要注意)自然の経過を乱すもの 2015・11・27
**************************************
自己施術ができるようになると、‘此処に手をまわして気を入れたいけど 届かない“という箇所が感じられてくる。
セラピーをして、後日来られて、“どうしても肩甲骨周りに手が届かなくて”
とおっしゃる方たちがいる。
体は経絡などであるいは、チャクラ線でつながりあっているので、手が届かなくても、最終的には
“そこ(たとえば、肩甲骨付近)を解こう”と 集中的に意識を寄せるだけでも届かないところに気がまわる。
それが あまり釈然としないときは、背中の裏側と反対の前身の箇所、たとえば、
肩甲骨あたりなら、前身ごろの、あばら骨当たりに軽く 掌で気を流すだけでも、通じる。
何故、このようなことが起こるかと言えば、人の意識、特に、強い念(文字どおり、今の下に心があるように、今強く発する想い)は 体に通じやすいからだ。
手を怪我している、片手が不自由だとか言う方は、その方法で十分 自己施術を
行うことが可能だろう。
それを整体の創始者 野口春哉氏も 認めていて以下のように書いている。
“体の一部はこわばったままでいる。
そこへ力を集めて抜く。
抜こうとしただけでは弛まないが、一旦力を集めて抜くと抜ける。
それをこわばったところに順々に行う。
しかし、只力を入れて抜いても弛まない。
弛むには十序がある。
その弛む順序が体によって違う。
使いすぎているところが、緩まない。
その方より疲労の度合いで弛む順序が生ずるのであるから、力を入れて抜いて
弛まぬところを気張って弛めようとしないで、体の順序に従って、力を入れ抜く。“
つまり、背骨を伸ばしてイスに腰掛け、あるいは、正座し、体の“緩めたい箇所”
に想念を送るのだ。
送る際、一度そこに力を物理的にかけて、息を吸って、少し筋肉を緊張させる。
それから、その箇所にいれた力をぬきながら、息を吐いて リラックスさせていく。
息を吸うとき、文字通り、‘息=いき’は‘生きる気’、つまり、気をその凝った個所に充満させるような心持で息を吸うのだ。
但し、ここで 野口氏は “体の順序に従って力を入れ抜く”ことが大切だと、記述している。
確かに、多くのクライアントの方たちが、施術後、一人で行う場合の解く順番をお尋ねになる。
大体は頭から首、肩、胸、両腕、腹の順番に下に下がって気をいれることをお勧めしているが、中には、傷む箇所から先に解きたいと考える方も少なくない。
ある個所に慢性的な痛みがある場合、そこから“ほぐしたい”という思いが強いので、その前に、腕や首、腰に、気をいれてみてください~とお話しすると怪訝(けげん)な顔をされる。
“そこは、特に痛くもなんともないのに・・ですか?”という質問される。
“体のバランスを考えて”とお答えしているが、痛い所だけに気を流しても、あまり、効果が無い場合が多い。
さらに、痛いところがこっているのではなく、ほかに原因がある場合も多々ある。
つまりや凝りは、時間の経過で体の異なる場所に症状として出てくる場合がある。
そのあたりを 以下のように野口氏も指摘している。
“肩が凝っているからそれをとろうとか、腰が痛いから腰から緩めようとか、初めから決めてかかることは交差点の交通巡査がさばききれないで、気張っているのと同じで目の前の片側のことしかわからない”
つまり、そういう風にしても、
“延々と後に車の続いていることが見えない。”ので、かえって気の渋滞をまねいて
症状が改善されないことになる。
たとえば、風邪を例にとってみると、
”咳が出るから咳を鎮めよう。
熱が出たから熱を下げよう。
脚が痛むからそれを抑えよう、と今感じているところにばかり気を取られていると、整理がつかない。“
つまり感じている痛みや不調、体のその部位がはっきりしているところを何とかしたいと思ってそこから施術を始めても効果が上がらないのはそのためだろう。
“その気になったことをいちいち何とかしようと手を出すから経過が乱れる。
風邪の経過という交通の流れの全体を捕まえてみていない。
次の交差点の赤青のことをみて、整理に当たらなければ整理できるものではない。“
だから、
”余分なことをすれば経過を乱す。
何もしないで、ただ体を弛めていた方が、かえって。すらすらと通る。“
ということにもなりかねない。
体の凝りやつまりを解いて、気を通し、体が弛んでくると、風邪の症状はどうなるだろう?
“弛んで汗が出ると風邪が通過したのであるが、余分に頑張っていると熱がでる。
経過促進の自然の方法である。
肩がこわばっていれば、咳が出て、鼻がつかえていれば、くしゃみが出る。
是も弛み発汗する順序です。”
ここでも 野口氏は繰り返しのべているのだが、私たちが普通 風邪を引いて治っていないと思う原因の、くしゃみや鼻づまり、頭痛や咳などの、“症状”は実は、風邪がうまく経過していっている過程なのだ。
咳が出たり、鼻がつまる。 くしゃみを連発したり発熱したりする。
場合によっては、関節が痛んだり、下痢をしたりするのだが、
“腰が痛むのも、そこがまだ弛まないという知らせである。”
と肯定的に症状をとれば、心配ばかりするだけではなく、その通知を受けた箇所を弛ませ、気を流して解こうとするきっかけになるだろう。
だから、野口流でいけば、あるいは、自然治癒的療法でいけば、風邪をひいたとき
の心がけと自分で施術する場合、
“風邪を引いたら、まず、身体中の力を抜いて、体を弛めてしまうのです。
緩めれば汗が出てさっさと経過してしまう。
ところが自分では緩めたつもりなのに、体の一部はこわばったままでいる。
そこへ力を集めて抜く。
抜こうとしただけでは弛まないが、一旦力を集めて抜くと抜ける。
それをこわばったところに順々に行う。
しかし、只力を入れて抜いても弛まない。
弛むには十序がある。
その弛む順序が体によって違う。
使いすぎているところが、緩まない。
その方より疲労の度合いで弛む順序が生ずるのであるから、力を入れて抜いて弛まぬところを気張って弛めようとしないで、体の順序に従って、力を入れ抜く。“
という方法も有効なのだ。
実際 具体的にどこに気をいれたら 風邪に効果的かということを知りたい方のために、野口氏は次のように書いているのでそれをご紹介したい。
“胸椎三と四がくっついているものは鎖骨付近につまりがある。
下痢がひどくても、頭痛が激しくても、胸椎三と四がついている場合が多いので
これで大方よくなる。
同じ兆候でも、胸椎五番が飛び出している場合は頸椎(けいつい)六と七に、胸椎十が飛び出している場合、頸椎三と四に気を流す。
胸椎十番が捻じれているのは風邪が体の中で引っかかったことを示している。
泌尿器に異常が現れる前である。
十番や足の内側に気を流せばよい。“
風邪を上手に経過させるということは、こうした胸椎や頸椎などのひきつれに
異常を残さないということでもある。
風邪ひいて、腎臓が悪くなったり、咳だけまだ残っているという場合、神経痛になったり呼吸器に不調を感じたりするのは、きちんと体の整理をつけなかったということなのかもしれない。
心して、風邪をあなどらず、しかし、風邪の治りかけを見極め、一層 健康になるように体を調整しながら、風邪を経過したいものだ。
参考文献) 風邪の効用 野口春哉
株式会社 全生 昭和53年改訂6版