な情報を
 
防衛や外交、治安に関する国の広範な情報を「特定秘密」に指定し、漏えい者に重罰を科す。国民の知る権利と発言の自由がふさがれ、物が言えない国になるとの警戒感が強い特定秘密保護法が、安倍政権で成立した。マスコミや日本弁護士連合会、日本ペンクラブ、学者グループなど国民の懸念の声があるにもかかわらず参院本会議での強行採決。赤信号みんなで渡れば怖くない的に〝付和雷同〟した自民、公明両党の賛成多数で可決、成立させた。

安倍政権には〝民が主〟の民主主義が本当に分かっていないのではないか。国民の声にも心ここにあらず、民意をくんで民意に従う気持ちは少しも見えない。秘密法には官僚が恣意(しい)的に秘密を指定する危険性が危惧される。秘密という名のもとに何が起こるか分からぬとの不安が、黒い雲のように国民の心におおいかぶさる。冷たい政権が次に打ち出すのは何か。日米同盟強化と米軍と自衛隊の一体化推進。集団的自衛権の行使容認などの動きから、識者は憲法改正だと警戒する。

国家権力がどう変わろうとも政治家の声だけがその国の声ではない。民は政権を支えもするが不満ならひっくり返す。対話重視の時代に安倍政権がこれ以上、国民の声に向き合わずとなれば新しい内閣によって人心の一新を図るほかない。

12月10日 琉球新報
特定秘密保護法廃止へ気勢 市民団体150人が集会

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特定秘密保護法の強行採決に抗議し、シュプレヒコールを上げて同法廃止へ決意を示す県内の平和団体メンバーら=9日午後、那覇市泉崎の県民広場
 
6日成立した特定秘密保護法に対し、県内の平和団体などは国会での強行採決を糾弾する緊急集会を那覇市の県民広場で開いた。時折大雨が降るぐずついた天候の下、参加した150人(主催者発表)は同法に反対する意思をあらためて確認し、「国民弾圧許さんぞ」などと、法律廃止を目指し気勢を上げた。
 
沖縄平和運動センターの山城博治議長は、「知る権利」を呼吸に例え「(同法施行で)いったいどこで息をして生きていくことができようか」と強調し、全国の反対運動と連帯して沖縄でも法律廃止を求め続ける決意を示した。同法成立で報道の自由が脅かされる状況について、県マスコミ労働組合協議会の次呂久(じろく)勲議長は「歴史は繰り返されるというが、繰り返してはいけない歴史がある」と主張。「現状はまるで戦前に逆戻りしている」と危機感を訴えた。

12月10日 八重山毎日
秘密保護法成立に抗議 労組や政党などが緊急集会

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特定秘密保護法成立に強く抗議する人たち=9日午後、那覇市

機密漏えいに厳罰を科す特定秘密保護法の成立に抗議する緊急集会が9日午後、那覇市の県民ひろばで開かれた。県内の労働組合や政党、沖縄平